高橋千秋外務副大臣は,スイス・ジュネーブを訪問し,7月18日及び19日に第3回WTO「貿易のための援助(AfT)」グローバル・レビュー閣僚級会合(注)に出席した他,18日にラミーWTO事務局長との間で会談を行ったところ,概要以下のとおりです。
(注)2007年(第1回),2009年(第2回)に続いて開催。
1.第3回WTO「貿易のための援助(AfT)」グローバル・レビュー閣僚級会合
今次会合のテーマは,これまでの貿易関連援助をモニター・評価するというものであり,出席した各国際機関やWTO加盟国の閣僚・大使からは,ケース・スタディーから成功例や問題点を学ぶとともに地域間の経験の共有の必要性が指摘されました。
(1)AfTに関する我が国の取組
高橋副大臣から,第3セッション(プロジェクトの結果と開発へのインパクト)においてアジアにおける我が国の「貿易のための援助(AfT)」に関する取組を紹介するとともに,その経験を今後のアフリカにも活かしていくことの重要性を表明しました。これまで我が国は,2期にわたって3年ごとの全世界向けの貿易関連援助額のコミットメント(2006~2008年に総額100億ドル,2009年~2011年に総額120億ドルの貿易関連ODAを供与)を行い,それを着実に実施してきています。その過程で浮かび上がってきた問題として,ODA供与が外国への直接投資に結びつくことがその後の貿易発展にとって重要であり,高橋副大臣からはこの点を強調しました(冒頭発言英文及び和文仮訳)。こうした我が国の取組については,同じセッションに参加したカンボジア,ケニア及びジャマイカの閣僚からも高い評価がありました。
(2)食料価格の高騰に対する我が国の取組
ハイレベル・ランチ・セッションにおいては,国際機関による価格透明性メカニズムやG20での取組等につき意見交換が行われました。高橋副大臣からは,食糧価格高騰に関連する問題として輸出規制の問題があり,これはGATT協定上からも厳しい要件の下で限定的に実施することが求められていること,その要件についてWTO等で議論していくべきことを指摘するとともに,日本としては途上国の農業生産能力を向上させるための援助を引き続き実施していくことを表明しました。
2.ラミーWTO事務局長との会談
高橋副大臣は,ラミー事務局長と会談し,貿易のための援助とドーハ・ラウンド交渉を中心に意見交換をしました。
(1)「貿易のための援助(AfT)」
高橋副大臣から,我が国の取組やODAを巡る国内議論の現状等を紹介したのに対し,ラミー事務局長からは,貿易のための援助において日本は信頼できる安定したパートナーであり,またアジア太平洋地域における援助についてアジア開発銀行と共にリードしてきていることを高く評価している旨述べました。また,ラミー事務局長から,いずれの国も財政上の制約がある中で,貿易のための援助を効果的・効率的に実施していく必要があること,援助による貿易拡大は,途上国のみならずドナー国にとっても経済発展のためには重要であり,ウィン・ウィンの関係にあること等が強調されました。
(2)WTOドーハ・ラウンド
高橋副大臣から,モンタナにおけるAPEC閣僚会合で確認されたとおり,ラウンド妥結を諦めることなく,年内に一定の成果を示すことがWTOにとって重要となること,日本としてその作業に協力していくことを表明したのに対し,ラミー事務局長からは,秋口ぐらいまでには何らかの方向性を得る必要があることを述べました。また,ラミー事務局長からは,ドーハ・ラウンドについても日本のこれまでの議論の取組・貢献を評価している旨の表明がありました。