演説

伊藤外務副大臣演説

第2回貿易のための援助(AfT)グローバル・レビュー会合
伊藤副大臣冒頭発言

7月6日、WTO事務局

1.日本政府の貿易のための援助(AfT(Aid for Trade))に関する立場を説明する機会を頂きましたことに感謝したいと思います。

2.世界貿易は、昨年秋の金融経済危機以後、残念ながら困難な状況から脱却できていません。この厳しい状況を克服していくには、先進国や新興国が保護主義を抑止しつつ、自由貿易を維持する努力を行うと共に、LDCを含む途上国の世界貿易への更なる統合を後押ししていくことが不可欠となっています。貿易自由化と貿易のための援助の2つは、世界貿易の再活性化のための車の両輪であります。

3.このような立場から、我が国は、2005年に、貿易のための援助に大きく貢献する観点から、我が国独自の取り組みである「開発イニシアティブ」を打ち出しました。このイニシアティブでは、TICADⅣにおけるODA倍増を含めた貿易・投資分野の対アフリカ支援、途上国の日本市場への参入努力を支援する「一村一品キャンペーン」といった特色ある支援をふくめ、その後3年間で所期の全ての目標を達成しました。この実績については、これまで行われたアフリカ地域やアジア太平洋地域のレビュー会合において、パートナー国から高い評価をいただいたところであります。なお、「一村一品」については、会場内にパンフレットを用意していますので、後でご覧いただければと思います。

4.また、期せずして発生した世界経済の低迷により貿易のための援助の重要性が改めて認識されました。第2回グローバル・レビューのこの機会に、今後ドナー諸国・機関が貿易のための援助へのコミットメントを再確認することが重要であります。

5.この点に関し、本日、私は日本政府を代表して、我々の今後の新たな戦略として「開発イニシアティブ2009」を実施していくことを発表したいと思います。この新たな計画においては、2009~2011年の3年間に、

(1)総額120億ドルの貿易関連プロジェクトへの二国間援助を行うとともに、人的能力拡充の需要に応え、前回イニシアティブでの目標を上回る4万人の技術協力を貿易関連活動の分野において実施する予定としています。また、

(2)市場開放努力の面では、一般特恵制度(GSP)について、制度全体に対する見直しの検討を行う予定です。更に、

(3)途上国における貿易を円滑に発展させていく上では、こうしたODAを通じての支援に加えて、関連分野として貿易金融が重要になっていますが、我が国としてもロンドン・サミット等において表明したコミットメントを着実に実施して参ります。その他、貿易のための援助の効率化についても積極的に取り組んでいく考えです。

6.また、我が国がこの新しいイニシアティブを推進していくにあたり、これまで以上にテーラーメイドのアプローチをとるよう、配慮していくことを指摘しておきたいと思います。即ち、途上国のオーナーシップや貧困、環境やジェンダーの問題を尊重しつつ、「一村一品キャンペーン」にも関係する適地適産といった面を考慮していきます。

7.我が国としてはこのような新たなイニシアティブを通じ貿易のための援助に対してこれまで以上の努力を傾注していくつもりです。しかしながら、途上国の貿易量を拡大するには、ドーハ・ラウンド交渉の妥結が強く求められます。この妥結の成果は全ての国にもたらされますが、とりわけ途上国に大きな利益がもたらされます。従って、「ドーハ・ラウンドの早期妥結」と「貿易のための援助の促進」の相乗効果によって、再び成長軌道に戻り、現在の危機を克服していくことが可能であることを強調したいと思います。最後に、私は、この場をお借りして、改めて我が国が、全てのメンバー国、関係機関と協力しつつ、貿易のための援助のプロセスにこれまで以上に参画していくことを表明したいと思います。

8.ご静聴ありがとうございました。

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