平成19年9月25日
9月19日(水曜日)及び20日(木曜日)の両日、フィリピン・マニラにおいて貿易のための援助(AFT)アジア・太平洋地域レビューが開催されたところ、概要と評価は以下の通り。
(注)AFTとは、多角的貿易体制から十分な利益を得られていないとの途上国の不満を背景に、貿易自由化だけでなく、供給サイドの支援が必要であるとの認識を踏まえた取り組み。WTO、世銀、OECD/DAC等の国際フォーラムにおいて活発に議論。
(1)日程
9月19日(水曜日)
基調講演:黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁
パスカル・ラミー世界貿易機関(WTO)事務局長
全体会合1:アジア・太平洋地域においてAFTは何故重要か
全体会合2:アジア・太平洋地域における公的・民間セクターのパートナーシップ
分科会:メコン地域、南アジア地域及びフィリピンの各分科会
9月20日(木曜日)
全体会合3:アジア・太平洋地域におけるAFTに関する閣僚ラウンド・テーブル
基調講演:マカパガル・アロヨ・フィリピン大統領
全体会合4:アジア・太平洋地域におけるAFTのためのドナーの協力
閉会発言:WTO事務局長、ADB総裁
(2)出席者
アジア・太平洋地域や域外関係国約50カ国の政府関係者、国際機関、NGO、研究者、及び民間企業など約300名が参加。我が国政府からは、横田淳特命全権大使兼日本政府代表を始め関係者が出席した。
(3)会合概要
(イ)貿易の促進とこれによる経済成長により、途上国がグローバリゼーションや地域統合から利益を得ることが出来るとの視点の下、如何にAFTを実施していくかにつき、アジア・太平洋地域における現状と課題を踏まえ、また、本年11月に開催が予定されるグローバル・レビューを念頭に置きつつ、議論が行われた。
(ロ)AFTについて、一部からWTOドーハ・ラウンドで不利な条件を飲ませるためのアメであってはならぬとの警戒心が表明されたものの、その推進の必要性については一致があった。その場合、AFTとして具体的に如何なる援助を行うべきか、特に途上国の自助努力の向上の在り方、特に被援助国における国内調整の問題、民間セクターの役割、援助の性格(追加性、無償か否か)等について意見が多く出された。
(ハ)本件会合では、民間企業、NGO等からも出席者があり、政府・国際機関出席者とは異なる観点からの発言があった。また本件会合にあわせ、国際標準、民間セクターの役割、及び、AFTの統計的計測に関するワークショップ等が開催され議論が行われた。
(1)AFTの実施につき、援助国・機関、被援助国、その他の関係機関の取り組みについて具体的かつ活発に意見が表明され、特に分科会においてはそれに基づき議論が行われた。被援助国のオーナーシップの重要性等につき認識が共有された点は、今後、AFTの実施に当たり重要であると考えられる。
(2)我が国代表の横田大使・政府代表より、下記のような我が国の「開発イニシアティブ」を通じたAFTに対する取組みを説明し、参加者の理解を深めることが出来、参加者からも評価を得た。
(イ)貿易がアジアの経済成長において重要な役割を果たしてきていることについては既にコンセンサスがある。貿易により経済成長を実現するためにはODA及びFDI(直接投資)の両方が重要である。我が国援助は投資環境の整備に役立ってきた。
(ロ)我が国は2005年12月のWTO香港閣僚会議に先立ち発表した「開発イニシアティブ」を始めとした措置によりAFTに継続的に取り組みを行っている。
(ハ)具体的には、本年4月からのLDC無税無枠措置の拡充、ベトナムにおけるインフラ整備支援、タイにおける一村一品運動、ウズベキスタンにおける鉄道整備、キリバスにおける港湾整備が例である。
(ニ)EPA/FTAを通じた支援、TICADプロセスを通じた対アフリカ支援も推進する。
(3)我が国としては、本件会合も踏まえ、引き続き、「開発イニシアティブ」を着実に実施し、関連する国際会議への積極的参加を通じ、アジア地域及び全世界の途上国に対するAFTの実施に貢献していくべきであると考える。
10月1日(月曜日)、2日(火曜日)アフリカ地域レビュー会合(タンザニア、ダル・エス・サラーム)
11月20日(火曜日)、21日(水曜日)グローバル・レビュー会合(スイス、ジュネーブ)
(なお、既に、9月13日(木曜日)、14日(金曜日)にラテン・アメリカ・カリブ海地域レビュー会合(ペルー、リマ)が開催されている。)