日本の国際テロ対策協力
国連及びG8/G7におけるグローバルなテロ対策協力
- 1 テロ対策に関する国連(安全保障理事会)の動き
- 2 テロ対策に関するG8/G7サミットの宣言
- 3 G20サミットの宣言
- 4 グローバル・テロ対策フォーラム(GCTF: Global Counterterrorism Forum)
1 テロ対策に関する国連(安全保障理事会)の動き
- (1)米国における同時多発テロ翌日の2001年9月12日、このテロ攻撃を非難する安保理決議第1368号が採択されました。同月28日には、国連加盟国に対し、金融面を含む包括的なテロ対策措置の実施を義務づけるとともに、国連テロ対策委員会(CTC)の設置等を規定した安保理決議第1373号(PDF)
が採択されました。我が国は、この安保理決議第1373号を着実に実施してきています。2004年10月8日には、CTCの活性化や、国際協力の一層の強化を図る安保理決議第1566号が採択され、さらに2005年9月14日には、テロの扇動行為の禁止等に関する安保理決議1624号(PDF)
が採択されました。
- (2)2006年5月2日、コフィー・アナン国連事務総長は国連総会第78回本会議において「テロリズムに対抗して団結するグローバルなテロ対策戦略に向けた勧告」を発表しました。同勧告を受け、国連総会非公式協議における議論を経て、同年9月8日、国連総会第99回本会議において「国連グローバル・テロ対策戦略に関する総会決議」が採択されました。
- (3)2014年9月24日、ISIL(「イラクとレバントのイスラム国」)を始めとする武装組織に各国から多数の外国人テロ戦闘員が加勢し、国際秩序に対する重大な脅威となっていたことを踏まえ、安保理決議第2178号(英文)(PDF)
が採択されました。同決議は、かかる問題の脅威に国際社会が包括的に取り組むため、テロ対策に関する既存の安保理決議(第1373号等)で規定されている各加盟国の義務(出入国管理、テロ資金対策、暴力的過激主義対策等)を再確認しているほか、各加盟国が新たに取り組むべき諸措置につき規定しています。
- (4)2014年12月19日、「テロリストの活動に起因する国際の平和と安全に対する脅威」についての国連安保理ハイ・レベル公開討議が開催されました。同討議では、テロへの資金供給源となっている可能性の高い国際組織犯罪やマネー・ローンダリング等への対応を含め幅広く、関連する既存の国際法的枠組みを活用するなどして、各国及び関連する国際機関が協力してテロ防止に取り組むこと等を求める安保理決議第2195号が、全会一致で採択されました。
- (5)2015年2月12日、国連安保理は、ロシアのイニシアティブの下、我が国を含む55か国の共同提案に基づき、全ての加盟国に対して、ISILによる石油や文化財の密売等による資金の獲得を防止すること等を内容とする決議第2199号を全会一致で採択しました。
- (6)2015年12月17日、国連安保理は、米国、ロシア、日本等約50か国の共同提案に基づき、全ての加盟国に対し、特にISILのテロ資金(石油・文化財・身代金等)対策に主眼を置いた取り組みの強化を求める決議第2253号を全会一致で採択しました。
- (7)2016年9月22日、国連安保理は、英国、米国、日本等37か国の共同提案に基づき、全ての加盟国に対し、民間航空に対するテロの脅威に対処するための取組の強化を求める決議第2309号を全会一致で採択しました。
- (8)2016年10月14日、我が国を含む72か国は、共同声明「暴力的過激主義防止に関する国連のグローバル・リーダーシップのための原則を発表しました。
- (9)2016年12月12日、国連安保理は、スペイン、米国、英国、日本等51か国の共同提案に基づき、全ての加盟国に対し、テロとの闘いにおける司法協力の強化を求める決議第2322号を全会一致で採択しました。
- (10)2017年2月13日、国連安保理は、ウクライナ、米国、英国、仏、独、伊、加、スウェーデン、日本等46か国の共同提案に基づき、全ての加盟国に対し、テロ攻撃からの重要インフラ施設の防護に関する決議第2341号を全会一致で採択しました。
- (11)2018年12月21日、国連安保理は、米国、英国、チュニジア、トルコ、スウェーデン、日本等37か国の共同提案に基づき、全ての加盟国に対し、外国人テロ戦闘員の母国への帰還及び第三国への移転に係る問題への対応に関する決議第2396号を全会一致で採択しました。
- (12)2019年3月、国連安保理は、仏のイニシアティブの下、我が国を含む68か国の共同提案に基づき、テロ資金供与の技術的内容に焦点を当てた初めての安保理決議第2462号を全会一致で採択しました。
2 テロ対策に関するG8/G7サミットの宣言
2001年9月19日、G8首脳共同声明が発出され、米国同時多発テロを強く非難するとともにテロ防止関連条約の批准を強く要請し、G8の外務、財務、司法その他の閣僚に対してテロ対策強化のための具体策を策定するよう指示しました。
その後、サミット各種プロセスでフォローアップがなされ、2002年6月12~13日のG8外相会合では、専門家グループが取りまとめた「テロ対策に関するG8勧告(全文・骨子)」への支持を表明し、また、「テロ対策に関する進捗状況報告」が発出されました。同月26~27日に開催されたG8首脳会議(カナナスキス・サミット)においては、「交通保安に関するG8協調行動」、「大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG8グローバル・パートナーシップ」が採択されました。
また、2003年6月1~3日に開催されたエビアン・サミットにおいても、開発途上国に対するテロ対策支援の調整等を目的とする「テロ対策行動グループ(CTAG)」の設立等を盛り込んだ「テロと闘うための国際的な政治的意思及び能力の向上:G8行動計画(全文・骨子)」や「交通保安及び携帯式地対空ミサイル(MANPADS)の管理強化:G8行動計画(全文・骨子)」を採択しました。我が国は、米国と共にこれらのテロ対策関連文書の採択に主導的な役割を果たしています。
2004年6月8~10日に開催されたシーアイランド・サミットにおいては、「安全かつ容易な海外渡航イニシアティブ(Secure and Facilitated International Travel Initiative(SAFTI))(全文)」が採択され、交通保安分野におけるテロ対策が進められています。
2005年7月6日~8日に開催されたグレンイーグルズサミットにおいては、「テロ対策に関するG8首脳声明」が採択されました。
2006年7月15日~17日に開催されたサンクトペテルブルグ・サミットにおいては、直前の7月11日にインドにおいてテロ事件が発生したことを受け、「G8、ブラジル、中国、インド、メキシコ及び南アフリカの首脳、独立国家共同体国家元首会議議長、アフリカ連合議長並びに国際機関の長による声明」が発表されると共に、国連のテロ対策等の強化、重要エネルギー・インフラ設備に対するテロ等への対処に関する協力の強化、官民協力の重要性やテロリストの勧誘等に対処するための戦略の策定等を内容とする「テロ対策に関するG8首脳宣言」、及びテロ対策関連で国連に焦点を当てた初めてのG8首脳文書である「国連のテロ対策プログラムの強化に関するG8首脳声明」が採択されました。
2007年6月6日~8日に開催されたハイリゲンダム・サミットにおいては、IT技術、重要エネルギー施設、交通保安関連対策をはじめ、テロリストによる過激化の扇動・勧誘への対処、現金の密輸への対処及びアフガニスタン・パキスタン国境地帯への経済支援等を盛り込んだ「テロ対策に関するG8首脳声明-グローバル化時代の安全保障」並びに「国連のテロ対策の取組に対するG8の支援に関する報告」が採択されました。
2008年7月7日~9日に開催された北海道洞爺湖サミットにおいては、国連との連携強化、キャパシティ・ビルディング支援の重要性、多様化するテロへの対応をはじめ、過激化対策やテロ資金対策、アフガニスタン・パキスタン国境への取組強化等を盛り込んだ「テロ対策に関するG8首脳声明」及び「G8国際テロ及び国際組織犯罪の専門家からG8首脳への報告書(PDF)」が採択されました。
2009年7月8日~10日に開催されたラクイラ・サミットにおいては、情報共有とテロ対策能力向上支援の分野における協力の重要性、テロリストの移動や資金調達の阻止についての国際的な制裁の実施の強化、テロリズムと国際組織犯罪の結び付きへの懸念等を盛り込んだ「テロ対策に関するG8首脳宣言(PDF)」が採択されました。
2010年6月25日~26日に開催されたムスコカ・サミットにおいては、交通保安、国境保安、核及び放射能テロの防止、テロ資金対策、暴力的過激主義対策の強化やアフガニスタン、パキスタン等へのテロ対処能力向上支援の強化等を盛り込んだ「テロ対策に関するG8首脳声明(PDF)」が採択されました。
2011年5月25日~26日に開催されたドーヴィル・サミットにおいては、新たに立ち上げられたグローバル・テロ対策フォーラムにおける国際的連携への期待、テロ対策において国連が引き続き果たすべき中心的な役割の強調等を盛り込んだ首脳宣言「自由及び民主主義のための新たなコミットメント」が採択されました。
2012年5月18日~19日に開催されたキャンプ・デービッド・サミットにおいては、サヘル地域における身代金目的の誘拐を含むテロ資金対策及びテロ組織や犯罪ネットワークへの支援根絶に対する努力の強化、「一匹狼」テロや暴力的過激主義を含むテロ及び犯罪の脅威への対処等を盛り込んだ首脳宣言「キャンプ・デービッド宣言」が採択されました。
2013年6月17日~18日に開催されたロック・アーン・サミットにおいては、テロのリスクを減少させるため協働すること、特に状況が深刻な北アフリカ諸国に関し、協調した対処が必要としつつ、5つの行動優先分野を特定し((1)治安と法の支配の能力構築、(2)不法取引犯罪への対処及び国境保安の強化、(3)暴力的過激主義への対抗、(4)多国籍企業の脆弱性の低減、(5)不安定化のより広い要因への対処)、関係諸国と緊密に連携しつつ取組を進めること等を盛り込んだ首脳コミュニケが採択されました。
2014年6月4日~5日に開催されたブリュッセル・サミットにおいては、ボコ・ハラムを始めとするテロ行為への非難と、テロを抑止し対処するため、協力するとの決意を再確認すること等を盛り込んだ首脳宣言が採択されました。
2015年6月7日~8日に開催されたエルマウ・サミットにおいては、外国人テロ戦闘員の現象を踏まえ、テロと暴力的過激主義に対する闘いは、全ての国際社会にとって引き続き優先課題であること、ISILの壊滅とそのイデオロギーの拡散と闘う旨のコミットメントの再確認、イラク、チュニジア及びナイジェリアを含めた、野蛮なテロ行為に苦しむ全ての国や地域と共に結束すること等を盛り込んだ首脳宣言が採択されました。
2016年5月26日~27日に開催された伊勢志摩サミットにおいては、テロに対処する上で、水際対策のような短期的な取組に加え、根本原因にある暴力的過激主義に対抗するための寛容の精神や対話の促進といった中長期的な取組も重要であり、G7として、各国の強みを活かした、相互補完的、かつ相乗効果を生む形での国際的な取組を主導していく必要性につき一致。テロ対策に関する国際的な取組をG7で主導すべく「テロ・暴力的過激主義対策に関するG7行動計画(PDF)」が発出されました。
2017年5月26日~27日に開催されたタオルミーナ・サミットにおいては、国際協力、インターネット上のテロ対策、テロ資金源になり得る組織犯罪対策等の重要性を確認するとともに、伊勢志摩サミットで発出した「テロ・暴力的過激主義対策に関するG7行動計画」の完全な実施に引き続きコミットした上で、議論をまとめた独立声明(「テロ及び暴力的過激主義との闘いに関するG7タオルミーナ声明(PDF)」)が採択されました。
2018年6月8日~9日に開催されたシャルルボワ・サミットにおいては、複雑化する安全保障上の脅威をとらまえ、「テロと闘うためのグローバル・インターネット・フォーラム(GIFCT)」等のパートナーと協力することにより、勧誘、訓練、プロパガンダ及び資金供与を含むテロ目的のための手段としてのインターネットの使用に対処することへの決意等を盛り込んだ首脳宣言が採択されました。
2019年8月24日~26日に開催されたビアリッツ・サミットにおいては、違法なオンライン・コンテンツ及び活動への対処を念頭として、国際的なパートナーとの協働、特に、「クライストチャーチ・コール」及び後述の2019年6月に採択された「G20大阪首脳声明」の継続を呼びかけた「開かれた自由で安全なデジタル化による変革のためのビアリッツ戦略」が採択されました。
2021年6月11日~13日に開催されたコーンウォール・サミットにおいては、暴力的過激主義者及びテロリストによるインターネットの使用の防止及び対抗に関する作業を継続することをG7内務担当大臣に対して更に奨励することを盛り込んだ首脳コミュニケが採択されました。
2022年6月28日~30日に開催されたエルマウ・サミットにおいては、開かれた多元的な社会において、市民全てに安全を提供すべく、あらゆる形態の暴力的過激主義及びテロと闘うために協力を強化すること等を盛り込んだ首脳コミュニケが採択されました。
2023年5月19日~21日に開催された広島サミットにおいては、オンライン及びオフライン上のあらゆる形態のテロリズム及び暴力的過激主義に対して、全ての関係者と協力して、統一的、協調的、包摂的で、透明性のある、人権に基づきかつジェンダーに配慮した方法で取り組むという強いコミットメントを表明し、また、テロ目的のための新技術及び新興技術の悪用に対抗し、グローバルな協力及びデジタル対応能力の強化のための最大限の努力を継続すること、テロ及び暴力的過激主義コンテンツのオンライン上での拡散の問題への取組を強化すること等を盛り込んだ首脳コミュニケが採択されました。
3 G20サミットの宣言
2017年7月7日~8日に開催されたG20ハンブルク・サミットにおいては、国際的なコミットメントの実施と協力強化、テロ資金との闘い、及びテロにつながる過激化やテロ目的のインターネット使用への対策について盛り込んだ「テロ対策に関するハンブルクG20首脳声明」が採択されました。
2018年11月30日~12月1日に開催されたG20ブエノスアイレス・サミットにおいては、テロ資金供与や拡散金融、及びマネー・ローンダリングとの闘いにおける我々の取組を強化し、デジタル産業に対し、インターネットやソーシャル・メディアのテロ目的の利用との闘いにおいて共に取り組むよう促すこと等を盛り込んだ首脳宣言が採択されました。
2019年6月28日~29日に開催されたG20大阪サミットにおいては、開かれた、自由で安全なインターネットの実現にコミットしつつ、社会に害を与えるテロリスト及び暴力的過激主義コンテンツが、テロリスト等の自らのプラットフォームを使って拡散することを防止するために取り組むことを強く促進する「テロ及びテロに通じる暴力的過激主義(VECT)によるインターネット悪用の防止に関するG20大阪首脳声明」が採択されました。
4 グローバル・テロ対策フォーラム(GCTF: Global Counterterrorism Forum)
グローバル・テロ対策フォーラム(GCTF)は、米国の提唱により2011年に設立されたテロ対策に係る多国間の枠組みであり、(1)実務者間の経験・知見・ベストプラクティスの共有、(2)法の支配、国境管理、暴力的過激主義対策等の分野におけるキャパシティ・ビルディングの実施等を目的に、テロ対策の政策決定者・実務者が一堂に会して、戦略的・実践的議論を行う貴重な場として機能しています。2024年2月時点でG7を含む31か国及びEUがメンバーとなっており、これまで、各種会合・ワークショップにおいて、政治的意思の形成や経験・知見・ベストプラクティスの共有がなされてきました。また、こうした目的を具体化すべく、GCTFの派生団体として、2012年にヘダヤ・センター(暴力的過激主義対策センタ-)、2013年にGCERF(コミュニティの働きかけ及び強靱性に関するグローバル基金)、2014年にIIJ(国際司法・法の支配研究所)が発足しています。
我が国は、国際テロ対策の強化の一環として、GCTFの関連会合や議論に積極的に参加してきています。GCTFの派生団体であるGCERFやヘダヤ・センタ-とは、プロジェクト・レベルでの協力を進めてきており、IIJとは2024年2月に、当省と国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)と三者共催で、「南アジア及び東南アジア地域における法の支配ワークショップ」を東京で開催しました。同ワークショップには、アジア5か国(タイ、モルディブ、マレーシア、インドネシア、フィリピン)より警察官や検察官等12名が参加し、テロ事案の捜査や訴追、処遇等における適正な法執行プロセスの確保や、法の支配の定着が重要であること等を確認しました。