G7/G8

平成27年6月8日

 我々G7 首脳は,年一回のサミットのため,2015 年6 月7日及び8 日にエルマウで会合を開催した。我々は,共有された価値と理念に導かれ,現代の複雑で国際的な経済的及び政治的諸課題に対処するために緊密に協働することを決意する。我々は,自由及び民主主義の価値,これらの普遍性,法の支配及び人権の尊重,並びに平和及び安全を促進することにコミットしている。特に世界の多数の危機に鑑み,我々は,G7諸国として,自由,主権及び領土の一体性を堅持するとの我々のコミットメントにおいて一致団結する。

 G7は,地球の将来を形成する上で特別な責任を感じている。2015年は,国際協力及び持続可能な開発課題にとって,節目となる年である。パリでの気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)は,世界の気候の保護にとって極めて重要であり,ニューヨークでの国連サミットは,今後にわたる,普遍的で,地球規模で,持続可能な開発アジェンダを設定し,アディスアベバでの第3回開発資金国際会議は,ポスト2015年開発アジェンダの実施を支持する。我々は,野心的な結果のための重要な推進力を提供することを望む。「先を見越して考え,共に行動する。」,これが我々の指針である。

 我々は,本日,主要な世界的課題に対処する役割を果たすために,また,世界で最も喫緊の諸課題に対応するために,保健,女性の能力強化及び気候保護に関する具体的な措置について合意した。さらに,貿易を成長の主要な原動力として促進することに加えてこれらの具体的な措置を実施することは,強固で持続可能かつ均衡ある成長及び雇用創出という我々の重要な目標を達成することを助ける。我々は,他の国々に対して,このアジェンダの追求に参加するよう要請する。

世界経済

世界経済の状況

 我々の前回の会合以降,世界経済の回復は進展した。いくつかの主要先進国において成長は強まっており,見通しは改善してきた。エネルギー価格の下落は,ほとんどのG7諸国経済に対して下支え効果がある。しかし,多くのG7諸国の経済活動は依然としてその潜在成長力を下回っており,強固で持続可能かつ均衡ある成長という我々の目標を達成するため更なる取組が必要である。G7全体としての失業率は,近年大幅に低下しているものの,依然として高すぎる水準にある。また,長期化した低インフレ,弱い投資及び需要,高水準の公的及び民間の債務,内外の不均衡の継続,地政学的緊張並びに金融市場の変動などの課題も残っている。

 我々は,これらの課題に対処すること,及び全ての人々のための成長を達成するため引き続き取り組むことにコミットする。より強固でより包摂的な成長のため,我々は,我々の経済の脆弱性に立ち向かう必要がある。G7諸国が今後長年にわたり技術の先端領域で活動することを確保するため,我々は,教育及びイノベーションの促進,知的財産権の保護,特に中小企業のための,ビジネスに配慮した環境の整備を通じた民間投資への支援,適切な水準の公共投資の確保,民間部門と協力した効果的な資金の動員によりインフラ不足に対処するための質の高いインフラ投資の促進並びに野心的な構造改革の更なる実施による生産性の向上により成長を促進する。

 我々は,これらの分野における過去の改革のコミットメントを果たし,それによって信認の向上をもたらし持続可能な成長を引き上げることに合意する。我々は,引き続き,債務残高対GDP比を持続可能な道筋に乗せつつ,経済成長と雇用創出を支えるために,短期的な経済状況を勘案して機動的に財政戦略を実施する。我々は,中央銀行のマンデートの範囲内で,金融政策が物価の安定を維持し,経済回復を下支えするべきであることに合意する。我々は,既存のG7の為替相場のコミットメントを再確認する。

 健全な経済基盤は全ての人々のより良い生活の礎である。長期的に世界を持続可能な成長の道筋に乗せるためには,特に,気候の保護,健康の促進及び社会の全ての構成員の平等な参加が必要になる。したがって,G7はこれらの課題を我々の成長アジェンダの中心に置くことにコミットする。

女性の起業家精神

 女性の起業家精神はイノベーション,成長及び雇用の主要な推進力である。しかし,G7諸国及び世界中で,多くの場合,事業を開始し発展させる際に女性が直面する追加的な障壁のため,自ら事業を運営する女性は男性に比べて非常に少ない。我々は,附属書に規定された女性の起業家精神を促進するための共通の原則について合意し,他の関心国に対し,この我々の努力に参加することを招請する。特に,我々は,女児と女性に起業家となる可能性を認識させる。我々は,例えば,金融,市場,技能,リーダーシップの機会及びネットワークへの女性起業家のアクセスを促進することを通じ,女性起業家の個別のニーズに対応する。我々は, OECDに対し,女性起業家の促進について進展を監視するよう要請する。我々は議長国が2015年9月16日及び17日に開催する女性との対話のためのG7フォーラムを歓迎する。我々はまた,ジェンダー平等並びに全ての女性及び女児の完全な参加及び能力強化を促進するための我々の取組を継続するとの我々のコミットメントを再確認する。我々は,2016年G7議長の日本が主催する「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム(WAW!)」を歓迎する。

金融市場の規制

 健全な国際金融システムは成長を持続可能な軌道に乗せるための鍵である。グローバルな金融危機の根本的な原因に対処するため,中核的な改革が合意されてきた。特に銀行セクターの健全性の強化を通じて,より堅固でより強じんな金融システムの構築に関して重要な進捗があった。しかし,その作業は未だ完了しておらず,規制改革の完遂が引き続き鍵となる。更に進んで,我々は次の優先事項を特定した。合意された改革の完全,整合的かつ迅速な実施は,開かれた強じんなグローバル金融システムを確保するために不可欠である。我々は,グローバルなシステム上重要な金融機関の破綻から生じる損失を納税者が被ることを防ぐため,引き続きグローバルレベルで「大き過ぎて潰せない」問題に対処する。特に,我々は,グローバルなシステム上重要な銀行の総損失吸収力について提案された共通の国際基準を,厳格かつ包括的な影響度調査の完了の後,11月までに最終化することに引き続きコミットする。

 我々はまた,もたらされるシステミックリスクと適切に見合うように,シャドーバンキングセクターの規制と監視を強化することに引き続きコミットする。合意されたG20シャドーバンキングロードマップの適時かつ包括的な実施が不可欠である。加えて,我々は,実体経済を支える上での市場型金融の役割を確実に果たせるよう取り組む一方,市場型金融から新たに生じつつあるあらゆるシステミックリスクを監視し対処する。システミックリスクを低減させ透明性を向上させることを助けるために,我々はまた,金融規制分野,特に,速やかな実施が求められている破綻処理及びデリバティブ市場改革の分野において,規制がより実効的となるようクロスボーダーの協力を強化することの重要性を強調する。我々は,国・地域が,サンクトペテルブルク宣言にのっとり,正当化されるときには,相互の規制に委ねることを奨励する。最後に,我々はまた,生じ得るあらゆる新たなシステミックリスクに対処するため,引き続き金融市場のボラティリティを監視する。

租税

 我々は,全ての人々にとっての公正さと繁栄のために不可欠な,公正かつ現代的な国際課税システムを達成することにコミットしている。したがって,我々は,G20/OECD税源浸食・利益移転(BEPS)行動計画に関する具体的かつ実行可能な勧告を本年末までに取りまとめるという我々のコミットメントを再確認する。更に進んで,同行動計画の効果的な実施を確保することが極めて重要であり,我々は,G20及びOECDに対して,この目的を達成するための対象を特定したモニタリングプロセスを構築することを奨励する。我々は,国境を越える税のルーリングに関する自動的情報交換を強く促進することにコミットする。さらに,我々は,所要の法制手続を完了することを条件として,2017年又は2018年末までに,自動的情報交換のための新しい単一の国際基準を全ての金融センターを含めて迅速に実施することに期待する。我々はまた,要請に基づく情報交換のための国際基準を未実施又は適切に実施していない国・地域に対し,迅速な実施を要請する。

 我々は,脱税,汚職及び不正な資金の流れを生むその他の活動と闘う上での実質的所有者の透明性の重要性を認識し,自国の行動計画の実施に関する最新情報を提供することにコミットする。我々は,国際課税に関する議題について開発途上国と協働するという我々のコミットメントを再確認し,引き続き開発途上国の税務行政能力の構築を支援する。

 さらに,我々は,二重課税のリスクが国境を越えた貿易及び投資の障壁とならないことを確保するため, 拘束的強制的仲裁を創設するというコミットメントを含め,租税に関する既存の国際的な情報ネットワーク及び国境を越えた協力を強化するよう努力する。我々は,BEPSプロジェクトの一環である拘束的仲裁に関してなされた取組を支持し,他国に対し,我々と共にこの重要な取組に参加することを奨励する。

貿易

 貿易と投資は,成長,雇用及び持続可能な開発の主要な原動力である。貿易に対する障壁の削減により世界経済の成長を促進することが引き続き不可欠であり,我々は,市場を開放し続け,スタンドスティルやロールバックによることを含め,あらゆる形態の保護主義と闘うとの我々のコミットメントを再確認する。この目的のため,我々は,G20のスタンドスティルのコミットメントの更なる延長を支持し,他国にも同じ行動をとるよう要請する。同時に,我々は,貿易障壁を削減すること,また,経済自由化のための一方的措置をとることにより我々の競争力を向上させることに引き続きコミットする。我々は,投資を保護・促進し,全ての投資家にとって公平な競争条件を維持する。公的輸出金融に係る国際基準は,世界貿易におけるゆがみを回避又は縮小するために極めて重要であり,我々は,公的輸出金融の基準に関する国際作業部会に対する我々の支持を強調する。

 我々は,WTOバリ合意の完全かつ迅速な実施への貢献によることを含め,ルールに基づく多角的貿易体制を強化することにコミットする。2015年はWTO貿易円滑化協定(TFA)の発効に特に焦点を当てるべきである。そのため,G7各国は本年12月のナイロビにおける第10回WTO閣僚会議(MC10)までに国内の批准手続を完了させるためにあらゆる努力を行うことにコミットする。我々は,また,ドーハ・ラウンドの迅速な妥結及びバランスのとれた成果を確保するWTOポスト・バリ作業計画の7月までの早期の合意を求め,このためのWTOにおける努力を完全に支持する。TFAの履行及びポスト・バリ作業計画の合意の双方が,アフリカで開催される初めてのWTO閣僚会議となるMC10の成功の基礎を成す。我々は,TFAにおいて合意された措置の開発途上国による履行を引き続き支援する用意がある。我々は,WTOの交渉の柱を再活性化しWTOのコンセンサスの枠組みにおいて柔軟性が達成可能であることを示した2013年のWTO閣僚会議の成功を基礎としなければならない。我々は,WTOからのインプットに基づく,多角的貿易体制をより良く機能させる方途に関するG20における議論に期待する。

 多角的貿易体制の強化が引き続き優先事項である一方,我々は,野心的で高水準の新しい二国間及び地域的自由貿易協定(FTAs)を締結するために行われている取組についても歓迎し,新サービス貿易協定(TiSA),情報技術協定(ITA)拡大及び環境物品に関する協定(EGA)を含む複数国間交渉の早期の進展に期待する。我々はITA拡大を遅滞なく妥結するよう取り組む。これらの協定は多角的システムを支えることができ,世界貿易の強化並びに成長及び雇用の促進に貢献し,将来の多国間協定の土台としての役割を果たす。この目的のため,FTAは透明,高水準で包括的であるとともに,WTOの枠組みと整合的でこれを支えるものである必要がある。

 我々は,環太平洋パートナーシップ(TPP),環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)及び日EU経済連携協定(EPA)/FTAを含む,野心的,包括的で互恵的な合意の達成を目指して現在行われている主要な貿易交渉の進展を歓迎する。我々は,可能な限り早期にTPP交渉を妥結し,また,望むらくは本年末までに日EU・EPA/FTAに大筋合意するため,あらゆる努力を傾注する。我々は,可能な限り早期に,望むらくは本年末までに合意の概要に係る理解を確定することを目標として,TTIPの全ての課題に関する取組を直ちに加速し,交渉の全ての要素における進展を確保する。我々は,カナダとEUの間の包括的経済貿易協定(CETA)の交渉妥結を歓迎し,その速やかな発効に期待する。我々は,我々の二国間及び地域的FTAが世界経済を支えることを確保するため取り組む。

責任あるサプライ・チェーン

 安全でなく劣悪な労働条件は重大な社会的・経済的損失につながり,環境上の損害に関連する。グローバリゼーションの過程における我々の重要な役割に鑑み,G7諸国には,世界的なサプライ・チェーンにおいて労働者の権利,一定水準の労働条件及び環境保護を促進する重要な役割がある。我々は,国際的に認識された労働,社会及び環境上の基準,原則及びコミットメント(特に国連,OECD,ILO及び適用可能な環境条約)が世界的なサプライ・チェーンにおいてより良く適用されるために努力する。我々はこの目的のため,例えばG20等の他国と連携する。

 我々は,国連ビジネスと人権に関する指導原則を強く支持し,実質的な国別行動計画を策定する努力を歓迎する。我々は,国連の指導原則に沿って,民間部門が人権に関するデュー・ディリジェンスを履行することを要請する。我々は,透明性の向上,リスクの特定と予防の促進及び苦情処理メカニズムの強化によってより良い労働条件を促進するために行動する。我々は,持続可能なサプライ・チェーンを促進し,ベスト・プラクティスを奨励する,政府及び企業の共同責任を認識する。

 我々は,サプライ・チェーンの透明性及び説明責任を向上させるため,我々の国で活動し又はそこに本拠を置く企業に対し,例えば自発的なデュー・ディリジェンス計画又はガイドなど,そのサプライ・チェーンに関するデュー・ディリジェンスの手続を実施するよう奨励する。我々は,繊維及び既製衣類部門における産業全体のデュー・ディリジェンス基準を広めるため,民間部門によるインプットを含む国際的な努力を歓迎する。我々は,安全で持続可能なサプライ・チェーンを促進するため,デュー・ディリジェンス及び責任あるサプライ・チェーン管理について中小企業が共通理解を形成することを助けるための我々の支援を強化する。

 我々は,我々の国の消費者及び政府調達主体が社会的及び環境上の表示の有効性及び信頼性に関する情報を比較できるよう支援するための適切で偏りのない手段の策定を促進するイニシアティブを歓迎する。既に一部の諸国で利用可能な関連するアプリケーションの使用はその一例である。さらに,我々は,ラナ・プラザの事後対応から学んだ良き慣行を更に進め,繊維及び既製衣類部門を含む,我々の国及びパートナー諸国の複数のステークホルダー間のイニシアティブを強化する。我々は引き続き関連する世界的なイニシアティブを支援する。さらに,我々は,我々の二国間開発協力をより良く協調させ,パートナー諸国が責任ある世界的なサプライ・チェーンを利用して持続可能な経済発展を促進するよう支援する。

 我々は,国際労働機関(ILO)と協力しつつ設立される「ビジョン・ゼロ・ファンド」を支持する。同ファンドは,公的枠組みを強化し持続可能な企業慣行を構築することによって職場に関連する死亡及び重大な傷害を予防し減少させるという目的があり,既存のILOのプロジェクトの価値をも高める。同ファンドへのアクセスは条件付きであり,ファンドは,予防措置並びに労働,社会,環境及び安全上の基準の実施にコミットする受益者を支援する。我々は,本件のフォローアップを行うことに合意し,同ファンドがG20諸国に拡大することを期待する。

 我々は,OECD多国籍企業行動指針のための各国連絡窓口(NCPs)を含む,救済へのアクセスを提供するメカニズムを強化することにもコミットする。そのために,G7はOECDに対してNCPsの機能及びパフォーマンスに関するピア・レビュー及びピア・ラーニングを促進するよう奨励する。我々は,我々自身の各国連絡窓口が効果的であることを確保し,自ら模範を示す。

 我々は,2013年の悲劇的な事故の犠牲者の補償のためのラナ・プラザ・ドナー・トラスト・ファンドの資金ギャップが埋められたことを歓迎する。

外交政策

共通の価値及び原則に関する行動

 我々G7は,自由,平和及び領土の一体性と,国際法及び人権の尊重の重要性を強調する。我々は,全ての国の主権平等を堅持するためのあらゆる努力とともに,領土の一体性及び政治的独立の尊重を強く支持する。我々は,国際法の尊重及び世界の安全保障を損なうことを示す現在の諸紛争を懸念する。

 我々の共通の価値及び原則に基づき,我々は以下のとおりコミットする。

ウクライナにおける紛争解決の追求

 我々は,ロシア連邦によるクリミア半島の違法な併合への非難を改めて表明し,同併合の不承認政策を再確認する。

 我々は,ウクライナ東部における紛争の外交的解決を見いだす努力,特にノルマンディー・フォーマット及び三者コンタクト・グループの枠組みの下でのものへの完全なる支持を改めて表明する。我々は,平和的解決を見いだすことに関する欧州安全保障協力機構(OSCE)の主要な役割を歓迎する。我々は,全ての当事者に対し,設立された三者コンタクト・グループ及び4つの作業部会を通じて,2015年2月12日にミンスクにおいて署名された実施のための包括措置を含むミンスク合意を完全に履行するよう要請する。我々は,コンタクト・ライン沿いにおける最近の戦闘の増加を懸念する。我々は,全ての当事者に対し,停戦及び重火器の撤去の完全な尊重及び履行を改めて呼びかける。我々は,制裁の期間はロシアによるミンスク合意の完全な履行及びウクライナの主権の尊重に明確に関連されるべきことを想起する。制裁は,ロシアがこれらのコミットメントを履行したときに後退され得る。しかし,我々はまた,ロシアの行動に応じ必要ならば,ロシアのコストを増大させるために,更なる制限的措置をとる用意がある。我々は,ロシアが,分離派武装勢力への国境を越えた支援を停止するとともに,ミンスク合意のコミットメントを完全に履行させるよう分離派武装勢力に対し大きな影響力を行使することを期待する。

 我々は,ウクライナ政府が包括的で構造的な改革を実施するためにとっている措置を賞賛及び支持し,ウクライナの指導部がIMF及びEUのコミットメントに沿って必要な基本的変革を断固として継続することを要請する。我々は,ウクライナが変革を前進させるに当たり,資金的及び技術的な援助を提供するために,国際金融機関及び他のパートナーと協働することに関するコミットメントを再確認する。我々は,キエフのG7大使に対し,ウクライナ・サポート・グループを設立するよう求める。その任務は,協調された助言及び支援を通じて,ウクライナの経済改革プロセスを前進させることにある。

高水準の原子力安全の達成

 世界中で高水準の原子力安全を達成及び維持することは,我々にとって引き続き主要な優先事項である。我々は,G7原子力安全セキュリティ・グループの報告書を歓迎する。我々は,チェルノブイリ原子力発電所のサイトを安定させ,かつ,環境面においても安全にするために,チェルノブイリ・シェルター事業を成功裡に完了させることに引き続きコミットする。

ルールを基礎とした海洋秩序の維持及び海洋安全保障の達成

 我々は,とりわけ海洋法に関する国際連合条約に反映された国際法の諸原則に基づく,ルールを基礎とした海洋における秩序を維持することにコミットする。我々は,東シナ海及び南シナ海での緊張を懸念している。我々は,平和的紛争解決,及び世界の海洋の自由で阻害されない適法な利用の重要性を強調する。我々は,威嚇,強制又は武力の行使,及び,大規模な埋立てを含む,現状の変更を試みるいかなる一方的行動にも強く反対する。我々は,リューベックにおいてG7外相が発出した海洋安全保障に関する宣言を支持する。

多数国間条約の制度の強化/武器貿易条約

 我々は,多数国間条約及びコミットメントの仕組みを強化する重要性を強調し,この点に関し,2014年12月24日に発効した武器貿易条約の重要性を強調する。

拡散の防止及び拡散への対抗

 我々は,大量破壊兵器の拡散を防ぎ,これに対抗することに貢献する全ての関連条約,特に核兵器不拡散条約(NPT),化学兵器禁止条約及び生物・毒素兵器禁止条約の普遍化に引き続きコミットする。我々は,第9回NPT運用検討会議において,多くの実質的な問題について合意に至っていたにもかかわらず,最終文書に関するコンセンサスに達することができなかったことを極めて遺憾に思う。G7は,同条約の3つの柱にわたり,2010年行動計画の完全な実施に改めてコミットする。NPTは,引き続き核不拡散体制の礎石であり,原子力の平和的利用に加え,核軍縮・不拡散の追求にとって不可欠な基礎である。

イラン

 我々は,4月2日に,EUによって促進され,EU3+3とイランとの間で到達した,包括的共同作業計画の主要な要素に関する政治的了解を歓迎する。我々は,イランの核計画が専ら平和的な性質のものであることを確保し,イランが核兵器を取得しないことを確保する包括的解決策を6月30日までに実現するための,EU3+3とイランによる継続的な努力を支持する。我々は,イランに対し,イランの核活動の検証に関して国際原子力機関(IAEA)と完全に協力し,軍事的側面の可能性に関連する問題を含む全ての未解決の問題に対処するよう求める。我々は,イランに対し,自国の市民の人権を尊重し,地域の安定に建設的に貢献するよう要請する。

北朝鮮

 我々は,北朝鮮による核及び弾道ミサイル開発の継続,並びに甚だしい人権侵害及び他国の国民の拉致を強く非難する。

外交的解決への支援

 我々は,脆弱な国及び地域における劇的な政治・治安・人道状況,並びにこれらの紛争に由来する周辺国及びその他の国々への危険を深く懸念する。我々は,紛争におけるあらゆる形態の性的暴力を最も強い表現で非難し,国際の平和と安全における女性の役割を拡大することにコミットする。持続可能な解決は,効果的な統治を再構築し,持続可能な平和及び安定を達成するために,包摂的である必要がある。

 我々は,シリア,リビア及びイエメンの平和と安定のための恒久的解決策を探るための,現在行われている国連主導のプロセスを支持する。ジュネーブ・コミュニケの完全な実施に基づく国連主導の真の移行は,シリアにおいて平和をもたらしテロを壊滅させるための唯一の方法である。

リビア

 リビアにおいて,我々は,テロの脅威の増大,武器の拡散,移民の密出入国,人道上の苦しみ及び国の資産の枯渇について深く懸念する。政治的な合意に至らない限り,現在の不安定性は,リビアの人々自身に痛切に辛く感じ取られている危機を長引かせる恐れがある。統治の及ばない場所への拡大をテロ集団が試み,犯罪のネットワークがリビア経由の正規でない移住を助長することにより状況を利用する中で,リビアの人々は既に苦しんでいる。

 闘いの時は過ぎ,大胆な政治的決定を行う時が来た。我々は,リビアの全ての当事者に対し,この機会を捉え,武器を置き,革命を生み出した願望を民主主義国家の政治的な基盤に変革するために協働するよう要請する。政治的合意の時は今であり,我々は,対話プロセスを支持し彼ら自身の社会に平和を追求することにより指導力を示してきたリビアの人々を称賛する。

 我々は,ベルナルディノ・レオン国連事務総長特使主導の交渉における全ての当事者による進展を歓迎する。リビアの指導者達は,今,これらの交渉を妥結し,リビアの人々に説明責任を果たす国民統一政府を形成する機会を捉えなければならない。リビアの人々及び彼らに影響力を有する人々は,合意を達成し実現するため,この決定的な時期に,必要な力強さと指導力を示さなければならない。

 合意に至った際には,我々は,包摂的で代表権のある政府が治安部隊を含む効果的な国家機構を構築し,行政事務を回復し,インフラを拡大し,経済を強化・再構築・多様化し,テロリスト及び犯罪のネットワークに関わる者を国から追い出そうとする中で,政府に重要な支援を提供する用意がある。

イスラエル・パレスチナ紛争

 イスラエル・パレスチナ紛争について,我々は,当事者に対し,カルテットを含む国際社会の積極的な支援を得て,平和的かつ安全な二国家共存に基づき,交渉による解決に取り組むよう要請する。

移民の密入国との闘い/難民危機の原因への対処

 我々は,紛争及び人道危機の積み重ね,劣悪な経済面及び環境面の状況,並びに抑圧的体制によって引き起こされた,増加しかつ先例のない世界的な難民,国内避難民及び移民の流動に著しく悩んでいる。地中海及びベンガル湾/アンダマン海における最近の悲劇は,この現象,特に人身取引及び移民の密入国の犯罪に効果的に対処する緊急の必要性を示している。我々は,移民の密入国の防止及び取り締まりを行い,並びに,国内の及び国境を越えた人身取引を発見し,抑止し,及び阻止することに関する我々のコミットメントを再確認する。我々は全ての国に対し,ここまで悲劇的な結果を多数の人々にもたらしているこれらの危機の原因に取り組み,難民及び移民を受け入れている中所得国の独自の発展のニーズに対処するよう要請する。

テロ及びその資金調達との闘い

 テロの惨禍は,数え切れない無辜の被害者に影響を与えてきた。テロの惨禍は,寛容,宗教的自由を含めた普遍的な人権及び基本的自由の享受を否定し,文化遺産を破壊し,並びに数百万の人々を故郷から追い立てるものである。外国人テロ戦闘員の現象を踏まえ,テロと暴力的過激主義に対する闘いは,全ての国際社会にとって引き続き優先課題でなければならない。この文脈において,我々は,ISIL/Da’eshに対抗するグローバル連合の継続的な努力を歓迎する。我々は,このテロ組織を壊滅させ,その憎むべきイデオロギーの拡散と闘うとの我々のコミットメントを再確認する。我々は,その首脳達がエルマウ城における議論に参加したイラク,チュニジア及びナイジェリアを含めて,野蛮なテロ行為に苦しむ全ての国や地域と共に結束する。特に,良い統治及び人権の尊重を促進することにより,インターネットを通じた憎悪や不寛容の拡散を含めた,テロ及び暴力的過激主義の拡散につながる状況に取り組むことは,全ての国及び社会にとっての任務である。我々は,テロ行為を発見及び予防し,国際法に従って責任者を訴追し,犯罪者を更正及び社会復帰させ,並びにテロ資金の調達を防止するために必要な措置を実施する重要性を強調する。

 テロとの闘い及びテロリストへの資金供与はG7にとっての主要な課題である。我々は,迅速にかつ断固として行動し続け,協調した形での行動を強める。特に,我々はテロリストの資産凍結に関する既存の国際的枠組みを効果的に履行するとのコミットメントを再確認し,G7各国間での国境を越えた資産凍結要請を円滑化する。我々は,仮想通貨及びその他の新たな支払手段の適切な規制を含め,全ての金融の流れの透明性拡大を確保するために更なる行動をとる。我々は,金融活動作業部会(FATF)により行われている活動の重要性を再確認し,この活動に積極的に協力することにコミットする。我々は,強固なフォローアップ・プロセスを通じたものを含め,FATFの基準の効果的な履行を確保するために努力する。

 同様に,我々は,世界の幾つかの種を絶滅の寸前にまで追い詰め,場合によっては,組織犯罪,反乱及びテロの資金調達のために利用されている野生動植物の違法取引と闘うことにコミットする。

アフリカのパートナーへの支援

 我々は,アフリカ全体での民主的制度の強化及び増大する経済的機会を歓迎するとともに,ソマリアにおける安定の確立における進展,ナイジェリアにおけるおおむね平和的で民主的な政権移行を含め,大陸全体における困難な状況下における,この進展に留意する。我々は,マリ,スーダン,南スーダン,中央アフリカ共和国,コンゴ民主共和国,ソマリア,ナイジェリア及び最近ではブルンジを含め,安全,統治及び安定にとっての挑戦に対処する上でアフリカのパートナーを支援するとの継続的なコミットメントを再確認する。

アフガニスタンへの支援

 我々は,アフガニスタンの安定,繁栄及び民主的な将来を支援する上で,同国との揺るぎないパートナーシップにコミットする。

ネパールの復興支援

 我々は,ネパールで壊滅的な被害をもたらした地震によって引き起こされた人命の喪失と破壊に深く悲しみ,ネパールの国民及び政府に対し,継続的な支援を行っている。我々は,必要な緊急支援の提供を継続するとともに,ネパール政府の優先事項に沿って,二国間及び多国間の財政支援,技術支援,及び復興支援に関する要請を検討する用意がある。我々は,失われ,被害を受けた文化財の修復に貢献するために努力する。

保健

 達成可能な最も高い水準の健康の享受は全ての人の基本的な権利の一つである。したがって,我々は,二国間プログラム及び多国間体制を通じた保健システムの強化に特に焦点を当て,この分野に引き続き関与することに強くコミットしている。

エボラ出血熱

 我々は,世界健康安全保障アジェンダ及びその共通の目標並びに他の多国間イニシアティブによるものを含む世界保健機関の国際保健規則(IHR)の各国による履行を支援することにより,将来の疾病の発生が流行に転じることを防ぐことにコミットする。これを達成するため,我々は,各国の専門的知見及び既存のパートナーシップを基礎として,今後5年間に西アフリカ諸国を含む少なくとも60か国への支援を提示する。我々は,他の開発パートナー及び国に対し,この共同の努力に参加するよう奨励する。この枠組みにおいて,我々はまた,移民及び難民の保健医療ニーズに留意する。

 エボラ出血熱の危機は,世界が公衆衛生上の緊急事態に関して予防,保護,検知,報告及び対応の能力を向上させる必要があることを示した。我々は,エボラ出血熱の発生件数をゼロにすることに強くコミットしている。我々はまた,エボラ出血熱の流行により最も影響を受けた国々の回復を支援することの重要性を認識する。我々は,この危機から教訓を得なければならない。我々は, WHOによる取組を認識し,エボラ出血熱に関するWHO執行理事会特別セッション及び第68回世界保健総会において合意された結果を歓迎する。我々は,国際的な健康安全保障のためのWHOの中心的役割を再確認しつつ,複雑な健康危機に備えこれに対応するWHOの能力を改革・強化する現在進行中のプロセスを支持する。

 我々は,ドイツ,ガーナ及びノルウェーが国連事務総長に提案した保健分野の効果的な危機管理の包括的な提案を策定するためのイニシアティブを歓迎し,国連事務総長が設立したハイレベルパネルにより本年末までになされる予定の報告に期待する。エボラ出血熱の発生は,資金供与及び人材の双方について,適切な対応能力を適時に動員し拠出することが極めて重要であることを示した。我々は, WHO,世界銀行及び国際通貨基金によるものを含むメカニズムの構築を歓迎し,全てのパートナーに対し,これらの機関の取組としっかりと協調するよう要請する。我々は,パンデミック緊急ファシリティを構築する世界銀行のイニシアティブを支持する。我々は,G20に対してこのアジェンダを進めるよう奨励する。同時に,我々は,将来起き得る感染症との闘いのため協調し,共通のプラットフォームで調整される分野横断的な専門家チームの迅速な展開のためのメカニズムを設立又は強化する。我々は,これらのメカニズムをWHO及び流行国の国内当局と緊密に協力して実施する。

薬剤耐性

 抗微生物薬は人及び動物の治療薬の現在及び将来の成功のため極めて重要な役割を果たす。我々は,最近採択されたWHOの薬剤耐性に関する世界行動計画を完全に支持する。我々は,自国の国別行動計画を策定し又は見直し,効果的に実施するとともに,他国の国別行動計画の策定を支援する。

 我々は,人及び動物の健康,農業並びに環境など全分野を含むワン・ヘルス・アプローチに強くコミットする。我々は,抗生物質の適正使用を促進し,基礎研究,疫学研究,感染の予防及び抑制の促進,並びに新たな抗生物質,代替的治療,ワクチン及び迅速な患者の身辺での検査の開発に取り組む。我々は,国別行動計画の策定又は見直し及び共有に当たり附属書(薬剤耐性と闘う共同の努力)を考慮することにコミットする。

顧みられない熱帯病

 我々は,顧みられない熱帯病(NTDs)との闘いにコミットする。我々は,NTDsに対処する新たな手段の策定及び実施において研究が極めて重要な役割を果たすと確信している。我々は,保健研究開発に関するWHOグローバル・オブザーバトリーを含む主要なパートナーと連携して取り組む。この点に関し,我々は研究開発(R&D)の取組の調整に貢献し,自国のデータを利用可能にする。我々は,R&Dの協調の改善を促進することに資する,現在のR&D活動を把握する取組を基礎とし,NTDsの問題により良く対処することに貢献する。我々は,最も緊急なニーズのある分野に特に焦点を当ててNTD関連の研究を支援することにコミットする。我々は,こうした分野を特定するためのG7の科学アカデミーの役割を認識する。特に,我々は,予防,管理及び治療に関する基礎研究並びに容易に利用可能で安価な薬,ワクチン及び患者の身辺での検査技術のより迅速で目標を絞った開発に焦点を当てた研究の双方を促進する。

 我々は,保健システムを強化する自らの努力の一部として,全ての人々が利用可能で安価な質の高い必須保健サービスを引き続き提唱する。我々は,治療を提供し,またその他の方法でこれらの疾病を予防し,管理し,最終的に根絶するための,コミュニティに基礎を置いた対応メカニズムを支持する。我々は,2020年の撲滅目標を達成するため,NTDsの予防及び管理に投資する。

 我々は,女性,子供及び青少年の健康のための世界戦略の更新を支持し,「エブリ・ウーマン,エブリ・チャイルド」を支援するグローバル資金ファシリティの設立を歓迎するとともに,予防可能な子供の死亡を無くすこと及び世界中で妊産婦の健康を改善することにコミットし,そのため,2020年までに追加的に3億人の子供に予防接種を行うための75億米ドル超を動員したベルリンにおけるGaviワクチンアライアンス増資会合の成功を歓迎する。我々は,世界エイズ・結核・マラリア対策基金の現行の取組を完全に支持し,同基金の2016年の増資がドナーグループの拡大を通じた支援により成功することを期待する。

気候変動,エネルギー,環境

気候変動

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書において示されたように,気候変動に対処するために,緊急かつ具体的な行動が必要である。我々は,今年12月にパリで行われる気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において,野心的,強固,包括的かつ変化する国の状況を反映し,国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の下で全ての締約国に適用される議定書,他の法的文書又は法的効力を有する合意成果を採択するという,我々の強い決意を確認する。

 この合意は,時間の経過に伴い野心の向上を促進する目標の達成に向けた進展をたどるために,その中核としての拘束力のあるルールを含め,透明性と説明責任を強化するべきである。これにより,全ての国が,世界の平均気温の上昇を摂氏2度未満に抑えるという世界全体の目標に沿って,低炭素かつ強じんな開発の道を進むことが可能となる。

 我々は,この目標に留意し,最新のIPCCの結果を考慮しつつ,今世紀中の世界経済の脱炭素化のため,世界全体の温室効果ガス排出の大幅な削減が必要であることを強調する。それに応じて,我々は世界全体での対応によってのみこの課題に対処できることを認識しつつ,世界全体の温室効果ガス排出削減目標に向けた共通のビジョンとして,2050年までに2010年比で最新のIPCC提案の40%から70%の幅の上方の削減とすることをUNFCCCの全締約国と共有することを支持する。我々は,2050年までにエネルギー部門の変革を図ることにより,革新的な技術の開発と導入を含め,長期的にグローバルな低炭素経済を実現するために自らの役割を果たすことにコミットするとともに,全ての国に対して我々のこの試みに参加することを招請する。このため,我々はまた,長期的な各国の低炭素戦略を策定することにコミットする。

 G7は,全てのG7メンバーによるポスト2020年削減目標の公表又は原案と,約束草案(INDC)の提出を歓迎し,全ての国に対して,COP21に十分先立ち提出することを要請する。我々は,有意義な緩和行動と実施の透明性の文脈で,2020年までに,官民双方の幅広い資金源から年間1,000億米ドルを共同で動員するとの,コペンハーゲン合意に対する我々の強いコミットメントを再確認する。

 気候資金の流れは既に高いレベルにある。我々は,我々が,公的及び民間資金源からより多くの資金を提供し,動員するため,また我々及び他の主体が1,000億米ドルの目標を達成するための道を着実に歩んでいること及びパリでの成果における資金供与の交渉に積極的に関与する用意があることを示すための努力を続ける。我々は,気候資金を提供し,各国の低炭素経済への移行を助ける国際開発金融機関(MDBs)の潜在力を認識する。我々は,MDBsに対して,この目標を達成するための各国主導のプログラムを支援するため,バランス・シートと他のパートナーを動員する能力を最大限可能な範囲で使うことを要請する。我々は,長期気候資金に関するバックグラウンド・レポートを公表した議長国に感謝し,COP21を見据え,全ての関連するフォーラムにおける更なる意見交換を呼びかける。

 このコミットメントを達成し,低炭素技術,及び気候変動の影響に対する強じん性の構築に求められる投資を引き出すには,民間部門の資金の動員も極めて重要である。既存の投資障壁を乗り越えるため,高い動員効果を持つ金融モデルが必要である。

この目的のために,我々は,
(a) 気候変動に関連する災害のリスクに対処し,強じん性を構築するための,特に脆弱国自身による努力に対する我々の支援を強化する。我々は, 2020年までに,最も脆弱な開発途上国において,気候変動に関連する災害の悪影響に対する保険のカバーへの直接的又は間接的なアクセスを有する人数を最大4億人増加させ,これらの国における早期警戒システムの開発を支援することを目指す。このため,我々は,附属書に規定されたとおり,小島嶼開発途上国,アフリカ,アジア太平洋,中南米及びカリブを含む脆弱な地域での,アフリカ・リスク・キャパシティやカリブ災害リスク保険機構などの既存のリスク保険機構,保険ソリューション及び保険市場を発展させるためのその他の取組から学び,また,それらを基礎とする。
(b) 附属書に規定されたとおり,気候資金のためのグローバル・イノベーション・ラボを含む既存の取組やイニシアティブを基礎としつつ,エネルギー貧困を減らし,民間投資家,開発金融機関及び国際開発金融機関から2020年までに相当規模の資金を動員することを目的として,アフリカ及びその他の地域の開発途上国における再生可能エネルギーへのアクセスを加速化する。

 我々はまた, 2015年中に緑の気候基金の完全な運用を開始し,同基金を将来の気候資金枠組の主要な機構にするとの我々の野心を再確認する。

 我々は,非効率な化石燃料補助金の撤廃に引き続きコミットし,全ての国に対して我々に続くよう奨励するとともに, 輸出信用が気候変動に対処する我々の共通目標にどのように貢献できるかという点についてのOECDにおける議論の継続的な進展に引き続きコミットする。

 我々は,開発援助と投資判断において気候変動の緩和と気候変動への強じん性に対する考慮を取り入れることを誓約する。我々は,ハイドロフルオロカーボン(HFCs)の段階的削減に向けた努力を継続し,モントリオール議定書の全ての締約国に対して,本年HFCsの段階的削減に向けた改正交渉を行うよう要請するとともに,ドナーに対して,開発途上国における本改正の実施を支援するよう要請する。

 低炭素成長の機会への投資にインセンティブを与えるため,我々は,世界経済全体に炭素市場ベースの手法や規制手法などを含む効果的な政策と行動を適用するとの長期的な目標にコミットし,他国に対して,我々に加わるよう要請する。我々は,世界銀行を含む関連するパートナーとの緊密な協力の下,自主的参加に基づく,これらに関する戦略的な対話の場を設立することにコミットする。

エネルギー

 我々は,2014年にブリュッセルで決定されたエネルギー安全保障の原則及び具体的行動へのコミットメントを再確認し,それ以降にローマG7エネルギーイニシアティブの下で達成された進展を歓迎するとともに,これらの実施を継続する。さらに,我々は,持続可能なエネルギー安全保障のための G7 ハンブルク・イニシアティブ,特にG7諸国及びその他の国々における持続可能なエネルギー安全保障を更に強化するための追加的な具体的共同行動を歓迎する。

 特に,我々は,ウクライナ及びその他の脆弱国において現在進められているエネルギーシステムの改革と自由化の取組に対する支援を再確認し,エネルギーを,政治的な威圧の手段,あるいは安全保障上の脅威として用いるべきではないことを強調する。我々は, エネルギー関連の補助金を削減し,エネルギー効率に係わる計画に投資するウクライナ政府の意思を歓迎する。

 加えて,我々は,エネルギーシステムの脆弱性に関する評価の取組を継続する考えである。さらに,我々は,パイプラインガス及び液化天然ガスの双方を対象とするガス市場の強じん性と柔軟性の強化に取り組む。我々は,多様化がエネルギー安全保障の中核的要素であると考え,エネルギー構成並びに燃料,エネルギー源及び流通経路の更なる多様化を目指す。我々は,エネルギー効率の分野における協力を強化し,エネルギー部門のサイバーセキュリティを強化するための新たな協調的な取組を立ち上げる。そして我々は,他の関心国と共に,再生可能エネルギーとその他の低炭素技術の重要性を強調しつつ,クリーン・エネルギーの研究,開発及び実証に関する全体的な協調と透明性を高めるべく,協働する。我々は,我々のエネルギー大臣に対して,これらのイニシアティブを進め,2016年に我々に報告するよう求める。

資源効率性

 天然資源の保護と効率的な利用は,持続可能な開発に不可欠である。我々は,産業の競争力,経済成長と雇用,並びに環境,気候及び惑星の保護のために極めて重要と考える資源効率性の向上に努める。我々は引き続き,「神戸3R行動計画」及びその他の既存のイニシアティブに基づき,持続可能な資源管理と循環型社会を促進するためのより広範な戦略の一部として,資源効率性を向上させるための野心的な行動をとる。我々は,自発的に知識を共有し情報ネットワークを創出するためのフォーラムとして,資源効率性のためのG7アライアンスを設立する。附属書に記載されたとおり,アライアンスは,資源効率性によって提供される機会を進め,ベスト・プラクティスを促進し,イノベーションを強化するため,産業界,中小企業,その他関連するステークホルダーと協力する。我々は,革新的な官民連携を通じた協力を含め,資源効率性に関して開発途上国と協力する利点を認識する。我々は,国連環境計画(UNEP)国際資源パネルに対して,資源効率性のための最も有望な可能性潜在力と解決策を強調した統合報告書を準備することを求める。我々はさらに,OECDに対して,統合報告書を補完する政策指針を作成することを招請する。

海洋環境の保護

 我々は,海洋及び沿岸の生物と生態系に直接影響し,潜在的には人間の健康にも影響し得る海洋ごみ,特にプラスチックごみが世界的課題を提起していることを認識する。したがって,海洋ごみ問題に対処し,この動きを世界的なものとするため,より効果的で強化された取組が求められる。G7は,陸域及び海域に由来する海洋ごみの発生源対策,海洋ごみの回収・処理活動並びに教育,研究及び啓発活動の必要性を強調しつつ,附属書に示された,海洋ごみ問題に対処する上で優先度の高い活動と解決策にコミットする。

 我々G7は,国の管轄権の及ぶ区域の境界の外の深海底鉱業とそれが与える機会に対する関心の高まりに留意する。我々は,国際海底機構に対して,全ての関連するステークホルダーを早期に関与させつつ,開発途上国の利益を考慮しながら,持続可能な深海底鉱業のための明確で,効果的かつ透明性のある規範作りのための作業を継続するよう要請する。主要な優先事項には,投資家のために規制の確実性と予見可能性を整備すること及び,深海底鉱業により生じ得る有害な影響からの海洋環境の効果的な保護を強化することを含む。我々は,深海底鉱業活動において予防的アプローチをとること,並びに環境影響評価及び科学的調査を実施することにコミットする。

開発

持続可能な開発のためのポスト2015年アジェンダ

 2015年は国際的な持続可能な開発課題にとって節目となる年である。アディスアベバでの第3回開発資金国際会議,ポスト2015年開発アジェンダを採択するためのニューヨークでの国連サミット及びパリでの気候変動会議は,今後の地球規模の持続可能な開発及び気候変動の課題を定める。

 我々は,持続可能な開発の,環境,経済及び社会という3つの側面を均衡ある形で統合する,野心的で,人間中心で,地球に配慮した,普遍的に適用される持続可能な開発のためのポスト2015年アジェンダを達成することにコミットする。

 このアジェンダは,ミレニアム開発目標の残された課題を完了させ,極度の貧困を終焉させ,誰も置き去りにせず,不平等を削減し,持続可能な経済への世界的な移行を加速させ,天然資源の持続可能な管理を促進し,平和,良い統治及び人権を強化すべきである。全ての国において,全ての国とステークホルダーによる適切な行動を動員するために,我々は,重要な政策メッセージの作成と伝達を支持する。我々は,2030年までに極度の貧困を終焉させ,持続可能な開発に移行するという我々の共通の目標に向けた,普遍性,共有された責任,相互の説明責任,効率的で効果的なモニタリングとレビュー及び様々なステークホルダーを巻き込んだアプローチに基づく新たなグローバル・パートナーシップの構築にコミットする。

 この新たな変革のアジェンダの促進を後押しするため,我々は,国際保健,食料安全保障,気候・海洋の保護,持続可能なサプライ・チェーン及び女性の経済的能力強化に関する重要な手段にコミットしている。

 我々は,国内資源の動員,革新的資金調達,民間からの資金調達,政府開発及びその他の援助並びに野心的な政策枠組みを含め,資金的・非資金的実施手段の促進を支援することに共にコミットする。

 我々は, ODAやその他の国際公的資金が,開発のためのその他の資金源の触媒として,また補完するものとして果たす重要な役割を再確認する。我々は,国民総所得(GNI)に対するODA比0.7%目標や,後発開発途上国に対するODAの減少傾向を逆転させ,ODAを最も必要とする国により多く振り向けるなどの我々それぞれのODAのコミットメントを再確認する。我々はまた,民間資金の流れを奨励することにコミットする。

食料安全保障

 良い統治,経済成長,より良く機能する市場及び研究・技術への投資は,国内及び民間部門の投資の増加並びに開発援助と併せ,食料安全保障の強化と栄養の改善に共に貢献してきた。

 パートナー国及び国際的な関係者が関与する広範な取組の一部として,またポスト2015年開発アジェンダに対する大きな貢献として,我々は,2030年までに開発途上国における5億人を飢餓と栄養不良から救い出すことを目指す。附属書に記載された食料安全保障及び栄養に関する広範なG7開発アプローチは,これらの目標に相当程度貢献する。我々は,ダイナミックな農村の変革を支援し,責任ある投資と持続可能な農業を促進し,栄養に関する多分野にわたるアプローチを促進するための取組を強化し,紛争・危機の際の食料安全保障及び栄養を守ることを目指す。我々は,パートナー国の戦略と整合させ,開発効果を改善し,我々の進捗に係る透明性のあるモニタリングを強化し続ける。我々は,我々の行動が女性及び小規模・家族農家の能力強化を続けるとともに,持続可能な農業・フードバリューチェーンを推進し,支援することを確保する。我々は,2015年ミラノ国際博覧会(「地球に食料を,生命にエネルギーを」)と,持続可能な農業並びに世界の飢餓及び栄養不良の撲滅に対する同博覧会の影響を歓迎する。

女性の経済的な能力強化

 女性の経済的な参画は貧困と不平等を削減し,成長を促進し,全ての人々に恩恵を与える。しかし女性は,しばしば,経済的な潜在力を阻害し,開発投資を妨げ,彼女らの人権侵害を構成する差別に直面する。我々は,差別,セクシャル・ハラスメント,女性と女児に対する暴力及び女性の経済的な参画に対するその他の文化的・社会的・経済的・法的な障壁を克服するため,開発途上国や我々の国内のパートナーを支援する。

 我々は,働きがいのある人間らしい仕事に関連する技術を,特に公式・非公式な学習による職業技術教育・訓練(TVET)を通じて身につけていることが,複数の差別の要因に直面する者(例:障害のある女性と女児)を含めた女性と女児の経済的な能力強化のため,また彼女らの雇用と起業の機会改善のための鍵であることを認識する。我々は,2030年までにG7の措置を通じて,開発途上国において職業教育・訓練を受けた女性と女児の数を(対策をとらない場合と比べて)3分の1増やすことにコミットする。我々はまた, G7諸国の中での女性と女児に対する職業技術教育と訓練の増加に取り組む。

 我々は,質の高い仕事への女性のアクセスを強化するため,また,我々の国々における性別による労働力参加の格差を,それぞれの国の状況を考慮しつつ2025年までに25%削減するために,育児休暇及び保育へのアクセスを含め,男女共に家庭生活と仕事のバランスをとることを可能にするための枠組みを改善することを含めた行動を引き続きとる。民間部門も,女性がより有意義な形で経済活動に参加することが可能な環境を創り出す上で極めて重要な役割を有している。我々はしたがって,国連女性のエンパワーメント原則を支持し,世界中の企業に対して,その活動に女性を組み込むよう要請する。我々は,女性に関する新たなG7作業部会を通じた取組で連携する。

複雑な契約交渉の支援強化(CONNEX)

 我々は,当初採取部門に焦点を当て,複雑な投資契約交渉のための開発途上国における分野横断的な専門的知見の提供を目指す,複雑な契約交渉の支援強化(CONNEX)に係るイニシアティブへのコミットメントを再確認する。我々は,3つの柱,すなわち,情報統合とアクセス可能性,アドバイスの独立性と質,及びステークホルダー間の能力構築を強調する。我々は,分野横断的な顧問サービスのための行動規範を支持し,支援提供者やその他のステークホルダーが,規範を拘束力のある一連の原則として彼らが世界中で結ぶ契約に組み込むよう奨励する。我々は,アフリカ法的支援ファシリティなどの支援提供者と連携した形での,CONNEXイニシアティブの名の下でのパイロット・プロジェクトの実施を奨励する。我々は,交渉支援に関する知識の共有と相互学習のためのメカニズムに係る更なる連携を歓迎する。

ドーヴィル・パートナーシップ

 我々は,中東・北アフリカ(MENA)の人々への我々の強いコミットメントを再確認する。同地域における現在の諸課題に鑑み,我々は,移行期にあるアラブ諸国とのドーヴィル・パートナーシップへのコミットメントを新たにする。我々は,アラブ諸国によるガバナンス及び法の支配の改善に向けた努力を支持し,経済的ガバナンスに関するドーヴィル・コンパクト及び金融包摂のための行動計画についての最近の合意を歓迎する。我々はさらに,責任ある金融包摂を促進すること及び送金の流れを円滑にすることによるものを含めて,民主主義と人権を強化し,また,特に女性や若者のための包摂的成長を達成するために経済的及び社会的改革を実施する彼らの努力を支持する。G7は,引き続き,財産回復の取組をフォローアップするため,各国政府及び世界金融の中心地と協力することにコミットする。我々は,移行期にあるアラブ諸国の経済的,社会的及び政治的進展にドーヴィル・パートナー諸国と共に貢献できると確信している。移行基金は,引き続き,各国主導の改革を支援する重要な手段である。我々は,基金の効率性,今後の実行可能性及び影響力を更に高めるための措置を支持する。我々は,これまでに表明されたプレッジを実施することにコミットし,資金確保の目標達成を確保するための追加的な貢献を歓迎する。

G7説明責任

 我々は,オープンかつ透明性のある方法でなされた我々の約束に対し,説明責任を持つことに引き続きコミットする。我々は,生物多様性に関する我々のコミットメントについてこれまでにG7が実現した進展を示し,この進展がいかに他のG7開発コミットメントに貢献するかを示すエルマウ進捗報告書2015を歓迎する。この報告書はまた,この点において,継続的な行動を必要とすることを強調している。我々は次回2016年の包括的な進捗報告書に期待する。

結語

 我々は,日本議長の下,2016年に会合することを楽しみにしている。

附属書:女性の起業家精神に関するG7原則

  • 女児及び女性に,例えば学校,職業訓練,大学など早期段階から適切な情報を促進することにより,起業家となる可能性を認識させ,その考えをビジネス事案にすることを積極的に奨励する。
  • ジェンダーの定型化に対抗し,女児が早期からSTEM(科学,技術,工学及び数学)分野において履修し教育を完了するための具体的な措置を策定する。
  • ・ 例えば新世代の女性創業者の模範として,成功した女性起業家の注目度を高める。
  • 例えば女性起業家に目的に沿った情報,技能,助言及び指導を提供し,女性起業家のためのネットワークを促進することにより,女性起業家の個別のニーズに対応する。
  • 女性起業家の,代替的な資金源及び銀行制度を含む資金調達,技術・イノベーション,及び国内・国際市場へのアクセスを促進する。
  • 例えば,男性女性双方のための,育児休暇及び保育へのアクセスを含む仕事と家庭生活の両立支援のための十分な政策を策定することにより,枠組みを改善する。

附属書:薬剤耐性(AMR)と闘う共同の努力

 G7は,薬剤耐性(AMR)に関する世界保健機関(WHO)の第1次世界行動計画を強く支持する。我々は,以下の分野を強調しつつ,自国の国別行動計画を策定又は見直し,稼働し,共有するとともに,様々な機関及びステークホルダーとの協力を継続する。

 AMRとの闘いは,既存及び将来の抗微生物薬の効果の保全並びに新しい抗微生物薬,ワクチン,代替的な治療及び迅速な診断ツールのための研究開発への関与という2つの部分から成るアプローチにより取り組むべきである。

  • 我々は,人及び動物の健康,農業並びに環境の全分野を含むワン・ヘルス・アプローチに強くコミットする。我々の国別行動計画はこの概念に基づく。
  • 我々は,感染症の予防を改善し,抗微生物薬をより適正に使用する責務がある。これを達成するため,我々は,抗微生物薬の効果を維持するための包括的なアプローチと具体的な措置を必要とする。我々は,これらの取組への他国の参加を奨励し支援する。
  • 我々は,特に,抗生物質を,治療上の理由により,監督の下で国内法・管轄地域の法に従って個別の診断を得た上で使用することにコミットすることにより,抗生物質(注)の適正使用を促進する。我々は,医師,獣医師及び家畜生産者の管理プログラムの実施を通じ,知識及び責任ある使用を促進する。
  • 人及び動物の治療薬における抗生物質は処方又はそれに相当する獣医師の指示によってのみ入手可能であるべきであることの重要性及び抗生物質の適切な使用が薬剤耐性の減少に貢献することを強調する。
  • 我々は,リスクアナリシスがなされない場合には畜産における成長促進のための抗生物質の使用を段階的に廃止する必要性を特記する。
  • 我々は,医療及び獣医専門家並びに一般人の間で,感染の予防及び抑制並びにAMRについての認識及び知識を拡大する重要性を認識する。
  • AMRと闘う効果的な戦略のための知識のギャップを埋めるため,我々は,医療,動物の治療及び農業における並びに環境の経路を通じた既存及び新たなAMRの態様のサーベイランスを強化する必要がある。
  • 我々は,基礎研究,疫学研究並びに新たな抗微生物薬,代替的治療,ワクチン及び迅速な患者の身辺での検査の開発及びアクセスの増加により,イノベーションを促進しなければならず,我々は,AMRに関する独立レビューに留意する。
  • この文脈において,我々は,WHO,国際獣疫事務局(OIE)及び国連食糧農業機関(FAO)との緊密な協力の下,極めて重要な役割を果たす医薬品,生物工学及び食品産業との対話を強化することにコミットする。
  • 我々は,G7閣僚に対し,全ての関連するステークホルダー間で抗生物質の責任ある使用を促進しベスト・プラクティスを共有するため,国別の取組を蓄積し,G7会議を開催することを要請する。
  • (注)G7諸国における「抗生物質」の用語の定義の相違に留意しつつ,ここでは人の健康に影響を及ぼす抗生物質を指す。

    附属書:気候政策

    気候リスク保険イニシアティブ

     特に,気候変動の影響を大きく受ける低所得国における貧困かつ脆弱な人々に対する気候変動の影響への強じん性の構築を目指す効果的な気候リスク管理は,災害リスク削減,気候変動への適応,自然災害や極端な気象現象に起因する残存リスクの一部分に対処するための保険を含むことが必要である。

    目的

     G7イニシアティブの全体目標は,効果的な気候リスク保険ソリューション及び保険市場の創出と,貧困かつ脆弱な開発途上国において危機にさらされている人々及び財産に対する保険関連制度の賢明な利用を促進することである。これは,気候変動への適応を可能とし,経済成長,貧困削減及び気候への強じん性の促進に貢献する。

     G7気候リスク保険イニシアティブは,アフリカ,アジア,小島嶼開発途上国,中南米及びカリブにおける既存のリスク保険機構の活用も含め,低・中所得国において,気候変動に起因する災害の悪影響を補償する直接的又は間接的な保険によって恩恵を受ける人の数を2020年までに最大4億人増加させることを目指す。

     気候リスク移転アプローチは,保険可能性を促進する意識啓発措置と相まって,保険に適した環境を強化する。このイニシアティブは,国連気候変動枠組条約(UNFCCC)や仙台防災枠組などの関連する国際的な政策枠組みとの相乗効果の活用を意図している。

    アフリカにおける再生可能エネルギーに関するイニシアティブ

     アフリカは,再生可能エネルギーの膨大な資源に恵まれている。しかしながら,世界の未電化世帯の半分はサブサハラ・アフリカに存在する。最近の著しいエネルギーへのアクセスの向上にもかかわらず,国際エネルギー機関(IEA)は,2030年には,サブサハラにおける6億4,500万人の人々がエネルギーへのアクセスから疎外されると予測している。負担可能な価格のエネルギー・サービスへのアクセスの向上と,それによるエネルギー貧困の削減は,クリーン・エネルギーの課題が重要な役割を担うことができる重要な目標である。この点において,全ての入手可能な資源を効果的に活用しつつ,地域における再生可能エネルギー源を開発することは,アフリカにおけるエネルギーの算出を増加し,未来に向け可能性を解き放つ主要原動力となり得る。

    目標

     この取組の目標は,再生可能エネルギー(太陽光,陸上・海上における風力,水力,バイオマス及び地熱,オフ・グリッド,及び送電線網の展開)の導入を加速させることで,2030年までにアフリカにおける持続可能なエネルギーへのアクセスを改善させることである。このイニシアティブは,既存のイニシアティブの拡大を意図し,2020年までに追加的な再生可能エネルギー設備の容量を最大10,000MWに到達させることを目指す。これは,国家及び地域の投資計画に基づき,アフリカにおける再生可能エネルギー・プロジェクトの融資可能性を特定し,支援するであろう。特に国連の「万人のための持続可能なエネルギー(SE4ALL)」,国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の「アフリカ・クリーン・エネルギー回廊」,国連環境計画(UNEP)イニシアティブ,アフリカ・EUエネルギー・パートナーシップ,アフリカ連合,アフリカ連合とアフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD),アフリカ環境大臣会合(AMCEN),アフリカン・パワー・ビジョンを含むアフリカ開発銀行(AfDB)の旗艦プログラム,米国の「パワー・アフリカ」イニシアティブ及びEUの電化財政支援イニシアティブ(ElectriFi)などの既存の多国間,二国間プログラムに基づき策定することは可能である。このイニシアティブは,既存の取組間の連携プロセスを強化し,将来作業が必要な未確定事項を明確化することを目指す。これは,負担可能で安定的かつ安全でクリーンなエネルギーへの,全ての人々の普遍的なアクセスを確保するための国際的な取組の不可欠な構成部分を成すべきである。G7は,既存の金融機関,すなわち国際開発金融機関/開発金融機関(MDBs/DFIs)や緑の気候基金を利用すること,並びに気候変動防止技術への民間投資の特定の課題,すなわち,金融・政治的リスク,現地の限られたプロジェクト策定能力,及び脆弱な規制枠組みとセクター政策を目標とすることを目指す。

     このイニシアティブはまた,開発途上国における再生可能エネルギーとエネルギー効率への民間投資の推進を目指して革新的な気候資金措置の特定と先導を支援する「気候資金のためのグローバル・イノベーション・ラボ」に限定されないが,右を含む革新的な措置及び既存の成功したプログラムの拡大を含む。

    方法

     アフリカにおけるクリーン・エネルギーの発展を加速させるために取組を協調させるとのエルマウにおけるG7の政治的コミットメントの支持を受けて,アフリカ連合,COP21の議長国フランス及びG7の議長国ドイツは他のG7諸国と協議しつつ,更なる行動のための共通計画を策定する。この行動計画は,UNEP及び世界銀行との緊密な協力の下で,その他の関係するステークホルダーの関与も得つつ策定され,IMF・世界銀行の2015年年次会合の間にリマで行われる気候資金に関する閣僚会合において,パリで行われるCOP21に向けた道の確固たる節目として提示される。

    附属書:資源効率性のためのアライアンス

     世界レベルで,天然資源の消費と廃棄物の排出はかつてないほどの規模に増えている。データは,20世紀の間に,世界における天然資源の利用が一人当たりで二倍に増えたことを示している。GDPが1%増えるごとに,天然資源の利用は0.4%増えている。さらに,産業に供給された天然資源の多くが,一年以内に廃棄物として自然環境に戻されている。経済成長と天然資源利用との間にはいくらかの分断が見られるが,この分断は,2050年には90億人を超えると予想される世界人口と新たに工業化している国々における急速な経済成長に伴って,更に高まる需要を克服するには不十分である。

     持続不可能な天然資源の消費とそれに伴う環境劣化は,物資価格の上昇や供給の不確実性停止を通じて,ビジネスリスクを増大させる。このような背景を踏まえ,資源効率性の向上とライフサイクルを通じた資源の持続性の管理は,環境及び気候の保護,雇用,社会的恩恵並びに持続可能なグリーン成長を実現するために重要な要素である。資源効率性は,経済の持続性,競争力及び成長を強化するとともに,環境への負担を減らす機会を提供する。これは,持続可能な資源管理と循環型社会を促進するためのより広範な戦略の一部となるべきである。資源効率性の向上には,政策立案者,産業界,学界及び消費者の間の生産的な協力が必要である。

    野心的な行動へのコミットメント

     我々は,ライフサイクルを通じた天然資源の保護と効果的な利用の高い重要性と,経済,環境及び社会という同様に重要な持続可能性に関する三側面に対する良い影響を再確認する。ライフサイクルに基づく意思決定は,天然資源,及び重要な可能性を持つ部門の,両方又はいずれかに焦点を当てることができる。我々は引き続き,神戸3R行動計画(発生抑制(Reduce),再使用(Reuse),再生利用(Recycle))を含む既存の国及び地域のイニシアティブを基礎として,国際的な進展を反映させながら,資源効率性を向上させるための野心的な行動をとる。そうすることで,我々は,産業の競争力を強化し,雇用を保障し,環境保護を促進していく。次回G7会合の前までに,我々は,我々の活動の進捗を共有する。

    資源効率性のためのG7アライアンス

     我々は,産業界(ビジネス7)並びに公的部門,研究機関,学界,消費者及び市民社会を含むその他のステークホルダーと共にベスト・プラクティスを共有・促進しイノベーションを強化するための,自発的で非拘束的なフォーラムを提供する資源効率性のためのG7アライアンスを設立する。アライアンスは,例えば関連する産業界のイニシアティブに積極的に関与し,ネットワークを支持することで,恩恵を受ける。資源効率性のためのG7アライアンスは,資源効率性の課題にどのように対処するかについての構想の交換を促進し,ベスト・プラクティスと経験を共有し,情報ネットワークを創出することを目的とする。

     ベストプラクティスに関する一連のワークショップによりこのプロセスは開始される。資源効率性のためのG7アライアンスの下で取り扱われる主題は以下を含む。

    • (ビジネス7との協力による)産業界のイニシアティブとベスト・プラクティス
    • 好ましい枠組みの状況を創出する政策
    • 資源効率性のためのライフサイクルに基づく意思決定の手段,データ,構想及び方法論
    • 産業共生,すなわち,例えばエコタウンを通じた産業間のサービス,設備及び副産物の共有
    • 実践的なツールを含む中小企業支援
    • 特定部門の政策手法とベスト・プラクティス
    • 持続可能な製品と購入,グリーン公共調達,ローカル・サプライ・チェーン及び資源効率性の政府機関の意思決定への統合
    • 循環型経済,エコデザイン,共有経済及び再製造
    • 資源効率性の研究・イノベーションの強化と資源効率性の教育・訓練への統合
    • 国際フォーラム及び国際機関の関連する活動
    • 開発途上国との二国間協力からの経験及びG7がこれらの国々と協力し支援する可能な方策
    • 非再生資源を持続可能な再生資源に代替する可能性

     資源効率性のためのG7アライアンスは,その年の議長国主導の下,少なくとも年一回ワークショップを開催する。移動の必要性や必要資源を抑制するとともに,恩恵を最大化するために,バーチャル・ワークショップやビデオ会議の活用が奨励される。

    強化された国際協力

     資源効率性の取組は,既にこの分野で活発な国際機関との協力強化により,恩恵を受けることができる。したがって,我々は,国連環境計画(UNEP)国際資源パネル(IRP)に対して,先進工業国,新興市場国及び開発途上国における資源効率性のための最も有望な潜在力と解決策を強調した統合報告書を準備することを招請する。統合報告書は,IRP及びOECD,UNEPなどのその他の関連する国際機関の既存の作業とその主要な結果を基礎とし,持続可能な消費と生産10年計画枠組みなどの関連する国際的なプロセスを考慮に入れるべきである。統合報告書は,2016年後半までに提示されるべきである。我々はさらに,OECDに対して,統合報告書を補完する政策指針を作成することを招請する。

    附属書:海洋ごみ問題に対処するためのG7行動計画

    全体原則

     G7諸国は,

    • 海洋ごみについてその発生を予防し,それを削減し及び回収・処理するために,行動計画の主要な目標として,以下に記載された優先行動を含め,それぞれの国家システムを改善することに約束する。
    • 国際開発援助及び投資を通じた支援が海洋ごみ問題への対処に重要であることを認識し,これらを奨励する。
    • 内陸及び沿岸域に排出され,最終的に海洋ごみとなる廃棄物を減らすため,並びに既に海洋中に存在するごみを回収するため,国又は地域の行動計画の策定と実施を支援する。
    • とりわけ開発途上国とベスト・プラクティスを共有し,その他の国際フォーラムにおいて,行動を同様に要請することを奨励する。
    • 可能な場合には,協力のために既存の基盤及び手段を利用することが,重複を減らし,これまでの進展(例えば,陸上活動からの海洋環境の保護に関する世界行動計画(GPA)又は海洋ごみの国際パートナーシップ(GPML),地域海条約・行動計画など。)の活用につながることを認識し,したがって,これらの利用を支援する。
    • 海洋ごみ問題に取り組むための啓発と教育を通じて,個人及び企業の行動の変化を促進する。
    • 発生の抑制が,海洋ごみ問題への取組と対処を長期的に成功させる鍵であることを認識する。産業界と消費者は廃棄物を削減するために重要な役割を果たす。
    • 海洋環境中には既に大量のごみが存在することから,回収・処理活動が必要であることの重要性を認識する。
    • 海洋ごみ問題に対処するための活動の実施を支えるための経済的インセンティブ,市場措置及び官民連携を含む利用可能な幅広い政策手段と制度の利用を支援する。

    陸域を発生源とする海洋ごみに対処するための優先行動

    • 廃棄物の管理,廃棄物の発生抑制及び再使用と再生利用の促進のための国家システムの改善
    • 廃棄物管理に関する活動を国際開発援助及び投資に組み込むこと,適切な場合におけるパイロット・プロジェクトの実施に対する支援
    • 海洋環境に流出するマイクロプラスチックを含む廃棄物について,下水及び雨水を経由するものを削減し,及び予防するための持続可能かつ費用対効果の高い解決策の研究
    • 海洋環境に影響を与える使い捨て製品等の利用を削減するための適切な措置及びインセンティブの促進
    • マイクロビーズの自発的な段階的廃止など,環境便益を得るための持続可能な包装の開発及び製品からの原因物質の除去に取り組むことを産業界へ奨励
    • ペレット流出ゼロを目指すなどの,プラスチック製造全体や,製造から輸送までのバリュー・チェーンに関するベスト・プラクティスの促進

    海洋ごみ回収・処理のための優先行動

    • 海洋ごみが蓄積する地域の特定と,海岸,川岸,海底,海中及び海面並びに港湾及び内陸水路における海洋ごみ回収・処理に係る経験を交換する場の設立
    • 費用対効果を含めた社会経済的側面を考慮した,利用可能な最良の技術(BAT)及び環境のための最良の慣行(BEP)を利用し,可能な場合にはパートナーと共同で実施される,影響を受けやすい海洋生態系に脅威を及ぼす海洋ごみの環境面で健全な方法による回収・処理の支援
    • 海洋ごみの発生を抑制するための啓発活動,潜在的な政策に係る選択及びその他の手段を支援し,及び対象とするための回収データの評価・分析

    海域を発生源とする海洋ごみに対処するための優先行動

    • マルポール条約附属書Vに従い,港湾の受入れ施設に運ばれ,適切に処分される廃棄物の量を最大化する取組
    • 海洋ごみ対策に貢献し,適切な場合にはパイロット・プロジェクト(デポジット制度,自主的合意及び使用済み品の再生を含む。)を実施し得る,国際連合食糧農業機関(FAO)の専門的知見を考慮した,水産業及び水産養殖業からの主要な廃棄物に対処するための選択肢の特定

    教育,研究及び啓発活動に関する優先行動

    • 自然環境,内水及び海洋に流入するごみの量を削減すること可能とする個人の行動変容をもたらす啓発活動及び教育活動の促進
    • 整合性のある地球規模の海洋ごみモニタリングの着手並びにモニタリングの手法,データ及び評価の標準化を支援
    • 海洋ごみの発生源,発生経路及び影響に対する理解を促進するため,国連環境計画(UNEP)及びその他の機関による活動に対する支援
    • 海洋ごみ問題に取り組むための追加的な研究構想・戦略に対する支援及び要請

    附属書:食料安全保障及び栄養に関するより広範な開発アプローチ

     我々は,飢餓と栄養不良の撲滅に引き続き力強くコミットする。したがって我々は,野心的なポスト2015年開発アジェンダに向けた現行の取組を支持し,食料安全保障及び栄養に係る我々の関与を同アジェンダの枠組みの中に位置づけることを想定している。パートナー国及び国際的な関係者が関与する広範な取組の一部として,またポスト2015年開発アジェンダに対する大きな貢献として,我々は,2030年までに開発途上国における5億人を飢餓と栄養不良から救い出すことを目指す。

     以下に示されているとおり,広範なG7アプローチは,飢餓と栄養不良の削減に資するために策定されている。我々は,開発の有効性向上と効果の改善,及び資源の動員により焦点を当てることを含めた幅広い範囲の介入を追求する。

     我々の広範なアプローチは,ラクイラ食料安全保障イニシアティブ,食料安全保障及び栄養のためのニュー・アライアンス,土地パートナーシップ並びに世界的な成長のための栄養(N4G)コンパクトを含む,食料安全保障及び栄養のための長期的なG7の取組を基礎とする。我々は,開発途上国との既存のパートナーシップを基礎とし,開発途上国の開発政策と戦略を支持し,我々の活動をこれらと整合させることにコミットする。我々は,栄養スケールアップ(SUN)運動,並びに,繁栄の共有及び生活向上のための農業成長・変革の加速化に係るマラボ宣言の文脈におけるパートナー国のコミットメントを謝意をもって留意する。

    幅広い範囲の介入

     我々は,食料安全保障及び栄養に関する既存の幅広い介入を継続し,基礎とするとともに,以下の分野に特に注意を払う。

    ダイナミックな農村社会の変革に向けて

    • 飢餓と栄養不良は,現在,農村部において最も蔓延している。我々は,特に農村の貧困層及び小規模・家族農家に焦点を当てながら,農村部の潜在力を開発することを支援するための統合された多分野に渡るアプローチを進めることを目指す。しかし,既に世界の人口の半分以上が都市部に住んでいる。農村社会は,急速な人口の構造変化と空間的移動を通じて,既に変容している。我々は,これらの現行のプロセスの正の効果を最大化し,負の効果を最小化し,一人も取り残さないようにすべく,どのようにして最大限支援できるかについての理解を深めるために協働し,経験と認識を共有する。
    • 女性と若者の重要な役割を認識しつつ,我々は,特に農業・フードシステムの中での彼らの能力を強化し,農業・フードバリューチェーンへの積極的な参加を支援することで,彼らをこの広範なアプローチの中心とすることを目指す。これは,彼らの起業家としての潜在力を引き出すことで,世帯収入の増加を後押しし,貧困を減らし,食料安全保障及び栄養を向上させることにつながる。
    • 我々は,小規模農家を企業と結びつけ,投資を呼び込み,緊急に必要とされている非農業雇用と収入を生み出す,農業・フードバリューチェーン・アプローチを促進する。

    責任ある投資と持続可能な農業

    • 我々の取組は,民間資金の動員と開発利益の増大に寄与すべきである。我々はしたがって,国家の食料安全保障の文脈における土地,漁業,森林の保有に関する責任あるガバナンスのための任意ガイドライン(VGGT)と,世界食糧安全保障委員会(CFS)の農業及びフードシステムにおける責任ある投資のための原則の着実な実施と,我々のODAによる投資を同ガイドライン及び同原則と協調させるべく努めることに対する支持を再確認する。我々は,食料安全保障及び栄養のためのニュー・アライアンスにおける民間投資の同ガイドライン及び同原則との適合を促進するように更に努力する。
    • 土地の保有に関する責任あるガバナンスは,社会的に公平な農業の発展と投資の呼び込みにとって極めて重要である。我々はしたがって,VGGTの実施のためのパートナー国への支援を続け,既存のG7土地のパートナーシップを継続し,適切な場合には新たなパートナーシップの追加を追求する。
    • 我々は,天然資源への高まる負荷を懸念し,世界の生態系を保全して持続可能な形で利用する必要性を明確に認識する。我々は,持続可能な農業生産の増大を,パートナー国を支援する我々の食料安全保障の取組の重要な構成要素とすることに合意する。我々は,研究開発,新たな持続可能な技術,その他のイノベーション及び慣行が,農村の貧困層にとってよりアクセスが容易で入手可能なものとなることを確保するための取組の増進に合意する。
    • 我々は,食料安全保障及び栄養に対する気候変動及びその他の潜在的災害リスク要因の負の影響を懸念し,したがって,気候変動に適応し,強じん性を構築し,温室効果ガスを緩和しつつ,持続可能な形で農業生産を増加し,生産性を向上し,及び収入を増加する手段を更に進めることにコミットする。我々は,気候変動への適応に関するベスト・プラクティスを促進することにコミットし,気候変動対応型農業のためのグローバル・アライアンスなどの新たなイニシアティブに留意する。

    栄養

    • 我々は,妊産婦,乳児,幼児の栄養を向上させるため国際的に合意された世界保健総会のグローバル・ターゲットを達成する取組において,食料安全保障及び栄養の向上のために,統合された多分野に渡るアプローチをとることにコミットする。我々は,N4Gコンパクトを歓迎し,より栄養改善のための間接的,直接的な介入を拡大する必要性を認識する。
    • 我々は,低栄養や微量栄養素不足の対処に効果的であることが証明されている,栄養改善のための直接的な介入を追求する。我々はまた,農業,社会保護,水,衛生,保健,教育及びフードシステムの向上などの主要部門への栄養改善のための間接的な介入を強化する。我々は,より良い栄養のためのバランスのとれた食事を増進するために,多様化した食料生産を支持する。
    • 我々は,妊娠から子供が2歳になる誕生日までの1000日間に特に注意を払いつつ,出産年齢の女性,妊婦,新生児を育てている母親,及び5歳未満の子供の栄養に焦点を当てた,生涯アプローチを確認する。
    • 我々は,第2回国際栄養会議(ICN2)で採択された栄養に関するローマ宣言及び行動枠組みを支持し,低栄養と闘う多様なステークホルダーによるSUN運動及びパートナー国の継続した取組を歓迎する。N4Gコンパクトに関し,我々は,進捗を監視し,コンパクトの目標を達成するための追加的行動の必要性を評価するため,ブラジルのリーダーシップの下で2016年に再び集まることを期待する。

    紛争・危機の際の食料安全保障及び栄養

    • 我々は,自然災害,経済危機及び社会的・政治的・暴力的紛争による影響を受けた人々の食料安全保障及び栄養に係る必要性に対処することに,引き続きコミットする。
    • 我々は,強じん性を高めるため,包括的な開発戦略の中に組み込む形で,短期,中期及び長期的な支援をより良く結びつけることを目指す。救援から開発への移行の強化は,効果と持続可能性を高める上での鍵である。我々の目的は,急性ショック又は慢性的なストレスに対処する能力を高めるため,個人,地域及び国家の吸収力,適応力及び変形力を強化することである。
    • 包括的な合同リスク分析は,可能な限り,我々の介入の基礎となり,食料不安の根本原因をより良く理解し,対処できるようにする。

     我々は,より多くの介入が,特に食料危機の再発又は長期化に陥りやすい国における強じん性を高める形で策定されるよう努める。

    開発の有効性向上と効果の改善

    • 我々は,開発の有効性を高める釜山原則の完全な実施へのコミットメントを再確認する。我々は特に,包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)などのパートナー国の既存の戦略,アプローチ及び計画を支持し,これらに我々の活動を整合させることに再びコミットする。我々はまた,国際レベルとパートナー国内との双方における多様なステークホルダーのパートナーシップを支持するとのコミットメントを強調する。
    • 我々は,政策の議論と調整のための最も包摂的な場としてのCFSを支持し,CFSやその他の国連及び国際機関並びに食料安全保障及び栄養のための協調的な国際的取組を向上させる既存のイニシアティブとの関与を追及する。
    • 透明性を確保するために,我々は,G7の説明責任の慣行に沿って,進捗を監視し報告する。我々は,適切な場合には,ポスト2015年開発アジェンダ・プロセスの成果に沿って,我々のコミットメントを定量化するとともに,これまでのG7の取組を基礎としつつ,説明責任のメカニズムを通じて進捗を監視する。我々は国レベルでの説明責任プロセスを改善させるため努力する。
    • 我々は,国連機関,世界栄養報告及びSUN運動と緊密に協働しながら,食料安全保障及び特に栄養に係る我々の目標を監視するデータのインプットを改善する。

    資源の動員

    • 我々は,開発途上国のパートナーが,食料安全保障及び栄養のために国内資源を効果的に利用することを信頼する。我々は,民間部門に対して責任ある投資による貢献を要請し,市民社会に対して積極的な関与を奨励する。我々は,開発資金プロセスに沿って,持続可能な革新的資金調達の更なる活用を支持する。
    • 我々は,G7が2009年のラクイラ・サミットにおける誓約以来,農業,農村開発,食料安全保障及び栄養に対するODAを増加させてきていること,並びに,民間投資を含むその他の資金源を呼び込む上でのODAの役割を認識する。我々は本日,2030年までに開発途上国における5億人を飢餓と栄養不良から救い出すことを目指すために必要な資源を動員するために,パートナーと協働していくことにコミットする。
    • 我々は,国連食糧農業機関(FAO),世界保健機関(WHO),国際農業開発基金(IFAD),国連世界食糧計画(WFP)及び国連児童基金(UNICEF),並びに国際開発銀行(MDBs)や世界農業食料安全保障プログラム(GAFSP)などの資金メカニズムのパートナーを通じた資金調達,加えて市民社会の実施パートナーの,それぞれの重要な役割を認識する。我々は,N4Gコンパクトの一部として行われたコミットメントを認識し,入手可能なマッチング資金の開放を追求する。

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