近年、ICTを活用可能な人々とそうでない人々との格差の解消を図ることが極めて重要な課題となっている。日本は、ODA大綱において、ICT分野における協力を重点課題の一つである持続的成長のための支援の一環として位置づけている。また、2000年7月の九州・沖縄サミットにおいて「国際的な情報格差問題に対する日本の包括的協力策について」を発表する等、産学官の連携のもとに、アジア各国の政府や国際機関とも連携体制をとりつつ、ICT分野の取組を積極的に行っている。 ![]() 写真提供:JICA、ガーナの高校での授業で説明を聞きながら、コンピューター画面に見入る生徒たち 情報通信技術(ICT)はその普及に応じて便益が拡大する反面、情報格差(デジタル・デバイド)が存在し、先進国と開発途上国間の経済的格差を増幅させ、国際社会の将来的な安定を揺るがしかねません。また、ICTの普及は、経済効率の上昇を通じて持続可能な経済成長の実現に寄与するという経済的な側面のみではなく、情報発信伝達の手段として、政府の情報公開の促進や市民の政治参加を推進し、民主主義の強化や透明性の確保、人権の促進といった政治面でも、極めて重要な役割を果たしえます。ICT分野では、機材等のハード面の協力と、ハードを使いこなす人材育成等のソフトの協力に加え、例えばガーナの母子保健医療サービス向上のために職員の研修情報を記録し情報管理をするなど、他分野の協力の中でもICTが用いられています。 日本はODA大綱において、情報通信技術(ICT)の分野における協力を、重点課題の一つである持続的成長のための支援の一環として位置付けています。また、2005年2月に発表した新ODA中期政策においては、持続的成長のための経済社会基盤整備の一環としての通信インフラの整備が、基礎社会サービスへのアクセス改善や、地域間格差が存在する都市部と村落地域を結ぶことにつながり、貧困削減に寄与することを指摘しています。 ・政府開発援助(ODA)大綱・中期政策での扱い(抜粋) ODA大綱(2003年8月) 3. 重点課題 ODA中期政策(2005年2月) 3.重点課題について (2)持続的成長 (b)政策立案・制度整備 (c)人づくり支援 (d)経済連携強化のための支援 ・イニシアティブ・資金コミットメント 「国際的な情報格差問題に対する我が国の包括的協力策について」(2000年7月) 2000年の九州・沖縄サミットにおいて、日本は、情報格差の問題に対して(1)制度・政策づくりへの知的貢献、(2)人づくり、(3)情報通信基盤の整備・ネットワーク支援、④援助におけるIT利用の促進を4つの柱とする協力策を発表しました。ICTは基本的に民間主導で発展する分野であることから、開発途上国の状況を踏まえ、様々な関係者との連携の下で、開発途上国におけるインフラ構築や人材育成など民間活動になじまない分野に対してODAを充てることとしています。 (情報通信技術) ![]() マイクロ波システム中継局 (写真提供:JBIC) 日本は、1992年に、パキスタンにおける「電気通信網拡充計画」に対し、円借款を供与しました。本計画では、通信サービスの量的拡充、質的改善を図り、商業・産業活動の活性化に寄与することを目的に、パキスタン政府にて実施予定であった電話回線の増設に合わせて国内伝送路(光ケーブル)及び国際通信施設の整備・拡充を支援しました。その結果、電話普及率が倍増したほか、受益者調査(住民40世帯、企業89社対象)では、回答者ほぼ全員から、本事業により通信状況が改善し、家族とのコミュニケーションやビジネスにプラスの効果があったとの意見が寄せられました。 ・国際機関・他ドナーとの連携 日本・ポーランド・ウクライナの協力 ![]() 日本は1989年以降、ポーランドへ市場経済及び民主主義への円滑な移行に資するような支援を行ってきました。その一環として、情報化に対応できる人材を育成するため、ポーランド政府からの要請を受けて1994年にポーランド日本情報工科大学(PJICT)を設立し、1996年から5年間技術協力を通じた人材育成を行ってきました。現在、PJICTは修士課程、博士課程が設置され、ポーランドのトップクラスの情報系大学となっています。 ポーランドは中・東欧地域でIT分野における中核的役割を担うべく、1999年度から2003年度まで、PJICTで第三国研修として周辺国の人々を集めた「東欧情報工学セミナー」が行われ、2004年度より「中東欧情報工学セミナー」が実施されてきました。 さらに、日本からの二国間支援を受けて発展してきたポーランド日本情報工科大学は、日本がUNDPに設置しているICT基金を活用して、地理的にも言語的にも近いウクライナに対し得てインターネットを利用した遠隔教育の指導法・運営手法を支援しています。 このように、持続可能な発展に資する技術や知識、経験を近隣諸国と共有することは、地域間協力・南南協力を促進させ、日本の協力を開発途上国が自立性をもって広めることにつながります。
![]() 南太平洋地域の島嶼国12カ国により設立された国際機関である南太平洋大学(USP)では、1969年の設立以来遠隔教育が実施されており、現在約9千人の在校生のうち、45%が遠隔教育によって受講しています。日本は、オーストラリア及びニュージーランドと協調して1998年より「南太平洋大学通信体系改善計画」を無償資金協力によって実施し、フィジー本校と加盟各国にある分校との間に衛星イントラネット(USP-Net)を構築した結果、同時双方向の音声と画像による遠隔教育が可能となりました。さらに、日本は2002年より3年間、遠隔教育・情報通信技術強化プロジェクトとして、遠隔教材の開発・設備や域内出身講師の育成などを行ってきました。 島嶼国のように地理的に離れていても、ICTによって教育を受ける機会を向上することが可能となります。 写真出典:外務省「ミレニアム開発目標MDGs」ハンドブック |
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