外交青書・白書
第2章 地域別に見た外交

4 東南アジア

(1)インドネシア

インドネシアは、世界第4位の人口(約2億7,000万人)を有する東南アジア地域の大国であり、マラッカ海峡などのシーレーン上の要衝に位置し、東南アジア諸国連合(ASEAN)において主導的な役割を担うほか、ASEAN唯一のG20メンバー国として、地域・国際社会の諸課題においてもイニシアティブを発揮している。

2019年10月に発足したジョコ大統領の第2期政権は、国会の議席の約82%を与党が占める安定政権として、(1)インフラ開発、(2)人材開発、(3)投資促進、(4)官僚改革、(5)適切な国家予算の執行を優先課題として取り組んでいる。新型コロナの影響により、近年一貫して5%前後を維持してきた経済成長率は、2020年にマイナス成長を記録したものの、2021年は3.6%のプラス成長を回復した。日本は、戦略的パートナーとして、ジョコ第2期政権の優先課題であるインフラ整備や人材育成の分野における協力を積極的に進めている。

日本・インドネシア間では、4月に岸田総理大臣が総理大臣就任後、初めてインドネシアを訪問し、7月にはジョコ大統領が訪日し、対面での首脳会談を行ったほか、11月にはG20バリ・サミットの機会に首脳会談を行った。7月の首脳会談では、東京電力福島第一原子力発電所の事故後にインドネシアが導入した日本産食品への輸入規制措置に関し、ジョコ大統領から日本産食品に対する輸入規制を全て撤廃したとの発言があり、規制が完全に撤廃されることとなった。また、岸田総理大臣はジョコ大統領と首脳電話会談(3月10月)も行った。林外務大臣はルトノ外相との間で2度(2月11月)電話会談を行ったほか、7月に対面での会談を行った。2022年はインドネシアがG20議長国として重要な役割を果たし、2023年にはASEAN議長国となることも踏まえ、これらの首脳会談や外相会談では、二国間関係の強化のほか、地域及び国際社会の諸課題に対する両国の連携について緊密に意見交換を行った。

日・インドネシア首脳会談(4月29日、インドネシア・ボゴール 写真提供:内閣広報室)
日・インドネシア首脳会談
(4月29日、インドネシア・ボゴール 写真提供:内閣広報室)

(2)カンボジア

カンボジアは、メコン地域に位置し、地域の連結性と格差是正の鍵を握る国である。過去20年間平均7%の成長を続けており、新型コロナの影響により2020年はマイナス成長となったが、2021年は3.0%のプラス成長に転じた。

日本は、1992年に初めて本格的に国連平和維持活動(PKO)へ要員を派遣するなど、カンボジアの和平と復興・開発に協力してきた。また、近年の日系企業のカンボジア進出を受けて、経済面での関係も拡大している。

3月の日・カンボジア首脳会談で、岸田総理大臣とフン・セン首相は共同声明を発出し、両国間協力の方向性を示し、また地域・国際場裡(り)において協力していくことを確認した。また、11月の首脳会談では、両首脳は、両国間協力の進展を踏まえ、2023年の日・カンボジア外交関係樹立70周年の機会に両国関係を「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げすることで一致した。

内政面では、2017年に最大野党・救国党が解党され、翌年の国民議会総選挙で与党・人民党が全議席を独占した。2022年6月の村・地区評議会選挙には17政党が参加し、与党が約8割の議席を獲得した。日本は、カンボジアの民主的発展を後押しするための取組として、法整備支援や政府と市民社会の間の対話促進事業を実施してきている。

日本が長年支援しているクメール・ルージュ裁判は、11月、第2-02事案(元国家元首が被告)上訴審の判決により、司法プロセスが完結した。

(3)シンガポール

シンガポールは、ASEANで最も経済が発展している国家であり、全方位外交の下、米国や中国を含む主要国と良好な関係を維持している。

国内では、リー・シェンロン首相率いる人民行動党(PAP)が、2020年の総選挙で90%以上の議席数を占め、安定した内政を基盤として、迅速な新型コロナ対策や経済対策、ポスト・コロナの成長を見据えた政策の推進など、新型コロナ対策と経済の両立を図っている。4月、PAPは、ローレンス・ウォン財務相を次期首相候補に選出した。

日本・シンガポール間では、6月に岸田総理大臣が、10月に林外務大臣がシンガポールを訪問し、5月及び9月にリー・シェンロン首相が、5月にビビアン・バラクリシュナン外相が訪日したことをもって、首脳間及び外相間における相互往来を実現した。こうした機会に首脳会談・外相会談を行い、二国間関係の更なる強化や地域及び国際社会の諸課題について意見交換を実施した。6月の岸田総理大臣のシンガポール訪問時には、日・シンガポール防衛装備品・技術移転協定の交渉開始が発表された。

両国は1997年に署名した「21世紀のための日本・シンガポール・パートナーシップ・プログラム(JSPP21)」を通じて、開発途上国に対して共同で技術協力を行っており、これまでに約400の研修を実施し、ASEAN諸国などから約7,300人が参加している(2022年12月末時点)。また、日本文化情報の発信拠点としてシンガポールに2009年に開所された「ジャパン・クリエイティブ・センター(JCC)」では、感染症対策をとりつつ各種の発信やイベントを開催した。

(4)タイ

タイは、1967年の「バンコク宣言」により誕生したASEANの原加盟国の一つであり、また、メコン地域の中心に位置し、地政学的に重要な国である。6,000社近い日本企業が進出し、約8万人の在留邦人が暮らすタイは、自動車産業を始めとする日本企業にとっての一大生産拠点であり、今日では地球規模でのサプライチェーンの一角として日本経済に欠くことのできない存在となっている。

2022年は日・タイ修好135周年の節目の年であった。2012年に両国の「戦略的パートナーシップ」が構築されて以来、両国は幅広い分野で二国間関係を深化させてきた。2022年はハイレベルでの交流が活発に行われ、5月に岸田総理大臣がタイを訪問しプラユット首相と会談を行い、日・タイ防衛装備品・技術移転協定に署名した。また同月に同首相が訪日した際にも岸田総理大臣と会談を行った11月にはAPEC閣僚会合でタイを訪問した林外務大臣ドーン副首相兼外相との間で会談を行い、両国の今後5か年の経済分野での協力の方向性を定めた「日タイ戦略的経済連携5か年計画」に署名した。このような両国関係の更なる拡大を踏まえて、11月に岸田総理大臣はプラユット首相と会談を行い、両国の関係を「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げすることで一致した。

岸田総理大臣のタイ訪問時の歓迎式典の様子(5月2日、タイ・バンコク 写真提供:内閣広報室)
岸田総理大臣のタイ訪問時の歓迎式典の様子
(5月2日、タイ・バンコク 写真提供:内閣広報室)

新型コロナ拡大による水際措置の規制のため、2020年、2021年には海外観光客数の減少などにより経済が落ち込みを見せたが、2022年に入り段階的な入国規制の緩和に伴い、観光客数は着実に回復し、GDPの水準は、2022年第2四半期(4月から6月)には新型コロナ流行前の約99%まで回復した。

(5)東ティモール

東ティモールは、インド太平洋の要衝、オーストラリアとインドネシア間の重要なシーレーンに位置する、21世紀最初の独立国家(2002年)である。2022年に独立20周年を迎えた同国は、国際社会の支援を得つつ平和と安定を実現し、民主主義に基づく国造りを実践してきた。3月及び4月には大統領選挙が実施され、ラモス=ホルタ大統領が選出された。経済は天然資源(石油や天然ガス)への依存度が高く、国家の最優先課題として産業多角化に取り組んでいる。外交面では、ASEAN加盟やWTO加盟に向けて、引き続き関係国と調整を行っており、11月、ASEANは東ティモールのASEAN加盟について原則合意に至った。

日本は、東ティモールの独立と同時に外交関係を開設し、2022年には日・東ティモール外交関係開設20周年を迎えた。2022年は対面での外交も活発に行われ、5月に三宅伸吾外務大臣政務官が総理特使として東ティモールを訪問し、ラモス=ホルタ大統領の大統領就任式に出席し、ラモス=ホルタ大統領、ルアク首相、マグノ外務・協力相などとの表敬・会談を行った。また、8月及び9月に林外務大臣は、マグノ外務・協力相と外相会談を行い、二国間関係や地域及び国際社会の諸課題について意見交換を行った。日本は、独立以前の1999年から東ティモールに対する支援を継続しており、良好な関係を維持している。2022年には、2021年の洪水・土砂崩れにより被害を受けたインフラの復旧支援や若手行政官の育成支援などを行った。また、日本が有償資金協力で支援した国道1号線が開通し、8月には開通式が行われた。

総理特使として、ラモス=ホルタ次期大統領を表敬する三宅外務大臣政務官(5月18日、東ティモール・ディリ)
総理特使として、ラモス=ホルタ次期大統領を表敬する三宅外務大臣政務官(5月18日、東ティモール・ディリ)

(6)フィリピン

フィリピンは、日本のシーレーン上にあり、戦略的利益を共有する海洋国家である。フィリピン経済は、新型コロナの影響で、2020年にはマイナス成長となったものの、2021年にはプラス5.6%のV字回復を果たし、今後は年率6.5%から8%の成長と2024年までの中進国入りを目指している。6月に就任したマルコス大統領は、史上最多得票率で圧勝し、農業開発、観光業振興、教育改革、デジタル変革、積極的なインフラ整備、エネルギー安全保障などを通じた経済発展と貧困削減を目指している。また、ミンダナオ和平については、新型コロナの影響でモロ・イスラム解放戦線(MILF)の退役・武装解除に遅れが見られるものの、改正バンサモロ基本法に基づき、2025年の自治政府樹立を目指したプロセスが継続している。

日・フィリピン間では、4月の第1回外務・防衛閣僚会合(「2+2」)のための外相及び国防相の訪日を皮切りに新型コロナの影響で途絶えていた要人往来が再開し、11年目を迎える戦略的パートナーシップの更なる強化が進められている。マルコス政権との関係では、5月に岸田総理大臣がマルコス次期大統領と電話会談を行い、6月の同大統領就任式には林外務大臣が総理大臣特使として出席し、同大統領を表敬した。それ以降も、9月に首脳会談7月及び8月に外相電話会談が実施され、二国間協力の強化や地域情勢などについて活発な議論が行われた。9月の故安倍晋三国葬儀には、ドゥテルテ副大統領が参列した。また、経済面では、2月及び11月、経済協力インフラ合同委員会の第12回及び第13回会合が開催され、フィリピンの中進国入りとインフラ政策「ビルド・ベター・モア」を強力に後押しするための議論が行われた。加えて、3月にミンダナオ和平プロセスの退役・武装解除に係る日本人要員の派遣が開始され、4月に日本が策定支援したスービック湾地域開発マスタープランが公表された。

総理特使として、マルコス大統領を表敬する林外務大臣(6月30日、フィリピン・マニラ)
総理特使として、マルコス大統領を表敬する林外務大臣
(6月30日、フィリピン・マニラ)

(7)ブルネイ

ブルネイは、豊富な天然資源を背景に、高い経済水準と充実した社会福祉を実現し、政治的、経済的に安定した国である。立憲君主制であり立法評議会があるものの、国王が首相、財務・経済相、国防相及び外相を兼任しており、国王の権限は非常に強い。東南アジアの中心に位置し、南シナ海のクレイマント国の一つであり、ASEANの一体性、統合強化を柱とするバランス外交を行っている。

2020年に1.1%の経済成長率を記録したものの、新型コロナの影響により、2021年の経済成長率はマイナスを記録した。ブルネイの経済は、原油価格の上昇及び中国との合弁企業による石油精製事業に支えられているが、エネルギー資源への過度の依存から脱却するため経済の多角化を目指している。

日・ブルネイ両国は、1984年に外交関係を開設し、様々な分野で良好な関係を発展させており、2022年は、8月に林外務大臣がエルワン第二外相と外相会談を実施し、二国間協力や地域及び国際社会の諸課題について意見交換を行った。また、2019年の即位礼正殿の儀にはボルキア国王が参列したほか、2022年9月の故安倍晋三国葬儀には、マスナ王女(外務省無任所大使)が参列するなど良好な皇室・王室関係を築いている。ブルネイは日本へのエネルギー資源の安定供給の面からも重要で、ブルネイの液化天然ガス(LNG)輸出総量の約7割が日本向けとなっており、同国産LNGは日本のLNG総輸入量の約5%を占めている。

(8)ベトナム

ベトナムは、南シナ海のシーレーンに面し、中国と長い国境線を有する地政学的に重要な国である。また、東南アジア第3位の人口を有し、中間所得層が急増していることから、有望な市場でもある。現在、インフレ抑制などのマクロ経済安定化、インフラ整備や投資環境改善を通じた外資誘致を通じ、安定的な経済成長の実現に取り組んでいる。新型コロナ拡大による厳しいロックダウンなどにより、2020年から2021年の経済成長率は2%台まで落ち込んだが、ウィズ・コロナ政策への転換により、2022年の経済成長率は8.02%を達成した。

日本とベトナムは、「アジアにおける平和と繁栄のための広範な戦略的パートナーシップ」の下で、様々な分野で協力を進展させている。5月には岸田総理大臣がベトナムを訪問し日越首脳会談を行った。同会談において両首脳は(ア)ベトナム軍へのサイバーセキュリティ能力構築支援といった安全保障分野における協力の推進、(イ)サプライチェーン多元化、デジタルトランスフォーメーション、技術革新を含む経済分野の協力、(ウ)技能実習生送出に関するプラットフォーム構築、(エ)防災能力向上のための地球観測衛星打ち上げ支援などにおける協力の推進について確認した。また、9月にはフック国家主席マイ越日友好議員連盟会長が訪日するなど、両国のハイレベル間のやり取りが活発に行われている。技能実習生を中心に在日ベトナム人の数も増加しており、2011年の約4万人から2021年12月末には約43万人を超え、国別在留外国人数で中国に次いで2番目に多い数字となっている。また、2022年8月には日・ベトナム刑事共助条約が発効し、今後、より充実した刑事共助を実施できるようになることが期待される。

日・ベトナム首脳会談(5月1日、ベトナム・ハノイ 写真提供:内閣広報室)
日・ベトナム首脳会談
(5月1日、ベトナム・ハノイ 写真提供:内閣広報室)

(9)マレーシア

マレーシアは、マレー半島の「半島マレーシア」とボルネオ島の「東マレーシア」から成る、インド洋と太平洋の結節点に位置し、南シナ海とマラッカ海峡に面した地政学的に重要な国である。また、13州及び3連邦直轄地から成る連邦国家で、ブミプトラ(土着の民族を含むマレー系)(70%)、華人系(22%)、インド系(7%)などから構成される多民族国家である。

2021年8月に発足したイスマイル・サブリ政権は、内政の安定化を図りつつ、ポスト・コロナの経済回復に注力してきたが、2022年11月に総選挙が行われた結果、アンワル新政権が発足した。

日本とマレーシアの間では、2022年が外交関係開設60周年及びマレーシアの東方政策40周年である機会を捉え、3月、安倍晋三元総理大臣が総理特使として訪問した。また、5月にイスマイル・サブリ首相を筆頭に、サイフディン外相を始めとする5閣僚が訪日、10月には林外務大臣が訪問して二国間関係の強化のほか、地域及び国際社会の諸課題に対する両国の連携について意見交換を行った。

人材育成分野では、マハティール首相が1982年に開始した日・マレーシア間の友好関係の基盤である東方政策により、これまでに2万6,000人以上のマレーシア人が日本で留学及び研修した。2022年には同政策の40周年を記念する多数の行事が開催され、同政策が時代の要請に効果的に応えられるよう発展していくための議論や取組が行われた。また、2011年9月に開校したマレーシア日本国際工科院(MJIIT)をASEANにおける日本型工学教育の拠点とするための協力が進められているほか、筑波大学のマレーシアにおける分校設置に向けた協議が行われており、実現すれば日本の大学が設置する初の海外分校となる。経済面においても、マレーシアへの進出日系企業数は約1,600社に上るなど、引き続き緊密な関係にある。

東方政策40周年記念の公式ロゴマーク
東方政策40周年記念の公式ロゴマーク

(10)ミャンマー

2021年2月1日のミャンマー国軍によるクーデター以降、ミャンマー治安当局の武力による鎮圧などにより多くの市民が死亡しており、一部地域では少数民族武装組織、国民防衛隊(PDF)などとミャンマー国軍との衝突も断続的に発生している。また、政治面では、民主化活動家を含むミャンマー国民の死刑執行(7月)、アウン・サン・スー・チー氏に対する有罪判決(計33年の刑期)、経済面では外貨強制兌換(だかん)措置(4月)による混乱など情勢は悪化の一途をたどっている。クーデターから1年を迎えた2022年2月1日、日本政府は、ミャンマーで今なお事態の改善に向けた動きが見られないことに懸念を表明し、改めてミャンマー国軍に対して、暴力の即時停止、被拘束者の解放、民主的な政治体制の早期回復について、具体的な行動を取るよう強く求める外務大臣談話を発出した。さらに、上記の死刑執行の際にも、今回の国軍の行いは、日本が一貫して求めてきた「被拘束者の解放」に大きく逆行する動きであるなどとして深刻に憂慮を表明する外務大臣談話を発出したことに加え、有志国との共同声明G7外相声明も発出した。また、日本は、事態の打開に向けて、特にASEANの「5つのコンセンサス」28を具体的成果につなげることが重要との考えの下、国際社会と連携し、議長国カンボジアを始めとするASEANの取組を最大限後押ししてきた。

国連の場では、情勢などに関する人権理事会決議(4月、7月)でコンセンサスに参加し、4月の決議では共同提案国に参加したほか、11月の国連総会第3委員会決議でも共同提案国入りするなど、国際社会と連携した対応をとってきている。

人道支援に関して、1月30日、ミャンマー国連人道問題調整事務所(OCHA)は、ミャンマーの人口5,400万人のうち1,440万人が人道支援を必要としており、そのうち緊急性の高い620万人に対する支援を目標とする2022年度の国連人道対応計画を発表した。これを受けて、日本政府は、2月8日、国際機関やASEAN事務局を通じて、困窮するミャンマー国民に対し、食料、生活物資、医療資材などを提供するため、合計約1,850万米ドルの人道支援を発表したほか、4月1日には、南東部や北西部を中心に国内避難民に対する支援として合計830万米ドルの緊急無償資金協力を発表した。このように日本政府は、悪化の一途をたどるミャンマーの人道状況の改善のため、2021年2月1日のクーデター以降、これまでに国際機関やASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)などを通して合計4,700万ドル以上の人道支援を実施している。日本は、今後も、困難に直面しているミャンマーの人々に寄り添うため、引き続き人道支援を積極的に実施していく。

(11)ラオス

ラオスは、メコン地域の全ての国と国境を有し、メコン連結性の鍵を握る内陸国である。2022年、内政面では、第11回人民革命党大会及び第9回国民議会議員選挙から1年が経ち、サルムサイ外相の副首相兼外相への昇格や閣僚の交代などの変化が見られたほか、12月にはパンカム首相が健康上の問題を理由に引退し、ソーンサイ副首相が新首相に就任した。経済面では、新型コロナの影響により2020年に0.5%に落ち込んだ経済成長率は2021年には2.5%まで回復したが、2022年は国際情勢の影響による急激なインフレや燃料不足・価格高騰などが大きな足枷(かせ)となり、国民生活にも影響を及ぼした。経済・財政問題に関する国家アジェンダの実施を含め政府の最重要課題である財政安定化への取組が引き続き求められる。

日・ラオス間では、4月にパンカム首相が訪日し首脳会談が、8月にはプノンペン(カンボジア)で日・ラオス外相会談がそれぞれ行われた。両会談では、2023年の日・ASEAN友好協力50周年及び2025年の日・ラオス外交関係樹立70周年を見据え、両国の「戦略的パートナーシップ」を一層拡大していくことが確認された。

また、7月には法務省、外務省、厚生労働省及び警察庁とラオス労働・社会福祉省との間で、在留資格「特定技能」に関する協力覚書が交換された。さらに、8月には、両国間協力の象徴的なプロジェクトである「ナムグム第一発電所拡張計画」の引渡式が行われ、ラオス国章にも描かれる同発電所への長きにわたる日本の貢献を印象付けた。両国における水際対策の緩和を受け、9月以降、ラオスからソーンサイ副首相、シーサイ党中央組織委員長、ダオヴォン・エネルギー鉱業相及びカムチェン計画投資相が相次いで訪日、日本からは、12月に武井俊輔外務副大臣がラオスを訪問するなど往来が活発に行われた。そのほか、ラオス投資促進セミナーの開催や双方のビジネスミッションの派遣を通じて両国間の貿易・投資促進への気運が高まった。

参考経済データで見る東南アジアと日米中などの関係1

・貿易:2001年以降、中国との貿易が飛躍的に増大。2000年代半ばには米中逆転が起きている。近年はベトナムを中心に米国向け輸出が再び増加している。一方、日本のシェアはかつて首位であった時期もあるが、長期的に低下傾向が続いている。2021年ではこの地域の輸出に占めるシェアにおいて日本は第3位、輸入では第2位2

・投資:米国のシェアが最大でありこれは主にシンガポールへの投資によるもの。日本のシェアは近年やや低下傾向にあるがタイやフィリピン向けを中心にプレゼンスを維持している。近年は中国のシェアが増加しているほか、域内の高所得国であるシンガポールから周辺国への投資も大きい。

・金融:近年対中債務が増えている国もあるが、地域全体としては日本のプレゼンスが非常に大きく最大の二国間債権国。

経済データで見る東南アジアと日米中などの関係

1 本データに関する留意事項について179ページ参照

2 本グラフでは日米中など一部の国のみ表示しているが、文中の順位はデータが入手可能な全ての国・地域(当該地域の国・地域を含む。)における順位

28 2021年4月24日に開催されたASEANリーダーズ・ミーティングで発表されたもの。(1)暴力の即時停止、(2)全ての当事者による建設的対話の開始、(3)ASEAN議長特使の対話プロセスへの仲介、(4)ASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)を通じた人道支援の提供、(5)ASEAN議長特使のミャンマー訪問及び全ての当事者との会合の実施、の五つの内容から成る。

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