5 西部アフリカ地域
(1)ガーナ
2017年に発足し、2021年から2期目を務めるアクフォ=アド政権は、「援助を超えるガーナ」構想を掲げ、投資促進や産業の多角化を進めているほか、債務状況を含む国内経済の立て直しに力を入れている。
日本がODAを通じ長年にわたり支援してきた、両国の友好・協力の象徴とも言える野口記念医学研究所は、同国内の新型コロナ対策の拠点として中心的な役割を果たした。日本は、5月には、無償資金協力「ノーザン州における保健医療体制改善計画」に関する書簡の署名を行うなど、保健分野で更なる具体的な案件が進んでいる。2022年には、3月のTICAD閣僚会合、8月のTICAD 8、11月のG7外相会合の際に、3回の日・ガーナ外相会談を実施した。
(2)カーボベルデ
カーボベルデにおいては民主主義が定着しており、アフリカ諸国の中でも高い政治的安定を誇っている。7月には食糧援助に関する書簡の交換を行うなど、日本はODAを通じ、カーボベルデの経済開発への協力を行っている。8月には、林外務大臣が、TICAD 8に出席したコレイア・エ・シルヴァ首相と会談を実施した。
(3)ガンビア
ガンビアでは、2017年にバロウ大統領が就任して以降、民主主義や法の支配などの基本的価値と原則に基づく改革が推進されている。2021年には大統領選挙、2022年には国民議会選挙が平和裡に実施された。一方、農業依存型の脆(ぜい)弱な経済構造及び深刻な貧困などの社会課題を抱えている。9月の故安倍晋三国葬儀にママドゥ・タンガラ外相が参加し、山田外務副大臣と会談を行った
(4)ギニア
ギニアでは、2021年9月に発生したギニア国軍の一部兵士による権力掌握事案を経て暫定政府(ドゥンブヤ暫定大統領)が発足し、2024年末を期限として民政移管が進行中である。
ギニアは豊富な水資源と肥沃な土地を有し、農業や水産業の開発潜在力は高く、ボーキサイト、鉄などを産出する鉱物資源大国である。日本はギニアと長年にわたり友好関係を築いている。
(5)ギニアビサウ
ギニアビサウは、水産資源や鉱物資源などに恵まれた豊かな土地をいかし、貧困と政情不安からの脱却を目指している。9月にはWFPと連携して食糧援助に関する書簡の交換を行った。また、11月には無償資金協力「汚職防止及び平和の定着のための行政における透明性及び説明責任促進計画(UNDP連携)」に関する書簡の交換を行った。
(6)コートジボワール
コートジボワールでは、ウワタラ大統領による「国家開発計画」の下での経済構造改革や国家連帯などの取組を後押しするため、日本は5月に2件の円借款(「ターボ・コスー・ブアケ電力網強化計画」及び「新型コロナウイルス感染症危機対応緊急支援借款」)に関する書簡の交換を実施した。8月、TICAD 8の際のアシ首相とのワーキング・ランチにおいて、林外務大臣は同国及び周辺国の安定にとって重要な北部地域の開発を後押ししたいと述べ、9月には同地域の農業生産性の向上を図るための無償資金協力「経済社会開発計画」に関する書簡の交換を、12月には、同国全体の強靱な農業基盤の構築を図るための円借款に関する書簡の交換を実施した。投資促進・活性化の努力なども通じて、両国関係は一層発展している。

(8月27日 チュニジア・チュニス)
(7)シエラレオネ
シエラレオネでは、選挙を経て2018年4月に発足したビオ政権が、安定的かつ平和で開かれた多元的な民主主義を構築することに焦点を当て、雇用創出、質の高い教育などを優先分野として継続的に取り組んでいる。
日本は、同国に対して、保健、人材育成、農業や基礎インフラ整備などの分野で開発協力を実施している。12月に無償資金協力「フリータウン半島に沿った配電網拡張計画」に関する書簡の交換を実施した。8月のTICAD 8にはフランシス外務・国際協力相が出席し、林外務大臣と外相会談を行った。
(8)セネガル
セネガルは、2022年のAU議長国として、国際場裡における諸課題へのアフリカの対応を主導する役割を果たした。また、西部アフリカの安定勢力として、同地域の平和と安定に向けて積極的に取り組んだ。
8月に開催されたTICAD 8において、林外務大臣(総理特使)は、サル大統領チュニジアのサイード大統領と共に共同議長を務めた。10月の第8回アフリカの平和と安全に関するダカール国際フォーラムには、山田外務副大臣が出席し、アフリカの平和と安定を後押しする日本の取組を紹介しつつ、アフリカが、新型コロナやロシアによるウクライナ侵略が影響を及ぼしている食料危機などの外生的ショックに立ち向かうための国際連携の強化を呼びかけた。
12月には、サル大統領が実務訪問賓客として公式訪日し、岸田総理大臣と3度目となる首脳会談を行った。両国首脳は、日・セネガル共同声明を発表し、両国が戦略的に重要なパートナーとして、二国間及び国際場裡において協力を強化していくことを確認した。

(12月19日、東京 写真提供:内閣広報室)
(9)トーゴ
日本はトーゴの食料安全保障の改善及び開発課題の解決のため、8月にトーゴに対する食糧援助に関する書簡の交換を実施した。9月、ニャシンベ大統領が故安倍晋三国葬儀に参列した際に首脳会談が行われ、両首脳は、更なる二国間関係の強化に向けた期待を表明したほか、国際情勢について意見交換し、TICAD 8のフォローアップを通じて両国関係を深めていくことで一致した。
(10)ナイジェリア
5月に就任7周年を迎えたブハリ大統領は、治安、法整備、インフラ、経済、産業などの広い分野における課題に取り組んできた。治安面では、10月までにテロリストとその家族約8万人が投降したといわれており、ナイジェリア政府は、元テロリストの社会復帰支援にも取り組んでいる。ギニア湾のナイジェリア沿岸における海賊・武装強盗対策も課題の一つで、6月には海洋安全保障の強化などに向けた日本の無償資金協力に関する書簡の交換が行われた。
サブサハラ・アフリカ最大級の天然ガス埋蔵量を有するナイジェリアは、二酸化炭素排出量ゼロに向けたエネルギー転換において、天然ガスを重要エネルギーと位置付けて開発に取り組んでいる。
(11)ニジェール
ニジェールは、マリ及びブルキナファソとの国境地帯を中心に高まるテロの脅威に直面しながらも、国際社会と連携し、テロ対策と開発課題の克服に堅実に取り組んでいる。
8月のTICAD 8にはハスミ・マスドゥ国務相兼外務・協力相が出席した。その際に行われた外相会談では、林外務大臣から、アフリカの食料安全保障の強化に引き続き貢献していくことを表明し、9月に食糧援助に関する書簡の交換が行われた。さらに、11月には、中等教育へのアクセス及び学習環境の改善や女子就学の促進・継続を目的とした無償資金協力に関する書簡の交換が行われるなど、着実に協力関係が深化している。
(12)ブルキナファソ
ブルキナファソでは、北部のマリ及びニジェールとの国境地帯を中心にテロが頻発し、治安が回復していない状況が続いており、多数の死傷者と国内避難民が発生している。人道状況が極端に悪化する中、国内の不満が高まり、2022年1月及び9月にブルキナファソ国軍の一部兵士が権力を掌握する事案が発生した。
日本は、無償資金協力「中央地方及び中央西部地方における中学校及び技術教育職業訓練中学校建設計画(UNICEF連携)」を通じてブルキナファソの教育の質の向上に寄与した。また、WFPと連携して食糧援助を実施し、同国の食料安全保障の改善に取り組んでいる。
(13)ベナン
日本と国際連合児童基金(UNICEF)は9月に無償資金協力「アフリカにおける感染症対策のためのデジタルヘルス・システム支援計画」を署名し、ベナンを含むアフリカ7か国の保健施設などに対するシステムの強化・効率化を図る支援を決定した。8月にチュニジアで開催されたTICAD 8にはアベノンシ外相が出席し、9月の故安倍晋三国葬儀にはワダニ経済・財務大臣が参列した。
(14)マリ
2020年8月及び2021年5月に発生したマリ国軍の一部兵士による権力掌握事案を経て、暫定政府(ゴイタ暫定大統領)が発足し、2024年3月末を期限として民政移管が進行している。北部及び東部を中心にテロや襲撃が頻発するなど治安の悪化が深刻である。サヘル地域全体の平和と安定の礎であるマリの平和と安定の確保は国際社会においても喫緊の課題となっている。
日本は、国連開発計画(UNDP)を通じて国際標準に合致した透明性及び信頼性の高い選挙の実施に必要な機材を供与することを決定し、マリの民政移管への取組を後押ししている。10月には山田外務副大臣がジョップ外務・国際協力相と会談し、民政移管に関する支援とともにマリが直面している経済社会開発上の課題の解決に向けて引き続き協力を行っていくと表明した。11月には、食糧援助及び無償資金協力「経済社会開発計画」に関する書簡の交換が行われた。
(15)リベリア
1989年に勃発した内戦と2014年に隣国から拡大したエボラ出血熱により、甚大な人道被害が発生したリベリアでは、ウェア大統領が貧困対策に力を入れている。インフラ、教育、保健なども優先課題であり、日本は2016年、首都モンロビアの幹線道路拡充・改修を支援した。同道路は日・リベリアの友好の証(あかし)として、2019年に「ジャパン・フリーウェイ」に改称された。2022年7月には、食糧援助に係る無償資金協力に関する書簡の交換を行った。8月のTICAD 8にはデー=マックスウェル・サー・ケマヤ外相が参加し、外相会談を行った。
(16)モーリタニア
モーリタニアは、治安の不安定化が進むサヘル地域にあって、2011年以降テロが発生しておらず、比較的安定した政権運営を続けているものの、2021年以来の天候不順や世界情勢に起因する食糧不足は深刻な状況にあり、日本は同国に対し食糧援助などの支援を行っている。また、水産訓練センター施設の整備など、モーリタニアへの水産分野での技術支援・無償資金協力を行うなど協力関係を深めている。
「経済データで見る各地域と日米中などの関係」に関する留意事項
本資料は国際機関のデータを使用して貿易・投資・金融の側面から作成したものであり、各国・地域のプレゼンスはこのほかにも様々な観点から総合的に考察される必要がある。また、今回使用した各統計については以下の点に留意する必要がある。
貿易データ(出典:IMF Direction of Trade Statistics:DOTS)は通関ベースの貿易統計であり、加工貿易型の国は貿易総額が膨らみやすいとの指摘もある。財・サービスの付加価値がどの国で加わったかを考慮した付加価値貿易の概念にも留意する必要がある。
直接投資データ(出典:IMF(Coordinated Direct Investment Survey:CDIS))は各国・地域の「任意の報告」に基づくものであり、包括的なものではなく、各国・地域発表の数値とも規模が異なることに留意が必要である。
対外債務データ(出典:世界銀行(International Debt Statistics:IDS))については、分かりやすさの観点から二国間の対外債務のみ表示しているが、これは全体の一部でしかなく、世界銀行、アジア開発銀行(ADB)など国際機関、そのほかの債権者への債務が大きい点に留意する必要がある(全ての地域において債権者として最大のシェアを占めるのはOther Multiple Lendersというカテゴリー)。また、金融資本市場の発展に伴い、債券発行などによる資金調達も大きくなると考えられる(実際に債券保有者(Bondholders)のシェアも大きい)。なお、無償援助が多い国は本資料では目立たなくなる点にも留意が必要である。
本資料では、以下(1)から(7)の地域における日米中などの経済データを集計したが、統計によって入手可能な国のデータに限りがあり、全ての国・地域が含まれているわけではない。各統計において集計対象とした国・地域は以下のとおり。
・貿易(輸出、輸入):139か国・地域
・投資(直接投資残高):74か国・地域
・金融(対外債務残高):108か国・地域
貿易:ASEAN10か国(インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス)及び東ティモール(計11か国)
投資:インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、マレーシア、ミャンマー(計8か国)
金融:インドネシア、カンボジア、タイ、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、ラオス、東ティモール(計8か国)
貿易:インド、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、モルディブ(計7か国)
投資:インド、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ブータン(計6か国)
金融:インド、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、モルディブ(計7か国)
貿易:キリバス、サモア、ソロモン諸島、ツバル、トンガ、ナウル、バヌアツ、パプアニューギニア、パラオ、フィジー、マーシャル、ミクロネシア(計12か国)
投資:サモア、ソロモン、パラオ、フィジー(計4か国)
金融:サモア、ソロモン諸島、トンガ、バヌアツ、パプアニューギニア、フィジー(計6か国)
貿易:アルゼンチン、アンティグア・バーブーダ、ウルグアイ、エクアドル、エルサルバドル、ガイアナ、キューバ、グアテマラ、グレナダ、コスタリカ、コロンビア、ジャマイカ、スリナム、セントビンセント及びグレナディーン諸島、セントルシア、チリ、ドミニカ国、ドミニカ共和国、トリニダード・トバゴ、ニカラグア、ハイチ、パナマ、バハマ、パラグアイ、バルバドス、ブラジル、ベネズエラ、ベリーズ、ペルー、ボリビア、ホンジュラス、メキシコ(計32か国)
投資:アルゼンチン、ウルグアイ、エルサルバドル、グアテマラ、コスタリカ、スリナム、チリ、トリニダード・トバゴ、パナマ、パラグアイ、バルバドス、ブラジル、ベネズエラ、ペルー、ボリビア、ホンジュラス、メキシコ(計17か国)
金融:アルゼンチン、エクアドル、エルサルバドル、ガイアナ、グアテマラ、グレナダ、コスタリカ、コロンビア、ジャマイカ、セントビンセント及びグレナディーン諸島、セントルシア、ドミニカ国、ドミニカ共和国、ニカラグア、ハイチ、パラグアイ、ブラジル、ベリーズ、ペルー、ボリビア、ホンジュラス、メキシコ(計22か国)
貿易:アゼルバイジャン、アルメニア、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、ジョージア、タジキスタン、トルクメニスタン(計8か国)
投資:アゼルバイジャン、アルメニア、カザフスタン、キルギス、ジョージア、タジキスタン(計6か国)
金融:アゼルバイジャン、アルメニア、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、ジョージア、タジキスタン、トルクメニスタン(計8か国)
貿易:アフガニスタン、アラブ首長国連邦、アルジェリア、イエメン、イスラエル、イラク、イラン、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、シリア、トルコ、バーレーン、ヨルダン、レバノン、エジプト、リビア、チュニジア、モロッコ(計20か国)
投資:アルジェリア、イスラエル、クウェート、サウジアラビア、トルコ、バーレーン、ヨルダン、レバノン、モロッコ(計9か国)
金融:アフガニスタン、アルジェリア、イエメン、イラク、イラン、シリア、トルコ、ヨルダン、レバノン、エジプト、チュニジア、モロッコ(計12か国)
貿易:アンゴラ、ウガンダ、エスワティニ、エチオピア、エリトリア、ガーナ、カーボベルデ、ガボン、カメルーン、ガンビア、ギニア、ギニアビサウ、ケニア、コートジボワール、コモロ、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、サントメ・プリンシペ、ザンビア、シエラレオネ、ジブチ、ジンバブエ、スーダン、セーシェル、赤道ギニア、セネガル、ソマリア、タンザニア、チャド、中央アフリカ、トーゴ、ナイジェリア、ナミビア、ニジェール、ブルキナファソ、ブルンジ、ベナン、ボツワナ、マダガスカル、マラウイ、マリ、南アフリカ、南スーダン、モザンビーク、モーリシャス、モーリタニア、リベリア、ルワンダ、レソト(計49か国)
投資:ウガンダ、エスワティニ、ガーナ、カーボベルデ、ギニア、ギニアビサウ、コートジボワール、ザンビア、セーシェル、セネガル、タンザニア、トーゴ、ナイジェリア、ナミビア、ニジェール、ブルキナファソ、ベナン、ボツワナ、マダガスカル、マリ、南アフリカ、モザンビーク、モーリシャス、ルワンダ(計24か国)
金融:アンゴラ、ウガンダ、エスワティニ、エチオピア、エリトリア、ガーナ、カーボベルデ、ガボン、カメルーン、ガンビア、ギニア、ギニアビサウ、ケニア、コートジボワール、コモロ、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、サントメ・プリンシペ、ザンビア、シエラレオネ、ジブチ、ジンバブエ、スーダン、セネガル、ソマリア、タンザニア、チャド、中央アフリカ、トーゴ、ナイジェリア、ニジェール、ブルキナファソ、ブルンジ、ベナン、ボツワナ、マダガスカル、マラウイ、マリ、南アフリカ、モザンビーク、モーリシャス、モーリタニア、リベリア、ルワンダ、レソト(計45か国)