ASEAN(東南アジア諸国連合)

令和元年11月4日
(写真1)日ASEAN首脳会議での写真撮影に臨む安倍総理大臣 日ASEAN首脳会議での写真撮影に臨む安倍総理大臣
(写真提供:内閣広報室)
(写真2)日ASEAN首脳会議の様子1 日ASEAN首脳会議
(写真提供:内閣広報室)
(写真3)日ASEAN首脳会議の様子2 日ASEAN首脳会議
(写真提供:内閣広報室)

 11月4日(月曜日)午後5時15分から午後6時10分(現地時間)まで,タイにおいて,日ASEAN首脳会議が開催され,我が国から安倍総理大臣が出席したところ,概要は以下のとおりです(議長:プラユット・ジャンオーチャー・タイ王国首相。)。

1 冒頭発言

 プラユット・ジャンオーチャー・タイ首相の発言に引き続いて,安倍総理から,冒頭以下のとおり発言した。

(1)冒頭

ア プラユット首相及びタイ政府の,「微笑みの国」らしい温かいおもてなしに感謝。

イ 来年,東京でオリンピック・パラリンピックを開催別ウィンドウで開く。ASEAN諸国の選手達の活躍を心から期待。

ウ 我が国は2020年東京大会に向け,スポーツを通じた国際貢献策「スポーツ・フォー・トゥモロー」を実施中。ASEAN全ての国で実施してきた結果,これまで約500万人が裨益。引き続き同大会に向け協力を進めていきたい。

(2)連結性に関する日ASEAN首脳共同声明

ア 今年は「インド太平洋に関するASEANアウトルック・AOIP」が発表され,ASEANを中心としたインド太平洋の連結性強化に向けて大きな一歩を踏み出した画期的な年。「自由で開かれたインド太平洋・FOIP」を掲げる日本はこのAOIPを全面的に支持し,日本のFOIPとAOIPのシナジーを追求したい。

イ その観点から,今回,日ASEAN間で連結性に関する共同声明を自由で開かれたインド太平洋の実現に向け,ASEANと一緒に発出できることは喜ばしい。

(3)対ASEAN海外投融資イニシアティブ

 この共同声明を資金面からも支えるべく,「対ASEAN海外投融資イニシアティブ」を立ち上げる。ASEAN地域を中心に,質の高いインフラ,金融アクセス・女性等支援,グリーン投資の分野について,民間を含む資金の動員を目指し,今後JICAの出資・融資を倍増させていく用意がある。

(4)日ASEAN技術協力協定

 今年5月,ASEANとの技術協力協定が締結され,ASEAN全体が裨益する技術協力が可能となったことも,連結性の強化に資するもの。明年1月,いよいよ第1号案件となる,サイバーセキュリティの研修を日本で実施する。

(5)スマートシティ・交通連携イニシアティブ

 本年10月,「日ASEANスマートシティ・ネットワーク・ハイレベル会合」が横浜で開催され,官民協議会が設立されたことを歓迎。日ASEAN交通連携イニシアティブも引き続き深化させていく。

(6)貿易・経済

ア 制度面での連結性強化については,日ASEAN経済連携協定の改正議定書の署名を歓迎。サービス貿易や投資を更に活性化すべく,早期の発効に期待。

イ RCEP交渉の進展を歓迎。RCEPは,世界最大の自由で公正な経済圏を実現し,「自由で開かれたインド太平洋」を実現するという戦略的・経済的な見地から重要。16か国での早期妥結に向けて,引き続き協力していきたい。

ウ デジタルイノベーションの急速な進展を受け,ICTを活用した防災協力や,社会課題解決に資するデジタルビジネスの普及に向け,「第四次産業革命ダイアログ」において,各国と環境整備の方策を議論していく。

エ また,東日本大震災から8年以上が経過し,最近のブルネイの撤廃を始め,世界のほとんどの国が輸入規制の撤廃・緩和を進めており,規制を残す国には科学的根拠に基づく早期の撤廃を求めたい。

(7)国際交流基金アジアセンター

ア 最後に人的連結性に関しては,2013年に私が発表した「文化のWA」プロジェクトの下,これまで約2,000人の日本語パートナーズを派遣し,約2,000件の文化交流事業を実施。その結果,日本とASEANの間で600万人の交流を生み出した。

イ こうした実績に各国首脳から高い評価をいただいていることに感謝。このような有意義な事業を引き続き活用し,各国との交流を更に深めていきたい。

2 クローズド・セッション

 安倍総理から,概要以下を発言した。

(1)防衛協力等

 まず,防衛分野では,「ビエンチャン・ビジョン」の下で,人道支援及び災害救援や海洋安保の分野を中心に協力が進展。また,PKOでは国連と協力して,重機操作の本格訓練を今月から開始した。

(2)地域・国際情勢

(北朝鮮)

ア 北朝鮮は,当時13歳の少女を含む多くの罪のない日本人を拉致。被害者とその御家族が高齢化する中,拉致被害者の救出には一刻の猶予も許されない状況。

イ 拉致問題の解決に向けては,我が国自身が主体的に取り組むことが重要である。私自身,相互不信の殻を破り,条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意。一日も早い解決に向け,あらゆるチャンスを逃すことなく,果断に行動していく。拉致問題の解決に向け,引き続きの理解と協力をお願いしたい。

(南シナ海)
ア 我が国は南シナ海の現状を深刻に懸念している。南シナ海問題については,ASEANの国々が声を一つにして,悪化する現状に対して改善を求めていくことが必要。日本としても引き続き最大限の協力を惜しまない。

(3)文化交流等

ア 今年,ベトナムで「ASEAN-Japan Day」が盛況の下,開催された。ベトナムを始めASEAN各国の協力に感謝。

イ 引き続き,教育,文化,スポーツを始めとする幅広い分野で人や技術を通じた交流を促進していきたい。

ウ 一昨日まで,アジア初のラグビー・ワールドカップが日本で開催別ウィンドウで開くされ,世界中のラグビーファンを魅了した。私も出席した開会式にはJENESYSで訪日したASEANの若者約150名も参加し,スポーツがもたらす感動を共有。

(4)結語

ア 最後に,プラユット首相の議事采配に敬意。

イ これからも引き続き,ASEANのリーダーである皆さんと緊密に連携していきたい。

 これに対し,ASEAN側からは,天皇陛下の御即位への祝意,ラグビー・ワールドカップ成功,来年の東京オリンピック・パラリンピックへの期待などが述べられた。また,多くのASEANの国が,連結性における日本の対ASEAN支援に言及しつつ,本会議にて採択された連結性に関する日ASEAN共同声明を歓迎する旨発言があった。
 また,ASEAN側からは,今回の日本の新たなイニシアティブである,対ASEAN海外投融資イニシアティブ及び日ASEAN技術協力協定に基づく第一号のサイバーセキュリティに関する研修への謝意と支持の表明があった。さらに,ASEAN側から,国際交流基金アジアセンターへの評価及び今後の活動への期待が表明されたほか,本年10月に横浜で開催されたスマートシティハイレベル会合,第四次産業革命,本年ハノイで実施されたASEAN-Japan Day,JENESYS等,日本の対ASEAN協力について謝意が表明された。

 そのほか,本年6月に採択されたインド太平洋に関するASEANアウトルックに言及しつつ,自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた議論が行われたほか,北朝鮮問題及び南シナ海についても意見交換を行った。

 最後に,議長国タイは,すべての参加国の賛同を得て,連結性に関する日ASEAN首脳会議共同声明の発出を宣言し,会合を了した。


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