ASEAN(東南アジア諸国連合)
第21回日・ASEAN首脳会議



1 冒頭発言
リー・シェンロン・シンガポール首相の発言に引き続いて,安倍総理から,冒頭以下のとおり発言した。
(1)日ASEAN友好協力45周年
本年は,日ASEAN友好協力45周年。記念文書の発表を嬉しく思う。先月東京で開催された日ASEAN音楽祭に続き,来年,「ASEAN-JAPAN Day」をベトナムで開催予定。日ASEAN間の相互理解を一層深める契機としたい。
(2)対ASEAN支援
日本は,約束した「5年で2兆円の対ASEAN支援」を上回る支援を実施。ASEANの一体性と中心性を尊重しながら,民間投資を後押しし,国際スタンダードに沿った質の高いインフラを推進する。特に,JBIC新ファシリティを活用し,地球環境保全に役立つインフラ整備を支援していく。
(3)産業人材育成協力イニシアティブ2.0
次の5年を見据え,「産業人材育成協力イニシアティブ2.0」として,AI等のデジタル分野を含め,新たに8万人規模の人材を育成する。
(4)日ASEAN第4次産業革命イニシアティブ
「日ASEAN第4次産業革命イニシアティブ」の下,デジタル関連ルールの導入や人材育成支援等を推進していく。
(5)自由貿易の推進
日本は,自由貿易の推進役として,WTO改革等を通じて,自由で公正なルールを世界に広めていく。この観点から,TPP11協定の年内発効は重要な成果。今後,TPP11の拡大,RCEP交渉の早期妥結,AJCEP協定改正議定書の早期署名の実現を目指していく。
(6)スマートシティネットワーク
来年,「ASEANスマートシティネットワーク(ASCN)東京ハイレベル会合」をシンガポールと共同して開催予定。また,Society5.0との連携,「日ASEANイノベーションネットワーク」,「日ASEAN STI for SDGsブリッジングイニシアティブ」等を通じて,ASCNの実現に協力したい。
(7)防災協力
日本は,JAIF(日ASEAN統合基金)を活用し,AHAセンター(ASEAN防災人道支援調整センター)を通じた協力を含め,防災分野でも協力していく。
(8)環境協力
「日ASEAN環境協力イニシアティブ」に基づく気候変動対策に加え,海洋プラスチックごみ対策でも協力を拡大したい。
(9)アジア健康構想
アジア健康構想の下,バランスのとれたヘルスケアを実現していく。
(10)教育・文化等
教育,科学技術,文化,スポーツ等の分野でも引き続き文化のWAプロジェクト等を通じて交流を促進したい。2020年東京大会に向け,機運を盛り上げていきたい。
(11)日本アセアンセンター
日本アセアンセンターについて,引き続き必要な改革を進めていきたい。
2 クローズド・セッション
安倍総理から,防衛協力や地域・国際情勢等について以下のとおり発言した。
(1)防衛協力等
防衛分野では,「ビエンチャン・ビジョン」(注:防衛分野におけるASEANとの協力に関する日本のイニシアティブ)の下で,実践的な協力を進めていく。
本年9月,バンコクに日ASEANサイバーセキュリティ能力構築センターを設立するなど,サイバー分野でも協力していく。
(2)地域・国際情勢
ア 自由で開かれたインド太平洋日本は,自由で開かれたインド太平洋の維持・強化のために,引き続きASEAN各国と緊密に連携していく。
イ 北朝鮮 国連安保理決議に規定されている,北朝鮮による全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの,完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な廃棄を実現すべく,国連安保理決議の完全な履行が必要。
国連安保理決議が禁止する「瀬取り」への対策においても協力したい。
拉致問題の早期解決に向け,理解と協力を期待。
南シナ海は交易を通じて平和と繁栄を享受してきたASEAN・日本双方のライフラインであり,ここでの航行の自由は双方にとって重要。
ASEANが,これを確保するために掲げてきた基本原則を,日本は完全に支持。また,COC交渉をはじめとする取組に敬意。このような諸原則が反映されることを期待。
南シナ海における一方的な現状変更の試みに深刻な懸念を共有。
日本は,ASEANによる取組が,現場の「非軍事化」,そして平和で開かれた南シナ海の維持につながるよう後押ししていく。
ASEAN側は, 日ASEAN友好協力45周年共同声明を発出できることに歓迎の意を表明した。また,多くの国が,防災や連結性強化をはじめとする様々な分野における日本の協力への評価を表明した。さらに,多くの国が,自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた日本の取組みへの期待を表明した。北朝鮮問題及び南シナ海も取り上げられた。
最後に,議長国シンガポールは,全ての参加国の賛同を得て,日ASEAN友好協力45周年記念文書の発出を宣言し,会合を了した。