国際機関を通じた協力

令和6年8月23日

世界遺産条約

 「世界遺産条約」は、正式には「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」といい、文化遺産や自然遺産を人類全体のための遺産として損傷、破壊などの脅威から保護し、保存していくために、国際的な協力及び援助の体制を確立することを目的とした条約です。1972年のユネスコ総会で採択され、1975年に発効しました。2024年8月現在の締約国は196か国にのぼります。日本はこの条約を1992年に締結しています。

 「世界遺産」とは、世界遺産条約に基づいて作成される「世界遺産一覧表」に記載されている物件のことで、建造物や遺跡などの「文化遺産」、自然地域などの「自然遺産」、文化と自然の両方の要素を兼ね備えた「複合遺産」の3種類があります。
 2024年8月現在では1223件(文化遺産952件、自然遺産231件、複合遺産40件)の世界遺産が記載されており、このうち日本の世界遺産は26件(文化遺産21件、自然遺産5件)です。

 各国が推薦した物件を世界遺産一覧表に記載するか否かは、21か国の委員国で構成される「世界遺産委員会」で決定されます。
 世界遺産条約では、世界遺産とは「顕著な普遍的価値」を有するものと規定されており、その具体的な基準は、委員会が定める「世界遺産条約履行のための作業指針」の中に詳細に示されています。こうした基準の他、当該遺産について国内での保護措置が十分採られているか等も記載の判断基準となっています。

 世界遺産一覧表に記載された遺産は、「顕著な普遍的価値」を有することが世界的に認知されます。また、遺産の保護は各遺産保有国の義務ですが、その遺産を自国の力だけでは十分に保護できない場合、遺産保有国は世界遺産基金による国際的援助を申請することができます。特に、急激な都市開発や武力紛争、自然災害などにより、重大で特別な危険にさらされている遺産については、世界遺産委員会が「危険にさらされている世界遺産一覧表」に記載し公表することで、当該遺産の保護の必要性を国際社会に訴えることもあります。

第20回世界遺産委員会(京都)

 日本は1992年に条約を締結して以来、この条約の実施に対して様々な貢献をしてきました。
 締結の翌年の1993年から1999年までの間委員国を務め、そのうち1995/1996年は副議長国を務めました。また、1998年には松浦駐仏大使(当時。元ユネスコ事務局長)を議長として第22回世界遺産委員会を京都において開催しました。その後、2003年から2007年まで、2011年から2015年11月まで(2013/2014年は副議長国)、さらに2021年から2025年まで我が国は委員国に再選されました。また、日本は世界遺産基金に対する分担金拠出でも大きな貢献をしており、2023年はおよそ277,402ドル(約3,800万円)を拠出しています。
 1972年の採択以降、世界遺産条約の締約国数、世界遺産登録数も飛躍的に増大し、様々な課題にかかわる議論が活発化してきました。採択40周年にあたる2012年には、世界遺産条約のこれまでの成果を振り返り、将来のあり方を考えていく節目の年として、世界各地で関連行事・会合が開催されました。日本は、1年間を締めくくる「世界遺産条約採択40周年記念最終会合」を同年11月に京都において開催し、幅広い議論の上に「京都ビジョン」を発表し、今後の世界遺産条約の展望についても積極的な貢献を果たしました。また、世界遺産条約制定50周年を記念し、2024年1月には、文化遺産国際協力コンソーシアム及び文化庁と共に「世界文化遺産の50年:日本の貢献のこれまでとこれから」を開催しました。

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