広報文化外交

平成28年2月1日

 文化遺産は、その国や地域またはコミュニティの歴史・伝統・文化を集約した象徴的な存在であり、そこに属する人々にとって何ものにも代え難い誇りであると同時に、世界の多くの国の人々をも感動させる価値を持っています。
 世界各地では、戦乱や自然災害、貧困などの原因により、貴重な有形、無形の文化遺産が危機にさらされている例が少なくありません。このような文化遺産を、人類共通の貴重な遺産として国際的に手を携えて次世代へ伝えていくことは、お互いの文化を認め、尊重する姿勢にもつながり、安定した国際社会の基礎を成すものといえます。そこで、外務省でも外交政策の一つの柱として、文化遺産国際協力に力を注いでいます。
 有形の文化遺産については、世界遺産条約を通じて国際的な保護体制に参画するとともに、優れた日本の文化遺産保存修復技術を活かし、ユネスコに設置した文化遺産保存日本信託基金を通じて各国の遺跡や建造物の保護を支援しています。
 無形の文化遺産については、日本は他国に先駆けて1950年に制定された文化財保護法で国内の無形文化財保護に取り組んできており、その豊富な知見を活かして無形文化遺産保護条約の作成や運用に主導的役割を果たしています。また、ユネスコに設置した無形文化遺産保護日本信託基金を通じて各国の伝統的な舞踊や音楽、工芸技術の保護を支援しています。
 こうした文化面での外交は、成果を挙げるまでに長い時間がかかるものですが、その国の人々の誇りである文化遺産への支援は、直接相手の心に響くものであり、物質的な援助にとどまらず、日本の知恵や技術、文化を大切にする心を贈る援助として、長い目で見れば大きな実を結ぶものと考えます。

広報文化外交へ戻る