国際機関を通じた協力

令和5年5月30日

 文化遺産とは、遺跡や建造物のようないわゆる有形の文化遺産のみを指す概念ではありません。伝統的な音楽、舞踊、演劇、工芸技術といった無形の文化も、有形の文化遺産と同様にその国の歴史、文化、生活風習と密接に結びついた重要な文化遺産です。

 これら無形の文化遺産については、グローバリゼーションの進展に伴い、世界各地で消滅の危機が叫ばれるようになりました。こうした状況を踏まえ、ユネスコの場においても議論が重ねられ、2003年のユネスコ総会において「無形文化遺産の保護に関する条約」が採択されました。この条約は2006年に発効し、2023年2月現在の締約国は181か国を数えます。この条約により、これまで世界遺産条約により保護が図られてきた、有形の文化遺産や自然遺産に加え、無形文化遺産も国際的水準で保護していく枠組みが整いました。

 日本は、1950年に制定された文化財保護法により早い時期から国内の有形・無形の文化遺産を保護してきていますが、このように無形文化遺産についても保護する制度を持つ国は少なく、日本の取り組みは他国に先駆けたものといえます。国内での豊富な知見を活かし、日本はこの条約作成にあたってもイニシアティブを発揮し、また2006年に開催された条約の第1回締約国会議においては、条約の実際の運用について実質的な審議をしていく無形文化遺産委員国メンバーに選ばれました。2007年には東京において第2回政府間委員会を開催し、条約運用の核となる諸ルールの策定に議長国として貢献しました。2018年~2022年は再々度政府間委員会委員国に選出されました。

(写真)第2回政府間委員会の様子 第2回政府間委員会(2007年9月、於:東京)

 2023年2月までに「無形文化遺産代表一覧表」へは567件が記載され、日本からは「山・鉾・屋台行事」、「来訪神:仮面・仮装の神々」、「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」、「風流踊」など22件が記載されています。

 また、条約の趣旨に則り、アジア太平洋地域において無形文化遺産調査研究を促進するため、ユネスコとの協定を締結し、2011年10月に「アジア太平洋無形文化遺産研究センター別ウィンドウで開く」を設置しました。

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