広報文化外交
無形文化遺産の保護
「文化遺産」というと、寺院などの建造物や遺跡などを思い浮かべがちですが、言語、音楽、舞踏、手工芸、祝祭などの無形文化財の存在も忘れてはなりません。無形の伝統文化は各国、各民族にとって精神文化の象徴であり、同時に人類共通の貴重な財産です。グローバリゼーションの進展に伴い、国際社会において「文化の多様性」の認識および尊重について活発に議論されていますが、特に各民族の文化的アイデンティティの根元をなす無形文化財の保護の重要性が世界的に注目されています。
無形の伝統文化は、一度失われてしまえば二度と取り戻すことはできません。アフリカでは、「老人が一人死ぬことは、図書館が一つ焼失することに値する」と言われています。近年、技芸保持者の老齢化及び継承者の不足等により、消滅の危機に瀕している無形文化財が少なくなく、その保存・振興の緊急性は極めて高いものとなっています。
日本は1993年にユネスコに「無形文化遺産保護日本信託基金」を設置し、2017年までに1,669万ドルを拠出し、現在までに、世界各地で100件以上のプロジェクトを実施してきました。(2018年に「ユネスコ拠出金」に統合。)
「消滅の危機に瀕した世界の言語地図の作成」といった言語保存のための事業や「クッティヤタムのサンスクリット劇の保存」、「ウガンダの樹皮生地制作」といった個別の無形文化遺産の保存事業の他、日本が作成段階で主導的役割を果たした「無形文化遺産の保護に関する条約」が2006年に発効したことを受け、無形文化遺産の宝庫である大洋州地域において各国が条約に加盟するための国内体制整備を支援する事業も行っています。また、これらの支援に加え、条約を締結した国が条約をよりよく履行するための支援も実施しています。
保護の対象となりうる無形文化財には、少数民族に伝わるものも多いことから、我が国としては、国連機関であるユネスコを介して、また、あくまでも関係各国政府の意向を尊重しながら、協力を行っています。
ユネスコ無形文化遺産保護日本信託基金による実施案件
実施済み案件
番号 | 案件名 | 場所 | 実施期間 |
---|---|---|---|
1 | ナイジェリアにおける無形文化遺産保護条約履行促進の支援事業 | ナイジェリア | 2018年7月~2020年7月 |
2 | アジア太平洋地域における国のキャパシティの強化を通じた無形文化遺産の保護 (第二期) | フィジー、ラオス、モンゴル、サモア、スリランカ | 2015年4月~2017年10月 |
3 | エクアドルにおける無形文化遺産保護能力の強化事業 | エクアドル | 2015年4月~2017年6月 |
4 | 人材育成(日本人専門家の派遣) (第二期) | ユネスコ本部 | 2015年3月~2016年3月 |
5 | 人材育成(無形サブファンドへの拠出) | ユネスコ本部 | 2015年3月 |
6 | カラワヤ族の無形文化遺産保護 | ボリビア | 2014年2月~2016年6月 |
7 | ベリーズ、ジャマイカ及びトリニダード・トバゴにおける無形文化遺産保護条約履行のためのキャパシティ強化を通じた無形文化遺産の保護 | ベリーズ、ジャマイカ、トリニダード・トバゴ | 2012年6月~2015年12月 |
8 | アルゼンチン、パラグアイ及びウルグアイにおける無形文化遺産保護条約履行のためのキャパシティ強化を通じた無形文化遺産の保護 | アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ | 2012年6月~2014年3月 |
9 | アジア太平洋地域における国のキャパシティ強化を通じた無形文化遺産の保護 | ブータン、カンボジア、モンゴル、ネパール、パプアニューギニア、サモア、スリランカ、東ティモール | 2011年11月~2015年12月 |
10 | 人材育成(日本人専門家の派遣) | ユネスコ本部 | 2011年6月~2014年7月 |
11 | 人材育成(無形サブファンドへの拠出) | ユネスコ本部 | 2011年6月 |
12 | ケニアの無形遺産の写真による記録 | ケニア | 2010年9月~2011年10月 |
13 | 無形文化遺産保護条約運用指針に関するオープンエンドの政府間ワーキンググループ | フランス | 2010年3月 |
14 | ケニアの2つのコミュニティにおける伝統的食文化の保護 | ケニア | 2009年9月~2012年12月 |
15 | 大洋州5ヵ国における無形文化遺産条約に関する国内協議会合 | パラオ、クック諸島、他3ヵ国 | 2009年7月~2011年6月 |
16 | バウルの歌 | バングラデシュ | 2008年10月~2010年10月 |
17 | 無形文化遺産条約に関する地域能力開発ワークショップ及び国内協議の開催 | トンガ、その他大洋州17ヵ国 | 2008年10月~2009年5月 |
18 | シムボアの保全 | カーボヴェルデ | 2008年6月~2011年3月 |
19 | ブルンジにおける無形文化遺産及び右保有者のインベントリー作成:プロモーション活動の企画 | ブルンジ | 2008年6月~2009年7月 |
20 | デリアル・ラク―におけるブードゥー教の聖歌の保護 | ハイチ | 2008年5月~2010年2月 |
21 | ソマリア伝統芸能の保全 | ケニア、ソマリア | 2008年4月~2009年9月 |
22 | パプアニューギニアにおける無形文化遺産条約批准に関する協議のためのワークショップ | パプアニューギニア、その他大洋州17ヵ国 | 2008年3月~2008年12月 |
23 | 「Songs of the Moon」伝統的スワヒリ音楽 | タンザニア(ザンジバル)、コモロ | 2008年2月~2009年2月 |
24 | 無形遺産条約の促進のための大洋州における地域会合 | フィジー | 2007年10月~2008年7月 |
25 | ウガンダの樹皮生地制作 | ウガンダ | 2007年9月~2009年8月 |
26 | エル・グエグエンセ | ニカラグア | 2007年4月~2009年12月 |
27 | クタマクのバタマリバ人の無形文化遺産 | トーゴ | 2007年4月~2009年6月 |
28 | ユネスコにおける写真展 | - | 2007年2月~2008年8月 |
29 | アルバニアの民族類似多声音楽 | アルバニア | 2006年12月~2010年3月 |
30 | ムベンデ・ジェルサレマの踊り | ジンバブエ | 2006年12月~2009年12月 |
31 | タキーレとその織物技術 | ペルー | 2006年12月~2009年6月 |
32 | アフリカの角におけるアファール族・ソマリ族の伝統ゲーム | ジブチ | 2006年12月~2009年3月 |
33 | イファの託宣 | ナイジェリア | 2006年11月~2011年6月 |
34 | カンクラング(マンディング族の成年の儀式) | セネガル、ガンビア | 2006年11月~2011年3月 |
35 | チョッピ族のティンビラ | モザンビーク | 2006年11月~2009年12月 |
36 | 癒しの踊り、ヴィンブザ | マラウィ | 2006年11月~2009年12月 |
37 | グレワムクル | マラウィ、モザンビーク、ザンビア | 2006年11月~2009年12月 |
38 | ドラミツェの太鼓と仮面舞踏 | ブータン | 2006年11月~2009年8月 |
39 | ドュドューク音楽 | アルメニア | 2006年11月~2009年4月 |
40 | ヤーラルとデガルの文化的空間 | マリ | 2006年11月~2009年4月 |
41 | マキシの仮面舞踏 | ザンビア | 2006年10月~2009年12月 |
42 | ワジャビ族の口承及び絵画による表現 | ブラジル | 2006年7月~2008年9月 |
43 | ガリフナの言語、舞踏、及び音楽 | ベリーズ、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア | 2006年4月~2009年6月 |
44 | イエメン・サヌアの歌 | イエメン | 2006年3月~2009年1月 |
45 | アゼルバイジャン 「ムガーム音楽」 | アゼルバイジャン | 2006年1月~2011年9月 |
46 | メラネシア・太平洋固有の言語の再活性化と保存(フェーズ2) | フィジー、パプアニューギニア、ソロモン諸島、バヌアツ | 2006年1月~2009年10月 |
47 | カンボジアの宮廷舞踏 | カンボジア | 2005年11月~2008年12月 |
48 | トゥンバ・フランセーサ | キューバ | 2005年6月~2008年8月 |
49 | オルロ・カーニバル | ボリビア | 2005年4月~2011年10月 |
50 | ヴィラ・メラのコンゴ族の聖霊結社の文化空間 | ドミニカ共和国 | 2005年4月~2009年12月 |
51 | バヌアツの砂絵 | バヌアツ | 2005年3月~2008年7月 |
52 | キルギス叙事詩の語り部、アキンズの技芸 | キルギス | 2005年2月~2009年10月 |
53 | バランキーヤのカーニバル | コロンビア | 2005年1月~2009年4月 |
54 | ベトナムの宮廷音楽、ニャ・ニャック | ベトナム | 2005年1月~2009年3月 |
55 | ラカラカの舞踏と歌唱 | トンガ | 2005年1月~2008年12月 |
56 | 第3回世界無形遺産傑作宣言の準備及びフォローアップ活動 | - | 2005年1月~2007年11月 |
57 | 中央アジアの伝統音楽、シャシュマカーム | タジキスタン、ウズベキスタン | 2005年1月~2007年10月 |
58 | ザフィマニリの彫木知識 | マダガスカル | 2004年12月~2008年9月 |
59 | アカ・ピグミー族の多声合唱 | 中央アフリカ、コンゴ共和国 | 2004年12月~2008年7月 |
60 | ワヤン人形劇 | インドネシア | 2004年12月~2007年11月 |
61 | 馬頭琴(モリン・ホール)の伝統音楽 | モンゴル | 2004年9月~2007年9月 |
62 | バヌアツ伝統的貨幣銀行 | バヌアツ | 2004年7月~2007年1月 |
63 | リトアニアの十字架手工芸 | リトアニア | 2004年4月~2005年7月 |
64 | ジャマ・エル・フナ広場の文化的空間 | モロッコ | 2004年3月~2008年12月 |
65 | クッティヤタム・サンスクリット劇 | インド | 2004年1月~2007年2月 |
66 | ジェレデ口承遺産 | ベニン、トーゴ、ナイジェリア | 2003年10月~2007年12月 |
67 | グルジアの多声音楽の歌謡 | グルジア | 2003年7月~2006年11月 |
68 | コロンビア無形文化財保存キャンペーン | コロンビア | 2003年7月~2005年9月 |
69 | ボイスン地域の文化的空間 | ウズベキスタン | 2003年5月~2006年6月 |
70 | イフガオ族の歌、フドゥフドゥ | フィリピン | 2003年5月~2008年4月 |
71 | 無形文化遺産保護条約作成政府間会合 (フェーズ:II) | フランス | 2003年2月 |
72 | サパラの人々口承遺産及び文化的表現 | ペルー、エクアドル | 2003年1月~2007年9月 |
73 | サマルカンド・ブルー保存フォローアップ | ウズベキスタン | 2003年1月~2007年5月 |
74 | 第2回傑作宣言準備活動プロジェクト:フェーズ2 | フランス | 2003年1月~2004年12月 |
75 | 無形遺産傑作宣言データベース | ユネスコ(対象遺産国:インド、中国、モロッコ、グルジア、ベリーズ(ホンジュラス、ニカラグア)) | 2002年12月~2005年12月 |
76 | 無形文化遺産保護条約作成政府間会合 (フェーズ:I) | フランス | 2002年12月~2003年3月 |
77 | 昆曲 | 中国 | 2002年5月~2004年12月 |
78 | ソソバラの文化空間 | ギニア | 2002年1月~2008年6月 |
79 | リオ・デ・ジャネイロ国際専門家会合 | ブラジル(リオ・デ・ジャネイロ) | 2001年12月~2003年12月 |
80 | 世界無形遺産傑作宣言に関するアジア・太平洋セミナー | 日本(東京) | 2001年9月~2002年4月 |
81 | 世界無形遺産傑作宣言に係る公演 | フランス(パリ) | 2001年9月~2002年4月 |
82 | 人間国宝ワークショップ | フィリピン、日本(東京) | 2001年9月~2002年3月 |
83 | ブータンの無形文化遺産リスト編纂プロジェクト | ブータン | 2001年5月~2004年12月 |
84 | 「東南アジアの匠」シンポジウム | 日本(大阪、京都) | 2001年3月~2001年4月 |
85 | リトアニアの無形文化遺産インベントリー作成 | リトアニア | 2000年9月~2001年9月 |
86 | カンボジアの伝統舞踏復興 | カンボジア | 2000年8月~2001年8月 |
87 | 消えゆく世界の少数言語地図の改訂 | 2000年8月~2001年4月 | |
88 | アジア民族衣装作成技能の継承に関するワークショップ | 中国 | 2000年7月~2002年7月 |
89 | メラネシア・太平洋固有の言語の再活性化と保存(フェーズ1) | フィジー、パプアニューギニア、ソロモン諸島、バヌアツ | 2000年6月~2003年2月 |
90 | 第2回傑作宣言準備活動プロジェクト:フェーズ1 | スペイン(エルチェ) | 2000年6月~2001年10月 |
91 | 「サマルカンド・ブルー」保存プロジェクト | ウズベキスタン | 1999年9月~2000年7月 |
92 | モンゴル口伝遺産の映像記録 | モンゴル | 1999年8月~2002年5月 |
93 | 「伝統・民族文化の保全に関する勧告」実施に関する世界会議 | アメリカ(ワシントン) | 1999年6月 |
94 | 中央アジアの叙事詩に関するシンポジウム | モンゴル | 1997年8月 |
95 | 東アジアの漆器に関する国際ワークショップ | ミャンマー | 1997年7月~2000年12月 |
96 | ラオスの47の民族に関する書籍の発行プロジェクト | ラオス | 1997年7月~2000年12月 |
97 | ベトナムの53の民族に関する書籍の発行プロジェクト | ベトナム | 1997年7月~2000年12月 |
98 | 東アジアの漆器に関するアルバム作成プロジェクト | ミャンマー | 1997年7月 |
99 | ラオス無形文化財保存振興専門家会議 | ラオス | 1996年10年 |
100 | アジア漆技術保存に関するワークショップ | ミャンマー | 1996年2月 |
101 | アジア太平洋無形伝統文化保存国際会議 | 日本(東京) | 1995年9月 |
102 | ベトナムの無形文化財保存に関する専門家会合フォローアップ事業(「ベトナムのセダン」出版) | ベトナム | 1995年~1998年 |
103 | ベトナムの無形文化財保存に関する専門家会合 | ベトナム | 1994年3月 |
104 | 中国少数民族の絶滅の危機に瀕する伝統口承文学の保存 | 中国 | 1994年~2003年12月 |
105 | 中国民間口承文芸保存プロジェクト | 中国 | 1994年~1998年 |
106 | 消えゆく世界の少数言語地図作成 | 1994年~1996年 | |
107 | 無形文化財保存に関する国際会議 | フランス(パリ) | 1993年6月 |