広報文化外交

令和5年1月20日

 「文化遺産」というと、寺院などの建造物や遺跡などを思い浮かべがちですが、言語、音楽、舞踏、手工芸、祝祭などの無形文化財の存在も忘れてはなりません。無形の伝統文化は各国、各民族にとって精神文化の象徴であり、同時に人類共通の貴重な財産です。グローバリゼーションの進展に伴い、国際社会において「文化の多様性」の認識および尊重について活発に議論されていますが、特に各民族の文化的アイデンティティの根元をなす無形文化財の保護の重要性が世界的に注目されています。

 無形の伝統文化は、一度失われてしまえば二度と取り戻すことはできません。アフリカでは、「老人が一人死ぬことは、図書館が一つ焼失することに値する」と言われています。近年、技芸保持者の老齢化及び継承者の不足等により、消滅の危機に瀕している無形文化財が少なくなく、その保存・振興の緊急性は極めて高いものとなっています。

 日本は1993年にユネスコに「無形文化遺産保護日本信託基金」を設置し、2017年までに1,669万ドルを拠出し、現在までに、世界各地で100件以上のプロジェクトを実施してきました。(2018年に「ユネスコ拠出金」に統合。)

 「消滅の危機に瀕した世界の言語地図の作成」といった言語保存のための事業や「クッティヤタムのサンスクリット劇の保存」、「ウガンダの樹皮生地制作」といった個別の無形文化遺産の保存事業の他、日本が作成段階で主導的役割を果たした「無形文化遺産の保護に関する条約」が2006年に発効したことを受け、無形文化遺産の宝庫である大洋州地域において各国が条約に加盟するための国内体制整備を支援する事業も行っています。また、これらの支援に加え、条約を締結した国が条約をよりよく履行するための支援も実施しています。

 保護の対象となりうる無形文化財には、少数民族に伝わるものも多いことから、我が国としては、国連機関であるユネスコを介して、また、あくまでも関係各国政府の意向を尊重しながら、協力を行っています。

ユネスコ無形文化遺産保護日本信託基金による実施案件

実施済み案件

番号 案件名 場所 実施期間
1 ナイジェリアにおける無形文化遺産保護条約履行促進の支援事業 ナイジェリア 2018年7月~2020年7月
2 アジア太平洋地域における国のキャパシティの強化を通じた無形文化遺産の保護 (第二期) フィジー、ラオス、モンゴル、サモア、スリランカ 2015年4月~2017年10月
3 エクアドルにおける無形文化遺産保護能力の強化事業 エクアドル 2015年4月~2017年6月
4 人材育成(日本人専門家の派遣) (第二期) ユネスコ本部 2015年3月~2016年3月
5 人材育成(無形サブファンドへの拠出) ユネスコ本部 2015年3月
6 カラワヤ族の無形文化遺産保護 ボリビア 2014年2月~2016年6月
7 ベリーズ、ジャマイカ及びトリニダード・トバゴにおける無形文化遺産保護条約履行のためのキャパシティ強化を通じた無形文化遺産の保護 ベリーズ、ジャマイカ、トリニダード・トバゴ 2012年6月~2015年12月
8 アルゼンチン、パラグアイ及びウルグアイにおける無形文化遺産保護条約履行のためのキャパシティ強化を通じた無形文化遺産の保護 アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ 2012年6月~2014年3月
9 アジア太平洋地域における国のキャパシティ強化を通じた無形文化遺産の保護 ブータン、カンボジア、モンゴル、ネパール、パプアニューギニア、サモア、スリランカ、東ティモール 2011年11月~2015年12月
10 人材育成(日本人専門家の派遣) ユネスコ本部 2011年6月~2014年7月
11 人材育成(無形サブファンドへの拠出) ユネスコ本部 2011年6月
12 ケニアの無形遺産の写真による記録 ケニア 2010年9月~2011年10月
13 無形文化遺産保護条約運用指針に関するオープンエンドの政府間ワーキンググループ フランス 2010年3月
14 ケニアの2つのコミュニティにおける伝統的食文化の保護 ケニア 2009年9月~2012年12月
15 大洋州5ヵ国における無形文化遺産条約に関する国内協議会合 パラオ、クック諸島、他3ヵ国 2009年7月~2011年6月
16 バウルの歌 バングラデシュ 2008年10月~2010年10月
17 無形文化遺産条約に関する地域能力開発ワークショップ及び国内協議の開催 トンガ、その他大洋州17ヵ国 2008年10月~2009年5月
18 シムボアの保全 カーボヴェルデ 2008年6月~2011年3月
19 ブルンジにおける無形文化遺産及び右保有者のインベントリー作成:プロモーション活動の企画 ブルンジ 2008年6月~2009年7月
20 デリアル・ラク―におけるブードゥー教の聖歌の保護 ハイチ 2008年5月~2010年2月
21 ソマリア伝統芸能の保全 ケニア、ソマリア 2008年4月~2009年9月
22 パプアニューギニアにおける無形文化遺産条約批准に関する協議のためのワークショップ パプアニューギニア、その他大洋州17ヵ国 2008年3月~2008年12月
23 「Songs of the Moon」伝統的スワヒリ音楽 タンザニア(ザンジバル)、コモロ 2008年2月~2009年2月
24 無形遺産条約の促進のための大洋州における地域会合 フィジー 2007年10月~2008年7月
25 ウガンダの樹皮生地制作 ウガンダ 2007年9月~2009年8月
26 エル・グエグエンセ ニカラグア 2007年4月~2009年12月
27 クタマクのバタマリバ人の無形文化遺産 トーゴ 2007年4月~2009年6月
28 ユネスコにおける写真展 2007年2月~2008年8月
29 アルバニアの民族類似多声音楽 アルバニア 2006年12月~2010年3月
30 ムベンデ・ジェルサレマの踊り ジンバブエ 2006年12月~2009年12月
31 タキーレとその織物技術 ペルー 2006年12月~2009年6月
32 アフリカの角におけるアファール族・ソマリ族の伝統ゲーム ジブチ 2006年12月~2009年3月
33 イファの託宣 ナイジェリア 2006年11月~2011年6月
34 カンクラング(マンディング族の成年の儀式) セネガル、ガンビア 2006年11月~2011年3月
35 チョッピ族のティンビラ モザンビーク 2006年11月~2009年12月
36 癒しの踊り、ヴィンブザ マラウィ 2006年11月~2009年12月
37 グレワムクル マラウィ、モザンビーク、ザンビア 2006年11月~2009年12月
38 ドラミツェの太鼓と仮面舞踏 ブータン 2006年11月~2009年8月
39 ドュドューク音楽 アルメニア 2006年11月~2009年4月
40 ヤーラルとデガルの文化的空間 マリ 2006年11月~2009年4月
41 マキシの仮面舞踏 ザンビア 2006年10月~2009年12月
42 ワジャビ族の口承及び絵画による表現 ブラジル 2006年7月~2008年9月
43 ガリフナの言語、舞踏、及び音楽 ベリーズ、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア 2006年4月~2009年6月
44 イエメン・サヌアの歌 イエメン 2006年3月~2009年1月
45 アゼルバイジャン 「ムガーム音楽」 アゼルバイジャン 2006年1月~2011年9月
46 メラネシア・太平洋固有の言語の再活性化と保存(フェーズ2) フィジー、パプアニューギニア、ソロモン諸島、バヌアツ 2006年1月~2009年10月
47 カンボジアの宮廷舞踏 カンボジア 2005年11月~2008年12月
48 トゥンバ・フランセーサ キューバ 2005年6月~2008年8月
49 オルロ・カーニバル ボリビア 2005年4月~2011年10月
50 ヴィラ・メラのコンゴ族の聖霊結社の文化空間 ドミニカ共和国 2005年4月~2009年12月
51 バヌアツの砂絵 バヌアツ 2005年3月~2008年7月
52 キルギス叙事詩の語り部、アキンズの技芸 キルギス 2005年2月~2009年10月
53 バランキーヤのカーニバル コロンビア 2005年1月~2009年4月
54 ベトナムの宮廷音楽、ニャ・ニャック ベトナム 2005年1月~2009年3月
55 ラカラカの舞踏と歌唱 トンガ 2005年1月~2008年12月
56 第3回世界無形遺産傑作宣言の準備及びフォローアップ活動 2005年1月~2007年11月
57 中央アジアの伝統音楽、シャシュマカーム タジキスタン、ウズベキスタン 2005年1月~2007年10月
58 ザフィマニリの彫木知識 マダガスカル 2004年12月~2008年9月
59 アカ・ピグミー族の多声合唱 中央アフリカ、コンゴ共和国 2004年12月~2008年7月
60 ワヤン人形劇 インドネシア 2004年12月~2007年11月
61 馬頭琴(モリン・ホール)の伝統音楽 モンゴル 2004年9月~2007年9月
62 バヌアツ伝統的貨幣銀行 バヌアツ 2004年7月~2007年1月
63 リトアニアの十字架手工芸 リトアニア 2004年4月~2005年7月
64 ジャマ・エル・フナ広場の文化的空間 モロッコ 2004年3月~2008年12月
65 クッティヤタム・サンスクリット劇 インド 2004年1月~2007年2月
66 ジェレデ口承遺産 ベニン、トーゴ、ナイジェリア 2003年10月~2007年12月
67 グルジアの多声音楽の歌謡 グルジア 2003年7月~2006年11月
68 コロンビア無形文化財保存キャンペーン コロンビア 2003年7月~2005年9月
69 ボイスン地域の文化的空間 ウズベキスタン 2003年5月~2006年6月
70 イフガオ族の歌、フドゥフドゥ フィリピン 2003年5月~2008年4月
71 無形文化遺産保護条約作成政府間会合 (フェーズ:II) フランス 2003年2月
72 サパラの人々口承遺産及び文化的表現 ペルー、エクアドル 2003年1月~2007年9月
73 サマルカンド・ブルー保存フォローアップ ウズベキスタン 2003年1月~2007年5月
74 第2回傑作宣言準備活動プロジェクト:フェーズ2 フランス 2003年1月~2004年12月
75 無形遺産傑作宣言データベース ユネスコ(対象遺産国:インド、中国、モロッコ、グルジア、ベリーズ(ホンジュラス、ニカラグア)) 2002年12月~2005年12月
76 無形文化遺産保護条約作成政府間会合 (フェーズ:I) フランス 2002年12月~2003年3月
77 昆曲 中国 2002年5月~2004年12月
78 ソソバラの文化空間 ギニア 2002年1月~2008年6月
79 リオ・デ・ジャネイロ国際専門家会合 ブラジル(リオ・デ・ジャネイロ) 2001年12月~2003年12月
80 世界無形遺産傑作宣言に関するアジア・太平洋セミナー 日本(東京) 2001年9月~2002年4月
81 世界無形遺産傑作宣言に係る公演 フランス(パリ) 2001年9月~2002年4月
82 人間国宝ワークショップ フィリピン、日本(東京) 2001年9月~2002年3月
83 ブータンの無形文化遺産リスト編纂プロジェクト ブータン 2001年5月~2004年12月
84 「東南アジアの匠」シンポジウム 日本(大阪、京都) 2001年3月~2001年4月
85 リトアニアの無形文化遺産インベントリー作成 リトアニア 2000年9月~2001年9月
86 カンボジアの伝統舞踏復興 カンボジア 2000年8月~2001年8月
87 消えゆく世界の少数言語地図の改訂   2000年8月~2001年4月
88 アジア民族衣装作成技能の継承に関するワークショップ 中国 2000年7月~2002年7月
89 メラネシア・太平洋固有の言語の再活性化と保存(フェーズ1) フィジー、パプアニューギニア、ソロモン諸島、バヌアツ 2000年6月~2003年2月
90 第2回傑作宣言準備活動プロジェクト:フェーズ1 スペイン(エルチェ) 2000年6月~2001年10月
91 「サマルカンド・ブルー」保存プロジェクト ウズベキスタン 1999年9月~2000年7月
92 モンゴル口伝遺産の映像記録 モンゴル 1999年8月~2002年5月
93 「伝統・民族文化の保全に関する勧告」実施に関する世界会議 アメリカ(ワシントン) 1999年6月
94 中央アジアの叙事詩に関するシンポジウム モンゴル 1997年8月
95 東アジアの漆器に関する国際ワークショップ ミャンマー 1997年7月~2000年12月
96 ラオスの47の民族に関する書籍の発行プロジェクト ラオス 1997年7月~2000年12月
97 ベトナムの53の民族に関する書籍の発行プロジェクト ベトナム 1997年7月~2000年12月
98 東アジアの漆器に関するアルバム作成プロジェクト ミャンマー 1997年7月
99 ラオス無形文化財保存振興専門家会議 ラオス 1996年10年
100 アジア漆技術保存に関するワークショップ ミャンマー 1996年2月
101 アジア太平洋無形伝統文化保存国際会議 日本(東京) 1995年9月
102 ベトナムの無形文化財保存に関する専門家会合フォローアップ事業(「ベトナムのセダン」出版) ベトナム 1995年~1998年
103 ベトナムの無形文化財保存に関する専門家会合 ベトナム 1994年3月
104 中国少数民族の絶滅の危機に瀕する伝統口承文学の保存 中国 1994年~2003年12月
105 中国民間口承文芸保存プロジェクト 中国 1994年~1998年
106 消えゆく世界の少数言語地図作成   1994年~1996年
107 無形文化財保存に関する国際会議 フランス(パリ) 1993年6月
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