外交青書・白書
第2章 しなやかで、揺るぎない地域外交

2 地域機構

中南米地域にはラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)3米州機構(OAS)4のほか、以下のような地域枠組みが存在し、様々な課題について政策調整を行っている。また、36か国から成るアジア中南米協力フォーラム(FEALAC)5もあり、11月には6人の各国若手行政官を日本に招へいし、「食料安全保障におけるDX・GXと科学技術の活用」について意見交換を行った。

(1)太平洋同盟

太平洋同盟は、域内のモノ・サービスなどの移動の自由やアジア太平洋への進出基盤の構築などを目的とし、チリ、コロンビア、メキシコ及びペルーから構成され、2021年には、シンガポールが初の準加盟国となった。2023年12月末時点で、エクアドル及びコスタリカが加盟国入りに向け、また、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド及び韓国が準加盟国入りに向け交渉中である。

日本は、太平洋同盟のオブザーバー国であり、基本的価値を共有するグループとして、連携を重視している。2022年11月にメキシコシティで開催された太平洋同盟関連会合では、林外務大臣がビデオメッセージで参加し、防災分野などにおける太平洋同盟との具体的な協力推進について発信した。

(2)南米南部共同市場(メルコスール:MERCOSUR)6

アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイから成るメルコスールは、12月、これまで準加盟国であったボリビアの正式加盟を決定した。メルコスールでは、一部の品目を除き、域内関税が原則として撤廃されている。同12月には、シンガポールとの間の自由貿易協定(FTA)7に署名し、韓国、カナダなどとも交渉中である。なお、ベネズエラは加盟停止中である。

(3)カリブ共同体(カリコム:CARICOM)8

カリコムは、カリブ地域の14か国による経済統合や外交政策の調整などを目的に設立され、国際場裡で協調行動を取ることで存在感を示している。カリコム諸国は比較的所得水準が高い国が多い一方、毎年のようにハリケーンによる甚大な被害を受けるなど、自然災害の脅威にさらされているほか、人口・経済規模の小ささから生じる小島嶼(しょ)国特有の脆(ぜい)弱性を抱えている。ハイチでは2021年の大統領暗殺後、国内政治の混乱により行政及び立法制度が十分に機能しておらず、武装集団(ギャング)の勢力も拡大したことで、国民の人道状況の悪化も懸念されている。これを受け、10月には国連安保理がハイチへ多国籍治安ミッションの派遣を決定した。日本は、同ミッション派遣を踏まえ、治安・人道状況の回復を目的として約1,400万ドルの追加支援を決定した。

日本は、対カリコム協力の3本柱(小島嶼国特有の脆弱性克服を含む持続的発展に向けた協力、交流と友好の絆(きずな)の拡大と深化、国際社会の諸課題の解決に向けた協力)に基づいた外交を展開しており、所得水準の高い国に対しても各国の開発ニーズや負担能力に応じて必要な協力を行っている。

日本との関係では、2024年に日・カリブ交流年を迎えるに当たり、5月に林外務大臣が日本の外務大臣として初めてトリニダード・トバゴとバルバドスを訪問したほか、同月、武井外務副大臣がジャマイカで開催されたカリコム外交・共同体関係理事会会議(COFCOR)9に参加し、カリコム各国の外相と共に日・カリブ交流年2024のロゴマークを発表した。また、9月の国連総会において、上川外務大臣がモトリー・バルバドス首相と会談を実施するなど、二国間及びカリコムとの関係強化のための意見交換を行った。2024年2月にはジョンソン=スミス・ジャマイカ外務・貿易相が外務省賓客として訪日し、外相会談を実施したほか、柘植芳文外務副大臣と共に外交関係樹立60周年記念レセプションに出席した。

日・トリニダード・トバゴ外相会談(5月1日、トリニダード・トバゴ)
日・トリニダード・トバゴ外相会談(5月1日、トリニダード・トバゴ)
武井外務副大臣のカリコム外交・共同体関係理事会会議(COFCOR)出席、「日・カリブ交流年2024」ロゴマーク発表(5月17日、ジャマイカ・キングストン)
武井外務副大臣のカリコム外交・共同体関係理事会会議(COFCOR)出席、「日・カリブ交流年2024」ロゴマーク発表(5月17日、ジャマイカ・キングストン)
上川外務大臣とモトリー・バルバドス首相との会談(9月20日、米国・ニューヨーク)
上川外務大臣とモトリー・バルバドス首相との会談
(9月20日、米国・ニューヨーク)
ジョンソン=スミス外務・貿易相(中央)及びリチャーズ駐日ジャマイカ大使(右)と共に日・ジャマイカ外交関係樹立60周年記念レセプションに出席する柘植外務副大臣(2024年2月8日、東京)
ジョンソン=スミス外務・貿易相(中央)及びリチャーズ駐日ジャマイカ大使(右)と共に日・ジャマイカ外交関係樹立60周年記念レセプションに出席する柘植外務副大臣(2024年2月8日、東京)

3 CELAC:Comunidad de Estados Latinoamericanos y Caribeños(Community of Latin American and Caribbean States)

4 OAS:Organization of American States

5 FEALAC:Forum for East Asia-Latin America Cooperation

6 MERCOSUR:Mercado Común del Sur (Southern Common Market)

7 FTA:Free Trade Agreement

8 CARICOM:Caribbean Community (加盟国:アンティグア・バーブーダ、ガイアナ、グレナダ、ジャマイカ、スリナム、セントクリストファー・ネービス、セントビンセント及びグレナディーン諸島、セントルシア、ドミニカ国、トリニダード・トバゴ、ハイチ、バハマ、バルバドス、ベリーズ)

9 COFCOR:Council for Foreign and Community Relations

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