外交青書・白書
第2章 しなやかで、揺るぎない地域外交

3 各国との連携・協力

2023年においても、日本は、FOIPの実現に向け外交活動を積極的に推進した。

(1)米国

1月、ワシントンD.C.を訪問した岸田総理大臣は、バイデン大統領と日米首脳会談を行い、両首脳は、日米でFOIP実現に向けた取組を推進していくことで改めて一致した。会談の成果として発出された日米共同声明においても、今日の日米協力が、自由で開かれたインド太平洋と平和で繁栄した世界という共通のビジョンに根ざし、法の支配を含む共通の価値や原則に導かれた、前例のないものであることが確認された。

その後も、累次にわたる日米首脳会談や日米外相会談、また、1月の日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)や11月の日米経済政策協議委員会(経済版「2+2」)といった機会を通じ、インド太平洋地域の平和と安定の礎である日米同盟を中核とする強固な日米関係を基礎にしながら、外交・安全保障や経済を始めとする様々な分野で引き続き緊密に連携していくことを確認してきている。

(2)東南アジア諸国連合(ASEAN)

日本とASEANの間では、2020年11月に「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)協力についての第23回日ASEAN首脳会議共同声明」を発出し、AOIPとFOIPが本質的な原則を共有していることを確認した。2023年7月の日・ASEAN外相会議では、林外務大臣から、3月に岸田総理大臣が発表したFOIPのための新たなプランにおいて、東南アジアを重要地域と明確に位置付けていることに言及しつつ、日本は、AOIP優先協力4分野(海洋協力、連結性、SDGs、経済等)に沿った多くの具体的協力案件を実施していると発言した。また、9月のASEAN関連首脳会議に際し、ハード・ソフト両面で連結性を一層強化するため、「日・ASEAN包括的連結性イニシアティブ」を発表した。さらに、日・ASEAN首脳会議においては、岸田総理大臣から、AOIPへの支持及び開放性、透明性、包摂性、ルールに基づく枠組みといったAOIPが掲げる原則や活動に多くの国が共感し、協力するよう共に取り組むと表明した。その上で、12月の日・ASEAN特別首脳会議では、新たな協力のビジョンを示す共同ビジョンステートメントと幅広い具体的協力を示す実施計画を採択し、全ての国が平和と繁栄を追求でき、民主主義、法の支配、良い統治、人権と基本的自由の尊重といった原則が守られる世界を目指すことでASEANと一致した。

(3)カナダ

1月、岸田総理大臣がオタワを訪問した際の首脳会談において、2022年に両国で発表した「FOIPに資する日加アクションプラン」の着実な実施を通じ、FOIP実現に向けて連携することを確認した。5月及び11月の首脳会談や10月の外相会談を含め、同アクションプランの安全保障及び経済安全保障分野における協力などにおいて着実な進展を確認した。

(4)オーストラリア

8月、日豪部隊間協力円滑化協定(RAA)が発効し、日・オーストラリア両国がインド太平洋地域の平和と安定に一層貢献していくための枠組みが新たに追加された。9月にインドで開催された日豪首脳会談では、両首脳は、本協定の下での防衛協力の進展を歓迎するとともに、FOIPへの揺るぎないコミットメントを確認する新たな安全保障協力に関する日豪共同宣言(2022年10月署名)を指針に具体的協力を強化していくことで一致した。

(5)インド

3月、デリーを訪問した岸田総理大臣は、インド世界問題評議会(ICWA)において政策スピーチを行い、FOIPのための新たなプランを発表した。また、5月の日印首脳会談の際には、二国間関係についての議論において、FOIPの重要性につき認識を共有し、様々な分野で協力していくことを確認した。さらに、7月の第15回日印外相間戦略対話においても、基本的価値と戦略的利益を共有する日印両国がFOIPの実現に向けて連携していくことの重要性を確認した。

(6)日米豪印

日米豪印4か国は、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序を強化していくとの目標の下、FOIPの実現に向けて、重要・新興技術、質の高いインフラ、海洋安全保障を始め様々な分野で実践的な協力を進め、より多くの国々へ連携を広げていく重要性を共有している。また、4か国は、AOIPを全面的に支持しており、FOIPに関する欧州を始めとする各国の前向きな取組を歓迎している。5月、日本で開催された日米豪印首脳会合において、4か国の首脳は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜く決意を示し、地域に真に裨(ひ)益する実践的な協力を展開していくことの重要性を確認した。また、9月に米国で行われた日米豪印外相会合において、FOIPの実現に向けた確固たるコミットメントを改めて確認した。

(7)韓国

3月の日韓首脳会談において、両首脳は、FOIPを実現する重要性について確認し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くため同志国が力を合わせていく必要性について認識を共有した。また、その後の首脳会談などの機会にも、FOIPの実現に向けた連携について意見交換し、緊密に意思疎通していくことで一致した。

(8)日米韓

日米韓3か国の連携は北朝鮮への対応を超えて地域の平和と安定にとっても不可欠であるとの認識の下、3か国の間では、首脳会合、外相会合、次官協議、六者会合首席代表者会合などの開催を通じ、重層的に協力を進めてきている。こうした中で、FOIPの実現に向けても、3か国間の連携を確認してきている。7月の日米韓外相会合において、FOIPの実現に向けた連携などについて意見交換を行った。また、8月、米国のキャンプ・デービッドにおいて開催された日米韓首脳会合において、3か国の首脳は、繁栄し、連結され、強靱で、安定し、安全なインド太平洋を確保するために協力していくことで一致した。その上で、インド太平洋に対する日米韓3か国のアプローチの実施を連携させ、共同で行動する新たな分野を継続的に特定するため、年1回の日米韓インド太平洋対話を立ち上げることに合意し、AOIPの力強い実施及び主流化を支援するため、ASEANのパートナーと緊密に協力することなどについてコミットした(35ページ 特集参照)。

(9)欧州

ア EU

7月、日・EU定期首脳協議において、岸田総理大臣は、国際社会が歴史的な転換点を迎える中、価値と原則を共有する同志国が地域を越えて連携することが一層重要になっており、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の堅持・強化に向けて、日・EU間で緊密に連携を確認し、具体的な協力の方策について議論を深めたいと発言した。また5月には、林外務大臣がスウェーデン・EU共催「インド太平洋閣僚会合」に対面出席し、同志国の連携の重要性を参加各国との間で共有した。

イ 英国

3月、英国は「安全保障、防衛、開発及び外交政策の統合的見直しの刷新」を発表し、FOIPのビジョンへの支持を表明し、インド太平洋への関与をその国際政策の恒久的な柱とすることを発表した。5月に実施された日英首脳ワーキング・ディナーにおいて、岸田総理大臣は、スナク首相とともに、「強化された日英のグローバルな戦略的パートナーシップに関する広島アコード」を発出し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の強化に向けた日英の決意や、FOIPのビジョンにコミットする、アジア及び欧州における相互の最も緊密な安全保障上のパートナーとして、相互運用性のある、強靭で、領域横断的な防衛・安全保障協力を進めていくことを確認した。10月には、自衛隊と英国軍の相互運用性を向上させ、両国間の安全保障・防衛協力を更に促進させる枠組みである日英部隊間協力円滑化協定(RAA)が発効した。

ウ フランス

1月、岸田総理大臣は、マクロン大統領との間で日仏首脳会談を実施し、欧州とインド太平洋の安全保障は不可分であり、両国のアセットの往来や日仏共同訓練など実質的な協力の進展を確認し、歓迎した。同月、日本は、インド太平洋地域における地政学上の要衝であり、FOIPの実現に向けた日仏協力を進める上で重要な拠点となるニューカレドニアに、在ヌメア領事事務所を開設した。9月にニューヨークにおいて、上川外務大臣は、コロンナ欧州・外務相と会談し、太平洋に領土を有する「インド太平洋国家」であり、「特別なパートナー」であるフランスとの関係を一層強化していきたいと述べた。両外相は、11月には東京での日仏外相夕食会において、二国間及びG7の枠組みを通じて、引き続き緊密に連携していくことで一致した。また、12月には、岸田総理大臣は、マクロン大統領との間で電話首脳会談を実施し、FOIPの実現に向けた協力を含む日仏協力に関するロードマップを発出した。

エ ドイツ

2020年9月に閣議決定した「インド太平洋ガイドライン」に基づき、2021年11月に海軍フリゲート艦、2022年9月に空軍機を日本を含むインド太平洋地域に派遣するなど、ドイツ政府が同地域への関与の強化に取り組む中、日独間の安全保障協力は一段と深化した。2023年3月の日独政府間協議に際して発出された共同声明では、欧州とインド太平洋の安全保障は密接に結び付いており、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化の重要性がかつてなく高まる中、インド太平洋地域をめぐり、日独間で具体的な協力を強化していくことが確認された。11月に日独物品役務相互提供協定(日独ACSA)の実質合意に至った。

オ イタリア

5月、岸田総理大臣は、メローニ首相との間で日伊首脳会談を実施し、安全保障・防衛分野における協力について、外務防衛当局間協議などを通じ、具体的協力について議論を深化させることで一致した。

2023年、イタリアは、フリゲート艦「フランチェスコ・モロジーニ」をインド太平洋に派遣し、6月に横須賀へ寄港したほか、7月に東シナ海においてイタリア海軍と海上自衛隊の共同訓練を実施した。さらに、8月にはF-35を含む空軍機を航空自衛隊小松基地に派遣し、イタリア空軍と航空自衛隊の共同訓練を実施した。

カ オランダ

2月、林外務大臣は、フックストラ副首相兼外相との間で日・オランダ外相ワーキング・ランチを実施し、FOIPの実現に向けた連携の強化についてやり取りを行った。9月、岸田総理大臣は、ルッテ首相との間で日・オランダ首脳会談を実施し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けた安全保障分野を含む協力の強化についてやり取りを行った。

特集日米韓3か国の連携

日米韓3か国が初めて首脳会合を行ったのは、1994年11月、インドネシア・ジャカルタで開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)非公式首脳会議の機会です。当時の村山富市総理大臣、クリントン米国大統領、金泳三(キムヨンサム)韓国大統領が北朝鮮の核問題などについて話し合いました。その後、日米韓3か国は、核・ミサイル問題や拉致問題を含む北朝鮮への対応を中心に、首脳、外相など様々なレベルで会合を重ねてきました。

日米韓3か国を取り巻く現下の安全保障環境が一層厳しさを増している中で、日米韓3か国の協力は、北朝鮮への対応のみならず、地域や国際社会の平和と安定、そして、法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現にとって一層重要となっています。

2023年8月、岸田総理大臣は、バイデン米国大統領の招待により、米国メリーランド州に位置する米国大統領の別荘であるキャンプ・デービッドを訪問し、同大統領及び尹錫悦(ユンソンニョル)韓国大統領との間で日米韓首脳会合を行いました。この会合は、史上初めて、ほかの国際会議などに合わせた形ではなく、単独で開催された日米韓首脳会合となりました。また、バイデン大統領が外国賓客をキャンプ・デービッドに招待したのも初めてです。

日米韓首脳会合(8月18日、米国・キャンプ・デービッド 写真提供:内閣広報室)
日米韓首脳会合(8月18日、米国・キャンプ・デービッド 写真提供:内閣広報室)
記者会見に臨む日米韓の首脳(8月18日、米国・キャンプ・デービッド 写真提供:内閣広報室)
記者会見に臨む日米韓の首脳(8月18日、米国・キャンプ・デービッド 写真提供:内閣広報室)

この歴史的な会合において、3か国の首脳は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持するため、盤石なそれぞれの二国間関係を礎としつつ、「日米韓パートナーシップの新時代」を宣言しました。その上で、日米同盟と米韓同盟の間の戦略的連携を強化し、日米韓安全保障協力を新たな高みへ引き上げること、日米韓連携の裾野を広げること、そして、日米韓連携を継続的かつ安定的に強化していく土台を作ることの三つの点で重要な成果を達成しました。

会合終了後には、今後、日米韓3か国が中・長期的な視野を持って協力を進めていく際の指針となる原則をまとめた「キャンプ・デービッド原則」、地域情勢に係る立場や日米韓の具体的協力や枠組みの在り方をまとめた「日米韓首脳共同声明」、及び日米韓共通の利益及び安全保障に影響を及ぼす地域の挑戦、挑発及び脅威に対する3か国の対応を連携させるため、3か国の政府が相互に迅速な形で協議することにコミットすることを明記した「日本、米国及び韓国間の協議するとのコミットメント」が発出されました。

日米韓3か国は、首脳級を始めとする幅広いレベルで、少なくとも年に1度の会合を実施することで一致しており、日本政府としては、インド太平洋対話、開発・人道支援政策対話、北朝鮮のサイバー活動に係るワーキンググループなど、新たに立ち上げられた協力の枠組みを通じたものを含め、日米韓の連携を重層的かつ安定的に進めていく考えです。

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