外交青書・白書
第3章 国益と世界全体の利益を増進する外交

5 国際連合(国連)における取組

(1)国際連合(国連)

ア 日本と国連との関係

国連は、世界のほぼ全ての国(2017年12月現在193か国)が加盟する普遍性を備えた国際機関であり、紛争解決や平和構築、テロ対策、軍縮・不拡散、開発、人権、環境・気候変動、防災を含む多種多様な分野において、高度な専門性を持って、国際社会が直面する諸課題に取り組んでいる。

国連本部(写真提供:UN Photo/Andrea Brizzi)
国連本部(写真提供:UN Photo/Andrea Brizzi)

日本は地球規模課題への対応など、国連を通じた協力を更に強化し、一国では実現できない外交目標の達成に向けて一層積極的に取り組んでいる。また、日本はこれまで国連安全保障理事会(国連安保理)の非常任理事国を加盟国中最多の11回務めるなど、国際社会の平和と安全の維持のために、主要な役割を果たしてきている。

9月に開会した第72回国連総会には、安倍総理大臣及び河野外務大臣が出席した。

安倍総理大臣は、5年連続で一般討論演説を行った。保健、女性等のグローバル課題に言及しつつ、北朝鮮の核・ミサイル問題はかつてなく重大で眼前に差し迫った脅威であることを指摘した。その上で、北朝鮮に全ての核・弾道ミサイル計画を完全な、検証可能な、かつ、不可逆な方法で放棄させなければならず、そのために必要なのは対話ではなく、圧力であるとして国際社会の連携した対応を呼びかけた。また、拉致問題についても被害者の一日も早い帰国のために全力を尽くすことを表明し、北朝鮮問題に焦点を絞った演説を行った。

国連総会に出席する安倍総理大臣(9月20日、米国・ニューヨーク 写真提供:内閣広報室)
国連総会に出席する安倍総理大臣(9月20日、米国・ニューヨーク 写真提供:内閣広報室)

また、安倍総理大臣は、保健、女性といったグローバル課題に関するハイレベルイベントに出席し、日本の取組をアピールした。

保健分野では、日本が主導したサイドイベント「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC):万人の健康を通じた持続可能な開発目標(SDGs)の達成」に出席し、「誰一人取り残さない」社会の実現というSDGsの理念を実現する上でUHCの推進は必要不可欠な取組であると述べた。また、UHC達成に向け、開発途上国の国内資金のほか、国際機関やドナー国のみならず民間ビジネスや市民社会のリソースを動員し活用する枠組みが必要と主張した上で、UHC推進への日本の決意を示した。

さらに、安倍総理大臣は、男女平等促進のため男性・男児の関与を呼びかけるUN Womenのキャンペーン、HeForSheの「IMPACT 10×10×10」男女平等報告書発表式に出席し、「女性が輝く社会」の実現に向けた日本の取組と成果を発信するとともに、国際女性会議WAW!(WAW! 2017)を紹介した。

安倍総理大臣は、国連総会出席の機会に、ハイレベルの国連関係者や各国首脳等との会談を精力的に実施し、北朝鮮問題を始めとする意見交換を行った。

グテーレス国連事務総長との会談で、安倍総理大臣は、北朝鮮について、全加盟国による国連安保理決議の完全な履行の重要性を確認するとともに、北朝鮮との意味のある対話のためには、まずは北朝鮮の非核化に向けた真剣な意思と行動が必要であり、一層の圧力により、北朝鮮から対話を求めてくる状況を作り出すことこそが重要であると伝えた。また、拉致問題に対する理解と協力を要請した。さらに、国連改革について、安保理改革なしに国連改革は完結しないと述べるとともに、双方は、国連改革について緊密に協力していくことを確認した。

安倍総理大臣とグテーレス国連事務総長との会談(9月19日、米国・ニューヨーク(代表撮影) 写真提供:内閣広報室)
安倍総理大臣とグテーレス国連事務総長との会談(9月19日、米国・ニューヨーク(代表撮影) 写真提供:内閣広報室)

ライチャーク第72回国連総会議長との会談において、安倍総理大臣は、北朝鮮による弾道ミサイル発射や核実験の実施は、国連安保理決議の明白な違反であり、不拡散体制への深刻な打撃であるとした上で、関連国連安保理決議の完全な履行に向けた加盟国への働きかけについて、ライチャーク国連総会議長とも協力していきたいと述べた。また、拉致問題の解決に向け、理解と支援を求めた。さらに、国連安保理改革に関し、今会期の政府間交渉で文書に基づく交渉が開始されることを強く希望しており、ライチャーク総会議長のリーダーシップに期待していると伝えた。

また、安倍総理大臣は、アフリカ国連安保理理事国首脳等との会合を主催し、アフリカ側首脳から北朝鮮に関する日本の立場への支持が表明されたほか、安保理改革の重要性が強調された。さらに、安倍総理大臣は、第4回日本・太平洋島嶼(とうしょ)国首脳会合を主催し、各国から、北朝鮮問題に関する日本の立場への支持が表明されるとともに、2018年5月に予定されている第8回太平洋・島サミット(PALM8)へ向けて協力を進めていくことが確認された。また、安倍総理大臣は、イスラエル、イラン、ヨルダン、フランス、トルコ、クロアチア及び米国との首脳会談並びに日米韓首脳会談を実施したほか、バッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長の表敬を受け、二国間関係等の強化にも積極的に取り組んだ。

さらに、安倍総理大臣は、ニューヨーク滞在中、食・観光レセプション及び米国企業のCEOとの懇談会への出席やニューヨーク証券取引所での経済に関するスピーチを通して、日本の経済・財政政策について有識者や企業関係者などに対して直接説明するとともに、日本の魅力を積極的に発信し、日本への投資を呼びかけた。また、安倍総理大臣は、日本人国連職員と懇談を行い、更なる活躍を期待し激励した。

河野外務大臣は、国連安保理改革に関するG4外相会合の議長及び日・ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)拡大トロイカ外相会合の共同議長を務めたほか、軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)外相会合、「GUAM+日本」外相会合を始めとする、計14の多国間会合に出席した。また、日米印、日中等の15の外相会談などを行い、国連総会出席の機会を通じて、各国の外相との間で相互の信頼関係を強化した。

2017年は、国連総会以外にもハイレベルの往来の機会が多くあった。

7月には、第72回国連総会議長選出直後のライチャーク・スロバキア外務・欧州問題相が訪日し、安倍総理大臣を表敬するとともに、岸田外務大臣と北朝鮮問題、安保理改革、SDGs等幅広く意見交換を行った。

12月には、グテーレス国連事務総長が、2017年1月の事務総長就任後初めて訪日した。安倍総理との会談では、北朝鮮問題、国連改革を始めとする国際社会の様々な課題について詳細な意見交換を行い、北朝鮮問題については、朝鮮半島の非核化が地域の平和と安定のために不可欠であることで完全に一致した。また、北朝鮮との間では対話のための対話では意味がなく、非核化に向けた意味のある対話でなければならないとの認識を共有し、一層緊密に連携して対応していくことが確認された。さらに、安倍総理大臣とグテーレス国連事務総長は、日本が世銀、世界保健機関(WHO)等と共催した「UHCフォーラム2017」に出席し、国際社会で一致したUHCの推進に向けたメッセージを発出した。このほか、グテーレス事務総長の日本滞在中に様々な機会を捉え、多国間主義における日本の役割と国連への日本の貢献に対する評価が示された。さらに、12月には、安保理閣僚級会合出席のためにニューヨークを訪問した河野外務大臣が、グテーレス国連事務総長及びライチャーク国連総会議長と会談を行った。

イ 国連安全保障理事会(国連安保理)、国連安保理改革
(ア)国連安全保障理事会(国連安保理)

国連安全保障理事会(国連安保理)は、国連の中で、国際の平和と安全の維持に主要な責任を有している。国連安保理決議に基づく国連平和維持活動(PKO)などの活動は多様さを増しており、大量破壊兵器の拡散やテロなどの新たな脅威への対処など、その役割は年々拡大している。

日本は、2016年1月から2017年12月末まで国連加盟国中最多となる11回目の国連安保理非常任理事国を務めるなど、地域情勢や平和構築等に関する国連安保理での議論に積極的に貢献している。特に、今回の任期中は、北朝鮮による3度の核実験(2016年1月、9月及び2017年9月)及び累次の弾道ミサイル発射を受けて採択された6つの国連安保理決議の作成に貢献するなど、北朝鮮の核・ミサイル問題等の解決に向けて尽力してきた。また、日本が国連安保理議長国を務めた12月には、河野外務大臣が議長として「不拡散(北朝鮮)」に関する閣僚級会合を開催したほか、「国際の平和と安全に対する複合的な現代的課題への対処」に関する公開討論を開催するなど、国際の平和と安全の維持に関わる議論に力を発揮してきた(特集「最多11回目の国連安保理非常任理事国(任期を終えた総括)」168ページ参照)。

(イ)国連安保理改革

国連発足後70年以上がたち、国際社会の構図が大きく変化するに伴い、国連の機能が多様化した現在でも、国連安保理の構成は、基本的には変化していない。国際社会では、国連安保理改革を早期に実現し、その正統性、実効性、代表性及び透明性を向上させるべきとの認識が共有されている。

日本は、これまで軍縮・不拡散、平和維持・平和構築、「人間の安全保障」等の分野で国際社会に積極的に貢献してきており、国連を通じて世界の平和と安全の実現により一層積極的な役割を果たすことができるよう、常任・非常任議席双方の拡大を通じた国連安保理改革の早期実現と日本の常任理事国入りを目指し、各国への働きかけを行っている。

(ウ)国連安保理改革をめぐる最近の動き

国連では、2009年から総会の下で国連安保理改革に関する政府間交渉が行われている。第71回会期の政府間交渉(2016年2月から6月まで月1回開催)において、政府間交渉共同議長(ルーマニア及びチュニジアの国連常駐代表)は国連安保理改革の五つの論点(「拡大のカテゴリー」、「拒否権の問題」、「地域代表性」、「拡大後の安保理議席総数・安保理作業方法」及び「安保理と総会の関係」)について、各国の一致点及び相違点をまとめた文書を作成した。2017年7月には政府間交渉において同文書を第72回会期(2017年9月から2018年9月まで)へ引き継ぐ決定が国連総会でコンセンサスで採択された。

また、10月30日、ライチャーク第72回国連総会議長は、ジョージアとアラブ首長国連邦の国連常駐代表を新たな政府間交渉共同議長に任命し、ライチャーク総会議長自身も国連安保理改革プロセスに積極的に関与していくことを書簡で表明した。

加えて、日本は国連安保理改革の推進のために協力するグループであるG4(日本、インド、ドイツ及びブラジル)の一員としての取組の強化も重視している。日本は9月の国連総会ハイレベルウィークに合わせてG4外相会合を主催した。同会合では、第71回会期までに全ての論点に関する議論が尽くされた上で、圧倒的多数の国が交渉のためのテキストを求めていることを踏まえ、第72回会期中の政府間交渉で文書に基づく交渉を開始するために強い決意を持って取り組むことで一致した。

国連安保理改革に関するG4(日本、インド、ドイツ、ブラジル)外相会合(9月20日、米国・ニューヨーク)
国連安保理改革に関するG4(日本、インド、ドイツ、ブラジル)外相会合(9月20日、米国・ニューヨーク)

日本は引き続き、改革推進派諸国と緊密に連携し、国連安保理改革の実現に向けたプロセスに前向きに関与していく。

国連安保理議場(写真提供:UN Photo/Loey Felipe)
国連安保理議場(写真提供:UN Photo/Loey Felipe)
特集
最多11回目の国連安保理非常任理事国(任期を終えた総括)

日本は国連加盟国中最多となる11回目の国連安保理非常任理事国の任期を2017年末に終えました。非常任理事国であった2年間(2016年1月から2017年12月まで)世界の平和と安定のために、幅広い課題に積極的に取り組んできました。

北朝鮮への対応

日本が国連安保理理事国を務めた2年の間、北朝鮮は3回の核実験に加え、米国東海岸も射程に収める長距離弾道(ICBM)級を含む、40発もの弾道ミサイル発射を強行しました。日本は米国などの関係国と緊密に連携し、国連安保理における国連安保理決議採択に関する議論を主導しました。その結果、日本の任期中に北朝鮮に対する制裁措置を前例のないレベルにまで一層高める強力な国連安保理決議第2397号を含む計6本の決議が採択されました。

また、2017年12月には河野外務大臣が国連安保理議長として「不拡散(北朝鮮)」に関する国連安保理閣僚級会合を主催しました。同会合では、国際社会は核武装した北朝鮮を決して受け入れず、全ての国連加盟国による国連安保理決議の完全履行が不可欠であるとの一致したメッセージを発出しました。

アフリカ・中東を始めとする地域情勢への対応

日本はアフリカ・中東情勢をめぐる国連安保理の活動にも積極的に貢献しました。国連安保理の議題の約6割はアフリカの問題であり、日本は、流動的な地域情勢を客観的かつ正確に見極めるべく努力し、アフリカの紛争予防と中長期的な発展・安定のために、国連安保理を効率的かつタイムリーに活用することに努めました。特に、2016年7月には国連安保理議長国として「アフリカにおける平和構築」に関する公開討論を開催しました。同会合では、多数の参加国が日本のイニシアティブを評価し、アフリカにおける平和構築のために、制度構築、人材育成、信頼構築、法の支配及び科学技術を活用することの重要性を強調する国連安保理議長声明が採択されました。

また、中東情勢に関しても、シリア、イエメン、中東和平、アフガニスタン等の難しい課題に前進を得るべく、シリアの人道状況やアフガニスタンに関する決議案等の作成を主導するなど、積極的に活動に貢献しました。

国連安保理の機能の拡大

近年、国連安保理が伝統的な国家間の紛争や内戦に加え、気候変動、飢饉(ききん)、感染症等の幅広い問題について会合を開催してきた流れを踏まえ、2017年12月には、「国際の平和と安全に対する複合的な現代的課題への対処」に関する国連安保理公開討論を主催しました。さらに日本は、このような複合的な現代的脅威に対し、国連安保理が国際の平和及び安全の観点から効果的に対処できるよう人間の安全保障や平和の持続の考え方にも基づきつつ議論に貢献していきます。

国連安保理の作業方法改善のための取組等

日本は、国連加盟国中最多となる非常任理事国としての経験をいかし、国連安保理の文書手続作業部会の議長として特に、国連安保理入りを控えた非常任理事国が事前に国連安保理の手続に習熟し、より効率的に準備を行えるようにするなど、国連安保理の透明性向上や運営改善といった作業方法の改善に向けた議論を主導してきました。2016年7月には国連安保理議長国として公開討論を開催し、その後の議論を踏まえ、2017年8月、国連安保理作業方法に関する包括的、体系的な議長ノートを改訂しました。

国連安保理閣僚級会合にて議長を務める河野外務大臣(12月15日、米国・ニューヨーク)
国連安保理閣僚級会合にて議長を務める河野外務大臣(12月15日、米国・ニューヨーク)

今後も、国際社会の平和と安全の維持に貢献し続けるために、日本の常任理事国入りを含む国連安保理改革が実現するまでの間、可能な限り頻繁に理事国となるべく努めていく考えです。この観点から、非常任理事国としての任期が終わる2017年12月、日本は、2022年国連安保理非常任理事国選挙(任期は2023年から24年まで)への立候補を発表しました。

ウ 国連行財政
(ア)国連予算

国連の予算は大きく分けて通常予算(1月から翌年12月までの2か年予算)とPKO予算(7月から翌年6月までの1か年予算)で構成されている。

このうち、通常予算については、2017年12月、国連総会において、2016~2017年2か年最終予算として約57億米ドルが承認され、2018~2019年2か年予算として、約54億米ドルの予算が承認された(2016~2017年度最終予算比で約5.3%減)。また、PKO予算については、6月に、2017~2018年度のPKO予算が承認され、予算総額は約68億米ドル(前年度最終予算比約14%減)となった。

国連2か年通常予算の推移
国連2か年通常予算の推移
PKO予算及びPKO予算で賄われるミッション数の推移(2003~2018年)
PKO予算及びPKO予算で賄われるミッション数の推移(2003~2018年)
主要国の国連通常予算分担率
順位 国名 2013~2015年 2016~2018年 増減ポイント
1 米国 22.000% 22.000% ±0
2 日本 10.833% 9.680% -1.153
3 中国 5.148% 7.921% +2.773
4 ドイツ 7.141% 6.389% -0.752
5 フランス 5.593% 4.859% -0.734
6 英国 5.179% 4.463% -0.716
7 ブラジル 2.934% 3.823% +0.889
8 イタリア 4.448% 3.748% -0.700
9 ロシア 2.438% 3.088% +0.650
10 カナダ 2.984% 2.921% -0.063

※2016~2018年の順位
出典:国連文書

主要国のPKO予算分担率
順位 国名 2015年 2016年 2017年 2018年
1 米国 28.3626% 28.5738% 28.4691% 28.4344%
2 中国 6.6368% 10.2879% 10.2502% 10.2377%
3 日本 10.8330% 9.6800%
4 ドイツ 7.1410% 6.3890%
5 フランス 7.2105% 6.3109% 6.2878% 6.2801%
6 英国 6.6768% 5.7966% 5.7753% 5.7683%
7 ロシア 3.1431% 4.0107% 3.9960% 3.9912%
8 イタリア 4.4480% 3.7480%
9 カナダ 2.9840% 2.9210%
10 スペイン 2.9730% 2.4430%

※2016~2018年の順位
出典:国連文書

(イ)日本の貢献33

国連の活動を支える予算は、各加盟国に支払が義務付けられている分担金と各加盟国が政策的な必要に応じて拠出する任意拠出金から構成されている。このうち、分担金については、日本は2017年通常予算分担金として約2億4,000万米ドルを負担しており、米国に次いで2番目である。2017年PKO分担金としては約6億6,000万米ドルを負担しており、米国、中国に次いで3番目である。日本は、主要財政貢献国の立場から、国連が予算をより一層効率的かつ効果的に活用するよう働きかけを行ってきている。

また、1月に国連事務総長に就任したグテーレス事務総長は、平和への取組及び開発と共に、国連のマネジメント改革を優先課題として位置付け、事務局機能の一層の効率化・効果向上に取り組んでいる。日本は同改革の目的を支持しつつ、各国の厳しい財政事情を踏まえ、加盟国への追加的な財政負担を求めることなく、改革が進められるよう働きかけを行っている。同改革により、国連の財政・予算・人的資源管理の効率化が期待されるが、2017年12月末に採択されたマネジメント改革の方針等に関する決議に基づき、2018年5月に改革を実施するための機構・予算案が提出される予定であり、改革の具体的内容が決定し実施されるまでには時間を要すると見込まれている。日本は、引き続き加盟国間の意見の相違を調整しつつ、国連における具体的なマネジメント改革が進むよう、各加盟国や国連側との協議に積極的に取り組んでいる。

COLUMN
若者の日中韓交流
日本・国連親善大使 公益財団法人日本国際連合協会会長 千玄室

2005年より外務大臣から「日本・国連親善大使」を、それ以前2002年より「公益財団法人日本国際連合協会(日本国連協会)」の会長を民間人として初めてお受け致しております。私は茶人でありますから、文化を通じての民間交流の重要性を考慮しての事でしょう。

陽明学に「天地万物は本吾が、一体の者なり」という言葉があります。自分と万物はもともと一体であるから、他者の痛み苦しみは己の痛み苦しみとする気持ちです。今、日本・中国・韓国の3か国の間では色々な問題がありますが、この様な時こそこの気持ちを持っての民間交流、特に若い方々の交流が重要になってくるのです。個々の民族は個々の文化を持っています。そして文化は誰も侵すことの出来ない尊重すべきものです。どんな相手に対しても同じ様に接することの出来る人格を創るために、教育に裏付けられたしっかりしたバックグラウンドを持った若者達の育成が必要です。そこで当協会では別表のように2010年より「日本・中国・韓国ユースフォーラム(JCKユースフォーラム)」を3か国順番に開催しております。ユースフォーラムの前日には3か国の国連協会会長及び理事の会議も開催し、いかに協調していけるかを毎年話し合っております。

日中韓3か国国連協会会長会議(8月28日、中国・北京)
日中韓3か国国連協会会長会議(8月28日、中国・北京)
第8回日中韓ユース・フォーラム学生参加者と3か国国連協会会長会議参加者(8月30日、中国・北京外国語大学)
第8回日中韓ユース・フォーラム学生参加者と3か国国連協会会長会議参加者(8月30日、中国・北京外国語大学)

2017年の会長会議では、①持続可能な開発目標、②国連事務総長の優先事項、③平和と開発に関する文化対話及び④平和維持と平和構築の4課題について忌憚(きたん)ない意見を交わし合い、互いに協力し国連の平和活動に貢献していく事を確認致しました。

翌日から開催されたユースフォーラムでは日本から20人、韓国から20人、開催地の中国から40人の大学生が参加し、全て英語で8月29日より9月3日までまさに寝食を共にし、模擬国連やセッションに分かれての討議をし、時には政治的な話題も出ますが感情に流されずにじっくりと話す機会は貴重な体験であったと思います。既に来年の韓国開催も決定しております。

毎年続いてきた要因は、3か国回り持ちで開催した事、参加する若者が互いを理解しようとしながら若者らしい創造精神に溢(あふ)れた学生達だったからでしょう。年々日本の参加学生の発言も積極的になってきています。

とかく現代の若者は内向きになっているという事を耳に致しますが、このフォーラムに参加する若者を見ているとまだまだ日本は大丈夫だと心強く思う次第です。

JCKユースフォーラムの開催リスト
国名 都市 開催会場
第1回 2010年 日本 東京 湘南国際村
第2回 2011年 中国 成都 四川(しせん)大学
第3回 2012年 韓国 水原 慶煕(キョンヒ)大学
第4回 2013年 日本 札幌 札幌大学
第5回 2014年 中国 西安 西北工業大学
第6回 2015年 韓国 慶州 イムヘジョンホール
第7回 2016年 日本 福岡 西南学院大学
第8回 2017年 中国 北京 北京(ぺきん)外国語大学

33 国連を含む国際機関等に対する日本の財政貢献については、外務省ホームページ「国際機関への拠出金・出資金等に関する報告書」https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/sonota.html参照

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