3 イラン
日本の約4.4倍の国土を有し、人口約8,000万人を抱え、豊富な天然資源に恵まれたイランは、イスラム教シーア派の地域の大国である。日本は、原油の安定供給及び中東地域の安定確保の観点から、イランと伝統的な友好関係を維持・強化させてきた。
2013年8月に発足したローハニ政権は、核問題をめぐるEU3(英仏独)+3(米中露)との協議に取り組み、2015年7月には、ウィーンにて核合意(「包括的共同作業計画」(JCPOA))を発表、2016年1月には、核合意の規定に基づき、過去の関連安保理決議の対イラン制裁関連規定が終了するとともに、米国やEUの対イラン制裁が一部停止・終了された(JCPOAにおける「履行の日」の到来)。
「履行の日」の到来以降、日本とイランの間では様々な分野において協力の裾野が広がっている。2月には、日・イラン間の経済関係の強化に向け、タイエブニア経済財務相の訪日の機会に日・イラン投資協定が岸田外務大臣との間で署名され、最大100億米ドル相当のファイナンス・ファシリティの設定に関する協力覚書も署名された。また、2015年10月の岸田外務大臣のイラン訪問の際にザリーフ外相との間で設立に合意した日・イラン協力協議会の各作業部会が活発に活動しており、オルミエ湖再生プロジェクトへの拠出、運輸交通当局間のハイレベル協議の実施(2016年7月にカーシャーン運輸・住宅都市建設省相代行が訪日)、原子力安全等に関する研修実施に向けた調整等、環境・運輸・原子力安全等の分野についても協力が進展している。
国際不拡散体制の強化と中東地域の安定のため、核合意の着実な履行は不可欠であることから、日本は、これを引き続き支援していく立場であり、中東地域の諸問題の解決に向け、イランに対し国際社会及び地域諸国との信頼醸成を進めるとともに、地域の安定のため建設的な役割を果たすよう累次働きかけている。また、日本はハイレベルの政治交流を始めとした重層的な二国間対話の枠組みを通じ、イランとの伝統的な関係の一層の強化に取り組んでいる。9月の国連総会に際して「履行の日」到来後初となる日・イラン首脳会談(ローハニ政権発足後5回目)が行われ、安倍総理大臣から、核合意の遵守を評価し、改めて履行の継続を強く期待すると述べた。また、12月には、ザリーフ外相が経済ミッションと共に2年ぶりに日本を訪問し、安倍総理大臣を表敬したほか、岸田外務大臣との6度目となる日・イラン外相会談を行った。岸田外務大臣から、核合意の継続的遵守の支援のため、国際原子力機関(IAEA)を通じた原子力安全分野の協力に55万ユーロ、保障措置分野の協力に150万ユーロの支援を決定したことを伝達し、中東の諸問題の解決に向けイランの一層建設的な役割を働きかけた。
このほか、日本からは2月に河井克行内閣総理大臣補佐官が、9月に薗浦健太郎外務副大臣がイランを訪問し、イランからは10月にチットチアン・エネルギー相が訪日するなど、関係強化に向けたハイレベルの往来も活発に行われている。