国連外交

平成30年9月27日
グテーレス国連事務総長との会談 写真提供:内閣広報室
一般討論演説 写真提供:内閣広報室
日米首脳会談 写真提供:内閣広報室
  • 安倍総理大臣は,9月23日(日曜日)から27日(木曜日)(現地時間)まで,第73回国連総会出席のため6年連続でニューヨークを訪問。
  • 滞在中,安倍総理は,一般討論演説において,自由貿易システムの保全・強化,北東アジアの戦後構造を取り除くことに注力する決意を表明するとともに,自由で開かれたインド太平洋戦略の重要性を主張し,来年我が国で開催する国際会議(G20,TICAD7)も念頭に,日本人がSDGsの力強い担い手となることへの確信を述べた。
  • また,安倍総理は,米国,トルコ,韓国及びイランとの首脳会談,グテーレス国連事務総長とも会談を実施したほか,パナマ及び英国の首脳との立ち話を行った。また,アフリカの若者雇用への投資に関するハイレベル会合に出席した。

1 主要行事の結果概要

(1)一般討論演説(9月25日(NY時間。以下同じ。))

安倍総理の国連総会における一般討論演説の概要は以下のとおり。

ア 9月20日,向こう3年,日本の舵取りを続けることとなった。

イ 自由貿易の旗手として立つ

自由貿易システムに最も恩恵を受けた国・日本は,その保全と強化の責任を担う。
日本はいち早くTPP11を国会で承認,日EU・EPAも成立。
  • WTOへのコミットメント及び東アジアに巨大な自由貿易圏を生むRCEPの交渉に全力を注ぐ。
  • 米国との新貿易協議(いわゆるFFR)を重視。

ウ 北東アジアの戦後構造を取り除く

北東アジアから積年の戦後構造を取り除くために労を厭わない。
  • 日露の平和条約締結は北東アジアの平和と繁栄の礎。
  • 拉致,核・ミサイル問題の解決の先に,不幸な過去を清算し,国交正常化を目指す方針は不変。
  • 日中首脳の継続的往来を通じて地域に安定の軸を加える。

エ 自由で開かれたインド太平洋戦略を進める

北極海から日本海,太平洋,インド洋へと抜ける,インド太平洋地域の自由で開かれた海の平和と安定を守ることは一層重要。
  • 日本はこうした思いを共有するすべての国・人々とともに,法の支配に基づく開かれた海洋秩序のために貢献していく。

オ ガザから先生を招く

来年初めから毎年,ガザ地区から約10人,小中学校の先生を日本に招く。
  • 将来,訪日経験をもつ先生と数千人の生徒たちに希望のよすがを与える。

カ 日本と日本人は,未来を見据える

日本の未来を生きる若人たちが,チャレンジに立ち向かいやすい環境を生み出す。
  • 来年,日本はG20(6月),TICAD7(8月),ラグビー・ワールドカップを,2020年には,東京オリンピック・パラリンピックを開催。
  • 未来を見つめる日本人は,SDGsの力強い担い手となる。
  • グテーレス国連事務総長と共に,安保理改革,国連改革に邁進する。

(2)二国間会談等

ア 日米首脳夕食会(9月23日)日米首脳会談(9月26日)

両首脳は,直近の南北,米韓及び日韓首脳会談を受けて,北朝鮮問題に関し,今後の方針を改めて綿密にすり合わせた。その上で,関連安保理決議の完全な履行を確保するとの共通の目標を確認した。6月の米朝首脳会談により生まれた機運を更に力強いものとし,朝鮮半島の非核化に向け,引き続き日米,日米韓三か国で緊密に連携していくことを再確認した。また,拉致被害者御家族の切実なメッセージを安倍総理からトランプ大統領に伝えたところ,トランプ大統領は身を乗り出して熱心に聞いた上で,同大統領からも日本の考え方については強く金正恩国務委員長に伝えたとの発言が改めてあった。拉致問題の解決に向けて,日米で引き続き協力していくことで改めて一致した。

両首脳は,日米両国の経済的な結びつきをより強固なものとすることが,日米の貿易を安定的に拡大させるとともに,自由で開かれた国際経済の発展につながるとの考えの下,「日米物品貿易協定(TAG)」について交渉を開始することに合意し,共同声明を発出した。また,両首脳は,日米双方の利益となるように,日米間の貿易・投資を更に拡大させ,公正なルールに基づく自由で開かれたインド太平洋地域の経済発展を実現していくことで一致した。

両首脳は,自由で開かれたインド太平洋の維持・促進に向けた共通のビジョンを推進するため,第三国で実施している具体的な協力を賞賛した。インド太平洋地域における様々な協力を一層強化するとの決意を再確認した。

イ 日・トルコ首脳会談(9月24日)

エルドアン大統領から,6月の大統領選後の総理からの祝意の電話に対する謝意表明があった。また,先般の彬子女王殿下のトルコ訪問を歓迎する旨の発言及び安倍総理の9月20日の自民党総裁選での勝利について祝意の表明があった。これに対し,安倍総理から,総裁選勝利についての祝意表明に感謝の意を伝えた上で,戦略的パートナーであるトルコとの関係が政治・経済・文化・防災のあらゆる面で着実に深化している,実権型大統領制の下でのエルドアン大統領の強いリーダーシップの下,協力関係を一層強化していきたい旨述べた。両首脳は,先日,3年ぶりに日・トルコ合同経済委員会が開催されたことを歓迎すると同時に,日・トルコ経済連携協定(EPA)の早期合意を目指し,こうした措置を通じて日トルコの経済関係のさらなる強化を目指すことを確認した。また,両首脳は,トルコ・日本科学技術大学や防災面を含め,幅広い分野での協力を進めていくことを確認した。また,安倍総理から,9月17日のトルコ・露首脳会談により,イドリブでの非武装地帯の設置が合意され,イドリブに対する総攻撃は当面回避される方向になったことに対し,トルコの粘り強い外交努力を歓迎する旨を述べ,両首脳は,引き続き,国際情勢についても緊密に連携していくことで一致した。

ウ 日韓首脳会談(9月25日)

文大統領から,先般の南北首脳会談の結果について具体的な説明があった。これに対し,安倍総理から,今回の文大統領による努力が,朝鮮半島の非核化に向けた具体的な成果に繋がるよう日本も協力を惜しまない,そのために安保理決議の完全な履行が重要であり,引き続き韓国と連携したい旨述べた。
 
文大統領から,拉致問題解決の重要性や日朝関係に関する考え方についての安倍総理の金正恩委員長へのメッセージを同委員長に忠実に伝達した旨の説明があったのに対し,感謝の念を伝えた上で,引き続きの協力をお願いしたい,自分(総理)としても,相互不信の殻を打ち破り,金正恩委員長と直接向き合う用意がある旨述べた。
 
日韓関係については,安倍総理から,慰安婦問題に関する日韓合意の着実な実施が必要である旨述べた。これに対し,文大統領からは,日韓合意を破棄しない,再交渉を求めない旨改めて発言があり,両首脳は,慰安婦問題につき,日韓関係に悪影響を及ぼさないようお互いに知恵を出していくことで一致した。また,「徴用工」の問題についても,わが国の基本的な立場に基づき改めて提起した。両首脳は,未来志向の日韓関係構築のため,引き続き,困難な問題を適切にマネージしていくことで一致した。

エ 日・パナマ首脳立ち話(9月25日)

安倍総理から,2年半ぶりの再会を祝した上で,日本と同様に自由で開かれた海洋の恩恵を享受し,基本的価値を共有するパナマとの一層の連携を表明したところ,バレーラ大統領から,一昨年の訪日の際に合意した「パナマ首都圏都市交通3号線」の整備事業(円借款)について,日本のモノレール技術の導入を正式に決定したことの説明があり,同事業への日本の援助に対して感謝の意を表明された。これに対し,安倍総理は,同円借款事業について,日本のモノレール技術の導入がパナマ側で正式に決定されたことを歓迎するとともに,事業が早期に着工され,パナマ国民の役に立つことへの期待を表明した。

オ グテーレス国連事務総長との会談(9月25日)

安倍総理から,8月のグテーレス国連事務総長の長崎訪問に謝意を表し,国際社会の諸課題に取り組む上で連携していく考えを伝えた。グテーレス国連事務総長からも,長崎の式典に立ち会うことができたことへの謝意とともに,日本と国連の協力関係は死活的に重要との発言があった。
さらに,安倍総理から,日本はSDGsの達成に向けて指導力を発揮していく旨述べ,グテーレス事務総長から,SDGsを含む重要課題について,日本と引き続き連携していきたいとの発言があった。

安保理を含む国連改革実現の重要性についても両者の認識は一致した。

また,安倍総理から,PKOでのグテーレス国連事務総長の指導力を支持し,国連と実施中の三角パートナーシップを通じた能力構築支援は有効である旨述べ,グテーレス国連事務総長から,日本の関与に感謝する旨の発言があった。

両者は,朝鮮半島の非核化に向けて,引き続き,国際社会が安保理決議の完全な履行を確保することの重要性を確認した。安倍総理から,拉致問題の早期解決に向け改めて理解と協力を求め, グテーレス国連事務総長の支持を得た。

カ 日英首脳立ち話(9月25日)

メイ首相から安倍総理に対し,先般の自民党総裁選挙の勝利への祝意が表明された。安倍総理からは,9月18日に東京にて開催された第7回日英外相戦略対話の成果を歓迎する旨述べた。

英国のEU離脱に関し,安倍総理から,英国政府が7月に発表した新交渉方針を受け英EU間の交渉の進展を期待するとともに,移行期間設置による法的安定性の確保が重要である旨述べた。メイ首相はこれに理解を示した上で,EU離脱交渉の最新の状況につき安倍総理に詳細に説明した。

キ 日・イラン首脳会談(9月26日)

ローハニ大統領から安倍総理との会談について歓迎の意の表明があり,これに対し,安倍総理から,6年連続でお会いでき嬉しい旨述べ,また,最近イラン南西部で起きた襲撃事件により多数の死傷者が生じていることに対して弔意を表した。二国間関係に関し,安倍総理から,来年は日イラン国交樹立90周年であり,両国の伝統的友好関係を一層発展させていきたい旨述べ,環境,医療,防災等の分野で,イラン国民に裨益する協力を実施してきている旨述べた。核合意に関し,安倍総理から,イランの核合意履行継続を歓迎しており,日本は核合意を引き続き支持している旨述べた。中東情勢に関し,安倍総理から,地域の安定にはイランの建設的役割が不可欠である旨述べた。また,イランを巡る国際環境改善には,イランが具体的に地域の安定に向けて行動を示すことが必要である旨述べた。また,両首脳は,イエメンを含む中東地域情勢や北朝鮮情勢についても意見交換を行った。

(3)多国間会合等

アフリカの若者雇用への投資に関するハイレベル会合(9月25日)

安倍総理から,1993年のTICAD立ち上げ以来,日本はアフリカ諸国のオーナーシップと国際社会のパートナーシップを原則とし,アフリカの自立的な発展を支援してきたことに触れつつ,アフリカの若者の雇用との関連で,人材育成と民間投資の促進に関する日本の取組(ABEイニシアティブ,職業訓練支援,日アフリカ官民経済フォーラム等)を紹介した。また,来年8月に横浜で開催するTICAD7に向け,今後も日本は,官民が連携し,「アフリカの未来への投資」を力強く実施していく旨述べた。

2 日程

9月23日(日曜日)

ニューヨーク着
日米首脳夕食会

9月24日(月曜日)

日・トルコ首脳会談

9月25日(火曜日)

日韓首脳会談
日・パナマ首脳立ち話
グテーレス国連事務総長との会談
アフリカの若者雇用への投資に関するハイレベル会合
日英首脳立ち話
一般討論演説

9月26日(水曜日)

日・イラン首脳会談
日米首脳会談

9月27日(木曜日)

ニューヨーク発

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