北朝鮮

令和3年8月6日

国際社会における取組

 拉致問題の解決のためには、我が国が主体的に北朝鮮側に対して強く働きかけることはもちろん、拉致問題解決の重要性について各国からの支持と協力を得ることが不可欠である。政府は、あらゆる外交上の機会をとらえ、拉致問題を提起している。

 北朝鮮による拉致の被害者は、韓国にも多数いることが知られているが、帰国した日本人拉致被害者等の証言から、タイ、ルーマニア、レバノンにも北朝鮮に拉致された可能性のある者が存在することが明らかになっている。このほか、北朝鮮から帰還した韓国人拉致被害者等の証言では、中国人等の拉致被害者も存在するとされている。このように、拉致問題は、基本的人権の侵害という国際社会の普遍的問題である。

1 国際連合

(写真1)国際連合本部ビル

(写真2)会場の様子

(写真3)菅総理
国連総会において一般討論演説を行う菅総理(2020年9 月)

  • (1)国連においては、拉致問題への言及も含む北朝鮮人権状況決議が、人権理事会では13年連続13回、国連総会では15年連続15回採択されている(2020年10月現在)。2019年12月の国連総会で採択された決議は、国際的な拉致問題及び全ての拉致被害者の即時帰国の緊急性及び重要性、拉致被害者及び家族が長きにわたり被り続ける多大な苦しみ、並びに、特に2014年5月の日朝政府間協議に基づき北朝鮮が全ての日本人に関する調査を開始して以降、北朝鮮が前向きな行動をとっていないことに対し深刻な懸念をもって留意し、北朝鮮に対し、被害者の御家族に被害者の安否及び所在に関する正確な情報を提供し、全ての拉致被害者に関する全ての問題、特に全ての拉致被害者の帰国の問題をできる限り早期に解決するよう要求する内容となっている。
  • (2)また、2013年3月の人権理事会においては、新たに北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)を設置することを含む決議が無投票で採択され、国連調査委員会(COI)は、日本、韓国、米国、英国、タイを訪問するなどして拉致問題を含む北朝鮮の人権状況の調査を行い、2014年2月に最終報告書(COI報告書)を公表している。
  • (3)2014年3月の人権理事会にて、COI報告書の内容を反映したこれまで以上に強い内容の決議が賛成多数で採択された。同決議は、北朝鮮の広範で深刻な人権侵害を最大限の表現で非難し、北朝鮮に対して、拉致問題を含む、全ての人権侵害を終わらせる手段を早急に取ることを求めている。また、COI報告書の勧告を踏まえ、安保理が人権侵害に責任を負う者に説明責任を果たさせるよう、適切な国際刑事司法メカニズムへの付託を検討することや、COI報告書のフォローアップをしっかり行うための体制の構築などを要請している。
  • (4)2014年12月、国連総会において、COI報告書及び同年3月の人権理事会における決議の内容を踏まえた、これまで国連総会において採択された北朝鮮人権状況決議よりも強い内容の決議が、過去最多の共同提案国を得て賛成多数で採択された。具体的には、北朝鮮の組織的かつ広範で深刻な人権侵害を非難するとともに、「人道に対する犯罪」に言及し、更に、安保理に対し、北朝鮮の人権状況の国際刑事裁判所(ICC)への付託の検討を含む適切な行動をとるよう促している。
  • (5)その後、北朝鮮人権状況決議に基づき、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)ソウル事務所の設立(2015年6月)、北朝鮮における人権侵害に係る説明責任の問題に重点的に取り組む独立した専門家の指名(2016年9月)、ソウル事務所を含む、OHCHRの能力強化の決定(2017年3月)といった、具体的な取組が進められている。2018年3月に人事理事会において採択された北朝鮮人権状況決議においても、OHCHRの能力強化プロセスの加速が求められている。
  • (6)また、国連安保理においても、2014年12月、人権状況を含む北朝鮮の状況が包括的に議論されて以降、「北朝鮮の状況」に関する国連安保理会合が、4回開催され、我が国から、拉致問題の一刻も早い解決を求めてきている。

(写真4)菅内閣官房長官兼拉致問題担当大臣(当時)
国連本部で開催した国際シンポジウムにおいて基調講演を行う菅内閣官房長官兼拉致問題担当大臣(当時)(2019年5月)

  • (7)さらに、日本政府は、国連本部等において政府主催の国際シンポジウムを開催するなど国際社会に向けた情報発信と連携強化に取り組んでいる。2019年5月には、日本、米国、豪州及びEUの共催により、ニューヨークの国連本部で拉致問題に関するシンポジウムを開催し、日本の拉致被害者の御家族を含めた当事者からの「生の声」を国際社会に訴えていただくとともに、日本、米国、韓国の北朝鮮問題の専門家によるパネル・ディスカッションを行い、拉致問題の一刻も早い解決に向けて国際社会の理解と協力を呼びかけた。

2 六者会合

(写真5)会場の様子
六者会合(2007年9月)

 我が国は、六者会合においても、拉致問題を取り上げてきており、2005年9月に採択された共同声明においては、拉致問題を含めた諸懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための措置をとることが、六者会合の目標の一つとして位置づけられた。これを受けて、2007年2月の成果文書においては、日朝国交正常化のための作業部会の設置が決定され、10月の成果文書においては、日朝双方が、日朝平壌宣言に従って、「不幸な過去」を清算し懸案事項を解決することを基礎として早期に国交を正常化するため誠実に努力すること、また、そのために日朝双方が精力的な協議を通じて具体的な行動を実施していくことが確認された。ここでいう「懸案事項」に拉致問題も当然含まれている。

3 多国間の枠組み

(写真6)日中韓共同記者発表
日中韓サミット(2019年12月)

 日本政府は、G7サミット、ASEAN関連首脳会合等の多国間の枠組みにおいても、拉致問題を提起しており、拉致問題解決の重要性とそのための政府の取組は、諸外国からの明確な理解と支持を得てきている。

 例えば2019年8月のG7ビアリッツ・サミットでは、安倍総理(当時)から拉致問題の早期解決に向けた理解と協力を呼びかけ、G7首脳から賛同を得た。また、11月のASEAN関連首脳会議においても、一連の会議等を通じて、安倍総理(当時)から拉致問題の早期解決に向けた各国による引き続きの協力への期待を表明し、議長声明に拉致問題への言及が盛り込まれた。さらに、12月の日中韓サミットにおいても、拉致問題の早期解決に向けて、安倍総理(当時)から韓国の文在寅大統領と中国の李克強(り・こくきょう)国務院総理の支援と協力を求め、日本の立場に理解を得た結果、成果文書に拉致問題が言及された。

4 二国間協議

(写真7)拉致被害者御家族を励ますトランプ大統領
トランプ大統領と拉致被害者御家族の面談(2019年5月)

(写真8)拳を合わせて挨拶するポンペオ国務長官(左)と菅総理(右)
ポンペオ国務長官による菅総理表敬(2020年10 月)

 我が国は、米国、韓国、中国、ロシアを始めとする各国との首脳会談、外相会談等においても拉致問題を取り上げており、各国から我が国の立場への理解と支持が表明されている。

 例えば、米国については、トランプ大統領が、安倍総理(当時)からの要請を受け、2018年6月の第1回米朝首脳会談において金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に対して拉致問題を取り上げたほか、2019年2月の第2回米朝首脳会談では、トランプ大統領から金正恩国務委員長に対して初日の最初に行った一対一の会談の場で拉致問題を提起し、拉致問題についての安倍総理(当時)の考え方を明確に伝え、また、その後の少人数夕食会でも拉致問題を提起し、首脳間での真剣な議論が行われた。トランプ大統領は、2017年11月及び2019年5月の訪日の際に、拉致被害者の御家族と面会し、御家族の方々の思いのこもった訴えに熱心に耳を傾け、御家族の方々を励まし、勇気づけている。

 また、韓国についても、2018年4月の南北首脳会談を始めとする累次の機会において、北朝鮮に対して拉致問題を提起しており、2019年12月の日韓首脳会談においても、文在寅大統領から、拉致問題の重要性についての日本側の立場に理解を示した上で、韓国として北朝鮮に対し拉致問題を繰り返し取り上げている旨の発言があった。さらに、中国についても、2019年6月の日中首脳会談において、習近平(しゅう・きんぺい)国家主席から、同月の中朝首脳会談で日朝関係に関する安倍総理の考えを金正恩国務委員長に伝えたとの発言があり、その上で、習主席から、拉致問題を含め、日朝関係改善への強い支持を得た。

 2020年9月の菅総理就任後のトランプ米国大統領を始めとする各国首脳との電話会談においても、拉致問題の早期解決に向けた支持を働きかけ、引き続き緊密に連携していくことなどを確認した。また、2020年10月のポンペオ米国国務長官による菅総理表敬時にも、菅総理から拉致問題の早期解決への全面的支持を要請したのに対し、ポンペオ長官からは、拉致問題解決のための日本の取組を引き続き全面的に支持するとの発言があった。

北朝鮮に拉致された可能性のある米国人に関する決議案

 米国議会においては、北朝鮮に拉致された可能性のある米国人について、日本、中国及び韓国政府と連携して調査を進めるよう米国政府に求める決議案が2016年9月に下院本会議で可決・成立したほか、同様の内容の決議案が2018年11月に上院本会議でも可決・成立した。

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