外務大臣談話
WTO紛争解決『韓国による日本産水産物等の輸入規制』上級委員会報告書の発出について
(外務大臣談話)
1 本12日(現地時間11日),世界貿易機関(WTO)紛争解決手続に基づいて,我が国が韓国に対して申立てを行っていた紛争案件『韓国による日本産水産物等の輸入規制』に関し,WTO上級委員会報告書を公表しました。
2 報告書において,上級委員会は,韓国の輸入規制措置が,WTO協定に照らし,日本産水産物等を恣意的又は不当に差別していること,必要以上に貿易制限的なものであることを認定したパネル報告書(第一審)の判断には瑕疵があるとして取り消しました。韓国の措置が協定に整合的であると認められたわけではありませんが,我が国の主張が認められなかったことは誠に遺憾です。
3 他方で,上級委員会は,韓国が輸入制限措置を強化した際の手続に瑕疵があったことについては,パネルの判断を支持し,WTO協定に非整合的であるとの判断をしたことは評価しています。
4 我が国としては,上級委員会報告書の内容を分析し,今後の対応を検討していきます。いずれにせよ,我が国としては,韓国に対して規制措置全体の撤廃を求めるという立場に変わりはなく,上級委員会の今次報告書を踏まえ,韓国との協議を通じ,措置の撤廃を求めていきます。
5 日本産農林水産物・食品に対して輸入規制措置を継続している国・地域に対しても,同様にそうした措置の撤廃・緩和を求めてまいります。
【参考】本件の経緯と概要
(1)2011年3月の東京電力(株式会社)福島第一原子力発電所における事故後,韓国は日本産水産物等への輸入規制を順次導入。更に2013年9月に輸入規制を強化した((1)8県産水産物(注)全面輸入禁止及び(2)追加的な放射性核種検査要求の対象を水産物を含む全ての日本産食品に拡大)。
(注)8県:青森,岩手,宮城,福島,茨城,栃木,群馬,千葉
(2)こうした措置がWTO協定上の義務に違反しているおそれがあるため,2015年5月,我が国は韓国に対してWTO紛争解決手続に基づく協議を要請し,同年6月に協議を実施した。同年8月,我が国は,WTOにパネル設置要請を行い,翌9月パネルが設置された。
(4)WTO紛争解決制度においては,紛争当事国はパネル報告書について上級委員会に申立てをすることができる(いわゆる二審制)。2018年4月,韓国はパネルの判断を不服として上級委員会へ申立てを行った。
(5)今般発出された上級委員会報告書は,パネルの判断(上記3)の一部を取り消した。
(6)上級委員会報告書は,WTO紛争解決了解の規定により,加盟国への送付の後30日以内に開催されるWTO紛争解決機関(DSB)の会合において採択され,紛争当事国は,これを無条件で受諾することとなる(上級委員会報告書に関する更なる申立てはできない)。