外務大臣談話

平成30年11月16日

1 本16日(現地時間15日),ニューヨークで開催中の国連総会第3委員会において,我が国及びEUが共同提出した北朝鮮人権状況決議がコンセンサス採択されたことを歓迎します。

2 本年の決議は,昨年の国連総会決議を基に,北朝鮮の深刻な人権侵害を非難し,その終結を強く要求しています。

3 さらに,同決議は,拉致問題及び全ての拉致被害者の即時帰国の重要性及び緊急性並びに拉致被害者及び家族が長きにわたり被り続けている多大な苦しみに留意し,日本人に関する全ての問題の解決,特に全ての拉致被害者の帰国が可能な限り早期に実現することを期待する内容となっています。加えて,昨年3月の人権理事会決議で決定された国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の能力強化のプロセスの加速化を求めるとともに,OHCHRに対し啓発活動等の強化を求めています。

4 本年の決議が,コンセンサス採択されたことは,拉致問題を始めとする,北朝鮮の人権侵害についての国際社会の強い懸念の表れです。我が国は,北朝鮮に対し,この決議に示された国際社会の声を真摯に受け止め,拉致問題の早期解決や国際社会との協力に向けた具体的な行動をとるよう引き続き強く求めていく考えです。

[参考]
(1)採択結果
 無投票で,コンセンサス採択された。投票要求は行われなかったが,北朝鮮の他8か国(シリア,ベラルーシ,イラン,ロシア,中国,ベネズエラ,キューバ,スーダン)がコンセンサス採択からの離脱を表明した。共同提案国は,我が国,EU諸国,米国,カナダ,オーストラリア,ニュージーランド,韓国など61か国。国連総会第3委員会メンバーは国連全加盟国(193か国)。

(2)この決議は,今後12月中旬頃の国連総会本会議で改めて採決に付される予定。

(3)北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)

ア 概要
 拉致問題を含む北朝鮮における人権侵害を調査するため,2013年3月の人権理事会における決議で設置を決定。マイケル・カービー氏(委員長,元オーストラリア連邦最高裁判所判事),マルズキ・ダルスマン氏(前北朝鮮人権状況特別報告者,元インドネシア検事総長)及びソーニャ・ビセルコ氏(元北朝鮮における人権侵害に係る説明責任の問題に重点的に取り組む独立した専門家,セルビア・ヘルシンキ人権委員会(NGO)代表)の3名で構成。活動期間は1年。報告書を作成し,2014年3月の第25回人権理事会に提出した。
 同調査委員会は,2013年に調査のため訪日。日本滞在中は,安倍晋三内閣総理大臣及び岸田文雄外務大臣(当時)を表敬したほか,公聴会による北朝鮮の人権状況についてのヒアリングを実施。また,我が国関係省庁からも,拉致問題を中心として,合同で同委員会に説明を行った。

イ 最終報告書
 北朝鮮における深刻な人権侵害を,拉致問題を含む複数の分野にわたり,包括的に詳述。北朝鮮における人権侵害は「人道に対する犯罪」に相当し得るとし,北朝鮮に具体的な取組を勧告するとともに,国際社会や国連にも更なる行動を求めている。拉致問題についても,その事実を記載するとともに,拉致及び拉致被害者の置かれた状況を,現在も進行している人道に対する犯罪とし,北朝鮮に対し,拉致被害者に関する情報提供と被害者本人及びその子孫を帰国させるよう勧告。

(4)国連総会北朝鮮人権状況決議(於:ニューヨーク)

ア 我が国とEUは,国連総会(第3委員会)に,北朝鮮の人権状況の改善等を求める決議を共同で提出してきており,今回は国連総会において14年連続14回目の採択。

イ 昨年12月の国連総会本会議における投票結果
 無投票で,コンセンサス採択された。投票要求は行われなかったが,北朝鮮の他7カ国(シリア,ロシア,キューバ,中国,イラン,ベネズエラ,ベラルーシ)がコンセンサス採択からの離脱を表明した。共同提案国は,我が国,EU諸国,米国,カナダ,オーストラリア,ニュージーランド,韓国など61か国。

(5)国連人権理事会における北朝鮮人権状況決議(於:ジュネーブ)

ア 我が国とEUは,毎年(2008年以来本年で11年連続)3月の国連人権理事会に北朝鮮人権状況特別報告者のマンデートを延長する決議を共同で提出してきている。

イ 本年3月の人権理事会においては,前年3月の人権理事会決議で決定された国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の能力強化のプロセスの加速化を求めるとともに,OHCHRに対し啓発活動等の強化を求める内容を含む決議案を提出し,無投票で採択された。


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