気候変動
気候変動分野における途上国支援
気候変動分野における途上国支援の重要性と交渉上の位置づけ
気候変動対策には、大きく分けて2つの方法「緩和」と「適応」があります。「緩和」策は、産業部門、家庭部門等社会の様々なセクターにおける温室効果ガス削減努力や、省エネルギー、再生可能エネルギー等の低炭素エネルギー活用による削減及び植物による二酸化炭素の吸収などを指します。これに対し、「適応」策は、気候変動によってすでに起こっている悪影響(例:海面上昇、旱魃)の防止・軽減のための取組などを指します。
気候変動という問題の特質上、全ての国がその対策に取り組むことが必要不可欠である一方で、多くの開発途上国は、自国の経済開発にも同時に取り組まなければならず、自国の限られた資金や能力だけでは十分な気候変動対策を実施できないというのも現実です。特に、一刻の猶予も許されない「適応」については、島嶼国(Small Island Developing States: SIDS)や後発開発途上国(Least Developed Countries: LDCs)にとって、国土の消失等国家としての死活問題につながり得ます。国際社会で一致して気候変動に取り組むために、必要とする国に手を差し伸べる、これこそ、我々先進国が関連の途上国支援を行っている背景です。
この点、国際的な枠組みにおいても、先進国による途上国支援が定められています。1992年、地球温暖化防止のために大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを目的とする「気候変動に関する国際連合枠組条約(気候変動枠組条約)」が採択されましたが、先進国の義務として途上国への資金供与、技術移転、及び能力開発が定められました(枠組条約第4条3、4、5)。2009年の第15回締約国会議(COP15)では、2020年までに先進国全体で官民合わせて1000億ドルを動員するとの目標も定められました。
こうした背景の中、日本としても、多くの途上国が気候変動対策を実施できるよう積極的に支援してきています。2015年パリで開催されたCOP21(首脳会合)では、安倍総理より、世界の気候変動対策進展のための貢献パッケージとしてACE2.0を発表し、2020年に1兆3000億円の気候変動分野における途上国支援を実施することを表明し、上記の1000億ドル目標の実現に道筋をつけ、合意妥結を大きく後押ししました。また、2021年G7コーンウォール・サミットにおいては、菅総理より、2021年から2025年までの5年間において、官民合わせて6.5兆円相当の気候変動に関する支援を実施することとし、気候変動の影響に脆弱な国に対する、適応分野の支援を強化していくことを表明しました。
途上国支援に関する資金・制度
緑の気候基金(Green Climate Fund:GCF)は、開発途上国の温室効果ガス削減(緩和)と気候変動の影響への対処(適応)を支援するため、気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)に基づく資金供与の制度の運営を委託された基金です。
二国間クレジット制度(JCM)
二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism: JCM)は、途上国と協力して温室効果ガスの削減に取り組み、削減の成果を両国で分け合う制度です。
脱炭素技術海外展開イニシアティブ
脱炭素技術海外展開イニシアティブ(Climate Solutions Technologies Initiatives)は、日本企業と日本のNGOが協力しつつ、日本企業が有する高度な脱炭素技術を、支援を必要とする開発途上国に提供するメカニズムです。
これまで日本が実施してきた支援の代表例
これまで日本が実施してきた気候変動分野における途上国支援の代表例をいくつか紹介します。2017-2018年の途上国支援実績については、2019年12月に国連気候変動枠組条約事務局に提出した隔年報告書(PDF)もご覧ください。
大洋州
- サモア:太平洋気候変動センター建設計画
- キリバス、クック諸島、サモア、ソロモン諸島、ツバル、トンガ、ナウル、ニウエ、バヌアツ、PNG、パラオ、フィジー、マーシャル、ミクロネシア:太平洋島嶼国における多様な災害の危険評価及び早期警報システム強化計画(UN連携/ESCAP実施)
- フィジー:大洋州気象人材育成能力強化プロジェクト
- パラオ:サンゴ礁島嶼国における気候変動による危機とその対策プロジェクト
- PNG:気候変動対策のためのPNG森林資源情報管理システムの活用に関する能力向上プロジェクト
アジア
- タイ:東南アジア地域気候変動緩和・適応能力強化プロジェクト
- ベトナム:気候変動対策支援プログラム
- タイ:バンコク都気候変動マスタープラン(2013-2023年)作成・実施能力向上プロジェクト
- フィリピン:気象観測・予報・警報能力向上プロジェクト(VI)
- バングラデシュ:ダッカ及びラングプール気象レーダー整備計画
- パキスタン:産業セクターにおけるエネルギー管理プロジェクト
- インドネシア:公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)
- ベトナム:公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)
中南米
- ガイアナ協同共和国、グレナダ、ジャマイカ、スリナム共和国、セントビンセント及びグレナディーン諸島、セントルシア、ドミニカ国、ベリーズ:日・カリブ・パートナーシップ計画(UNDP連携)
- コスタリカ:グアナカステ地熱開発セクターローン
- アンティグア・バーブーダ:水産関連機材整備計画
- ハイチ:災害対応能力支援計画(UNDPと連携)
中東
- イラン:政府系ビルのESCO導入に係るパイロット事業実施プロジェクト
- ヨルダン:青年研修ヨルダン/再生可能エネルギーコース
- アフガニスタン:灌漑システム改善及び組織能力強化を通じた農業生産性向上計画(FAO連携)
- アフガニスタン:水文・気象情報管理能力強化プロジェクト
- トルコ:産業における省エネ及びエネルギー管理
アフリカ
- モーリシャス:第二次気象レーダー整備計画
- アルジェリア、モロッコ、チュニジア、ブルキナファソ、ブルンジ、カーボヴェルデ、チャド、コートジボワール、セネガル:青年研修アフリカ(仏語)/再生可能エネルギーコース
- モザンビーク:気象観測及び予警報能力向上プロジェクト
- ボツワナ:国家森林モニタリングシステム強化プロジェクト
- セーシェル:離島マイクログリッド開発マスタープラン策定プロジェクト
- ケニア:オルカリアV地熱開発計画