気候変動
気候変動分野における途上国支援
気候変動分野における途上国支援の重要性と交渉上の位置づけ
気候変動対策には、大きく分けて2つの方法「緩和」と「適応」があります。「緩和」策は、省エネルギー、再生可能エネルギーの活用等による産業部門、家庭部門等社会の様々なセクターにおける温室効果ガスの排出削減や、二酸化炭素の吸収・除去などを指します。これに対し、「適応」策は、気候変動によって生じる悪影響(例:海面上昇、異常気象)の防止・軽減のための取組などを指します。
気候変動という問題の特質上、全ての国がその対策に取り組むことが必要不可欠である一方で、多くの開発途上国は、自国の経済開発にも同時に取り組まなければならず、自国の限られた資金や能力だけでは十分な気候変動対策を実施できないというのも現実です。特に、一刻の猶予も許されない「適応」については、島嶼国(Small Island Developing States: SIDS)や後発開発途上国(Least Developed Countries: LDCs)にとって、国土の消失等、国家としての死活問題につながり得ます。国際社会で一致して気候変動に取り組むために、必要とする国に手を差し伸べる、これこそ、日本が関連の途上国支援を行っている背景です。
この点、国際的な枠組みにおいても、途上国支援が定められています。気候変動に関する国際連合枠組条約(気候変動枠組条約 1992年5月採択、1994年3月発効)では、先進国の義務として途上国への資金供与、技術移転、及び能力開発が定められており(枠組条約第4条3、4、5)、2009年の第15回締約国会議(COP15)では、先進国全体で官民合わせて1000億ドルを動員するとの目標が定められました。その後、2015年の第21回締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定(2015年12月採択、2016年11月発効)では、先進国による資金供与の義務に加え、途上国による資金支援の奨励、多様な資金源及び経路から並びに多様な手段による資金の動員(パリ協定第9条1、2、3)が定められました。こうした背景の中、日本としても、多くの途上国が気候変動対策を実施できるよう積極的に支援してきました。2015年パリで開催されたCOP21(首脳会合)では、安倍総理(当時)から、世界の気候変動対策進展のための貢献パッケージとして「美しい星への行動2.0(ACE2.0)」を発表し、2020年に1兆3000億円の気候変動分野における途上国支援を実施することを表明し、上記の1000億ドル目標の実現に道筋をつけ、合意妥結を大きく後押ししました。また、2021年G7コーンウォール・サミットにおいては、菅総理(当時)から、2021年から2025年までの5年間において、官民合わせて6.5兆円相当の気候変動に関する支援を実施すること、気候変動の影響に脆弱な国に対する、適応分野の支援を強化していくことを表明しました。同年11月のCOP26世界リーダーズサミットでは、岸田総理(当時)から、新たに、2021~2025年の5年間で最大100億ドルの追加支援を行う用意がある旨を表明するとともに、同じ5年間で適応分野での支援を倍増し、官民合わせて約148億ドルの適応支援を実施していく旨を表明しました。
近年、気候変動による影響が顕在化するとともに、途上国の気候資金の需要が大幅に増大していることを背景に、先進国からの支援のみでなく、能力のある途上国(新興国)からの支援や民間セクターの資金の活用が重要になっています。2024年の第29回締約国会議(COP29)では、「気候資金に関する新規合同数値目標(NCQG)」として、1 先進国が率先する形で、2035年までに少なくとも年間3,000億ドルという途上国向けの気候行動のための資金目標を決定すること(この資金目標には、国際開発金融機関(MDBs)による全ての支援を含める)、2 全てのアクターに対し、全ての公的及び民間の資金源からの途上国向けの気候行動に対する資金を2035年までに年間1.3兆ドル以上に拡大するため、共に行動することを求めることの2点が決定されました。
日本としても、引き続き途上国の気候変動対策を支援していく中で、効果的に公的資金が使われる仕組みづくりや、公的資金が民間資金の呼び水となるような仕組みづくりを重視しています。また、日本の技術や強みを活かし、技術支援・能力開発にも取り組み、途上国が緑の気候基金(GCF)や地球環境ファシリティ(GEF)等の基金にアクセスできるよう支援しています。
途上国支援に関する資金・制度
緑の気候基金(Green Climate Fund:GCF)は、開発途上国の温室効果ガス削減(緩和)と気候変動の影響への対処(適応)を支援するため、気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)に基づく資金供与の制度の運営を委託された基金です。
二国間クレジット制度(JCM)
二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism: JCM)は、途上国と協力して温室効果ガスの削減に取り組み、削減の成果を両国で分け合う制度です。
脱炭素技術海外展開イニシアティブ
脱炭素技術海外展開イニシアティブ(Climate Solutions Technologies Initiatives)は、日本企業と日本のNGOが協力しつつ、日本企業が有する高度な脱炭素技術を、支援を必要とする開発途上国に提供するメカニズムです。
これまで日本が実施してきた支援の例
これまで日本が実施してきた気候変動分野における途上国支援の例をいくつか紹介します。2021-2022年の途上国支援実績については、2024年10月に国連気候変動枠組条約事務局に提出した隔年透明性報告書(PDF)
をご覧ください。
大洋州
- サモア:太平洋気候変動センター建設計画
- キリバス、クック諸島、サモア、ソロモン諸島、ツバル、トンガ、ナウル、ニウエ、バヌアツ、PNG、パラオ、フィジー、マーシャル、ミクロネシア:太平洋島嶼国における多様な災害の危険評価及び早期警報システム強化計画(UN連携/ESCAP実施)
- フィジー:大洋州気象人材育成能力強化プロジェクト
- パラオ:サンゴ礁島嶼国における気候変動による危機とその対策プロジェクト
- PNG:気候変動対策のためのPNG森林資源情報管理システムの活用に関する能力向上プロジェクト
アジア
- タイ:東南アジア地域気候変動緩和・適応能力強化プロジェクト
- ベトナム:気候変動対策支援プログラム
- タイ:バンコク都気候変動マスタープラン(2013-2023年)作成・実施能力向上プロジェクト
- フィリピン:気象観測・予報・警報能力向上プロジェクト(VI)
- バングラデシュ:ダッカ及びラングプール気象レーダー整備計画
- パキスタン:産業セクターにおけるエネルギー管理プロジェクト
- インドネシア:公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)
- ベトナム:公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)
中南米
- ガイアナ協同共和国、グレナダ、ジャマイカ、スリナム共和国、セントビンセント及びグレナディーン諸島、セントルシア、ドミニカ国、ベリーズ:日・カリブ・パートナーシップ計画(UNDP連携)
- コスタリカ:グアナカステ地熱開発セクターローン
- アンティグア・バーブーダ:水産関連機材整備計画
- ハイチ:災害対応能力支援計画(UNDPと連携)
中東
- イラン:政府系ビルのESCO導入に係るパイロット事業実施プロジェクト
- ヨルダン:青年研修ヨルダン/再生可能エネルギーコース
- アフガニスタン:灌漑システム改善及び組織能力強化を通じた農業生産性向上計画(FAO連携)
- アフガニスタン:水文・気象情報管理能力強化プロジェクト
- トルコ:産業における省エネ及びエネルギー管理
アフリカ
- モーリシャス:第二次気象レーダー整備計画
- アルジェリア、モロッコ、チュニジア、ブルキナファソ、ブルンジ、カーボヴェルデ、チャド、コートジボワール、セネガル:青年研修アフリカ(仏語)/再生可能エネルギーコース
- モザンビーク:気象観測及び予警報能力向上プロジェクト
- ボツワナ:国家森林モニタリングシステム強化プロジェクト
- セーシェル:離島マイクログリッド開発マスタープラン策定プロジェクト
- ケニア:オルカリアV地熱開発計画

