軍縮・不拡散・原子力の平和的利用

令和3年12月21日

1 軍縮・軍備管理・不拡散とは

(1)基本概念

 「軍縮」(軍備縮小)とは、一般的には、国際的な合意の下で特定の軍備の縮小又は兵器の削減を行い、さらにはそれを廃絶することも意味します。また、「軍備管理」とは、軍備又は兵器の規制、検証・査察、信頼醸成、通常兵器の移転の規制などを指します。「不拡散」とは、日本及び国際社会にとって脅威となり得る兵器(核兵器、生物・化学兵器といった大量破壊兵器及びそれらを運ぶミサイル並びに通常兵器)やその開発に用いられる関連物資・技術の拡散を防ぐことを意味します。

 冷戦期においては、特に1970年代に米国とソ連の間で行われた核兵器管理交渉から軍備管理の概念が生まれ、主として核大国間の戦略均衡の仕組みを作り上げることが重視されました。冷戦末期から冷戦終結後は、軍縮の側面がより重視されるようになり、実際に特定の種類の核兵器を全廃する条約(中距離核戦力全廃条約)も成立しました。また、大量破壊兵器等の開発・取得を企図する国やテロリストなど非国家主体への大量破壊兵器や、その関連物質・技術の拡散の懸念が高まったことを受け、不拡散の取組の重要性が大きくなりました。

(2)なぜ軍縮・軍備管理・不拡散への取組が必要なのか

 軍縮・軍備管理・不拡散のための国際的な努力は、人道主義的な観点に加え、世界の安全保障や経済発展を効率的・効果的に実現するために行われています。

 第一に、軍備拡張競争や兵器の拡散は国際の平和と安全を損なうことにつながりかねません。無制限に増大した軍備や兵器は、たとえ侵略や武力による威嚇の意図がなくても、他国の不信感を高め、不必要な武力紛争を引き起こすことになりかねないのです。

 第二に、経済的な観点からも、莫大な軍事支出は、政府の財政を圧迫します。軍事支出をできる限り抑え、経済開発や福祉などに優先的に国家予算を振り向けることができるような条件を整えることも、軍縮・不拡散外交に期待される効果です。

  確かに、世界には、領土問題、宗教対立、民族対立など、潜在的に武力紛争に発展しかねない問題を抱えた地域が各地に存在しており、世界のほとんどの国が、自国の安全保障を確保するために、軍備を必要と感じています。しかし、各国が自国の安全保障の観点を考慮しながら、自国の軍備の規模を適正水準に保ち、できれば縮小する方向で、各国間で協調して調整を進めていくことが必要とされています。

(3)核軍縮・不拡散の現状と日本の基本的考え方

 日本には、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向け国際社会の取組をリードしていく責務があります。

 近年の国際的な安全保障環境は厳しく、また2017年7月に採択された核兵器禁止条約を取り巻く対応に見られるように、核軍縮の進め方をめぐっては、核兵器国と非核兵器国の間のみならず、核兵器の脅威にさらされている非核兵器国とそうでない非核兵器国の間においても立場の違いが見られます。このような状況の下、核軍縮を進めていくためには、核兵器の非人道性と安全保障の観点を考慮し、核兵器国の協力を得ながら、現実的かつ実践的な取組を粘り強く進めていく必要があります。

 日本は、核兵器のない世界の実現のため、「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」及び「核軍縮の実質的な進展のための1.5トラック会合」、国連総会への核兵器廃絶に向けた決議の提出、軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)の枠組みや個別の協議等を通じ、核兵器国と非核兵器国の間の橋渡しに努めつつ、核兵器不拡散条約(NPT)体制の維持・強化や包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効促進、核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の交渉開始といった、核兵器国も参加する現実的かつ実践的な取組を積み重ねていく考えです。

 また、不拡散に関しては、今日の国際社会において、新興国の経済成長に伴い、それらの国における兵器やその開発に転用可能な物資などの生産・供給能力が増大するとともに、流通形態の複雑化をはじめこれら物資などの調達手法が巧妙化しています。また、新技術の登場を背景として、民間の技術が軍事転用される可能性が高まっており、脅威となり得る兵器やその関連物資・技術の拡散リスクが増大しています。このような状況において、日本は、国際的な不拡散体制・ルールの維持・強化、国内における不拡散措置の適切な実施、各国との緊密な連携・能力構築支援を柱として不拡散政策に取り組んでいます。

2 日本の取組

 日本は唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向け、国際社会による核軍縮・不拡散の議論を主導してきています。日本は、様々な多国間の枠組みや二国間の外交機会を最大限活用しつつ、今後とも具体的な取組を展開していきます。

(1)核軍縮の実質的な進展のための賢人会議及び1.5トラック会合

 国際的な安全保障環境が悪化し、核軍縮の進め方をめぐる国際社会における立場の違いが見られる中で、各国の信頼関係を再構築し、核軍縮の実質的な進展に資する提言を得るため、日本は2017年5月に「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」を立ち上げました。
 2回の「賢人会議」会合を経て2018年3月に提言(概要(PDF)別ウィンドウで開く仮訳(PDF)別ウィンドウで開く英文(PDF)別ウィンドウで開く)が取りまとめられ、河野外務大臣(当時)がNPT運用検討会議第2回準備委員会において同提言の内容を紹介しました。また、2018年11月の長崎での第3回会合に続き、2019年3月に京都で第4回会合が開催され、現下の状況において核軍縮を進めるために必要な国際社会の取組等について議論が行われました。同年4月にその議論の成果として「京都アピール」(概要(PDF)別ウィンドウで開く仮訳(PDF)別ウィンドウで開く英文(PDF)別ウィンドウで開く)が取りまとめられ、辻外務大臣政務官(当時)がNPT運用検討会議第3回準備委員会において同アピールの内容を紹介しました。2019年7月には、東京で第5回会合が開催され、軍縮と安全保障の関係に関する困難な問題に焦点を当てつつ、それまでの賢人会議における議論を総括する報告書を作成することで委員の間で意見が一致し、同年10月、白石隆座長から若宮外務副大臣に「議長レポート」(概要(PDF)別ウィンドウで開く本文(PDF)別ウィンドウで開く)が提出されました 。
 令和2年3月には、我が国が5回にわたって開催した「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」における議論の成果のフォローアップ及び更なる発展を目的として、第1回「核軍縮の実質的な進展のための1.5トラック会合」が開催されました。この会合は、核兵器国と非核兵器国の双方を含む各国の政府関係者及び民間有識者の参加を得て、国際社会として取り組むべき核軍縮措置等について議論を行い、核兵器のない世界の実現に向けた各国間の信頼醸成及び共通の基盤の形成に貢献することを目指すために立ち上げられたもので、令和3年3月に第2回会合が、令和3年12月に第3回会合が開かれました。第3回会合では、岸田総理大臣が総理大臣として初めて本会合に参加し冒頭挨拶(和文(PDF)別ウィンドウで開く英訳(PDF)別ウィンドウで開く)を行い、核兵器のない世界の実現に向けた自由闊達な議論を呼びかけました。

(2)軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)

 2010年に日本とオーストラリアが主導して立ち上げた地域横断的な非核兵器国のグループであるNPDI(12か国で構成)は、メンバー国の外相自身による関与の下、現実的かつ実践的な提案を通じ、核兵器国と非核兵器国の橋渡しの役割を果たし、核軍縮・不拡散分野での国際社会の取組を主導しています。これまでNPDIは、2015年NPT運用検討会議に計19本、2020年NPT運用検討会議プロセスに計16本の作業文書を提出しました。2019年11月には、G20愛知・名古屋外相会合の際、第10回NPDI外相会合を日・オーストラリア共同で開催し、NPT体制の維持・強化の重要性に関する外相共同声明(仮訳(PDF)別ウィンドウで開く英文(PDF)別ウィンドウで開く)を、また2020年4月には、高級実務者レベルで共同メッセージ(PDF)別ウィンドウで開くを発出しました。引き続き、現実的・実践的な提案を通じてNPT運用検討プロセスに積極的に貢献してきています。

(3)日本提出の核兵器廃絶決議

 日本は、1994年以降、その時々の核軍縮に関する課題を織り込みながら、全面的な核廃絶に向けた具体的かつ実践的な措置を盛り込んだ、核兵器廃絶に向けた決議案を国連総会に提出してきています。2021年の決議案(骨子(PDF)別ウィンドウで開く)においては、核兵器国と非核兵器国の共通基盤の構築に資するものとして、核軍縮について国際社会として直ちに取り組むべき共同行動の指針と未来志向の対話の重要性に焦点を当てています。同決議案は、10月の国連総会第一委員会で152か国、12月の国連総会本会議では158か国の幅広い支持を得て採択されました。
 国連総会には、日本の核兵器廃絶決議案に加えて、ほかにも核軍縮を包括的に扱う決議案が提出されていますが、日本の決議案はそれらの決議案と比較して最も賛成国数が多く、また、これまでの決議も20年以上にわたって国際社会の立場の異なる国々から幅広く支持され続けてきています。

(4)軍縮・不拡散教育

 日本は、唯一の戦争被爆国として、軍縮・不拡散に関する教育を重視しています。具体的には、被爆証言の多言語化国連軍縮フェローシップ・プログラムを通じた各国若手外交官の広島及び長崎への招へい、在外公館を通じた海外での原爆展の開催支援、被爆体験証言を実施する被爆者に対する「非核特使」の名称付与等を通じ、被爆の実相を国内外に伝達するべく積極的に取り組んでいます。
 また、被爆者の高齢化が進む中で、広島及び長崎の被爆の実相を世代や国境を越えて語り継いでいくことが重要となっています。こうした観点から、2013年から2021年までに国内外の400人以上の若者に「ユース非核特使」の名称を付与してきています。

 

(5)国際的な枠組みの下での取組

 日本は、G7を始めとした国際的な枠組みの下でも軍縮・不拡散に貢献しています。例えば、核不拡散体制の中核的措置である国際原子力機関(IAEA)の保障措置の強化・効率化を支援しつつ、追加議定書の普遍化に取り組んでいます。また、国際社会における輸出管理の枠組みである国際輸出管理レジームや大量破壊兵器等の拡散を阻止するためのイニシアティブである「拡散に対する安全保障構想」(PSI)などの取組に積極的に参加・貢献しているほか、国際社会と連携して、北朝鮮やイランの核問題等に対処しています。

 日本は二国間での取組も重視しており、二国間協議を通じて日本と特定の国との間で共有する課題に取り組んできました。2015年のNPT運用検討会議でも、NPDIとしての活動に加え、我が国独自のイニシアティブにより、透明性・運用検討プロセス強化、軍縮・不拡散教育、原子力の平和的利用、CTBTなどの分野において、それぞれの同志国と連携して活動を行い、作業文書の提出や共同ステートメントの実施等を行いました。

 核兵器以外の大量破壊兵器である生物兵器、化学兵器や、人道や開発などの様々な分野にまたがる緊急の課題である小型武器、地雷、クラスター弾などの通常兵器の分野における国際的な取組においても、日本は関連する条約・国際的規範の実施や普遍化への貢献、現場プロジェクトへの支援などを通じ、中心的な役割を果たしています。

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