外交青書・白書
第2章 地球儀を俯瞰する外交

3 欧州地域機関との協力及びアジア欧州会合(ASEM)

(1)北大西洋条約機構(NATO)との協力

NATOは加盟29か国の集団防衛を目的とする同盟であり、加盟国の集団防衛のほか、コソボにおける治安維持活動、アフガニスタン支援、テロ対策等、加盟国の領土及び国民の安全保障上の直接の脅威となり得る域外の危機管理や、域外国・機関との協力による協調的安全保障にも取り組んでいる。日本とNATOとは基本的価値を共有するパートナーであり、2014年5月に安倍総理大臣がNATO本部を訪問した際に署名した国別パートナーシップ協力計画(IPCP)に基づき、具体的な協力を進めてきている。5月には、より円滑な日・NATO間の協力を促進するためにIPCPの改訂を行ったほか、7月に、NATO日本政府代表部を開設した。日本は、これまでNATOの危機管理演習(CMX)、人道支援・災害救援(HA/DR)やサイバーに関連する演習にオブザーバー参加してきているほか、女性・平和・安全保障(WPS)分野での協力促進のため、NATO本部に女性自衛官を派遣している。また、日本は、NATOの軍事的な専門知識を活用し軍備管理・軍縮、民主化・地域安定化促進を目的とした事業を行う「平和のためのパートナーシップ(PfP)信託基金」を通じて、アゼルバイジャンにおける不発弾処理支援、ジョージアにおける不発弾・地雷除去、爆発物処理訓練支援及びヨルダンにおける女性軍人育成支援等に貢献してきている。

(2)欧州安全保障協力機構(OSCE)との協力

OSCEは、欧州、中央アジア、北米地域の57か国が加盟し、包括的アプローチにより紛争予防、危機管理、紛争後の復興・再検討を通じて、加盟国間の相違を橋渡しし、信頼醸成を行う地域安全保障機構である。日本は、1992年から「協力のためのアジア・パートナー」としてOSCEの活動に関与しており、国境管理スタッフカレッジ(研修機関)等を通じたアフガニスタン及び中央アジア諸国等の国境管理強化によるテロ防止、選挙監視及び女性の社会進出支援プロジェクト等への支援を行っている。また、OSCEはウクライナ情勢改善のため重要な役割を果たしており、日本はOSCE特別監視団(SMM)に財政支援を行っているほか、2015年8月からSMMに専門家を派遣している。12月にミラノ(イタリア)で開催された外相理事会には阿部外務副大臣が出席し、国際秩序に揺らぎが見られる中でアジアと欧州の安全保障は直接に影響し合うことを指摘するとともに、北朝鮮問題や海洋安全保障を含む東アジアの安全保障環境についても言及し、拉致問題の一日も早い解決に向けて理解と協力を呼びかけた。

(3)欧州評議会(CoE)との協力

CoEは、欧州の47か国が加盟する地域機構であり、民主主義、人権、法の支配の分野で国際基準の策定に重要な役割を果たしてきている。日本はアジアで唯一のオブザーバー国として1996年に参加して以来、CoEの様々な活動に積極的に貢献している。7月、サイバー犯罪に対処するための国際協力促進を目的とした「オクトパス会合2018」(フランス・ストラスブール)に対し財政支援を行った。また、11月に開催された「第7回世界民主主義フォーラム」(同地)には国際機関の邦人職員を派遣し、日本における女性政策の取組について発信した。

(4)アジア欧州会合(ASEM)における協力

ASEMは、アジアと欧州との対話と協力を深める唯一のフォーラムとして、1996年に設立された。現在、メンバーは51か国・2機関であり、首脳会合、各種閣僚会合及び各種セミナーなどを通じて、①政治、②経済及び③文化・社会その他を三本柱の分野として活動している。

10月18日及び19日、ブリュッセル(ベルギー)において、第12回首脳会合が開催された。日本からは、安倍総理大臣が出席し、自由貿易体制に関し過剰生産能力の解決や市場歪曲(わいきょく)的な措置を除去する取組を進めるべきこと、またアジアと欧州の発展と連結性強化のためにも「質の高いインフラ」を国際標準としていくべきこと、さらに、日本が推進する「自由で開かれたインド太平洋」の実現は、アジアと欧州の連結性強化にも貢献するものであることを訴えた。

また安倍総理大臣は、北朝鮮情勢について、朝鮮半島の非核化に向けて、国際社会が結束して安保理決議を完全に履行することが必要であると述べるとともに、拉致問題の早期解決に向けた決意を改めて明らかにした。海洋安全保障については、紛争は力や威圧に頼らず、国際法に基づいて平和的に解決されるべきであり、一方的な現状変更は許容されないことを改めて強調した。

この首脳会合で発出された議長声明では、海洋安全保障について国際法に従った紛争の平和的解決の重要性等に言及するとともに、北朝鮮に対しては、核及びその他の大量破壊兵器、弾道ミサイル及び関連する計画と施設の、完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄(CVID)を要求し、また、首脳間で安保理決議の完全な履行を通じた包括的な問題解決に向けた決意が表明されるなど、力強いメッセージが盛り込まれた。拉致問題については前回の首脳・外相会合に続き明示的に議長声明に言及された。

また日本は、インドネシアとの共催によるジャカルタにおけるASEM観光シンポジウムの実施(2月)やアジア欧州財団(ASEF)への拠出金の支出等を通じて、ASEMの活動に貢献した。

欧州の主要な枠組み
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