外交青書・白書
第2章 地球儀を俯瞰する外交

5 中東和平

(1)イスラエル・パレスチナ間の和平交渉をめぐる動き

米国の仲介により、2013年7月、約3年ぶりにイスラエル・パレスチナ間の直接交渉が再開された。9か月の期限を定めた交渉では、国境、エルサレム、難民、安全保障の全ての問題解決が目指されたが、双方の主張の隔たりは大きく、議論は平行線を辿った。

2014年3月末、イスラエルは予定していたパレスチナ囚人の釈放を実施せず、入植地建設を継続した。これに対し、パレスチナは、15の条約に加盟申請を行い、ガザを実効統治するハマスと新内閣設立などに合意した。イスラエルはこれに反発し、交渉は中断した。

(2)ガザ情勢

交渉が停滞する中、6月、ヨルダン川西岸地区においてイスラエル人やパレスチナ人の誘拐・殺害事件が発生し、イスラエルを標的としたガザ地区からのロケット砲撃が急増した。これに対し、イスラエルは7月8日、ガザ地区に対する軍事作戦を開始した。日本は、安倍総理大臣がネタニヤフ首相との電話会談を実施し自制を求めたほか、現地に岸外務副大臣を派遣するなど事態の沈静化に向け働きかけを行った。8月26日にエジプトの仲介により停戦するまで、パレスチナ側で2,100名以上、イスラエル側で70名が死亡する事態となった。

10月、カイロにおいてガザ復興支援会合が開催され、パレスチナ自治政府の下でのガザ復興の重要性、パレスチナ全体の経済・社会の安定に向けた一層の支援の必要性などが改めて確認された。日本からは中山外務副大臣が同会合に出席し、ガザ復興に関する日本の基本的立場及び貢献を表明した。

ガザ復興支援会合での中山外務副大臣(10月12日、エジプト・カイロ)
ガザ復興支援会合での中山外務副大臣(10月12日、エジプト・カイロ)

(3)日本の取組

日本は、国際社会と連携しながら、「二国家解決」実現に向けて働きかけを行ってきている。総理大臣、外務大臣、中東和平担当特使など、あらゆるレベルで関係者との政治対話を行ってきているほか、イスラエル・パレスチナ双方の関係者を日本に招へいするなどの当事者間の信頼醸成を進めている。5月には訪日したネタニヤフ・イスラエル首相と安倍総理大臣との首脳会談が実施された。また、2015年1月には安倍総理大臣がイスラエル・パレスチナを訪問し、イスラエルでは、ネタニヤフ首相らと、パレスチナでは、アッバース大統領と会談した。こうした会談の機会に、当事者に対して中東和平問題解決に向け直接働きかけを行った。

日本の対パレスチナ支援は、1993年以降これまで、約15億米ドルに達している。特に独自の取組としてパレスチナの経済的自立に向けた「平和と繁栄の回廊」構想を進めており、同構想の旗艦事業として実施中のジェリコ農産加工団地の本格稼働に向け取組を加速させている。

また、アジア諸国の支援を動員すべく日本が開始した「パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合(CEAPAD)」3は、3月にインドネシアにおいて第二回閣僚会合を開催し、岸田外務大臣から2億米ドルの対パレスチナ支援を表明した。

3 イスラエルとパレスチナ間の「二国家解決」による和平実現に向けて、東アジア諸国の経済発展の知見やリソースを活用してパレスチナの国づくりを支援する協議の枠組みで、日本のイニシアティブの下、2013年2月に東京で第一回会合、2014年3月にジャカルタで第二回会合が開催

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