2 中国・モンゴルなど
(1)中国
ア 中国情勢
(ア)経済
2014年の中国の名目GDP額は63.6兆元、実質GDP成長率は7.4%であった(中国政府は実質GDP成長率の目標値を7.5%前後としていた)。
中国の景気拡大のテンポが緩やかになる中、中国政府は、中小企業向け優遇税制措置の拡大(2014年4月)や政策金利の引下げ(同11月)などにより景気の下支えを行った。
12月の中央経済工作会議では、現在の中国経済は「新常態(ニューノーマル)」に移行し、高速成長から中高速成長、規模の拡大から質の向上への転換期にあると指摘した。具体的な変化としては、消費の多様化、伝統的産業の飽和、労働コストの上昇による国際競争力の低下、供給過剰、高齢化による労働力の減少などを挙げている。その上で、「新常態(ニューノーマル)」に適応するため、経済政策における市場の一層の重視や構造改革の推進、イノベーションの重要性などを強調した。2015年は、引き続き「穏中求進(安定の中に成長を求める)」や「積極的な財政政策、穏健な金融政策」といった方針を継続することを確認した。
また、外国投資を呼びこむため、2013年から試験的に導入されている金融や投資などに関する規制を緩和した上海自由貿易試験区における取組を更に推進するために、12月の国務院常務会議では、天津市・広東省・福建省内に自由貿易試験区を増設することが決定された。
2015年は第12次5カ年計画最後の年であり、一定の経済成長を維持しつつ、経済体制改革をどこまで進められるかが注目される。
(イ)内政
2014年3月、北京にて第12期全国人民代表大会第2回会議が開催された。李克強(りこくきょう)総理は政府活動報告において、前年秋の中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)が改革の基本方針を打ち出したことを受け、「背水の陣を敷いて一戦交える気概」や「凝り固まった既得権益の垣根を突き破り」という言葉で改革への強い意志を表明した。
10月には、北京において中国共産党第18期中央委員会第4回全体会議(四中全会)が開催され、同会議は「法による国家統治を全面的に推進する際の若干の問題に関する決定」を採択し、「中国共産党の指導」という原則を維持した形での中国特有の「法治」を目指す姿勢を強調した。
習近平指導部は、これまで国内に蔓延(まんえん)する腐敗に対する危機感を度々表明し、党・政府・国有企業の幹部を相次いで摘発してきている。2014年3月には、徐才厚(じょさいこう)氏(元中央軍事委員会副主席)に対する調査を決定した。また、6月には同氏を重大な紀律違反により党籍剥奪処分とし、収賄の嫌疑で司法機関へ移送することを決定した。
また、周永康(しゅうえいこう)氏(前胡錦濤(こきんとう)指導部の党中央政治局常務委員として公安・司法部門を掌握)は、2013年12月時点ですでに軟禁状態にあると報じられていたが、その後2014年7月末には、中央紀律検査委員会による立件・審査が決定された。また、12月、党中央は同氏の「政治紀律」違反、巨額の収賄、職権乱用、党・国家機密漏洩(ろうえい)、売春などを理由に、同氏に対する党籍剥奪処分及び司法機関移送を決定した。
社会情勢としては、6月4日の天安門事件25周年を前に中国国内の人権派弁護士や知識人の拘束が相次いだほか、ウイグル族による無差別殺傷事件が雲南省・昆明駅付近(3月)や新疆ウイグル自治区・カシュガル(7月)などで発生し、9月には同自治区・バインゴリン自治州において爆発事件が発生した。
香港では、学生・民主派団体が、8月末の香港行政長官選挙制度改革に関する中国全人代の決定は民主派の立候補を事実上困難にするものとして批判し、9月末から約2か月半にわたって幹線道の路上占拠を伴う抗議活動を行った(「セントラル占拠」)。
(ウ)外交
2014年は、南シナ海問題に関して周辺国と緊張関係が発生する一方、アジア信頼醸成措置会議(CICA)首脳会合、APEC首脳会議などの大型の国際会議の開催や、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立に向けた動きなど、外交面での積極的な動きが目立った。
5月に、中国は上海においてCICA首脳会合を主催し、習近平国家主席はその基調演説において、「共同・総合・協力・持続可能な安全保障観」を打ち出すとともに、「アジアの安全保障は結局のところアジアの人民が擁護する」との考え方を示した。
7月には、習近平国家主席がブラジルで開催されたBRICS首脳会議に出席し、同会議で設立が合意されたBRICS開発銀行の拠点を上海に構える意向を示した。また、10月には、北京において、習近平国家主席が提唱したAIIB設立のための政府間覚書(MOU)署名式が行われた。
一方、周辺国との緊張を生じさせる動きとして、5月、中国は南シナ海の西沙諸島周辺海域で石油掘削活動を行ったため、複数のベトナム船と中国船が海上で衝突する事態が発生した。また、2013年にフィリピン政府が開始した南シナ海に関する仲裁裁判手続について、中国政府は2014年12月にポジション・ペーパーを発表し、同仲裁を受け入れず、参加しないとの立場を示した。
11月、中国は北京においてAPEC首脳会議を主催し、中国自身のイニシアティブにより「北京反腐敗宣言」を採択した。また、APEC終了後に行われた米中首脳会談では、国防当局間の信頼醸成メカニズムとして2つの措置に合意するとともに、両国が揃って温室効果ガス削減のための数値目標を明らかにした。
2014年の主要な外交行事が終了した11月末、北京で中央外事工作会議が開催され、習近平国家主席はその重要講話において「中国は自らの特色ある大国外交を持たなければならない」と述べ、その中身として、「中国の特色、中国の風格、中国の気概」を示すこと、中国の「発展の道、社会制度、文化的伝統、価値観」を堅持することなどを指摘した。
(エ)軍事・安保
中国は継続的に高い水準で国防費を増加させており、2014年の国防予算は、前年執行額比で12.2%増(2014年予算値)の伸び率となっている。一方、その支出の細部内訳についての説明がなく、増額の意図についても明らかにされていないが、核・ミサイル戦力や海・空軍を中心とした軍事力を広範かつ急速に強化しているものとみられる。具体的には、2012年、中国国防部は空母「遼寧」の就役を正式に発表しており、さらに、現在は国産空母を建造中との情報もある。
また、2013年11月の「東シナ海防空識別区」の設定や2014年5月及び6月の中国軍機による自衛隊機への近接飛行事案など、中国による一方的な現状変更の試みは継続している。こうした行動は地域共通の懸念事項であり、日本としては、関係国と連携しつつ法の支配に基づく国際秩序に中国を関与させるよう努力していく考えである。
イ 日中関係
(ア)日中関係をめぐる情勢
日本と中国は東シナ海を隔てた隣国であり、緊密な経済関係や人的・文化的交流を有し、切っても切れない関係にある。同時に、日中両国は政治・社会的側面において多くの相違点を抱えており、隣国同士であるがゆえに時に両国間で摩擦や対立が生じることは避けられない。個別の課題があっても、関係全体に影響を及ぼさないようにしていくことが重要であるとの考え方に基づき、日中両国は、2006年に「戦略的互恵関係」の構築に合意した。それ以来、両国は、首脳間で繰り返し「戦略的互恵関係」を推進することを確認してきた。
2014年は、日中関係の改善に向けた取組を積み重ねた1年であった。5月に日中友好議員連盟が訪中し、張徳江(ちょうとくこう)全国人民代表大会委員長と会談をして以降、議員交流を中心とする要人の往来が増加した。5月には茂木経済産業大臣がAPEC貿易大臣会合に出席するために訪中し、高虎城(こうこじょう)商務部長と会談した。6月には太田国土交通大臣が訪中し、劉延東(りゅうえんとう)副総理と会談を行った。同月には新日中友好21世紀委員会・長崎意見交換会も行われ、唐家璇(とうかせん)中日友好協会会長を座長とする中国側委員が来日し、日中間の当面の懸案などについて率直かつ建設的な議論を行った。
このような対話・交流を積み重ねる中で、8月には、ミャンマーで行われたASEAN関連外相会議の機会をとらえ、岸田外務大臣と王毅外交部長との意見交換が実現した。同様の日中外相間の意見交換は、9月の国連総会の際にも行われ、関係改善への前向きな動きとなった。
そして、11月7日に日中両政府は「日中関係改善に向けた話合いについて」を発表し、8日には北京で行われたAPEC閣僚会議の際に日中外相会談が約2年2か月ぶりに実施された。さらに10日には、APEC首脳会議の際に約2年6か月ぶりの日中首脳会談が実現した。これらの会談は、両国が「戦略的互恵関係」の原点に立ち戻り、関係を改善させていくための第一歩となった。
一方、日中首脳会談後も中国公船による尖閣諸島周辺における領海侵入が継続している。中国公船による尖閣諸島における領海侵入が初めて行われたのは2008年12月であるが、2014年を通じて、中国は、公船を尖閣諸島周辺海域にほぼ連日派遣し、1年間で32回(累計88隻)に及ぶ領海侵入を繰り返した。
そもそも尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本固有の領土であり、現に日本はこれを有効に支配している。したがって、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない。日本は、1885年以降再三にわたる現地調査を行い、清朝の支配が及んでいる痕跡がないことを確認の上、1895年1月に日本の領土に編入した。その後、日本政府の許可に基づき、尖閣諸島において鰹節(かつおぶし)製造などの事業経営が行われ、多数の日本人が同諸島に居住した。第二次世界大戦後、サンフランシスコ平和条約によって尖閣諸島は米国の施政権下に置かれた。
日本が1895年に国際法上、正当な手段で尖閣諸島の領有権を取得してから、東シナ海に石油埋蔵の可能性が指摘され、尖閣諸島に対する注目が集まった1970年代に至るまで、中国は日本による尖閣諸島の領有に対し、何ら異議を唱えてこなかった(1)。また、中国側は異議を唱えてこなかったことについて何ら説明を行っていない。
中国による一方的な現状変更の試みに対しては、日本の領土・領海・領空は断固として守り抜くとの決意で対応しており、外交ルートを通じ、厳重な抗議と退去の要求を繰り返し実施している。また、5月と6月には中国軍機による自衛隊機への近接飛行事案が発生した。日本は、偶発的事故の発生につながりかねない非常に危険な行為が二度と発生しないよう、中国側に強く求めた。
日本として不測の事態を回避するための海上連絡メカニズムの早期運用開始を中国側に働きかけてきたが、9月には日中高級事務レベル海洋協議第2回会議が行われ、防衛当局間の海上連絡メカニズムの早期運用開始に向けて協議を再開することに原則一致し、日中首脳会談では事務レベルで議論を継続することが確認された。
日中両国は地域と国際社会の平和と安定のために責任を共有している。安定した日中関係は、両国の国民だけでなく、アジア太平洋地域の平和と安定に不可欠であり、日本政府としては、「戦略的互恵関係」の考え方の下に、大局的観点から、様々なレベルで対話と協力を積み重ね、両国の関係を発展させていく。

(イ)小笠原諸島周辺海域などにおける中国サンゴ船問題
2014年9月中旬以降、小笠原諸島周辺海域などで中国サンゴ船とみられる船舶が多数確認され、違法操業事案が発生したことを受け、抑止効果を最大限に高めるべく、外国漁船の違法操業に対する罰金の上限を大幅に引き上げるとともに、補正予算での措置も含め、水産庁・海上保安庁などの関係省庁が連携して外国漁船に対する取締り体制を強化した。また、外交ルートを通じて、中国側に対し累次にわたり遺憾の意の表明と再発防止の申入れを実施した。11月8日の日中外相会談では、岸田外務大臣から、遺憾の意を表明するとともに、中国国内における取締りの実効性を上げることが重要であり、関係当局間の連携を強化したいと述べたのに対し、王毅外交部長から、中国側も必要な措置をとっているとの発言があった。また、12月に大連で行われた第15回日中漁業共同委員会では、中国サンゴ船の不法採捕を根絶するため、日中両国が継続して断固とした取締りを行い、違反者への厳しい処罰など、あらゆる措置を強化することで一致した。

(ウ)日中経済関係
日中間の貿易・投資などの経済関係は、緊密かつ相互依存的である。2014年の貿易総額(香港を除く。)は約3,092億米ドルであり、中国は、日本にとって8年連続で最大の貿易相手国となっている。また、中国側統計によると、日本の対中直接投資(約43.3億米ドル、2014年)は中国にとって国として第2位の規模となっている。
2012年から日中関係が緊張する中で、2014年の日本からの対中直接投資は、人件費の上昇といった中国の国内要因なども重なり、前年比で38.8%減となった。しかし、経済分野での交流・対話は続けられ、関係回復に向けた閣僚間の対話が再開された。また、経済同友会や日中経済協会代表団が訪中するなど、民間レベルの交流も活発に行われた。 12月末には日中の官民による省エネ・環境協力のプラットフォームである日中省エネルギー・環境総合フォーラムが2年ぶりに北京で開催され、高木経済産業副大臣が出席した。同フォーラムにおいて、日中双方は省エネ・環境に関する幅広い意見交換を行い、各種協力案件への署名を行った。
7月に中国で発生した使用期限切れの鶏肉などの使用にかかる問題は、日本でも高い関心を集め、8月に北京で日中食品安全推進イニシアチブ事務レベル会合が開催された。中国側に対し真相の早期解明を要求するとともに、食品の安全確保に必要な取組について率直な意見交換を行った。
12月に開催された第15回日中漁業共同委員会では、中国サンゴ船問題のほか、東シナ海の資源の保存管理のための具体的な措置について合意した。


(エ)両国民間の相互理解の増進
日本と中国の人的交流は、2014年は延べ約513万人(訪日者数延べ約241万人、訪中者数延べ約272万人)で、訪日者は約109万人増加(前年比+82.6%)して過去最高を記録する一方、訪中者は約16万人減少(前年比-5.6%)した。
中国との間では、2014年に「JENESYS2.0」により、中国から高校生や大学生など約1500名を日本に招へいした。訪日した中国の若者は各種交流や視察などを通じて、直接日本の文化や生活に触れるとともに、日本の青少年との間で相互理解を深め、今後の日中関係のあり方などについて活発な意見交換などを行った。


日中関係の更なる発展のため、中国の中央政府及び地方政府の指導者、政・経・官・学などの各界において一定の影響力を有する者、次世代の指導者、オピニオンリーダーなどの様々なレベル・分野の人材を日本に招へいし、幅広い関係構築・強化に努めている。これらの交流を通じて、被招へい者と日本関係者の間に良好な関係が構築され、日本に対する正確な理解が促進されている。
新日中友好21世紀委員会は、21世紀の日中関係を一層発展させていくため、日中双方の有識者が幅広く議論し、両国政府首脳に提言・報告を行う委員会である(日本側座長:西室泰三東芝相談役・日本郵政社長、中国側座長:唐家璇元国務委員)。2014年に同委員会は、6月に長崎意見交換会、12月には中国(北京及び西安)で第4回会合(約3年2か月ぶりの正式会合)を開催し、日中関係の改善・発展などにつき率直かつ活発な議論を行い、両国国民感情の改善や幅広い分野における日中間の協力の重要性などについて認識を共有した。
(オ)遺棄化学兵器問題
日本政府は、化学兵器禁止条約(CWC)に基づき、中国における遺棄化学兵器の廃棄処理事業に取り組んできており、河北省石家荘市、湖北省武漢市で移動式処理設備による廃棄処理を進めるとともに、2014年12月には最大の埋設地点である吉林省敦化市ハルバ嶺地区での試験廃棄処理が開始され、2014年末までに約3万8,000発の遺棄化学兵器の廃棄を完了するなど、着実に作業を進展させている(2)。
(2)台湾
ア 内政
2014年5月から第2期3年目に入った馬英九(ばえいきゅう)政権は、支持率の低迷が続き、11月29日に行われた大規模な統一地方選挙において、国民党は多くの重要なポストを失った。責任をとって内閣は総辞職し、馬英九総統は国民党主席を辞任した。
経済面では、景気は緩やかに回復しており、民間消費や固定資本投資といった内需が寄与し、2014年の実質GDP成長率は前年比3.74%増(速報値)となった。
イ 両岸関係・外交
2008年の馬英九政権発足後、両岸関係は急速に改善した。従来は「両岸経済協力枠組取決め(ECFA)」に代表されるように、経済関係を中心に発展してきたが、2014年2月には台湾側の王郁琦(おういくき)・大陸委員会主任委員が訪中し、6月には中国側の張志軍(ちょうしぐん)・国務院台湾事務弁公室主任が訪台するなど新たな動きもあった。一方で、3月から4月にかけて「両岸サービス貿易取決め」に反対する台湾の学生や市民が立法院を占拠する事件が起き、両岸接近の動向に反対する動きもあった。
ウ 日台関係
日本と台湾との関係は、1972年の日中共同声明に従い、非政府間の実務関係として維持されている。日本にとって台湾は、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係(台湾は日本にとって第5位の貿易相手であり、日本は台湾にとって第2位の貿易相手)と人的往来(2014年の日台間の短期訪問者数は、過去最高を更新し、延べ約440万人)を有する日本の重要なパートナーであり、大切な友人である。
このような状況を背景に、実務関係も深化しており、2014年には、公益財団法人交流協会と亜東関係協会の間で、観光事業発展や原子力エネルギーの平和利用など様々な分野において協力文書が作成された。また、6月には、両協会の間で、日台経済関係を分野横断的に議論する「日台経済パートナーシップ委員会」の枠組みも立ち上がった。
日台間の文化交流も活発で、6月24日から9月15日まで東京国立博物館において、10月7日から11月30日まで九州国立博物館において、故宮博物院の特別展が開催され、好評を博した。
なお、台湾も、尖閣諸島について独自の主張を行っており、民間活動家による上陸を目指す動きや台湾当局船舶による尖閣諸島周辺海域の航行などの事案が発生しているが、日台関係全般に影響を及ぼすような事態には至っていない。
(3)モンゴル
ア 内政
2014年10月、野党人民党が、アルタンホヤグ政権の経済失政などを根拠として、アルタンホヤグ首相解任決議案を提出した。一部の民主党有力議員が賛成する形で同解任決議案が可決され、11月に、アルタンホヤグ内閣は総辞職した。後任首相には、アルタンホヤグ内閣で官房長官を務めたサイハンビレグ議員が任命された。与党第一党の民主党は、議会に議席を持つ全ての政党と協議し、最大野党の人民党を含む大連立での組閣が決定した。15省19閣僚体制とする省庁再編を実施し、12月、サイハンビレグ内閣が発足した。サイハンビレグ首相は所信表明において、モンゴル経済が危機的状況にあるとの認識を示した上で、経済を第一とした政策を行い、「迅速に決定できる政府」を目指すと述べた。
ここ数年GDPの2桁成長が続き、2011年に17.3%の成長を記録したモンゴル経済は、資源価格の低迷や外国直接投資の減少などを受けて減速した。2014年の経済成長率は7.8%(モンゴル国家統計委員会速報値)となった。
イ 日・モンゴル関係
自由、民主主義といった基本的価値や市場経済を共有するモンゴルとの間では、引き続き友好関係の発展を目指していく。
2014年も前年に引き続き、ハイレベルの交流が活発に行われた。2014年中に安倍総理大臣とエルベグドルジ大統領は、電話会談を含め、4度の会談を行った。特に、7月に経団連とモンゴル政府が共催するモンゴル・ビジネス・フォーラムに出席するため訪日したエルベグドルジ大統領との首脳会談に際しては、日・モンゴル経済連携協定(EPA)交渉の大筋合意達成を表明し、「戦略的パートナーシップ」を更に強化するため、経済分野での協力の強化が重要である点で一致した。また、安倍総理大臣は、モンゴルの輸出と産業多角化を促進するための「エルチ・イニシアティブ・プラス」を提案するとともに、モンゴル側からの要請を踏まえ、経済アドバイザー派遣を含む支援を通じて、モンゴルの中長期的な経済政策の策定を後押しする意向を表明した。
さらに、外交当局間においても、8月のASEAN関連外相会議の際に岸田外務大臣がボルド外相と外相会談を行ったほか、6月には東京で次官級の第1回日モンゴル戦略対話、12月には第2回日モンゴル外交・防衛・安全保障当局間協議を実施するなど、2013年に策定した「戦略的パートナーシップのための日本・モンゴル中期行動計画」を着実に実施し、多層的な対話が行われた。
1 1950年代及び60年代には、尖閣諸島が日本の領土であることを前提として作成された中国側の資料があることが確認されており、外務省としては、例えば、中国側が1969年に発行した、尖閣諸島を日本領土として標記した地図についても、尖閣諸島が日本の領土であることを前提として作成されたものであると考えられ、外務省ホームページに掲載している(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/pdfs/senkaku_pdf)
2 中国の領域内に遺棄された旧日本軍の化学兵器は、これまで、北は黒龍江省から南は広東省までの広い範囲で約5.2万発が確認されており、また、吉林省敦化市ハルバ嶺地区には約30万発から40万発が埋設されていると推定されている。日本政府は、日中共同で現地調査を行うとともに、中国政府の協力の下、廃棄処理事業や各地での発掘回収事業を進めている。