令和元年9月11日
1 経緯
- (1)2005年,第69回人権委員会は,「人権と多国籍企業」に関する国連事務総長特別代表として,ハーバード大学ケネディスクールのジョン・ラギー教授を任命しました。ラギー特別代表は,各国や市民社会との協議を経て,2008年の第8回人権理事会に「保護,尊重及び救済の枠組」を提出しました。同枠組では,多国籍企業と人権との関係を,(ア)人権を守る国家の義務,(イ)人権を尊重する企業の責任,(ウ)救済措置へのアクセスの3つの柱に分類し,企業活動が人権に与える影響に係る「国家の義務」及び「企業の責任」を明確にすると同時に,被害者が効果的な救済を得るメカニズムの重要性を強調し,各主体が,それぞれの義務・責任を遂行すべき具体的な分野及び事例を挙げています。同枠組は,2008年第8回人権理事会に提出された関連の決議において歓迎(welcome)されました。
- (2)ラギー特別代表は,「保護,尊重及び救済の枠組」を運用するため,新たに「保護,尊重及び救済の枠組にかかる指導原則」を策定し,同指導原則は,2011年の第17回人権理事会に提出され,関連の決議において支持(endorse)されました。同決議により,新たに専門家で構成される作業部会が設立され,同作業部会は指導原則の普及促進,関係機関とのグッドプラクティスの共有,各国訪問等を行うこととされています。
- (3)同作業部会は,ビジネスと人権に関する指導原則の普及,実施にかかる行動計画を作成することを各国に奨励しており,これを受け,各国は実情や法令に則した行動計画の策定に着手し,2013年から,英国,イタリア,オランダ,ノルウェー,米国,ドイツ,フランス等を含む20か国以上が既に行動計画を公表しています。2015年のG7エルマウ・サミットにおける首脳宣言には,指導原則を強く支持し,また国別行動計画を策定する努力を歓迎する旨の文言が含まれました。2017年7月のG20ハンブルク首脳宣言においても,我が国を含むG20各国は,「ビジネスと人権に関する国別行動計画」等政策的な枠組みを構築することが求められています。
2 ビジネスと人権に関する我が国の行動計画
- (1)我が国は,指導原則を支持しており,その着実な履行に取り組むため,ビジネスと人権に関する行動計画を策定することを決定しました。同行動計画の策定は,持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けた取組の一つとして位置付けられており,SDGs実施指針付表,2018年6月に行われたSDGs推進本部の第5回会合で決定された「拡大版SDGsアクションプラン2018」及び同年12月に行われた第6回会合で決定された「SDGsアクションプラン2019」に,行動計画の策定が記載されました。また,同年6月に閣議決定された「未来投資戦略2018「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革」に,企業行動の原則としての人権の尊重に係る行動計画の策定が明記されました。
- (2)行動計画策定の第一段階として,海外での取組事例等の調査を踏まえ,企業活動における人権保護に関する我が国の法制度や施策等についての現状を確認すべく,政府主導にてベースラインスタディ(現状把握調査)を実施する旨決定し,全府省庁間においてその現状を整理及びステークホルダーとの意見交換会を実施し,2018年12月にその結果を報告書にとりまとめました。本ベースラインスタディにより,新しい分野である「ビジネスと人権」への関心が高まることが期待されます。
- (3)2019年4月,ビジネスと人権に関する行動計画の策定に向けて,関係府省庁の諮問に応じ,有識者からの見解を示す諮問委員会,及び様々な関係者が集まり意見交換を実施する作業部会を設置しました。
- (4)2019年7月,上記諮問委員会及び作業部会で提出された御意見等を踏まえて,ビジネスと人権に関する行動計画を策定する上で検討していく,全体的な優先分野を5つ,特に重点的に検討する必要がある14の事項を特定しました。(「ビジネスと人権に関する我が国の行動計画(NAP)の策定に向けて(PDF)
」) - (5)行動計画の策定を通して,国際社会における人権の保護・促進に貢献し,企業価値の向上に寄与するとの認識の下,2020年前半に行動計画の原案作成,そして,同年半ばに行動計画を公表することを目指して策定作業に取り組んでいきます(スケジュールは作業の状況により変更があり得ます。)。
4 関連文書
(1)国際ガイドライン
- 保護,尊重及び救済の枠組(英文(PDF)
) - 保護,尊重及び救済の枠組に係る指導原則(英文(PDF)
/仮訳(PDF)
) - OECD多国籍企業行動指針
(2)G7・G20首脳宣言
(3)国内政策文書
- 持続可能な開発目標(SDGs)実施指針(PDF)

- 拡大版SDGsアクションプラン2018(PDF)

- SDGsアクションプラン2019(PDF)

- 「未来投資戦略2018「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革」



