人権外交

令和7年4月18日

1 ビジネスと人権に関する指導原則

  • (1)2005年、第69回人権委員会は、「人権と多国籍企業」に関する国連事務総長特別代表として、ハーバード大学ケネディスクールのジョン・ラギー教授を任命しました。ラギー特別代表は、各国や市民社会との協議を経て、2008年の第8回人権理事会に「保護、尊重及び救済の枠組み(英文(PDF)別ウィンドウで開く)」を提出しました。同枠組では、多国籍企業と人権との関係を、ア 人権を守る国家の義務、イ 人権を尊重する企業の責任、ウ 救済措置へのアクセスの3つの柱に分類し、企業活動が人権に与える影響に係る「国家の義務」及び「企業の責任」を明確にすると同時に、被害者が効果的な救済を得るメカニズムの重要性を強調し、各主体が、それぞれの義務・責任を遂行すべき具体的な分野及び事例を挙げています。同枠組は、2008年第8回人権理事会に提出された関連の決議において歓迎(welcome)されました。
  • (2)ラギー特別代表は、「保護、尊重及び救済の枠組み」を運用するため、新たに「ビジネスと人権に関する指導原則:保護、尊重及び救済の枠組みにかかる指導原則(注1)」を策定し、同指導原則は、2011年の第17回人権理事会に提出され、関連の決議において支持(endorse)されました。同決議により、新たに専門家で構成される作業部会が設立され、同作業部会は指導原則の普及促進、関係機関とのグッドプラクティスの共有、各国訪問等を行うこととされています。

    (注1)指導原則に係る資料はこちら。(英文(PDF)別ウィンドウで開く仮訳・解説付き(PDF)別ウィンドウで開くパンフレット(PDF)別ウィンドウで開く
  • (3)同作業部会は、ビジネスと人権に関する指導原則の普及、実施にかかる行動計画を作成することを各国に奨励しており、これを受け、各国は実情や法令に則した行動計画の策定に着手し、2013年から、英国、イタリア、オランダ、ノルウェー、米国、ドイツ、フランス等を含む20か国以上が既に行動計画を公表しています(既に公表している国についてはこちら(外部リンク)別ウィンドウで開く)。2015年のG7エルマウ・サミット首脳宣言には、指導原則を強く支持し、また国別行動計画を策定する努力を歓迎する旨の文言が含まれました。2017年7月のG20ハンブルク・サミット首脳宣言においても、我が国を含むG20各国は、「ビジネスと人権に関する国別行動計画」等政策的な枠組みを構築することが求められています。

2 「ビジネスと人権」に関する我が国の行動計画

 2020年10月、「ビジネスと人権に関する行動計画に係る関係府省庁連絡会議(PDF)別ウィンドウで開く」において、企業活動における人権尊重の促進を図るため、「ビジネスと人権」に関する行動計画が策定されました。(注2)
 本行動計画においては、「ビジネスと人権」に関して、今後政府が取り組む各種施策が記載されているほか、企業に対し、企業活動における人権への悪影響の特定、予防・軽減、対処、情報共有を行うこと、人権デュー・ディリジェンスの導入促進への期待が表明されています。
 本行動計画の実施や周知を通じて、「ビジネスと人権」に関する関係府省庁の政策の一貫性を確保するとともに、責任ある企業行動の促進を図り、企業活動により人権への悪影響を受ける人々の人権保護・促進、ひいては、国際社会を含む社会全体の人権の保護・促進に貢献すること、日本企業の企業価値と国際競争力の向上、及びSDGs達成への貢献に繋がることが期待されます。

(注2)「ビジネスと人権」に関する行動計画に係る資料はこちら。(概要(PDF)別ウィンドウで開く日本語(PDF)別ウィンドウで開く英語(PDF)別ウィンドウで開くパンフレット

(「ビジネスと人権」に関する行動計画の策定経緯)

(「ビジネスと人権」に関する行動計画の実施)

(参考)

  • 外務省主催「ビジネスと人権」に関する企業向けセミナー
  • UNDP拠出事業「人権デュー・ディリジェンス促進を中心とした日本企業進出国等における責任ある企業行動の促進」
    • 実績:20か国(インド、インドネシア、ウクライナ、ガーナ、カザフスタン、カンボジア、ギルギス、ケニア、タイ、チュニジア、トルコ、ネパール、パキスタン、ブラジル、ベトナム、ペルー、メキシコ、モザンビーク、モンゴル、ラオス)
    • 事業概要(日本語(PDF)別ウィンドウで開く英語(PDF)別ウィンドウで開く

(関連情報)

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