ASEAN(東南アジア諸国連合)
第22回ASEAN+3(日中韓)首脳会議

(写真提供:内閣広報室)

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1 冒頭発言
議長国タイ,中国,韓国の発言に引き続いて,安倍総理から,冒頭の挨拶に続き概要以下のとおり発言した。なお,タイからは先般の日本の台風被害に対してお見舞いの言葉があった。
(1)総論
ア 「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」を歓迎し,日本が掲げる「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」とAOIPとのシナジーを追求し,自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて,連結性の向上に貢献したい。
イ 連結性に関するAPT首脳声明を歓迎。日本は,ASEANの中心性と一体性を重視し,ASEAN共同体の強化に向けて,幅広い分野で協力していく。
ウ G20大阪サミットでは,開放性,透明性,経済性,債務持続可能性といった「質の高いインフラ投資に関するG20原則(PDF)」を承認した。このサミットには,中韓首脳に加え,ASEAN議長としてプラユット首相にも参加いただいた。質の高いインフラ投資は,地域の連結性を強化し,持続可能な経済成長をもたらす。各国によるASEAN連結性に関連するプロジェクトの推進は,この原則に則ったものであるべき。
(2)日本が進めるASEAN+3協力
ア 本年のG20大阪サミットの成果を踏まえ,海洋プラスチックごみや貿易の分野で協力を推進していきたい。具体的には,海洋プラスチックごみによる追加的な汚染を2050年までにゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の共有及び枠組みへの参画を呼びかけたい。
イ 日本は,同ビジョンの実現に向け,「MARINEイニシアティブ」に基づき,ASEAN諸国の廃棄物管理に関する能力構築及びインフラ整備を支援する。
ウ 昨年表明した「APT海洋プラスチックごみ協力アクション・イニシアティブ」(PDF)の下,東アジアASEAN経済研究センター(ERIA)でのナレッジセンター設立や各国の計画策定支援等,協力を強化する。
2 ASEAN+3協力のレビューと今後の方向性
安倍総理から,ASEAN+3協力に関する日本の取り組みを中心に概要以下のとおり説明した。
(1)経済的課題(貿易・エネルギー)
ア G20大阪サミットでは,信頼性のある自由なデータ流通の重要性を確認。その機会に立ち上げた「大阪トラック」の下,WTOにおける電子商取引に関する国際的なルール作り等,国際的な政策討議を進めていきたい。
イ WTOの紛争解決制度が本来の機能を果たせていないことは問題。WTO改革のモメンタムを高めるべく協力したい。
ウ また,TPP11やRCEP等を通じて,自由貿易の推進役として引き続き自由で公正なルールを世界に広めていきたい。
エ エネルギー安全保障,経済効率性,環境及び安全性を実現するエネルギー転換の重要性を確認。日本は,水素やカーボンリサイクルなどのイノベーションの推進や,その普及に向けた国際連携を進め,環境と成長の好循環を生み出す。
(2)社会的課題
ア 保健医療
高齢化は地域にとって避けられない課題。日本は,「アジア健康構想」を推進し,アジアにおける,バランスのとれた裾野の広いヘルスケアの実現を目指す。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(PDF)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ促進のためには持続可能な保健財政制度の確立が重要であり,必要な支援を継続したい。
イ 防災
日本は本年もASEAN+3緊急米(コメ)備蓄協定を通じ,フィリピン及びミャンマーにコメ支援を実施。また,東南アジア災害リスク保険ファシリティへの支援を継続する。
ウ 教育
地域において学生の流動性を高めつつ,質の高い高等教育を実現していくため,引き続き各国と協力していきたい。
エ 国境を越える犯罪
テロ及びその根本原因たる暴力的過激主義について,日本は引き続き,アジア諸国に対する支援を推進する。この関連で,来年4月,「京都コングレス」を50年ぶりにホストする。ハイレベルの参加を期待する。
3 地域・国際情勢に関する意見交換
安倍総理から,北朝鮮に関し,概要以下のとおり述べた。
北朝鮮の弾道ミサイルは,安保理決議の明白な違反であり,強く非難。朝鮮半島の非核化に向け,国際社会が一体となって米朝プロセスを後押ししていくことが重要。「瀬取り」対策を含め,安保理決議の完全な履行の堅持が不可欠。拉致,核,ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し,不幸な過去を清算して,国交正常化を目指すとの我が国の方針に変わりはない。私自身,条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意。拉致問題について,各国からの北朝鮮への働きかけに改めて謝意を表する。拉致問題の早期解決に向け,引き続きの理解と協力をお願いする。
ASEAN側からは,多くの国から,APT協力作業計画(2018-2022)に基づいた協力や進捗について言及があると共に,日中韓が行うAPT協力への謝意が示された。
また,多くの国から,約20年前の金融危機を乗り越えたAPT協力により,現在,世界と地域が直面する保護主義の高まりに対抗していく重要性が示された。更に,今次首脳会議において採択された「連結性イニシアティブの連結に関するAPT首脳声明」に対する歓迎の意と,同イニシアティブと各国の連結性イニシアティブの相乗効果により,ASEAN域内及び東アジアの連結性の強化に期待が示された。
北朝鮮問題について,いくつかの参加国が,対話による解決の重要性,朝鮮半島の完全な非核化の実現及び国連安保理決議の履行の重要性を指摘した。