報道発表
第2回海洋法に関する国際シンポジウムの開催
1 2月16日及び本17日,外務省は,東京(三田共用会議所)において,第2回海洋法に関する国際シンポジウム「海洋資源の国際法」を開催しました。
2 このシンポジウムには,国外及び国内の海洋法の権威ある研究者及び実務家がパネリストとして出席しました。また,在京外交団,政府関係者,研究者,学生ら延べ300人余が出席し,パネリストとの間で活発な質疑応答が行われました。
3 なお,同シンポジウム1日目の終了後には,岸田文雄外務大臣主催でレセプションが開催されました。同レセプションの挨拶において,岸田大臣から,本年G7の議長国を務める日本として,「海における法の支配」を促進し,「開かれ安定した海洋」の維持・発展に取り組んでいく考えであることを述べました。
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(1)2月16日のオープニング・セッションでは,黄川田仁志外務大臣政務官が開会の辞を述べ,日本外交の重要な柱の一つである「海における法の支配」の促進は,本年日本が議長を務めるG7でも重点分野の一つとなるものであり,本シンポジウムにおいて様々な角度から議論頂きたい,また,今日,国際社会においては,技術の発展等にともない,海洋資源開発への高い関心が示されており,海洋資源の秩序ある開発のためには,バランスの取れた国際法の枠組み作り及びその遵守が大切である旨を述べました。
(2)続いて,柳井俊二国際海洋法裁判所裁判官が基調講演を行い,国連海洋法条約によって設けられた200海里以遠の大陸棚や深海底に関する新しい制度が,国家の実行や国際海洋法裁判所を含む国際機関の活動によって拡充してきたことを述べ,また,国家管轄権外区域における海洋生物多様性に関する最近の発展について紹介しました。
5 パネルディスカッションでは,次の3つのテーマの下で各パネリストが報告し,その後,質疑応答が行われました。
(1)第一部「深海底の鉱物資源」
マイケル・ロッジ国際海底機構(ISA)副事務局長兼法律顧問,西本健太郎 東北大学大学院法学研究科准教授及びエリ・ジャルマッシュ・フランス首相府海洋本部事務局海洋法担当特別顧問がパネリストとして,深海底鉱業のための規制レジームの発展や,深海底における諸活動についての法的問題,また深海底鉱業に関与する諸主体の権限等について報告を行いました。
(2)第二部「大陸棚(200海里以遠の大陸棚を含む。)の資源」
江藤淳一上智大学法学部教授,坂巻静佳静岡県立大学国際関係学部専任講師,クライヴ・スコフィールド・ウーロンゴン大学オーストラリア国立海洋資源・安全保障センター教授がパネリストとして,200海里内外の大陸棚の法的地位の差異や,延長大陸棚の法的位置づけ,境界未画定海域の大陸棚における資源開発のあり方や課題等について報告を行いました。
(3)第三部「国家管轄権外区域の海洋生物多様性」
アシュリー・ローチ・シンガポール国立大学上級客員研究員,兼原敦子上智大学法学部教授,ルーサー・ラングレジ・インド外務省法規条約局上級法務官,濵本正太郎京都大学大学院法学研究科教授がパネリストとして,同分野に関する海洋法条約の下の新たな国際約束の作成のための交渉が3月に開始されることを踏まえ,国連総会決議69/292において新たな国際約束が「海洋法条約の下の」とされる意味や,交渉の主要論点の一つである海洋遺伝資源と知的財産権との関係,シンガポールにおける同テーマに関するワークショップの成果等について報告を行いました。
6 シンポジウムの締めくくりには,黄川田政務官から閉会の辞を述べ,G7サミット議長国として,「海における法の支配」の促進に向けたメッセージを国際社会に対し発信できるよう取り組んでいく決意を改めて表明しました。
7 外務省としては,今回のシンポジウムの経験を踏まえ,海洋法に基づく「法の支配」の徹底に向け,海洋法に関する議論の場を作っていく考えです。