日本の安全保障と国際社会の平和と安定

海洋の国際法秩序と国連海洋法条約

平成29年4月3日

1 我が国と海洋

 我が国は,四方を海に囲まれた海洋国家であり,石油や鉱物等のエネルギー資源の輸入のほぼすべてを海上輸送に依存している。また,国土面積が小さく,天然資源の乏しい島国である我が国にとって,海洋の生物資源や周辺海域の大陸棚・深海底に埋蔵される海底資源は,経済的な観点から重要であり,また,力ではなく,法とルールが支配する海洋秩序に支えられた「開かれた海洋」は,日本だけでなく国際社会全体の平和と繁栄に不可欠である。

2 海洋の国際法秩序

 海洋の法的秩序の根幹を成す海洋法とは,海洋の利用・開発とその規制に関する国際法上の権利義務関係を定めるもので,海洋法は国際関係の歴史の中で形成されてきた,長い歴史を持つ国際法である。

 海洋法は,第二次世界大戦後,法典化または法の漸進的発達のための作業を経て,国連海洋法条約(正式名称は,「海洋法に関する国際連合条約」。以下「条約」という。詳細は以下4参照。)として採択された。我が国は,1983年2月に署名,1996年6月に批准し,条約は我が国について同年7月20日(国民の祝日「海の日」)に発効した。2017年3月現在,168の国等が締結している(締結状況別ウィンドウで開く)。

 条約は,領海,接続水域,排他的経済水域,大陸棚,公海,深海底等の海洋に関する諸問題について包括的に規律しており,海洋に関する安定的な法的秩序の確立に資するものである。世界の主要な海洋国家である我が国にとって,条約は,我が国の海洋権益を確保し,海洋に係る活動を円滑に行うための礎となるものである。

 資料:国連海洋法条約と日本(PDF)別ウィンドウで開く

3 外務省の取組

 外務省は,総合海洋政策本部と一体となり,我が国の考え及び取組の発信,関係国との連携等,海洋に関する外交政策全般を取り進めている。

(1)大陸棚延長申請

 2008年11月,我が国は,条約第76条に従い,200海里を超える大陸棚を設定するための申請を大陸棚限界委員会に提出した。2012年4月,我が国は当該申請に関する同委員会の勧告を受領した。

(2)航行安全への取組

 (詳細は「海上の安全保障(海賊問題を含む。)」参照)
 我が国は,石油や鉱物等のエネルギー資源の輸入のほぼすべてを海上輸送に依存していることから,海上の安全確保は死活的な問題である。近年アジア及びアフリカ地域で頻発する海賊問題は我が国の海上輸送への脅威となっており,こうした海賊行為への対策として,我が国は,これまで,沿岸国の海上法執行能力の向上に向けた支援を行っている。また,政府は2009年に成立した海賊対処法に基づき,ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動を実施している。

 2001年,小泉総理大臣(当時)は,アジアの海賊問題に有効に対処するため,地域協力促進のための法的枠組み作成を提唱し,これを受け,日本主導の下,ASEAN諸国,中国,韓国,インド,スリランカ,バングラデシュが協力して協定の作成交渉が開始され,アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)は,2006年に発効した。同年11月,協定に基づきシンガポールに情報共有センター(ISC)が設置され,我が国は,同センターに対し,事務局長を含む2名の職員を派遣するとともに,財政的な支援も実施している。

(3)国際海洋法裁判所と我が国の関係

 1996年10月,国際海洋法裁判所がドイツ(ハンブルク)に設立され,設立以来,我が国は裁判官を輩出してきている。これまで我が国から,山本草二裁判官(故人)(任期:1996年10月から9年間),柳井俊二裁判官(任期:2005年10月から9年間)が選出されている。柳井裁判官は,2011年10月に同裁判所の所長に選出され(所長としての任期は2014年9月末まで),また,2014年6月の同裁判所裁判官選挙において再選を果たした(任期:2014年10月から9年間)。

 我が国がITLOSにおける裁判の当事者となった事案は以下のとおり。

  • ア みなみまぐろ事件(1999年)
  • イ 第88豊進丸事件(2007年)
  • ウ 第53富丸事件(2007年)

4 国連海洋法条約(「海洋法に関する国際連合条約」)

(1)経緯

 海洋法の法典化は,国際連合が最大の関心を払ってきた事項の一つであり,1958年から三次にわたり国際連合海洋法会議が開催された。

 第三次国連海洋法会議は,1973年に開始され,10年間にわたる交渉の末,1982年,ジャマイカにおいて開催された第三次国連海洋法会議最終議定書及び条約の署名会議において条約が採択され,1984年までの署名開放期間中に159ヶ国が署名(我が国は1983年2月に署名),1994年11月に発効した(我が国については1996年7月に発効)(注)。

 我が国は,海運国,遠洋漁業国等の基本的立場を守るべく,条約の作成過程に積極的に参加した。我が国は1996年6月に条約を批准し,条約は同年7月20日(国民の祝日「海の日」)に我が国について発効した。2017年3月現在,168の国等が締結している。

 (注)締結状況別ウィンドウで開く図1国連海洋法条約概念図(PDF)別ウィンドウで開く条約における各種海域の概念図国連海洋法条約全文(英語)(外部リンク)別ウィンドウで開く

(2)概要

 条約は,全17部320条の本文及び9の附属書並びに第11部(深海底)の実施協定から成り,その内容は,領海,公海,大陸棚といったこれまでジュネーブ海洋法4条約に規定されていたものに加え,国際航行に使用されている海峡及び排他的経済水域といった新たな規定,大陸棚限界委員会国際海底機構及び紛争の解決のための国際海洋法裁判所といった新たな国際機関の設立を伴う規定を含む多岐にわたるものとなっている。

 条約における海域区分は以下のとおり。

ア 領海,接続水域及び国際航行に使用されている海峡

  • (ア)いずれの国も,基線から測定して12海里を超えない範囲で領海の幅を定める権利を有する。領海は,相対国又は隣接国間においては,原則として中間線までとされる。

    (注1)我が国は,「領海及び接続水域に関する法律」(1977年)により,領海の基線(低潮線,直線基線等)を規定(我が国が設定している基線・直線基線の例(国連に寄託した海図より(PDF)別ウィンドウで開く)。領海の基線から排他的経済水域及び大陸棚も設定(「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」(1996年))。また,「低潮線保全法」(2011年)に基づき,排他的経済水域等の保持を図るために必要な低潮線の保全を行っている。

    (注2)1海里=1,852メートル

  • (イ)沿岸国の主権は,領海に及ぶ。領海に対する主権は条約等に従って行使される。
  • (ウ)すべての国の船舶は,領海において無害通航権を有する。
  • (エ)沿岸国は,領海に接続する水域(領海基線から24海里を超えない範囲内)において,自国の通関,財政,出入国管理又は衛生に関する一定の規制を行うことができる。

    (我が国の関連法令:「領海及び接続水域に関する法律」)

  • (オ)一定の条件を満たす国際航行に使用されている海峡においては,すべての船舶及び航空機が通過通航権を有する。

イ 排他的経済水域(EEZ)

  • (ア)領海の外側に,領海の基線から200海里を超えない範囲内で設定が認められている。(相対国又は隣接国の間におけるEEZの境界画定は,衡平な解決を達成するために国際法に基づいて合意により行う。)
  • (イ)以下のような沿岸国の権利,管轄権等が認められている。
    • [1] 沿岸国は,EEZ(海底及びその下を含む)において,天然資源(生物・非生物を問わない。)の探査,開発,保存及び管理等のための主権的権利を有する。
    • [2] 沿岸国は,EEZにおいて,人工島,施設及び構築物の設置及び利用,海洋環境の保護及び保全,海洋の科学的調査等に関する管轄権を有する。

      (注)我が国の関係法令:「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」

ウ 大陸棚

  • (ア)領海基線から原則として200海里まで(地質上及び地形上の一定の要件を満たす場合には,さらにその外側の一定の限界まで。)の海底及びその下を沿岸国の大陸棚として規定。
  • (イ)沿岸国は,大陸棚を探査し及びその天然資源を開発するための主権的権利を行使することが認められている。

    (注)我が国の関連法令:「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」

  • (ウ)大陸棚限界委員会

エ 公海

  • (ア)公海はすべての国に開放され,すべての国が公海の自由(航行の自由,上空飛行の自由,漁獲の自由,海洋の科学的調査の自由等)を享受する。
  • (イ)船舶は公海において原則として旗国の排他的管轄権に服する。(例外:海賊行為,無許可放送等)
  • (ウ)いずれの国も,自国を旗国とする船舶に対し,行政上,技術上及び社会上の事項について有効に管轄権を行使し及び有効に規制を行う。

オ 深海底

  • (ア)深海底(国の管轄権の及ぶ区域の境界(いわゆる大陸棚の外側の限界線)の外の海底及びその下)及びその資源は,「人類の共同の財産」とされる。
  • (イ)いずれの国も深海底又はその資源について主権又は主権的権利を主張し又は行使してはならない。
  • (ウ)深海底の資源を管理することを目的として,深海底における活動を組織し及び管理するために,国際海底機構をジャマイカに設置。

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