国連

政府間交渉開始までの安保理改革の経緯(詳細)

平成21年10月

  1. 改革議論の経緯
  2. 第59回国連総会会期(2004年9月-2005年9月)
  3. 第60回国連総会会期(2005年9月-2006年9月)
  4. 第61回国連総会会期(2006年9月-2007年9月)
  5. 第62回国連総会会期(2007年9月-2008年9月)
  6. 第63回国連総会会期(2008年9月-2009年9月)

1.改革議論の経緯

(1)安保理改革作業部会の設立(1993年)

 安保理改革は、1993年に国連総会の決議により安保理改革作業部会(OEWG:Open-Ended Working Group)が設立されて以来、OEWG、国連総会等の枠組みで検討されてきています。改革の必要性については、多くの国が認める一方で、改革を巡る議論が具体化するにつれて、各国の様々な利害・思惑の対立が表面化しました。そのため、改革についての議論は未だにまとまっていません。

(2)改革に向けた機運の高まり

 イラク問題に際して国連のあり方が問われる中、アナン国連事務総長は、2003年9月の第58回国連総会において、国際社会に対する「新たな脅威」に対して集団行動で対処するためにいかに国連の機能・組織を改革すべきかを検討するため、有識者からなる「ハイレベル委員会」の設置を提唱しました。また、我が国も、川口外務大臣が同総会の国連演説において、国連創設60周年に当たる2005年に各国首脳が国連改革について政治的意思決定をすべきである旨提案し、改革の機運を高めました。

(3)ハイレベル委員会の設置

 2003年11月に、アナン国連事務総長の諮問機関として、アナン・パンヤラチュン議長(元タイ首相)をはじめ、世界各国の有識者16名をメンバーとする「ハイレベル委員会」が発足。我が国からは緒方貞子氏(現・国際協力機構(JICA)理事長)が議論に参加しました。
 ハイレベル委員会は、(1)国際社会が直面する「新たな脅威」は何か、(2)これらの脅威への対処のためにいかなる集団行動が可能か、(3)そのためには、国連の機能・組織をどう改革すべきであるかにつき、アナン国連事務総長への勧告をまとめる役割を与えられました。

2.第59回国連総会会期(2004年9月-2005年9月)

(1)小泉総理の第59回国連総会出席(2004年9月)

 第59回国連総会に出席した小泉総理は、その演説の中で、常任・非常任議席双方を拡大する形での安保理改革の必要性、国連の諸機関は効果的且つ効率的でなければならず、国連システム全体にわたる変革が必要であることを国際社会へ強く訴えかけました。また、日本のこれまでの国際の平和と安全のために果たしてきた役割は、安保理常任理事国となるにふさわしい確固たる基盤となるものであると表明しました。(「第59回国連総会における小泉総理大臣一般討論演説 新しい時代に向けた新しい国連(「国連新時代」)(仮訳)(平成16年9月21日)」
 また、G4(日本、ドイツ、インド、ブラジル)首脳レベル会合を開催し、安保理常任理事国候補として相互を支持することを確認しました。(「国連改革に関する伯・独・印・日首脳会合共同プレス声明(仮訳)(平成16年9月21日)

(2)ハイレベル委員会報告書の提出(2004年12月)

 2003年11月に世界各国の有識者16名をメンバーとして発足した「ハイレベル委員会」により、報告書「より安全な世界:我々の共有する責任」が2004年12月2日、アナン国連事務総長に提出されました。この報告書では、国際社会が直面する脅威に対して必要な取組を提言し、これらの課題に取り組むための国連の改革について大胆な提言が盛り込まれており、そのうち、安保理改革については、常任・非常任双方の議席を拡大する案を含む2つの具体案が提示されました。

(3)アナン国連事務総長報告の公表(2005年3月)

 ハイレベル委員会報告書を土台として、アナン国連事務総長により、「より大きな自由に向けて」と題する報告書が、2005年3月20日、加盟国に公表されました。この報告では、安保理改革につき、モデルA(常任6議席、非常任3議席の拡大)、モデルB(再選可能な4年任期の非常任8議席、非常任議席1議席の拡大)、あるいはいずれかのモデルを基礎とするその他の提案を検討するよう勧告しました。また、「加盟国は、2005年9月のミレニアム宣言に関する首脳会合の前にこの重要な問題に関する決定を行うことに同意すべきである。決定は、コンセンサスで行われることが非常に望ましいがそのことが行動を遅らせることの言い訳になってはならない」と指摘されました。

(4)G4主催の安保理改革に関する会合開催(2005年3月)

 2005年3月31日、ニューヨークにおいて、G4主催で安保理改革に関する「改革2005年会合」が開催され、P5(Permanent5=常任理事国)を含む134ヶ国が参加しました。G4は、同年9月の首脳会合の前に安保理改革についての決定を行うことが重要であることを訴え、今後の安保理改革の取り進め方について、第一段階として枠組み決議を提案していくとの方針を説明しました。

(5)アナン事務総長報告に関する国連総会公式審議(2005年4月)

 2005年4月6日~8日の3日間、アナン事務総長報告に関する国連総会公式審議が行われ、我が国を含む計82ヶ国が演説を行いました。安保理改革については、演説を行った82ヶ国中、常任・非常任理事国の双方の拡大を支持した国とモデルAに対する支持・選好を示した国の総計は、(重複を除けば)29ヶ国であったのに対し、非常任理事国のみの拡大を主張した国とモデルBに対する支持・選好を表明した国の総計は2ヶ国でした。

(6)「コンセンサスのための結集」(UFC)会合(2005年4月)

 国連安保理の常任理事国拡大に反対するイタリア、パキスタン、韓国等、反対派9ヶ国が2005年4月11日、ニューヨークにおいて「コンセンサスのための結集」(UFC;Uniting for Consensus)会合を開催しました。主催者側発表によれば、同会合には、常任理事国の米露中3ヶ国を含む119ヶ国・機関の代表が参加したが、同会合には情報収集目的で参加した国も多かった模様です。

(7)町村外務大臣主催「国連改革会合」(2005年4月)

 2005年4月29日、町村外務大臣はニューヨークにおいて「国連改革会合」を主催し、165ヶ国(日本を含む)の出席を得て、開発、軍縮不拡散、平和構築及び機構改革といった国連の諸課題に関する日本の立場につき説明しました。(「国連改革会合」町村大臣冒頭発言(仮訳)

(8)国連総会非公式審議(2005年4月~5月)

 2005年4月27日、28日、5月2日に開催された国連総会非公式審議においては、日本を含む計77ヶ国が演説を行い、41ヶ国が常任・非常任双方の拡大を主張したのに対し、6ヶ国が非常任のみの拡大を主張しました。

(9)G4枠組み決議案の提出(2005年5月~7月)

 2005年5月、ニューヨークにおいて、安保理改革に関する枠組み決議案についてG4間の合意が成立し、これに基づいて各国首都、NY、東京のあらゆる場、機会を通じての、関係国への説明、働きかけを開始しました。(安保理改革に関するG4会合

【G4決議案の内容】

(10)G4決議案の提出・審議、アフリカ連合(AU)・UFC決議案の提出(2005年7月)

 7月6日、この決議案は正式に国連事務局に提出され、最終的な共同提案国は32ヶ国に上りました。7月11日~12日、G4枠組み決議案に関する総会審議が開催され、計48ヶ国が発言しました。そのうち26ヶ国がG4決議案に対する支持を明示的に表明しました。一方、常任理事国の拡大に頑強に反対する国もあり、国連改革史上初めて提出された安保理改革決議案を巡って活発な議論が交わされました。
 G4決議案の提出を受け、7月上旬のAU首脳会合で決議案を作成し、7月14日に提出しました。この決議案は、G4決議案の拡大に加えてアフリカに非常任議席を更に1議席加えるとともに、新しい常任理事国にも拒否権を与えるものでした。更にUFCも、G4とAUに対抗し、7月21日に非常任議席のみを10議席増やす決議案を提出しました。

(11)G4とAUとの交渉(2005年7月-8月)

 「AU決議案」はG4決議案と共通点も多く、決議案採択に必要な全加盟国の3分の2以上の支持を獲得するとの観点から、G4とAUの間の一本化を目指した交渉が試みられました。7月25日、ロンドンで開催されたG4・AU外相会合で、立場が分かれていた非常任議席数の問題及び拒否権の扱いに関する議論が一旦収束を見ました。しかし、アフリカの首脳レベルの了承を取り付けるべく8月4日に開催されたAU特別首脳会合においては、アフリカの新常任理事国は拒否権を持つべきだとのアフリカの原則的立場が再確認され、G4・AU合同決議案はアフリカ首脳の合意を取り付けるには至りませんでした。

(12)3本の決議案の廃案(2005年9月)

 アフリカとの交渉が不調に終わったことから、G4決議案は決議案採択に必要な3分の2の支持を得ることが困難となり、第59回国連総会会期中に採択に付されずに会期末を迎えました。また、AU、UFCの決議案はいずれも共同提案国以上には支持を広げられなかったことから、そもそも採択の見通しは立たず、これら3つの安保理改革決議案は第59回国連総会会期が終了するとともに廃案となりました。

3.第60回国連総会会期(2005年9月-2006年9月)

(1)小泉総理、町村外務大臣の第60回国連総会出席(2005年9月)

 小泉総理は、2005年9月15日、170カ国以上の首脳が参加した第60回国連総会の首脳会合において演説を行いました。この演説の中で、小泉総理は、21世紀の国連は、優しさ、強さ、効果的な実行を備えたものとならなければならないと呼びかけました。また、過去60年間の国際情勢の劇的な変化及び平和を愛する国家としての我が国の発展と国際貢献を踏まえ、安保理常任理事国としてより大きな役割を果たす用意がある旨改めて表明し、安保理改革についての今次総会会期における早期決定を呼びかけました。(「第60回国連総会首脳会合における小泉総理大臣演説「言葉から行動へ」(仮訳)」)また、町村外務大臣も、国連総会において一般討論演説を行いました。(「第60回国連総会町村外務大臣演説「新しい国連と日本」(仮訳)」)今次首脳会合及び一般討論演説を通じ、139ヶ国の首脳、外相が安保理改革の必要性に言及しました。

(2)首脳会合成果文書(2005年9月)

 2005年9月16日、世界各国の首脳は、開発、平和、人権、国連強化、「旧敵国条項」の削除など幅広い内容からなる成果文書を採択しました。この中で、安保理改革については、早期の改革を国連改革の不可欠の要素と位置づけた上で、その実現に向けて努力を継続し、国連総会において2005年末までに進捗状況をレビューすることとされました(「国連首脳会合成果文書(仮訳)」(PDF)PDF

(3)安保理改革に関する総会審議(2005年11月)

 2005年11月10日~11日、国連総会にて「安保理改革」を議題とする審議が行われ、我が国からは大島国連大使が演説しました。その中で、大島大使は、第59回総会に提出された3つの決議案がいずれも採決には至らず廃案となったという客観的事実を踏まえて、今後、加盟国のより幅広い支持を得て改革を実現するためにいかなる方策があり得るかを更に模索していく必要性に言及しました。同審議では、合計71カ国が発言し、エリアソン総会議長より、安保理改革の必要性については幅広い支持があり、安保理改革の機運は依然存続していると認められるとの総括がありました。

(4)安保理改革の進捗状況に関する国連総会報告(2005年12月)

 首脳会合成果文書で安保理改革の進捗状況をレビューすることとされたことを受け、2005年12月19日付エリアソン総会議長発書簡の形で、安保理改革の進捗状況に関する国連総会報告が発出されました。同報告の中で、総会議長は、安保理拡大の必要性については幅広い合意があること、安保理改革の協議は2006年に再開されるべきであること等を表明しました。

(5)安保理改革決議案の再提出(2005年12月、2006年1月)

 2005年10月に開催されたAUサミットにおいて再度提出することが決定された「AU決議案」が2005年12月14日、ナイジェリア、南アフリカ等により再提出されました。日本を除くG4の3ヶ国(インド、ドイツ、ブラジル)は、これを受け、2006年1月5日、前59回総会に提出したG4決議案と基本的に同じ決議案を提出しました。一方、日本としては、前回総会会期に提出されたG4決議案がそのままの形で採択される現実的な見通しが低い状況下で、同じ決議案を再提出しても有益ではないとの考えを有していたこと、より幅広い支持を得られる案を模索して日米間協議を継続していたことから、同決議案の共同提案国となることは見合わせました。

(6)安保理の作業方法改善を巡る動き(2006年3月~)

 安保理改革は、構成国の拡大のみならず、安保理の作業方法の改善という要素を含みます。安保理の作業方法の改善とは、安保理の加盟国一般に対する説明責任や議論の透明性を強化するため、安保理の手続・規則を整備・改善することです。これについては、2006年3月17日、スイス、シンガポール、ヨルダン、コスタリカ、リヒテンシュタインの5ヶ国(S5と呼ばれる)が、安保理の作業方法の改善を内容とする決議案を提出しました。同案は、中小国の支持を得る一方、国連憲章上規定されている拒否権の行使の制限を勧告する内容を含んでいたため、常任理事国は同案に反発しました。この決議案と並行して、日本は非常任理事国として安保理に議席を有していたことを活用し、同年1月から安保理の文書手続作業部会において議長を務め、S5の決議案で示唆された内容の多くを実際に安保理内に浸透させるべく作業を行いました。この日本の努力は、同年7月19日の安保理の作業の透明性向上のための議長ノートの発出という形で結実しました。

(7)安保理改革に関する総会審議(2006年7月)

 2006年7月20日~21日、安保理改革に関する総会審議が開催され、86ヶ国が発言しました。日本は、安保理改革の現状を踏まえ、引き続き第61回会期でもより精力的に検討を継続すべき旨訴えました。議長総括では、安保理の現状維持はオプションたり得ないことは「ほぼ全会一致」の認識であることが改めて確認されました。なお、第60回総会会期中に提出された「AU決議案」、日本を除くG4による決議案及び「S5決議案」は、いずれも、総会の審議や投票に付されることなく会期末をもって廃案となりました。

4.第61回国連総会会期(2006年9月-2007年9月)

(1)第61回国連総会一般討論演説(2006年9月)

 2006年9月19日~27日に開催された第61回国連総会における一般討論演説では、大島国連大使は、9月26日、効果的で代表性と透明性のある安保理改革の必要性は現実的かつ緊急の要請であり、加盟国は創造的かつ説得的な新たな提案を必要としている旨発言しました(「第61回国連総会における大島国連大使一般討論演説(仮訳)」)。また、全発言国191ヶ国のうち、3分の2にあたる128ヶ国が直接・間接的に安保理改革の重要性に言及しました。

(2)第165回国会における安倍総理の所信表明演説(2006年9月)

 2006年9月29日の所信表明演説において、安倍総理は、日本が国連に加盟して50年を迎えることにつき触れ、日本が安保理の常任理事国となって、しっかりとその責任を果たしていかなければならないと述べました。また、戦後創られた国連を、21世紀にふさわしい国連に変えていくため、日本の常任理事国入りを目指し、国連改革に引き続き取り組んでいくことを表明しました。(「第165回国会における安倍内閣総理大臣所信表明演説」他のサイトヘ「第166回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説」他のサイトヘ

(3)安保理改革に関する総会審議(2006年12月)

 2006年12月11日~12日、安保理改革に関する総会審議が行われ、日本からは大島国連大使が、安保理改革に関する15年間の議論を終結させる必要性に言及し、今後の議論の基礎となり得る具体的な提案を検討中であり、然るべき時期に具体的提案を提示したいと表明しました。この審議では75ヶ国が発言し、多くの国が安保理改革の重要性、必要性、緊急性を主張するなど、安保理改革について成果があって然るべきだとの認識が幅広く共有されました。

(4)安倍総理・麻生外務大臣の訪欧(2007年1月)

 2007年1月、安倍総理、麻生外務大臣はそれぞれ欧州4ヶ国(総理:イギリス、ベルギー、ドイツ、フランス/外務大臣:ルーマニア、ブルガリア、ハンガリー、スロバキア)を訪問し、早期の安保理改革の必要性について各国と認識を共有するとともに、日本の常任理事国入り支持の再確認を取り付け、安保理改革に向けた日本の意思を内外に示しました。ベルリンでの記者会見(1月13日)において、安倍総理は、安保理改革に積極的に取り組んでいくとの日本の意志について各国の首脳から理解と支持を取り付けた旨表明しました(「欧州訪問における内外記者会見」)。

(5)総会議長による「調整者(facilitator)プロセス」の開始(2007年2月)

 2006年12月のハリーファ総会議長の提案により、安保理改革を5つのテーマ(規模、常任・非常任のカテゴリー、地理的代表性、拒否権、アカウンタビリティ)に分けてそれぞれの調整者(facilitator)が議論をまとめる「調整者プロセス(Facilitator Process)」が開始され、日本はこのプロセスに貢献していく考えを表明しました。
 調整者から総会議長への報告書は4月20日に提出され、安保理改革なくして国連改革はあり得ず、現状維持は加盟国の大多数にとって受け入れられないものであることを確認した上で、今後の進め方について、加盟国に幾つかの検討材料を提供しました。

(6)安保理改革作業部会の開催(2007年5月)

 上記(5)の報告書が発出されたことを受け、安保理改革に関する作業部会(OEWG:Open-ended Working Group)が開催されました。この作業部会では64ヶ国が発言し、改革の方法について議論されました。日本からは大島大使が、安保理改革なくして国連改革はあり得ないことを確認するとともに、安保理改革の一般的な議論の段階は終わり、今や交渉の段階であり、我が国はこれまでも加盟国から幅広い支持を得られる案を見出すよう努力してきており、柔軟性をもって協議・交渉に関与していくと表明しました。

(7)調整役による報告書の発出(2007年6月)

 (6)を踏まえ、新たに2名の調整役が任命され、改革の進め方について加盟国の意見を聴取した上で、6月26日に総会議長に報告書が提出されました。同報告書は、安保理改革の早期実現の重要性を確認しつつ、「中間的アプローチ(intermediary approach)」の提示など、国連加盟国に対して今後の検討材料を提供しています。

(8)安保理改革作業部会非公式会合の開催(2007年7月)

 2007年7月19日、安保理改革に関する作業部会(OEWG)の非公式会合が開催され、上記(7)の報告書をもとに議論が行われました。日本からは大島国連大使が、我が国は常任・非常任双方の議席の拡大を通じての早期改革の実現を引き続き目指すことを表明し、国連加盟国は次期国連総会会期中に行動し成果を出すべき旨呼びかけを行いました。

5.第62回国連総会会期(2007年9月-2008年9月)

(1)第62回国連総会一般討論演説(2007年9-10月)

 2007年9月25日~10月3日にかけて行われた第62回国連総会一般討論演説では、発言国189ヶ国のうち99ヶ国が安保理改革の重要性に直接・間接的に言及しました。我が国からは高村外務大臣が演説を行い、常任・非常任双方の議席の拡大を通じて安保理の早期改革を目指す我が国の決意を改めて述べ、第62回会期においても改革の機運を強化し、具体的成果を出す必要がある旨発言しました。(「第62回国連総会における高村大臣一般討論演説」

(2)第168回国会における福田総理の所信表明演説(2007年10月)

 福田総理の所信表明演説においても、「国際社会における一層の貢献を行えるよう、国連安保理改革と我が国の常任理事国入りを目指す」と発言しました。

(3)安保理改革に関する総会審議(2007年11月)

 2007年11月12~14日、国連総会において「安保理改革」を議題とする審議が行われ、のべ87ヶ国が発言を行いました。我が国(高須国連大使)は、「我が国としては、今次国連総会会期中に、安保理改革について具体的成果を出すことが必要であると強く認識し、政府間交渉に積極的かつ柔軟性をもって参加していく」との考えを表明しました。具体的な改革にあり方については、大多数の国が従来の立場をそれぞれ繰り返しました。

(4)安保理改革に関するタスクフォース任命(2007年12月)

 2007年12月、ケリム第62回総会議長(兼OEWG議長、元マケドニア外相)は、ポルトガル、チリ、バングラデシュの各国常駐代表をOEWG副議長に任命し、総会議長と3名の副議長が安保理改革に関するタスクフォースを構成する旨発表しました(その後、ジブチ常駐代表が副議長に任命され、タスクフォースに加わりました)。タスクフォースの役割は、改革議論のプロセスを透明かつ包括的に取り進めるために総会議長を支援すること、特に交渉要素を特定する際に加盟国間のコミュニケーションの中心となることとされました。

(5)各国代表部間での交渉のベースに関する協議の活発化(2007年12月-2008年3月頃)

 2007年12月以降、ドイツ中心のグループが非公式に会合を行い議論の場を設け、2008年3月中旬にキプロス他が今後の交渉のベースとすることを目指したペーパーを作成しました。こうした動きを踏まえ、ケリム総会議長は2008年4月にOEWG会合を開催し、各グループより提出されたペーパーに基づき議論を行い、52ヶ国が発言をしました。

(6)タスクフォース報告書の発出(2008年6月)

 タスクフォースは各地域グループ及び主要加盟国から意見聴取のプロセスの結果を取りまとめ、6月、ケリム総会議長から全加盟国宛に報告書を送付・公表しました。この報告書の発出を受けて開催されたOEWGにおいて、総会議長は、「交渉を始めるための条件は右報告書で明確に示された。7月には政府間交渉を始めるための決定を行いたい」と発言を行い、その後、政府間交渉の開始を巡る各加盟国の立場の調整努力を本格化しました。

(7)政府間交渉開始の決定(2008年9月)

 第62回国連総会会期末を迎え、総会議長による調整は、難航したものの、最終的に妥協案がまとまり、2009年2月までに政府間交渉を開始するとの勧告を含むOEWG報告書が総会本会議で無投票採択されました。それにより、同報告書の勧告部分が総会決定62/557となりました。

 今後行われる政府間交渉において議論され得る論点には以下の要素が含まれています。

(1)拡大議席のカテゴリー
(2)拒否権
(3)地域代表性
(4)拡大後の規模
(5)安保理の作業方法及び安保理と総会との関係

6.第63回国連総会会期(2008年9月-2009年9月)

(1)第63回国連総会一般討論演説(2008年9月)

 政府間交渉開始の決定を受け、多くの国が安保理改革の必要性に言及し、我が国は、麻生総理が演説を行い、常任・非常任双方の議席拡大を含む安保理改革の早期実現を訴えました。(「第63回国連総会における麻生総理大臣の一般討論演説」

(2)安保理改革に関する総会審議(2008年11月)

 2008年11月18日~20日、国連総会において「安保理改革」を議題とする審議が行われ、59カ国が発言を行いました。拡大議席のカテゴリーに関し、35カ国が常任・非常任双方理事国の拡大を明言したのに対し、非常任のみの拡大の支持を明言した国は9カ国でした。非常任理事国の拡大においては、衡平な地理的配分、中小国・島嶼国への機会拡大等を考慮すべきとする国が多く見られました。

(3)安保理改革作業部会での議論(2008年11月-2009年1月)

 デスコト総会議長の主導の下、政府間交渉の「枠組み」、「モダリティ」に関して、安保理改革に関する作業部会(OEWG)が数回開催されました。2009年1月、デスコト総会議長は、総会決定62/557に従い、これまでのOEWG会合の協議の結果を報告し、2月19日に政府間交渉を開始することを通知し、今後5つの重要な要素(5.(7)参照。)に関する議論の短期的日程を提供する作業計画を提示する旨を発表しました。これを受けて、2009年2月19日から、タニン・アフガニスタン常駐代表を議長として、国連総会非公式本会議で政府間交渉が開始しました。


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