2022年版開発協力白書 日本の国際協力

(3)日本のNGOとの連携

日本のNGOは、開発途上国・地域において様々な分野で地域住民が直接裨(ひ)益する開発協力活動を実施しています。地震・台風などの自然災害や紛争等の現場においても、迅速かつ効果的な緊急人道支援活動を展開しています。NGOは、途上国それぞれの地域に密着し、現地住民の支援ニーズにきめ細かく対応することが可能であり、政府や国際機関による支援では手の届きにくい草の根レベルでの支援を行うことができます。日本政府は、こうした「顔の見える開発協力」を行う日本のNGOを開発協力における重要なパートナーと位置付け、NGOが行う事業に対する資金協力、NGOの能力向上に資する支援、NGOとの対話の3点を柱に連携を進めています(国際協力とNGOについては外務省ホームページ注10も参照)。

ア NGOが行う事業に対する資金協力

日本政府は、日本のNGOが開発途上国・地域において、開発協力事業および緊急人道支援事業を円滑かつ効果的に実施できるよう、様々な協力を行っています。

■日本NGO連携無償資金協力

日本政府は、日本NGO連携無償資金協力として、日本のNGOが途上国で実施する経済社会開発事業に資金を提供しています。事業の分野も保健・医療・衛生、農村開発、障害者支援、教育、防災、地雷・不発弾処理等、幅広いものとなっています。この枠組みを通じて、2021年度は日本の51のNGOが、35か国・1地域において、総額約57億円の事業を96件実施しました(「案件紹介」も参照)。

■ジャパン・プラットフォーム(JPF)
ネパールのパンチカール市で、土壌検査の説明をする特定非営利活動法人ラブグリーンジャパンの現地職員(草の根技術協力)

ネパールのパンチカール市で、土壌検査の説明をする特定非営利活動法人ラブグリーンジャパンの現地職員(草の根技術協力)

ジャパン・プラットフォーム(JPF)解説は、日本のNGO、経済界および政府が協力し、NGOの緊急人道支援活動を支援・調整する組織です。2021年度には、イラク・シリア人道危機対応支援、アフガニスタン人道危機対応支援、ミャンマー避難民人道支援、パレスチナ・ガザ地区人道危機緊急対応支援、南スーダン難民緊急支援、エチオピア紛争被災者支援、新型コロナウイルス感染症対策緊急支援、サイクロン・セロージャ被災者支援、フィリピン台風ライ被災者支援など、20のプログラムで94件の事業を実施しました(ウクライナ関連の支援は第Ⅰ部を参照)。2022年12月時点で45のNGOが加盟しています(「案件紹介」も参照)。

ニジェール

SDGs1 SDGs2 SDGs13 SDGs17

都市を綺麗に、土地を緑に、生活を豊かに
ニジェール国ニアメ首都圏における有機性ゴミによる緑化活動
JICA草の根技術協力事業(草の根協力支援型)(2021年9月~2024年9月)

サハラ砂漠の南縁に位置するニジェールでは、土地が荒廃する砂漠化が深刻で、農作物や畜産物の生産量低下の原因になっています。農業・牧畜業の就労人口が8割を超えるニジェールでは、多くの住民にとって飢餓や貧困に直結する深刻な問題です。

京都大学の大山修一教授は、20年にわたり、ニジェール環境・砂漠化対策省や地域住民と協働しながら、砂漠化の対処と同時に飢餓や貧困問題の解決に取り組んでいます。本事業では、大山教授の長年の研究により裏付けされた緑化モデルをもとに、分別回収した都市の家庭ごみを使って、荒廃地を緑化する活動を行っています。都市の有機ごみを荒廃地に投入することで、季節風で飛ばされてくる砂が堆積し、またシロアリの活動が活発化し土壌が改善されます。ごみに混ざっているビニール袋は、農業用のビニールシートの役割を果たし、乾燥地で貴重な水分の蒸発を防ぎ、植物の生育を助けます。

これまでに36区画(21ヘクタール)の荒廃地が、住民の希望に応じて放牧地や畑、森林に造成されました。家畜の放牧地や作物の耕作地が増えたことで、職が生まれ、住民の現金収入につながっています。また、緑地の拡大により、緑地をめぐる農耕民と牧畜民の争いが減少しています。

本事業は、荒廃地の緑化による砂漠化の防止、都市のごみ問題の解決、地域住民の貧困削減、地域の平和と安定といった様々な問題の解決に貢献しています。

以前は荒廃地だった新しい放牧地で家畜の世話をする夏休み中の男の子(写真:大山修一)

以前は荒廃地だった新しい放牧地で家畜の世話をする夏休み中の男の子(写真:大山修一)

ニジェール環境・砂漠化対策省職員に都市ごみによる緑化メカニズムを説明する大山教授(写真:JICA)

ニジェール環境・砂漠化対策省職員に都市ごみによる緑化メカニズムを説明する大山教授(写真:JICA)

■NGO事業補助金

日本政府は、日本のNGOへの補助金交付事業を実施しています。対象となる事業は、開発協力事業の案件発掘・形成および事業実施後の評価を実施する「プロジェクト調査事業」、国内外において国際協力活動の拡大や深化に資する研修会や講習会などを実施する「国内における国際協力関連事業」ならびに「国外における国際協力関連事業」の3つです。2021年度には、6つの日本のNGOに対して、NGO事業補助金を交付し、プロジェクト形成調査および事後評価、オンラインを含む国内外でのセミナーやワークショップなどの事業を実施しました。

■JICAの草の根技術協力事業

草の根技術協力事業は、日本のNGO/市民社会組織(CSO)、地方公共団体、大学、民間企業等の団体が、これまでの活動を通じて蓄積した知見や経験に基づいて提案する国際協力活動を、JICAが提案団体に業務委託してJICAと団体の協力関係の下に実施する共同事業です(制度の詳細や応募の手続等は、JICAホームページ注11を参照)。草の根技術協力事業は約90か国を対象に、毎年200件程度を実施しています(「案件紹介」も参照)。

イ NGOの能力向上に資する支援

国際協力において、政府以外の主体の活動および民間資金活用の重要性が高まる中、日本のNGOの組織体制や事業実施能力をさらに強化し、人材育成を図ることを目的として、外務省は、以下の取組を行っています。

■NGO相談員制度

外務省の委嘱を受けた全国各地の経験豊富なNGO団体(2021年度は15団体に委嘱)が、市民やNGO関係者から寄せられるNGOの国際協力活動、NGOの設立、組織の管理・運営、開発教育の進め方などに関する質問や相談に対応しました。

■NGOインターン・プログラム/NGOスタディ・プログラム

外務省は、人材育成を通じた組織強化を目的として、NGOインターン・プログラムおよびNGOスタディ・プログラムを実施しています。NGOインターン・プログラムは、将来的に日本の国際協力NGOで活躍しうる若手人材の育成を目的としており、2021年度は、計7人がインターンとしてNGOに受け入れられました。

NGOスタディ・プログラムは日本の国際協力NGOに所属する中堅職員が国内外で研修を受け、研修成果を所属団体や他のNGOに広く共有し、日本のNGO全体の能力強化に寄与することを目的としており、2021年度は、このプログラムにより4人が研修を受けました。

■NGO研究会

NGOが直面する共通の課題をテーマとして、調査・研究、セミナー、ワークショップ、シンポジウムなどを行い、具体的な改善策を報告・提言することによって、組織や能力の強化を図ります。2021年度は、「国際協力における「現地化(ローカリゼーション)」の世界的動向調査・分析および日本の国際協力NGOにおける同テーマ推進のための課題と可能性の検討」と「SDGs時代におけるNGOの人権尊重と能力強化の施策調査・研究」の2つのテーマに関する研究会を実施しました。この活動の報告書や成果物は外務省のホームページ注12に掲載されています。

ウ NGOとの対話(NGO・外務省定期協議会およびNGO-JICA協議会)

NGO・外務省定期協議会解説については、2021年度は新型コロナ拡大の影響等により全体会合は開催されませんでしたが、小委員会の「連携推進委員会」が2021年8月および2022年1月に計2回、「ODA政策協議会」が2022年3月に1回開催されました(NGO・外務省定期協議会の詳細および議事録などについては外務省ホームページ注13を参照)。

また、JICAは、NGOとJICAの対話と連携を目的とするNGO-JICA協議会を実施しており、2021年度はオンラインで2回実施され、1回目は36団体、2回目は94団体がそれぞれ参加しました(NGO-JICA協議会の詳細および議事録などについてはJICAホームページ注14を参照)。


  1. 注10 : https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shimin/oda_ngo.html
  2. 注11 : https://www.jica.go.jp/partner/kusanone/index.html
  3. 注12 : https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shimin/oda_ngo/houkokusho/kenkyukai.html
  4. 注13 : https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shimin/oda_ngo/taiwa/kyougikai.html
  5. 注14 : https://www.jica.go.jp/partner/ngo_meeting/index.html
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