(2)JICA海外協力隊(JICAボランティア事業)

水質検査キットを使いルワンダの地元住民に成分説明をするコミュニティ開発隊員(水の防衛隊)(写真:JICA)
1965年に発足し、半世紀以上の実績を有するJICA海外協力隊(JICAボランティア事業)は、累計で98か国に54,400人以上を派遣しています。まさしく国民参加型の事業であり、日本の「顔の見える開発協力」として開発途上国の発展に貢献してきました。
本事業は、途上国の経済・社会の発展のみならず、現地の人たちの日本への親しみを深めることを通じて、日本とこれらの国との間の相互理解・友好親善にも寄与しており、国内外から高い評価を得ています。また、グローバルな視野を身に付けた協力隊経験者が日本の地方創生や民間企業の途上国への進出に貢献するなど、協力隊経験の社会還元という側面も注目されています。
日本政府は、こうした取組を促進するため、帰国隊員の進路開拓支援を行うとともに、現職参加の普及・浸透に取り組むなど、より多くの人が本事業に参加しやすくなるよう努めています(現職参加の協力隊員の活躍については「案件紹介」を参照)。
新型コロナウイルス感染症への対応については、2020年3月に活動中の全隊員が一斉に帰国後、同年11月から渡航を再開し、2022年12月までに61か国に赴任しました。新型コロナの再拡大に伴い、計画的な新規派遣が困難となり、2021年秋募集は中止しましたが、2022年春・秋募集はいずれも実施され、派遣国の感染状況を踏まえながら順次派遣を行っています。例えば、活動を再開しているルワンダにおいては、安全な水の確保と給水施設の維持管理システム整備、水利用に関する幅広い活動に取り組む「水の防衛隊」の活動のほか、コーヒー栽培の技術指導、マーケティング強化、次世代の担い手の育成等に取り組む「コーヒー隊員」の活動を実施しています。
ベリーズ


幸せの架け橋になる!
JICA海外協力隊(現職参加) 職種:音楽
(2015年6月~2017年3月)森 美緒氏(京都府教育委員会)
ベリーズ南部に位置するトレド郡には、音楽の専門教育を受けた教員が不在でした。私は、トレド・コミュニティ実業高等学校に配属され、音楽の授業の実施や同僚教員への技術指導に取り組みました。活動中には、情操教育の重要性を理解した同僚教員から「合唱部を作って大会に出よう!こどもたちに自信をつけてあげたい!」と提案を受けました。希望生徒15名ほどでコンテストに挑戦し、見事全国大会に出場しました。また、日本文化普及のため、5つの学校でワークショップ、3つの地域でイベントを実施し、総勢1,500を超える人々によさこいや浴衣の着付けなどを楽しんでもらうことができました。JICA海外協力隊の活動を通して、「こどもや地域の幸せは、色んな立場の垣根を越え、みんなで協力し創り上げるもの」ということを学びました。
現在は、亀岡市の高校に音楽科教員として復職しています。音楽の授業だけでなく、亀岡市役所や大学または民間企業と高校生をつなぎ、SDGsについての協働授業注1の企画・運営に力を入れています。
世界や社会が目まぐるしく変化している中、日本の生徒たちを取り巻く環境や彼らが抱えている問題も様々です。そのような今だからこそ、学校や教員だけでなく様々な立場の人々が協働することで、新たな幸せを生み出せると思います。これからも、協力隊の経験をいかして、学校と地域社会にある「壁」をなくし様々なつながりを生み出せる人間として活動していきたいと思います。

立ち上げた合唱部が地域予選のコンテストに出場している様子(写真:森美緒)

任地プンタゴルダで開催した日本文化イベントの様子(写真:森美緒)
注1 学校だけではできない実践的で実感を伴った学びを実現するため、社会の課題解決に取り組む事業者・NPO等が、専門的な知識や技術などをいかして学校と一緒に授業を実施すること。