外交青書・白書
第2章 地域別に見た外交

2 地域機構

中南米地域にはラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)(3)、米州機構(OAS)(4)、アジア中南米協力フォーラム(FEALAC)(5)のほか、以下のような地域枠組みが存在し、様々な課題について政策調整を行っている。

(1)太平洋同盟

太平洋同盟は、域内のモノ・サービスなどの移動の自由やアジア太平洋への進出基盤の構築などを目的とし、チリ、コロンビア、メキシコ及びペルーから構成され、シンガポールが準加盟国となっている。日本は、オブザーバー国であり、価値や原則を共有するグループとして連携を重視している。

(2)南米南部共同市場(メルコスール:MERCOSUR)(6)

8月、メルコスール加盟議定書の発効に伴い、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイに加え、ボリビアがメルコスールに加盟した(ベネズエラは加盟国であるが資格停止中)。メルコスールでは、一部の品目を除き、域内関税が原則として撤廃されている。自由貿易協定(FTA)(7)については、韓国、カナダなどと交渉中であるが、7月にはアラブ首長国連邦(UAE)と交渉が開始され、12月には欧州連合(EU)との交渉が合意に至った。

日本との関係では、4月、パラグアイにおいて、第5回日・メルコスール経済関係緊密化のための対話が約7年ぶりに開催された。11月には、石破総理大臣とルーラ・ブラジル大統領との首脳会談で、両首脳は貿易投資を含む幅広い分野で日・メルコスールの双方がウィン・ウィンとなる協力について議論する場として、日・メルコスール戦略的パートナーシップ枠組み(仮称)について協議し、協力して取り組んでいくことに合意した。

(3)カリブ共同体(カリコム:CARICOM)(8)

カリコムは、カリブ地域の14か国による経済統合や外交政策の調整などを目的に設立され、国際場裡(り)で協調行動をとることで存在感を示している。カリコム諸国は比較的所得水準が高い国が多い一方、毎年のようにハリケーンによる甚大な被害を受けるなど、自然災害の脅威にさらされているほか、人口・経済規模の小ささから生じる小島嶼(しょ)国特有の脆(ぜい)弱性を抱えている。

日本は、対カリコム協力の3本柱に基づく外交を展開しており、所得水準の高い国に対しても各国の開発ニーズや負担能力に応じて必要な協力を行っている。日・カリブ交流年となった2024年には、第8回日・カリコム外相会合を始めとする協力が進んだ。

ハイチでは2021年の大統領暗殺後、国内政治の不安定化により行政及び立法機能が停滞しており、武装集団(ギャング)の勢力の影響により国民の人道状況が悪化している。これを受け、6月、ハイチ政府の要請に応じ、国連安全保障理事会(安保理)決議に基づく多国籍治安ミッションが活動を開始した。日本は、同ミッション派遣を踏まえ、治安・人道状況の回復を目的として約1,700万ドルの追加支援を決定した。

日・ベリーズ外相会談(12月14日、東京)
日・ベリーズ外相会談(12月14日、東京)
日・ハイチ外相会談(12月13日、東京)
日・ハイチ外相会談(12月13日、東京)
日・セントルシア外相会談(12月14日、東京)
日・セントルシア外相会談(12月14日、東京)
日・セントビンセント及びグレナディーン諸島外相会談(12月14日、東京)
日・セントビンセント及びグレナディーン諸島外相会談(12月14日、東京)
コラム日・カリブ交流年2024
■日・カリブ交流年2024

2024年は、日本とカリブ諸国の協力関係が強化された1年となりました(巻頭特集参照)。日・カリコム事務レベル協議開始後30年目、また、日本とジャマイカ及びトリニダード・トバゴとの国交樹立60周年に当たる2024年を「日・カリブ交流年2024(Japan-CARICOM Friendship Year 2024)」と定め、官民一体となって日・カリコム双方で記念イベントを開催し、相互理解を深めました。

日・カリブ交流年2024ロゴマーク
日・カリブ交流年2024ロゴマーク
■ハイレベルの往来

2月にはジャマイカのジョンソン=スミス外務・貿易相が外務省賓客として、3月にはバーネット・カリコム事務局長が閣僚級招へいで訪日しました。交流年の締めくくりとなる12月には、日・カリコム外相会合に参加するため、14か国及びカリコム事務局の代表が東京に集結し、日・カリコム共同閣僚声明が発出されました。また、12か国からは外相が出席し、岩屋外務大臣と外相会談を行うなど、2024年はハイレベルの交流が活発に行われました。2025年も、要人の往来が予定されており、引き続きカリブ諸国との関係を強化していきます。

岩屋外務大臣と握手を交わすヘンダーソン・ドミニカ国外相(共同議長)及びカリコム諸国外相(12月14日、東京)
岩屋外務大臣と握手を交わすヘンダーソン・ドミニカ国外相(共同議長)及びカリコム諸国外相(12月14日、東京)
■日本とカリコム諸国との協力

カリコム諸国は国連加盟国の約7%を占め、国際場裡(り)において重要な責務を担うなど、そのプレゼンスは高まっています。

日本とカリコム諸国は、2014年に表明した(1)持続的発展に向けた協力、(2)交流と友好の絆(きずな)の拡大、(3)国際場裡における協力の「3本柱」の下、着実にその協力関係を拡大・深化させてきました。

一方、この10年で日本とカリコム諸国を取り巻く状況は一変し、気候変動を含め、地球規模課題の深刻化は緊迫の度を増し、日本とカリコム諸国が共に擁護してきた法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序は、公然とした挑戦を受けています。

このような状況において、地球規模課題への対応において高い責任感を有するカリコム諸国との関係強化の重要性は高まっています。日本とカリコム諸国は、地理的には離れていますが、共通の価値や原則に基づくグローバル・パートナーシップの下、引き続き、国際場裡での協力、二国間の政策協調、経済関係の強化、開発協力及び人的交流を進めていきます。

日・カリブ交流年レセプション(3月26日、東京・外務省飯倉公館)
日・カリブ交流年レセプション(3月26日、東京・外務省飯倉公館)

(4)中米統合機構(SICA)(9)

SICAは、1992年に設立され、地域の経済社会統合を図り、平和・自由・民主主義・開発を達成させることを目的とし、エルサルバドル、グアテマラ、コスタリカ、ニカラグア、パナマ、ベリーズ、ホンジュラス、ドミニカ共和国の8か国が加盟している。

日本は、1995年からSICA加盟国との間で政策協議(日本・中米「対話と協力」フォーラム)を実施しており、2010年から域外オブザーバーとなっており、ハイレベルでの対話も実施している。

(3) CELAC:Comunidad de Estados Latinoamericanos y Caribeños (Community of Latin American and Caribbean States)

(4) OAS:Organization of American States

(5) FEALAC:Forum for East Asia-Latin America Cooperation

(6) MERCOSUR:Mercado Común del Sur (Southern Common Market)

(7) FTA:Free Trade Agreement

(8) CARICOM:Caribbean Community(加盟国:アンティグア・バーブーダ、ガイアナ、グレナダ、ジャマイカ、スリナム、セントクリストファー・ネービス、セントビンセント及びグレナディーン諸島、セントルシア、ドミニカ国、トリニダード・トバゴ、ハイチ、バハマ、バルバドス、ベリーズ)

(9) SICA:Sistema de la Integración Centroamericana

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