外交青書・白書
巻頭特集 世界と共創し、国益を守る ─世界のパートナーとの連携─

第8回 日・カリコム外相会合

日・カリブ交流年2024ロゴマーク
日・カリコム 外相会合_地図
カリコム(CARICOM:カリブ共同体)とは?

カリコムとは、旧英領カリブ諸国を中心とした14か国1地域*1が加盟する地域機構です。一人当たりGDPが比較的高いバハマから、西半球の最貧国であるハイチまで多様な国々の集まりですが、小島嶼国特有の自然災害や他国経済の変動に対する脆(ぜい)弱性という共通点を持ち、国際場裡ではしばしば協調行動をとります。日本は、「小島嶼国特有の脆弱性克服を含む持続的発展に向けた協力」、「交流と友好の絆(きずな)の拡大と深化」、「国際場裡における協力」を対カリコム政策の3本柱とし、カリコムとの対話・協力を推進しています。

第8回日・カリコム外相会合 ー目的と成果ー

●2024年は、日・カリコム事務レベル協議開始後30年目、日本とジャマイカ及びトリニダード・トバゴとの国交樹立60周年に当たる「日・カリブ交流年2024」(107ページ コラム参照)でした。その締めくくりとして、12月、日本はカリコム諸国の外相などを招き*2、8回目となる日・カリコム外相会合を10年ぶりに東京で開催しました。

●本会合では、日本とカリコム諸国を取り巻く国際情勢や地球規模課題が厳しさを増す中で、日本として、共に課題に取り組むパートナーとしてのカリコム諸国との協力を「対カリコム政策3本柱」に基づき拡大していく決意を述べ、特に、海洋、防災、気候変動や人間の安全保障といった重要性を増す分野において、「中南米外交イニシアティブ」の下、新たな協力を積み重ねていくことを表明しました。カリコム諸国側からもこうした考え方に賛同が示されました。

第8回日・カリコム外相会合レセプション(12月12日、東京・外務省飯倉公館)
第8回日・カリコム外相会合レセプション(12月12日、東京・外務省飯倉公館)
共同記者会見に臨む岩屋外務大臣、ヘンダーソン・ドミニカ国外相(共同議長、写真左手前)及びカリコム諸国外相(12月14日、東京)
共同記者会見に臨む岩屋外務大臣、ヘンダーソン・ドミニカ国外相(共同議長、写真左手前)及びカリコム諸国外相(12月14日、東京)
日・カリコム共同閣僚声明の概要
総論
  • 日本とカリコム諸国が、価値や原則に基づくグローバル・パートナーシップの下での連携を再確認
  • 国際秩序への挑戦、地球規模課題の深刻化など日・カリコムが直面する新たな課題への解決策を共創するため、「対カリコム政策3本柱」の下で協力を拡大・深化していく決意を表明
  • 日本とカリコム間の定期的なハイレベル政治対話の重要性につき一致
第一の柱:
小島嶼開発途上国特有の脆弱性克服を含む持続的発展に向けた協力
  • 小島嶼開発途上国特有の脆弱性をめぐり、日本は国際場裡の議論に積極的に参画していくことを再確認
  • 海面上昇に伴う基線・海域の維持、一人当たり所得以外の要素も考慮した包括的開発資金調達アプローチ、日・カリコム友好協力基金を通じた支援について双方の立場を表明、確認
  • 日本は中南米外交イニシアティブの下、海洋、気候変動、食料安全保障、WPSなどの新分野も含め協力を継続
第二の柱:
交流と友好の絆の拡大と深化
  • 相互理解及び友好関係の一層の強化を確認
  • 人物交流プログラムの評価・継続とあらゆるレベルの人的交流の重要性を確認
  • 2025年日本国際博覧会へのカリコム加盟国の参加促進のための協力に合意
第三の柱:
国際社会の諸課題への取組における協力
  • 力又は威圧による一方的な現状変更や経済的威圧は地球上のいかなる場所においても認められず、かかる国際秩序への挑戦が日・カリコム共通の課題であるとの認識で一致
  • 「核兵器のない世界」の実現へのコミットメントを再確認
  • 常任・非常任議席双方の拡大を含む安保理改革の必要性を確認
  • 気候変動に係る緊密な協力を確認
  • 持続可能な開発目標(SDGs)達成の重要性を確認
  • 海洋生物資源の持続的利用、違法・無報告・無規制(IUU)漁業がこれに対する最も深刻な脅威の一つであること、世界貿易機関(WTO)漁業補助金協定の早期発効、国連海洋法条約(UNCLOS)に整合的な形での航行及び上空飛行の自由の維持の重要性を確認
  • 北朝鮮への重大な懸念を共有、拉致問題の即時解決の必要性を確認
  • 日本の対ハイチ支援の重要性を確認

●また、力や威圧による一方的な現状変更の試みは、平和と繁栄の基礎である法の支配に基づく国際秩序への挑戦であり、どの国も無関係ではいられないこと、だからこそ、日本とカリコム諸国が連携して対応していくことで一致しました。さらに、核軍縮・不拡散、国連安保理改革、気候変動といった分野においても、共通の目標に向かって協力していくことを確認しました。

●会合後には、成果文書として、日・カリコム共同閣僚声明を採択しました。さらに、カリコム14か国に対する供与額7.3億円の無償資金協力「カリブ共同体諸国における産業開発及び技術移転計画(UNIDO連携)」*3に関する書簡の署名・交換を行いました。

カリコム諸国外相による石破総理大臣表敬(12月13日、東京 写真提供:内閣広報室)
カリコム諸国外相による石破総理大臣表敬(12月13日、東京 写真提供:内閣広報室)
議長を務める岩屋外務大臣(12月14日、東京)
議長を務める岩屋外務大臣(12月14日、東京)

カリコム諸国との二国間会談

カリコム外相会合の機会に、岩屋外務大臣は訪日したカリコム12か国の外相との間で外相会談を行い、宮路拓馬外務副大臣は外務次官など2か国及びカリコム事務局の代表との間で会談を行いました。外相会合に加えたこれらの二国間会談を通じ、日本とカリコム諸国との重層的な関係強化が進展しました。

日・ジャマイカ外相会談(12月12日、東京)
日・ジャマイカ外相会談(12月12日、東京)
日・トリニダード・トバゴ外相会談(12月14日、東京)
日・トリニダード・トバゴ外相会談(12月14日、東京)

*1 アンティグア・バーブーダ、バハマ、バルバドス、ベリーズ、ドミニカ国、グレナダ、ガイアナ、ハイチ、ジャマイカ、セントクリストファー・ネービス、セントルシア、セントビンセント及びグレナディーン諸島、スリナム、トリニダード・トバゴ、モンセラット(英領)

*2 第8回日・カリコム外相会合の参加国など(アイウエオ順):アンティグア・バーブーダ、ガイアナ、グレナダ、ジャマイカ、スリナム、セントクリストファー・ネービス、セントビンセント及びグレナディーン諸島、セントルシア、ドミニカ国、トリニダード・トバゴ、ハイチ、バハマ、バルバドス、ベリーズ、カリコム事務局

*3 カリコム諸国において、水、農業ビジネス分野などにおける日本企業の技術を活用した機材供与、投資担当官招へい、及び産業分野における技術協力を行うもの(供与額7.3億円)。本協力により、日本及び国連工業開発機関(UNIDO)の知見を活用した開発課題対処と産業多角化推進を図り、もってカリコム諸国の脆弱性克服に寄与することが期待される。

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