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巻頭特集 世界と共創し、国益を守る ─世界のパートナーとの連携─

世界と共創し、国益を守る
─世界のパートナーとの連携─

日・ASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議 記念撮影(10月10日、ラオス・ビエンチャン 写真提供:首相官邸ホームページ)
日・ASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議 記念撮影(10月10日、ラオス・ビエンチャン 写真提供:首相官邸ホームページ)
日・ASEAN首脳会議で発言する石破総理大臣(10月10日、ラオス・ビエンチャン 写真提供:首相官邸ホームページ)
日・ASEAN首脳会議で発言する石破総理大臣(10月10日、ラオス・ビエンチャン 写真提供:首相官邸ホームページ)

日本は長年、多くの開発途上国の課題に向き合い、その発展に尽力してきました。これらの国々は現在、「グローバル・サウス」として世界に大きな存在感を示し、今後の国際社会を担う重要なパートナーとして成長しています。未来に向けて、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持し、地球規模課題に対処し、また日本自身の平和と安全を守り、経済を成長させていくためには、「グローバル・サウス」と呼ばれる開発途上国・新興国を含め、世界のパートナーと連携していくことが不可欠です。

ウクライナやガザの情勢をめぐり国際社会の分断・対立が深まり、日本を取り巻く安全保障環境も厳しくなる中で、2024年、日本は、国際社会を融和と協調に導くため、同盟国・同志国に加え、グローバル・サウスとの連携に、積極的に取り組みました。

グローバル・サウスの抱える社会課題解決に貢献しながら、その活力を日本経済の成長につなげるため、国境を越えて活躍する日本企業によるビジネス展開を一層後押しするため一部の在外公館に指名した「経済広域担当官」はその一例です。

また、2023年の開発協力大綱で新たに打ち出したオファー型協力*1や民間資金動員型ODA(政府開発援助)による開発途上国への支援のほか、2023年に創設した、同志国の安全保障上の能力・抑止力の向上を通じて日本にとっても望ましい安全保障環境を創出することが期待されるOSA(政府安全保障能力強化支援)を活用した協力も積極的に推進しました。

本特集では、そうした日本と世界のパートナー、特にグローバル・サウスとの連携の一環として2024年に日本が主催した、第10回太平洋・島サミット(PALM10)TICAD(アフリカ開発会議)閣僚会合及び日・カリコム外相会合について紹介します。

G20リオデジャネイロ・サミットで発言する石破総理大臣(11月18日、ブラジル・リオデジャネイロ 写真提供:首相官邸ホームページ)
G20リオデジャネイロ・サミットで発言する石破総理大臣(11月18日、ブラジル・リオデジャネイロ 写真提供:首相官邸ホームページ)
第5回日本・アラブ経済フォーラム閣僚会合(7月11日、東京・外務省飯倉公館)
第5回日本・アラブ経済フォーラム閣僚会合(7月11日、東京・外務省飯倉公館)

第10回 太平洋・島サミット

PALM10 2024 ロゴ

PALM10:The Tenth Pacific Islands Leaders Meeting

太平洋・島サミットとは?

太平洋・島サミット(PALM:Pacific Islands Leaders Meeting)は、太平洋島嶼(しょ)国・地域が直面する様々な問題について首脳レベルで率直に意見交換を行い、地域の安定と繁栄に貢献するとともに、日本と太平洋島嶼国地域のパートナーシップを強化することを目的として、1997年から3年に1度開催されている首脳会議です。

PALM10 ーテーマと概要ー

PALM10は、7月16日から18日まで東京で開催されました。岸田総理大臣とクック諸島(太平洋諸島フォーラム(PIF)議長国)のブラウン首相の共同議長の下、日本、太平洋島嶼国14か国*2、フランス領2地域*3、オーストラリア、ニュージーランドの計19か国・地域の首脳等及びPIF事務局長が参加しました。

●PIFの「2050年戦略」に定められる(1)政治的リーダーシップと地域主義、(2)人を中心に据えた開発、(3)平和と安全保障、(4)資源と経済開発、(5)気候変動と災害、(6)海洋と環境、(7)技術と連結性の7分野を中心に議論を行うとともに、地域・国際情勢について議論を行いました。

PALM10首脳会合の記念撮影:岸田総理大臣と各国・地域出席者(7月18日、東京 写真提供:首相官邸ホームページ)
PALM10首脳会合の記念撮影:岸田総理大臣と各国・地域出席者(7月18日、東京 写真提供:首相官邸ホームページ)
太平洋島嶼国・地域

●その上で、日本と太平洋島嶼国・地域が共通の課題に取り組みながら、未来に向けて「共に歩む」関係を確認し、議論の成果として「第10回太平洋・島サミット(PALM10)首脳宣言」及び附属文書である「第10回太平洋・島サミット(PALM10)共同行動計画」を採択しました。

開会セッションに臨む岸田総理大臣(7月18日、東京 写真提供:首相官邸ホームページ)
開会セッションに臨む岸田総理大臣(7月18日、東京 写真提供:首相官邸ホームページ)
共同記者発表に臨む岸田総理大臣(7月18日、東京 写真提供:首相官邸ホームページ)
共同記者発表に臨む岸田総理大臣(7月18日、東京 写真提供:首相官邸ホームページ)

今回、10回目のサミット開催の節目に当たり、今日的な課題に対応するため、日本と太平洋島嶼国・地域の信頼・協力関係を更なる高みに引き上げ、未来に向け「共に歩む」決意と具体的な道のりを示すことができました。

分野ごとの議論のポイント
(1)政治的リーダーシップと地域主義
  • PIF首脳はパートナーへの関与・唱道において一体性と連帯をもって行動するとの太平洋地域の決意に対する日本の尊重を歓迎
  • 双方はPIF域外国対話・PALM関連会合への適切なレベルの代表確保や野心的な成果実現を含むパートナーシップ強化の継続で一致
(2)人を中心に据えた開発
  • 「人間の尊厳」を守り強化するための教育・保健分野における協力、各種プログラムを通じた、人的交流・人材育成の促進で一致
(3)平和と安全保障
  • いかなる侵略戦争にも反対し、国際連合(国連)憲章を含む国際法の目的及び原則に整合的な形で恒久的かつ持続可能な平和を追求することにコミット
  • 武力による威嚇若しくは武力の行使又は威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対することを表明
(4)資源と経済開発
  • 透明で公正な開発金融やコルレス銀行の維持は、持続可能で強靱(じん)な経済発展の実現に不可欠であることを再確認
  • 日本によるスタートアップ企業を含めたビジネスマッチングや地場産業の育成などの取組推進で一致
(5)気候変動と災害
  • (ア)防災能力の強靱化、(イ)脱炭素化の推進、(ウ)島嶼国自身の取組の支援の3本柱から成り、日本の技術・ノウハウ・資金を総動員したオールジャパンの取組である「太平洋気候強靱化イニシアティブ」を表明
(6)海洋と環境
  • 法の支配に基づき、国際法に従った、自由で開かれた持続可能な海洋秩序へのコミットメントを再確認
  • 違法・無報告・無規制(IUU)漁業対策などに共に取り組んでいくことを表明
(7)技術と連結性
  • 日本による海底ケーブルを含む「質の高いインフラ」の整備を通じた、陸・海・空及びデジタル空間での連結性の強化のための協力を歓迎。偽情報の拡散に対抗する重要性で一致

太平洋島嶼国・地域などとの二国間会談、その他の行事

PALM10の際、岸田総理大臣は太平洋島嶼国・地域の首脳などとの間で17回の首脳会談等を行いました。また、会議に先立ち、7月16日には林芳正内閣官房長官夫妻主催歓迎レセプションを、同17日には岸田総理大臣夫妻主催晩餐(さん)会を行いました。晩餐会では、能登地方の被災地復興支援のため、石川県産の食材を使った料理を提供したほか、人と人との交流を体現した日本の「夏祭り」を催し、日本と太平洋島嶼国・地域との「キズナ」を再確認する機会となりました。

岸田総理大臣夫妻主催晩餐会(7月17日、東京・迎賓館赤坂離宮 写真提供:首相官邸ホームページ)
岸田総理大臣夫妻主催晩餐会(7月17日、東京・迎賓館赤坂離宮 写真提供:首相官邸ホームページ)
「夏祭り」で石川県の和菓子職人の屋台を見学する岸田総理大臣とランブカ・フィジー首相(7月17日、東京・迎賓館赤坂離宮 写真提供:首相官邸ホームページ)
「夏祭り」で石川県の和菓子職人の屋台を見学する岸田総理大臣とランブカ・フィジー首相(7月17日、東京・迎賓館赤坂離宮 写真提供:首相官邸ホームページ)

*1 オファー型協力:外交政策上、戦略的に取り組むべき分野において、ODAとその他公的資金(OOF)や民間資金も含む形で、日本の強みをいかした魅力的な協力メニューを提案するもの

*2 クック諸島、ミクロネシア連邦、フィジー、キリバス、ナウル、ニウエ、パラオ、パプアニューギニア、マーシャル諸島、サモア、ソロモン諸島、トンガ、ツバル、バヌアツ

*3 仏領ポリネシア、ニューカレドニア

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