中南米
中米統合機構(SICA)概要
1 設立年月日
1991年12月13日,中米機構憲章改定議定書(テグシガルパ議定書)により設立。1992年7月23日,同議定書発効。
2 目的
地域の経済社会統合を図り,平和・自由・民主主義・開発を達成させる。最近の主要テーマは,経済圏としての地域の発展,治安悪化に伴う地域一体の治安対策,気候変動対策など。
3 主要な機能
加盟国間及び域外国との首脳会合,外相会合,閣僚審議会等の開催,協定・共同コミュニケ等の立案及びこれらに伴う各種調整を行う。加盟8か国の間で6か月毎の持ち回りで議長国を務める。現在の議長国はコスタリカ(2017年6月末まで)。
4 加盟国
(1)正規加盟国
グアテマラ,エルサルバドル,コスタリカ,ニカラグア,ホンジュラス,パナマ,ベリ-ズ,ドミニカ共和国
(2)域内オブザ-バ-
メキシコ,チリ,ブラジル,アルゼンチン,ペルー,エクアドル,コロンビア,米国,ウルグアイ
(3)域外オブザ-バ-
台湾,スペイン,ドイツ,イタリア,日本(2010年1月より),オーストラリア,韓国,フランス,EU,バチカン,英国,モロッコ,ニュージーランド,トルコ,カタール,セルビア,マルタ騎士団
5 主要機関
首脳会合(最高意思決定機関),閣僚審議会,中米議会(在グアテマラ),中米司法裁判所(在ニカラグア),中米統合機構事務局(在エルサルバドル),中米経済統合銀行(BCIE:ホンジュラス本店)
6 設立経緯
- (1)中米では,1951年に中米機構(ODECA:Organización de Estados Centroamericanos)が創設され,経済統合を主体とする地域統合が進められてきた。1960年には,中米域内を市場とした輸入代替工業化を中米各国政府の主導で進めることを目的として,グアテマラ,ホンジュラス,ニカラグア,エルサルバドルの4か国の間で「中米経済統合一般条約」が締結された。同条約では,中米における共同市場及び関税同盟の完成について合意がなされ,中米共同市場(MCCA:Mercado Común Centroamericano)が発足。但し,中米共同市場(MCCA)という機構はなく,共同市場完成に向けたプロセスは,同条約により設置された中米経済統合一般条約常設事務局(SIECA)及び中米経済統合銀行(BCIE)が担当した。
- (2)しかし,1970年代には,輸入代替工業化の下での保護主義的政策の結果,経済活動の効率化が進まなかったこと,また,参加国間の経済力に格差があったことなどにより,1970年代には中米共同市場は事実上機能不全の状態に陥った。更に,1980年代の中米紛争により,各国の経済は大きな打撃を受けた。
- (3)1980年代後半以降,中米紛争が鎮静化に向かうと,中米共同市場(MCCA)の枠組みを踏襲しながらも,より競争力のある民間企業を育成しながら輸出志向型の工業化の促進を目指す,新たな中米経済統合の動きが活発化した。1991年に開催された中米サミットにおいて,中米機構(ODECA)を発展的に解消して中米統合機構(SICA)に改組する旨のテグシガルパ議定書が採択された。中米統合機構(SICA)はグアテマラ,エルサルバドル,ホンジュラス,ニカラグア,コスタリカ及びパナマの6か国を参加国として発足し,本部をサンサルバドル(エルサルバドル)に置いて1993年2月1日から活動を開始した。2001年にはベリーズが加盟し,ドミニカ共和国は2003年にオブザーバーから準加盟国に,2013年に加盟国に昇格した。また,同議定書により,中米経済統合一般条約常設事務局(SIECA)は中米統合機構(SICA)の経済統合担当事務局として位置づけられることとなり(但し,ベリーズ及びドミニカ共和国は,SIECAに未加盟),中米共同市場(MCCA)の機能も中米統合機構(SICA)が引き継いだ。
7 中米経済統合の進捗状況
(1)中米関税同盟(Unión Aduanera Centroamericana)
1960年に締結された中米経済統合一般条約では,中米関税同盟の構築について謳われているが,その後は進展が見られなかった。これを受け,1993年,中米5か国はグアテマラ議定書に署名し,中米関税同盟を漸進的に達成していくことにつき改めて合意するとともに,5か国全てでなくとも二国間または複数国間で枠組み条約を締結することを認めた。2007年12月,中米各国政府は,中米関税同盟の達成に必要な目標・行動原理を強化する「中米関税同盟枠組協定」に署名。すでに中米5か国が批准済み。(法律的には発効済みではあるものの,正式な発効には(1)財の移動の自由化と貿易促進,(2)規則の近代化と統一,(3)制度的発展の3つの段階を経る必要があり,現在は事実上の発効待ちである。)
2015年2月,ホンジュラスとグアテマラは,グアテマラ議定書第6条,中米関税同盟枠組協定,GATT第24条等に基づき,両国間の人と物の自由な移動を目的とする一般枠組議定書を締結し,同議定書は2016年5月に発効。二国間での税関統合を進めている。2016年6月には,ニカラグアも参加する意思を表明した。
中米5か国産の輸出品(原産品)に対する域内関税は,コーヒー(未焙煎・焙煎済み),砂糖,エチルアルコール,石油製品及び蒸留酒を除き,全て撤廃されている。なお,これら産品の内,コーヒー(焙煎済み),エチルアルコール,石油製品,蒸留酒については,利害関係にある二国間で関税協定が結ばれている。
対外共通関税については,6974品目のうち,93.3%にあたる6505品目について合意が成立している。なお,合意に至っていない469品目のうち,39.7%は農業生産物である。
(2)主な対外通商協定
(以下に記載のある「中米」とは,特記事項のない限り,グアテマラ,エルサルバドル,ホンジュラス,ニカラグア,コスタリカの5か国を指す)
- 中米・ドミニカ共和国・米国自由貿易協定(DR-CAFTA):発効済
- 中米・メキシコ自由貿易協定:発効済
- 中米・チリ自由貿易協定:発効済
- 中米・EU連携協定:通商部分につき発効済(注:パナマも参加)
- 中米・韓国自由貿易協定:大筋合意
8 日本との関係
1995年より,日本はSICA加盟国との間で政策協議(日本・中米「対話と協力」フォ-ラム)を実施。2005年には「日本・中米首脳会談」が東京で開催され,日・中米関係の中長期的な協力の指針となる「東京宣言」及び「行動計画」が採択された。また,2010年1月の日・SICA外相会合においては,我が国のSICA域外オブザーバーが認められた。2006年(於:エルサルバドル)及び2015年(於:グアテマラ)には,「日本・中米ビジネスフォーラム」を開催し,官民合同での経済関係強化を図っている。