2 カナダ
(1)カナダ情勢
トルドー政権に対する国民の評価が問われた10月の連邦下院総選挙において、トルドー首相率いる与党自由党は議席数を減らし、単独過半数を割り込んだものの、比較第一党の地位を確保し、第二次トルドー政権が発足した。第一次政権で外相を務めたフリーランド氏は副首相兼州政府間関係相となり、外相には第一次政権で国際貿易相だったシャンパーニュ氏が就任した。
外交面では、トルドー政権は、米加関係、国連、北大西洋条約機構(NATO)、G7、G20、米州機構(OAS8)などカナダが従来重視していた分野に加え、インド太平洋地域への関与を強めている。4月、安倍総理大臣がカナダを訪問した際に行われた日加首脳会談では、「自由で開かれたインド太平洋」のビジョンの下、日本とカナダが戦略的パートナーシップを強化することで一致し、トルドー首相は北朝鮮船舶の「瀬取り」を含む違法な海上活動に対する警戒監視活動のための艦船の派遣を2年延長することを発表した。一方、中国との関係では、2018年末に米国政府の要請に基づきカナダ政府がファーウェイ社CFO(最高財務責任者)を拘束した事案とその後に発生した中国政府によるカナダ人2人の拘束事案が進展を見ず、引き続きカナダにとって重い課題となっている。
経済面では、2017年には好調な米国経済の影響を受け、高い経済成長を実現したが、不透明な国際経済情勢などの影響もあり、経済成長は減速しつつある。11月に発足した第二次トルドー政権は、減税や児童手当・失業手当等の拡充などによる中間層のための経済政策や積極的な気候変動政策に取り組むことを公約にしている。対外的には、自由貿易政策の推進を継続し、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の締結やアジア太平洋諸国との関係強化に取り組んでいる。
(2)日カナダ関係
日本とカナダは、インド太平洋地域の重要なパートナーであると同時に、共にG7のメンバーとして、政治、経済、安全保障、人的交流など、幅広い分野で密接に協力している。カナダが東京に公使館を設置してから90周年に当たる2019年は、頻繁な要人往来や安全保障、経済面での協力などを通じて両国関係がさらに深まった一年となった。
首脳レベルでは、4月に安倍総理大臣がカナダを訪問してトルドー首相と首脳会談を行ったほか、6月のG20大阪サミットの際にはトルドー首相が来日した。また、8月のG7ビアリッツ・サミットの機会にも首脳会談を行った。外相レベルでは、6月のG20大阪サミットの際、及び8月にバンコクで行われたASEAN関連外相会議の際、河野外務大臣とフリーランド外相との間で外相会談を実施したほか、11月に名古屋で行われたG20愛知・名古屋外務大臣会合には、就任直後のシャンパーニュ外相が出席した。こうしたハイレベルでの頻繁な会談などを通じて、日本とカナダは北朝鮮問題を始めとする地域、国際社会の諸課題について認識をすり合わせ、緊密に連携している。

(4月28日、カナダ・オタワ 写真提供:内閣広報室)

安全保障面では、7月に日・カナダ物品役務相互提供協定(ACSA)が発効した。また、北朝鮮船舶の「瀬取り」を含む違法な海上活動に対する警戒監視活動において、日本とカナダは緊密に連携して対応しているほか、6月には2017年から続いている海上自衛隊とカナダ海軍の共同訓練をベトナム沖で実施するなど、部隊間の交流も進んでいる。さらに、6月にはサージャン大臣が国防相としては13年ぶりに訪日し、両国の防衛当局間の関係を新たな段階に引き上げる意図を確認するなど、日本とカナダの安全保障分野での協力が具体的かつ戦略的に進んだ一年となった。
経済面では、日本、カナダを含む他の9か国が署名した「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)」の発効から1年が経過し、貿易投資関係の更なる深化が期待される。6月には、カナダ西海岸から液化石油ガス(LPG)が日本を含めたアジア諸国に輸出されるなどエネルギー分野での協力も前進した。12月には第29回日・カナダ次官級経済協議をトロントで開催し、国際貿易情勢及び優先協力分野に関する議論を行った。
8 OAS:Organization of American States