外交青書・白書
第3章 国益と世界全体の利益を増進する外交

第4節 日本への理解と信頼の促進に向けた取組

総論
〈2017年の対外発信〉

2017年は、北朝鮮情勢の深刻化、国際秩序に対する一方的な現状変更の試み等の喫緊の課題を踏まえ、自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値の重要性や、日本が引き続きアジア太平洋地域や世界の平和と発展に大きな貢献を果たしていくこと等を発信した。また、安倍総理大臣が打ち出した「自由で開かれたインド太平洋戦略」(特集「自由で開かれたインド太平洋戦略」13ページ参照)については、11月のトランプ米国大統領の訪日やAPEC首脳会議、ASEAN首脳会議の機会を始め重点的に発信した。さらに、いわゆる慰安婦問題を始めとする歴史認識、日本の領土保全をめぐる諸問題等についても、様々な機会・ツールを活用した戦略的な発信に努めている。

〈戦略的対外発信の取組〉

外務省では、対外発信の最前線である在外公館の体制強化を図りつつ、①日本の「正しい姿」を含む政策や取組の発信、②日本の多様な魅力の発信及び③親日派・知日派の育成という3本の柱に基づいて戦略的に対外発信を実施している。主に国際社会の平和安定・繁栄に対する日本の貢献への理解、法の支配に基づく国際秩序の維持・強化、歴史問題に対する理解の促進等を念頭に発信の取組を強化してきた。

日本の「正しい姿」を含む政策や取組の発信については、様々な外交機会を捉えた総理大臣や外務大臣からの直接的な発信や外国訪問の機会を活用した外務報道官ほかによる海外メディアに対する発信、各在外公館長による各任国における積極的な発信に加え、メディア等に対する迅速な情報提供・取材協力、さらには各国の有識者・メディア関係者の招へいやシンクタンクとの連携を通じた発信を積極的に行った。また、日本について誤解・偏見等を基にした誤った報道等が確認された場合には、在外公館長や外務報道官から反論投稿を実施する等の是正措置を行ってきた。

「多様な魅力」の発信については、ロンドン(英国)、ロサンゼルス(米国)及びサンパウロ(ブラジル)において、日本への深い理解と共感の裾野を広げていくことを目的とした海外拠点事業「ジャパン・ハウス」を進めている。また、世界各地の在外公館における文化事業、「文化のWA(和・環・輪)プロジェクト」を始めとする国際交流基金事業及び第11回日本国際漫画賞を実施した。さらに、国内外の関係者と協力し、世界の有形・無形の文化遺産の保護への取組と、日本の文化遺産の世界遺産一覧表及び人類の無形文化遺産の代表的な一覧表への記載を推進した。「親日派・知日派」の育成については、人的・知的交流や日本語の普及に努め、アジア、米国、欧州及び中南米との青少年交流の拡充、日米文化教育交流会議(CULCON:カルコン)の開催、主要国の大学では日本研究支援を進めている。また、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の成功に向け、スポーツを通じた国際貢献策「Sport for Tomorrow(SFT)」を推進した。これらの取組を引き続き戦略的かつ効果的に実施していくため、戦略的対外発信関連予算を効果的に活用しながら、上記3本の柱に基づいて、日本の対外発信を強化していく。

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