外交青書・白書
第3章 国益と世界全体の利益を増進する外交

5 国際連合(国連)における取組

(1)国際連合(国連)

ア 日本と国連との関係

2016年は日本の国連加盟60周年の年である。1956年の国連加盟以来、日本は国連と緊密に協力しながら、世界の平和と繁栄に積極的に貢献してきた。

2015年に創設70周年を迎えた国連は、現在、世界のほぼ全ての国(2015年12月現在193か国)が加盟する普遍性を備えた国際機関であり、紛争解決や平和構築、テロ対策、軍縮・不拡散、開発、人権、環境・気候変動、防災を含む様々な分野において、国際社会が直面する課題に取り組んでいる。また、国連は、世界中の情報や知見を集約することで、これらの課題に専門性の高い解決策を提示することを可能にしている。

国連本部 写真提供:UN Photo/Milton Grant
国連本部 写真提供:UN Photo/Milton Grant

このような強みを持った国連は、日本にとって、自国の安全保障を確保しつつ、平和で安定した国際環境を醸成しながら、その持続可能な成長を実現していく上で、重要な存在となっている。また、日本は、国連の枠組みを通じて、国際社会における議題設定(アジェンダ・セッティング)や規範形成(ルール・メイキング)に積極的に参加することで、地球規模課題への対応など、日本一国では実現できない外交政策上の目標達成を目指している。

9月に開会した第70回国連総会には、安倍総理大臣及び岸田外務大臣が出席した。

安倍総理大臣は、国連総会一般討論演説において、日本の戦後の平和国家としての歩みや、国連及び国際社会における日本の貢献を示した上で、今後も、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」を掲げ、更なる国際貢献を行っていくことを強調した。また、国連を21世紀にふさわしいものとするため、安保理改革を実現し、安保理常任理事国として、世界の平和と繁栄に一層取り組む意欲を表明した。

安倍総理大臣は、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択する国連サミットでもステートメントを行い、日本として、今後、アジェンダの実施に最大限努力していくと述べた上で、「質の高い成長」や「脆弱(ぜいじゃく)な人々の保護と能力強化」などの具体的貢献策を表明した。また、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントに関するグローバル・リーダーズ会合(北京+20)、気候変動に関する首脳級昼食会、保健サイドイベント「UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)への道筋」、第2回PKOサミットにも出席し、地球規模課題の解決に向けた日本の積極的貢献について発信を行った。

国連総会に出席する安倍総理大臣(9月29日、米国・ニューヨーク 写真提供:内閣広報室)
国連総会に出席する安倍総理大臣(9月29日、米国・ニューヨーク 写真提供:内閣広報室)

さらに、安倍総理大臣は、G4(日本、インド、ドイツ及びブラジル)首脳会合に出席し、安保理改革の早期実現に向けた協力を確認したほか、リュッケトフト第70回国連総会議長と会談し、国連創設70周年に当たる今次国連総会が歴史的なものとなるよう、安保理改革、開発、気候変動等の分野で緊密に協力することで一致した。また、アフリカ地域経済共同体(RECs)議長国との首脳会合、太平洋島嶼国との首脳会合を開催するとともに、各国首脳等との会談を精力的に実施した。

加えて、安倍総理大臣は、ニューヨーク滞在中、北米金融関係者との対話イベントに出席し講演・ラウンドテーブルを実施するとともに、対日投資セミナー及び訪日観光セミナーで挨拶を行ったほか、和食レセプションや「女性が輝く社会」づくりのための夕食会を主催するなど、あらゆる機会を捉えて、日本の政策や魅力を発信した。また、安倍総理大臣は、岸田外務大臣とともに、国連日本人職員との懇談に出席し、職員を激励した。

岸田外務大臣は、第9回包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議で共同議長を務めたほか、エネルギーと気候に関する主要経済国フォーラム、難民への人道支援に関するG7関連会合など計6つの多国間会合に出席した。また、3か国と外相会談などを行い、国連総会出席の機会を通じて、各国の外相大臣との間で相互の信頼関係を強化した。

国連からは、2015年3月に潘基文(パンギムン)国連事務総長が訪日し、仙台で開催された第3回国連防災世界会議に出席するとともに、国連大学における「国連創設70周年記念シンポジウム」に出席した。シンポジウムのスピーチにおいて、潘基文事務総長は、国連が日本とのパートナーシップを重視していると述べるとともに、日本の国際貢献に深い感謝の意を表明した。これに対し、安倍総理大臣は、スピーチにおいて、国連創設70周年の2015年と日本の国連加盟60周年の2016年の2年間を「具体的な行動の年」と位置付け、日本として、地球規模課題に積極的に取り組むと述べるとともに、安保理改革について具体的な成果を上げる必要性を強調した。また、安倍総理大臣及び岸田外務大臣は潘基文事務総長と会談を行い、国際社会が直面する諸課題の解決に向け、日本と国連が引き続き協力して取り組んでいくことで一致した。

安倍総理大臣と潘基文国連事務総長との会談(3月14日、仙台 写真提供:内閣広報室)
安倍総理大臣と潘基文国連事務総長との会談(3月14日、仙台 写真提供:内閣広報室)

9月には、リュッケトフト第70回国連総会議長が来日し、安倍総理大臣や岸田外務大臣との間で、安保理改革の進展、開発、気候変動問題、軍縮不拡散、女性をめぐる諸課題などへの対応の重要性を共有し、これらの課題解決に向けた日本と国連との更なる連携を確認した。また、リュッケトフト総会議長は、広島を訪問し、同市市長と懇談するとともに、原爆死没者慰霊碑を参拝し、献花を行った。

イ 国連安全保障理事会(国連安保理)、国連安保理改革
(ア)国連安全保障理事会(国連安保理)

国連安保理は、国連の中で、国際社会の平和と安全の維持につき主要な責任を有している。国連安保理決議に基づくPKOなどの活動は多様さを増しており、大量破壊兵器の拡散、テロなどの新たな脅威への対処など、年々その役割は拡大している。

このような中、日本は、10月に行われた非常任理事国選挙において、国連加盟国最多となる11回目の当選を果たし、2016年1月から2年間の任期で非常任理事国を務める。

(イ)国連安保理改革

国連安保理の構成は、国連発足後70年が経つ現在も、基本的には変化しておらず、国際社会では、安保理改革を早期に実現し、その代表性や実効性、透明性を向上させるべきとの認識が共有されている。

日本は、常任・非常任議席双方の拡大を通じた安保理改革の早期実現と日本の常任理事国入りを目指し、各国への働き掛けを行っている。

安保理改革に関するG4(日本、インド、ドイツ及びブラジル)首脳会合における安倍総理大臣(9月26日、米国・ニューヨーク 写真提供:内閣広報室)
安保理改革に関するG4(日本、インド、ドイツ及びブラジル)首脳会合における安倍総理大臣(9月26日、米国・ニューヨーク 写真提供:内閣広報室)
国連安保理議場(写真提供:UN Photo/Loey Felipe)
国連安保理議場(写真提供:UN Photo/Loey Felipe)
(ウ)国連安保理改革をめぐる最近の動き

国連では、2009年から総会の下で政府間交渉が行われている。7月、クテサ第69回国連総会議長により、政府間交渉の基礎となる、約120か国を代表するグループ・国から提出された提案を整理した文書が各加盟国に配布された。

国連創設70周年の節目に当たる第70回国連総会会期中に具体的成果を得るべく、日本は2015年にG4(日本、インド、ドイツ及びブラジル)の一員として取組を一層強化し、9月の第70回国連総会の機会には、ニューヨーク(米国)において2004年以来11年ぶりのG4首脳会合を開催した。G4各国首脳は、国連安保理を21世紀の現実に適合したものとすることが喫緊の課題であることを確認し、早期かつ有意義な安保理改革のために緊密に連携し、改革推進派への働き掛けを加速化していくことに合意した。

日本は、安保理改革実現のため、アフリカやカリブ共同体(CARICOM)などの国や地域への働き掛けを積極的に行っている。アフリカに対しては、1月及び6月の宇都外務大臣政務官のアフリカ連合(AU)総会出席、3月の宇都外務大臣政務官のチュニジア及びセネガル訪問、12月の木原外務副大臣のタンザニア訪問、黄川田外務大臣政務官のアフリカ5か国訪問等に加え、8月のラマポーザ・南ア副大統領及び9月のムセベニ・ウガンダ大統領の訪日等の機会に、働き掛けを実施した。カリコムに対しては、5月の中山外務副大臣のカリコム外交・共同体関係理事会会議(COFCOR)等出席に加え、9月の安倍総理大臣のジャマイカ訪問において、働き掛けを実施した。

特集
日本の国連加盟60周年
日本の国連加盟60周年ロゴマーク

1956年12月18日、国連総会の議場で、重光葵外務大臣は日本の国連加盟に際して演説を行いました。その中で、重光外務大臣は、「日本国民は今日恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚する」と憲法の前文を引用し、日本国民の信条は国連憲章の目的と原則に完全に合致しており、国連の崇高な目的に対し誠実に奉仕する決意を表明しました。それから60年、日本は加盟時の決意を持ち続け、国連を通じ、世界の平和と繁栄のために尽力しています。

国連は、時代の要請を受け、新たに生じる課題に取り組んできています。2015年には、国連の枠組みにおいて、防災分野では「仙台防災枠組2015-2030」が、開発分野では「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が、そして気候変動分野では「パリ協定」が採択されました。日本は、国連と緊密に連携し、こうした人類共通の課題の解決に貢献するとともに、国連がより一層効果的に新たな課題に対応できるよう、安保理を含む国連の改革に指導力を発揮しています。

国連本部での国旗掲揚に立ち会う重光葵外務大臣(写真提供:UN Photo/MB)
国連本部での国旗掲揚に立ち会う重光葵外務大臣(写真提供:UN Photo/MB)
ウ 国連行財政
(ア)国連予算

国連の予算は大きく分けて通常予算(1月から翌年12月までの2か年予算)とPKO予算(7月から翌年6月までの1か年予算)で構成されている。

このうち、通常予算については、2015年に2016-2017年度の予算審議が行われ、同年12月に約54億米ドルの予算が承認された(2014-2015年度最終予算(約58億1,000万米ドル)比で約8%減)。また、PKO予算については、2015年6月に、2015-2016年度のPKO予算が承認され、予算総額は約82億7,000万米ドル(前年度最終予算比約2.37%減)となった。

また、2015年には3年に一度見直される分担率の交渉が行われ、現行の分担率算定方式が維持された結果、日本の2016-2018年の通常予算分担率は9.680%(2013-2015年は10.833%)に低下したが、引き続き米国に次いで2番目となった(ただし、PKO予算分担率は中国が2番目となり、日本は3番目となった。)。日本が加盟国中最大の下げ幅を享受する一方で、中国、ブラジル、ロシアといった新興国の分担率が上昇した。

(イ)日本の貢献

国連の活動を支える予算は、各加盟国に支払が義務付けられている分担金と各加盟国が政策的な必要に応じて拠出する任意拠出金から構成されている。このうち、分担金については、日本は2015年通常予算分担金として約2.9億米ドル、2015年PKO分担金として約6.9億米ドルを負担しており、米国に次いで2番目である。日本は主要財政貢献国の立場から、国連が予算をより一層効率的かつ効果的に活用するよう働き掛けを行ってきている。

また、潘基文(パンギムン)国連事務総長は国連行財政改革を優先課題として推進しており、日本もこれを支持している。同改革により、国連の財政・予算・人的資源管理の効率化が期待される。しかし、これまでに導入された措置について具体的な成果が出るには依然として時間を要すると見込まれている。日本は、引き続き加盟国間の意見の相違を調整しつつ、国連における具体的な行財政改革が進むよう、各加盟国や国連側との協議に積極的に取り組んでいる。

国連2か年通常予算の推移(2008-2017年)
国連2か年通常予算の推移(2008-2017年)
主要国の国連通常予算分担率
順位※ 国名 2013-2015年 2016-2018年 増減ポイント
1 米国 22.000% 22.000% ±0
2 日本 10.833% 9.680% -1.153
3 中国 5.148% 7.921% +2.773
4 ドイツ 7.141% 6.389% -0.752
5 フランス 5.593% 4.859% -0.734
6 英国 5.179% 4.463% -0.716
7 ブラジル 2.934% 3.823% +0.889
8 イタリア 4.448% 3.748% -0.700
9 ロシア 2.438% 3.088% +0.650
10 カナダ 2.984% 2.921% -0.063

※2016-2018年の順位を記している。
出典:国連文書

主要国のPKO予算分担率
順位※ 国名 2015年 2016年 2017年 2018年
1 米国 28.3626% 28.5738% 28.4691% 28.4344%
2 中国 6.6368% 10.2879% 10.2502% 10.2377%
3 日本 10.8330% 9.6800%
4 ドイツ 7.1410% 6.3890%
5 フランス 7.2105% 6.3109% 6.2878% 6.2801%
6 英国 6.6768% 5.7966% 5.7753% 5.7683%
7 ロシア 3.1431% 4.0107% 3.9960% 3.9912%
8 イタリア 4.4480% 3.7480%
9 カナダ 2.9840% 2.9210%
10 スペイン 2.9730% 2.4430%

※2016-2018年の順位を記している。
出典:国連文書

PKO予算及びミッション数の推移(2002-2016年)
PKO予算及びミッション数の推移(2002-2016年)
特集
2015年安保理非常任理事国選挙

2011年1月、日本は2015年安保理非常任理事(任期は2年で毎年5議席が改選)国選挙への立候補を表明しました。一方、日本が所属するアジア・太平洋グループ(改選枠1)からは、バングラデシュが既に立候補を表明していました。

日本は、選挙活動の一環として、日本が国連安保理にもたらし得る貢献についての理解を得るべく、政府要人の往来を活用して精力的に支持要請を行うとともに、一部の国連常駐代表を日本に招へいし、政府要人との意見交換や様々な視察を通じて、多角的に日本への理解を深めてもらう取組を続けました。

こうした中、2014年3月の岸田外務大臣のバングラデシュ訪問等を踏まえて、2014年9月、バングラデシュを訪問した安倍総理大臣に対し、ハシナ首相から、両国間の歴史的に良好な関係に鑑み、国連安保理選挙への立候補を取り下げ日本の立候補を支持するとの表明がなされました。

2015年10月16日、国連総会で実施された選挙において、日本は184票という国連加盟国の大多数からの支持を得て、史上最多となる11回目の当選を果たしました。国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の実践として、日本は、北朝鮮情勢や中東・アフリカ地域の平和と安定等、国連安保理における幅広い課題に対し、より一層積極的に貢献していきます。

ハシナ首相の出迎えを受ける安倍総理(2014年9月6日、バングラデシュ 写真提供:内閣広報室)
ハシナ首相の出迎えを受ける安倍総理(2014年9月6日、バングラデシュ 写真提供:内閣広報室)
岸田外務大臣の第70回国連総会出席(9月29日、米国・ニューヨーク)
岸田外務大臣の第70回国連総会出席(9月29日、米国・ニューヨーク)
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