国連外交

岸田外務大臣スピーチ「日本の国連外交『途上国と共に』」

平成28年2月23日

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1 冒頭

 外務大臣の岸田文雄でございます。

 本日は,関西学院大学主催のトークセッションの開催を心からお慶び申し上げます。そして,この場にお招きいただいたことに心から御礼を申し上げさせていただきます。関西学院大学におかれましては,本日のイベントを含め,グローバル人材の育成に貢献されていることに,心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。元国連事務次長の明石康さんを始め,国連の現場で活躍されてこられました皆様とともに,日本と国連の役割について,今日,お話しさせていただきますことを大変光栄に思っております。

 60年前の12月,日本は,世界で80番目の加盟国として悲願の国連加盟を果たしました。戦後,国際協調主義を掲げ,平和国家として再出発した日本にとって,国連加盟とは,国際社会の平和と安全の維持に貢献する国家として,真の意味で国際社会に復帰することを意味しておりました。

 以来,国連外交は日本の外交政策の大きな軸の一つとして定着してきました。日本が過去30年間にわたり,世界第2位の財政貢献国として国連に対し多大な貢献を行ってきたことはその証でもあります。私自身も,国連外交を重視し,外務大臣に就任してから,3年連続で国連総会に出席しています。特に,昨年の国連総会におきましては,カザフスタンのイドリソフ外相とともにCTBT(包括的核実験禁止条約)発効促進会議の共同議長を務めさせていただき,軍縮・不拡散分野での議論をリードさせていただきました。

 今日,国際社会は,紛争やテロ,難民,貧困,気候変動,感染症など,国境を越えた様々な課題に直面しています。日本が国際社会において自らの主張を実現していくためには,こうしたグローバルな課題においても積極的に汗をかき,国際社会の信用を勝ち取っていくことが重要であるということを私も外務大臣として訴えてきました。こうした意味で,国際社会の平和と安定に積極的な役割を果たすことは,日本の国益にほかなりません。国際社会の様々な課題に取り組む国連は,我が国が国際協調主義に基づく「積極的平和主義」を実践する場でもあります。

 本日は,日本の国連における取組,とりわけ安保理メンバーとしての重点事項や安保理改革についてどのように考えていくか,また,開発を始め,「途上国と共に歩む日本」の取組を中心にお話しさせていただきたいと思います。

2 国際の平和と安全への責任

 日本は昨年,安保理非常任理事国選挙で11回目の当選を果たし,今年1月から安保理入りを果たしました。11回という数字は加盟国最多であり,大変誇らしいことだと思います。同時に,これは国際社会から日本に向けられた堅固な信認であり,また,期待の表れでもあると考えます。今回の我が国の当選は,日本を支持し自らの立候補を取り下げたバングラデシュの心温かい支援の結果でもあります。こうした重みを胸に,日本は国際社会の平和と安全につき責任を負う立場から,3つの点を重視しているということをお話しさせていただきます。

【アジアの平和と安全に貢献】
まず,第一に,日本は,アジアの平和国家として,アジアの平和と安全に貢献してまいります。

 東アジアの平和と安全は日本の安全保障にとっても極めて重要であると同時に,日本は,この地域の主要国であり当事者として,自らの国益を踏まえつつ,重い責任を果たしてまいります。特に,北朝鮮による1月の核実験,2月の弾道ミサイル発射,これらは日本を含むアジア及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものです。

1月6日の核実験からまもなく2か月になろうとしています。これ以上,決議の採択を遅らせることは,安保理の責任放棄にほかなりません。米国,韓国といった国々と連携しつつ,これまでにない強力な安保理決議を一刻も早く採択できるよう力を振り絞ってまいります。また,拉致問題の早期解決を始めとする北朝鮮の人権状況の改善に向けても,国連などの場を活用して取り組んでまいります。

【世界全体の平和と安全に貢献】
第二に,アジアのみならず,グローバル化により相互に密接につながる世界全体の平和と安全にも,イニシアティブを発揮してまいります。実際,安保理における地域問題の審議の8割以上は中東とアフリカに割かれています。

 今年7月に日本は安保理の議長国を務めることになっています。8月には,第6回アフリカ開発会議(TICADVI)をケニアで開催いたします。日本がアフリカを重視していることを内外に示す意味でも,7月の安保理で,アフリカにおける平和構築をテーマとする公開討論を議長国として実施する考えを,この場で発表させていただきたいと思います。様々な事情が許すならば,私自身,ニューヨークでその会合の議長を務めたいと思っております。

 紛争国の復興は安保理決議の採択だけではなしえません。紛争予防,平和構築,国連PKOへの参加,人道支援,開発協力などの活動を,相乗効果を追求しながら総合的に進めていくことが必要です。日本はその知見と能力を有する数少ない国です。アフリカにおいては,自衛隊の南スーダンのPKOへの派遣を始め,選挙監視や,難民支援,物資輸送,道路や橋の建設など,紛争後の復興から開発まで様々な局面における積極的な貢献を行ってきています。そして,現地の方々から高い評価を得てきました。こうした経験を,日本が議長を務める,7月の安保理の公開討論で是非共有したいと思っています。

【安保理改革に全力】
 第三に,安保理改革に全力を尽くしてまいります。

 国連創設から70年以上が経ちました。国際社会の構図は大きく変化し,加盟国も51か国から193か国へと4倍近くになりました。しかし,安保理の構成は,国連創設当初からほとんど変わっていません。安保理改革を実現し,21世紀の国際社会の現実を反映することは不可欠です。非常任理事国のみならず,常任理事国の数も増やし,その責務を担うのにふさわしい国がメンバーとなる,こうしたことが重要だと考えます。そして,私は,日本こそ,常任理事国になるべき国だと考え,インド,ドイツ,ブラジルと共にG4の改革案を示しています。具体的には,常任理事国を6,そして,非常任理事国を4から5増やし,安保理の総数を25から26にすることで,安保理がより代表性が高く,正当性があり,かつ実効的なものとなる,こうしたことを実現出来ると確信しております。

 カンボジア和平への貢献やミンダナオ和平,そして,スリランカ和平での尽力などのように,日本は対話を重視し,専ら平和的手法により国際貢献を行ってきました。また,唯一の戦争被爆国として,国連において,毎年,核兵器廃絶決議を提出するなど,軍縮・不拡散にも積極的に取り組んできました。自らの地域のみならず,アフリカや中東を含めグローバルな観点から国際貢献を重ね,積極的平和主義を実践する日本が安保理常任理事国になることは,世界の平和と安全の大きな推進力になると確信しています。

 こうした観点から,私自身が本部長を務める国連安保理に関する戦略本部を,先月外務省に設置し,戦略本部での議論をもとに,副大臣,政務官を各地に派遣するなど,既に様々な外交努力を行っています。同本部において,改革推進のためには,国連加盟国の4分の1以上を占めるアフリカを始めとする改革推進派との連携強化が重要であることを踏まえた今後の取組につき検討を進めています。安保理改革は大変難しい課題ですが,2月3日からニューヨークにおきましては,国連総会の下で,具体的な改革のための政府間の文言ベースでの交渉に向けた動きが始まりました。日本が主導して,改革を前進させたいと思います。

3 途上国と共に歩む日本の国連外交

 そして,今後の日本の国連外交の中で,特に強調したいのは「途上国と共に歩む」というキーワードです。国際社会の平和と安全は,国連の重要課題である開発や人権と密接に関わっています。国連の加盟国の大半は,開発途上国であり,貧困や人権侵害は,紛争の根本原因にもなっています。

 世界の貧困人口は半減したとはいえ,依然として8億人以上の人々が貧困にあえぎ,6000万人以上の人々が住む家から追われ,日本の人口と同じだけの1億2500万人の人々が人道支援を必要としています。

 日本は,今までも人間一人ひとりに着目し,人々が恐怖や欠乏からのがれ尊厳をもって生きることができるよう,個人の保護と能力強化を通じて,国づくり,社会づくりを進める「人間の安全保障」という考え方を提唱してきました。

 これからも,ぜひ,「人間の安全保障」を強調し,特に「途上国と共に歩む日本」をアピールしていきたいと,私は考えています。

【持続可能な開発のための2030アジェンダ】
 昨年,国連においては,こうした日本の「人間の安全保障」の考えも反映する形で,「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が策定されました。本年は,その「2030アジェンダ」の実施元年です。「2030アジェンダ」の基本理念は「誰も取り残さない」というものです。先進国も含めた全ての国連加盟国が実施していくことに加えて,国際機関,NGO,民間企業などあらゆる関係者とのパートナーシップを築いて実施していく必要があります。

 例えば,私が訪問したアフリカのエチオピアにおいても,日本の製造業の現場で培われた「カイゼン(改善)」の手法が導入され,生産性の向上が図られています。

 本年5月,国連は加盟国政府,NGO,シンクタンク,民間企業など,様々な関係者を集め,人道活動の将来を議論する世界人道サミットを開催いたします。「2030アジェンダ」の最初の試金石となるこの会合においても,日本は,成功に向けて積極的に貢献していく考えです。

【G7伊勢志摩サミット】
 開発は,5月に開催されるG7伊勢志摩サミットの主要な柱にもなっています。この課題に,日本は,日本がリードしてきた,女性が輝く社会の実現,質の高いインフラ,さらには保健などの切り口も含め,G7各国と連携しつつ取り組んでまいります。

【TICAD】
 日本は,これまでも,開発の現場において,常に相手国の声に耳を傾け,その要望に寄り添い,オーナーシップを大切にしながら,支援を実施してきました。このような「途上国と共に歩む」姿勢こそ,日本の開発協力の真髄であると考えています。

 この日本の協力姿勢がいかんなく発揮されているものが,日本が国連やアフリカ連合(AU)などと共に,これまで5回日本で開催し,そして,今年8月に初めてアフリカで開催するTICADです。 日本は,アフリカの声に耳を傾け,彼らと共に歩み,TICADプロセスを通じたアフリカにおける国連アジェンダの推進を進めてまいります。私自身,外務大臣として,これまでに,エチオピア,カメルーンにおいて開催されましたTICAD閣僚会合に参加し,共同議長を務めてまいりましたが,今後,一層アフリカとの関係強化に務めていきたいと考えております。

 このようにして,今後の日本外交の中で,特に「途上国と共に歩む日本」を実践していきたいと考えております。

4 国連機関での日本人職員の活躍を後押し

 国連関連機関においては,現在,約800人の日本人職員が働いていますが,他のG7各国は1000人を超えています。また,国連事務局の望ましい職員数と比較しても,依然として少ない状況です。私自身こうした日本人職員の方々から直接話を聞く機会が度々あり,日本人職員を増やしていくことが重要であるということを強く感じています。私からは,2025年までに1000人とする目標をできるだけ早くに達成するよう,若手日本人の送り込みや大学との連携を更に強化するよう指示を出しているところです。

5 結語

 今年は,国連加盟60周年という節目の年にあたり,国連というフォーラムを最大限活用しながら,日本の国益,そして,国際社会共通の利益を実現するべく,一層積極的に取り組んでまいります。そして,「途上国と共に歩む日本」をアピールしてまいります。このような取組を一層積み重ねてこそ,安保理改革の推進,安保理常任理事国入りがより説得力を持っていくことになると確信しています。

 私も,外務大臣として,引き続き,国連,G7サミット,TICADVI,こういった貴重な機会を活用しながら,フォーラムの垣根を越えて,一貫して,国際社会が直面する諸課題に取り組んでまいりたいと考えています。

 御清聴いただきましたことに心から感謝を申し上げます。

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