外交青書・白書
第2章 地球儀を俯瞰する外交

2 カナダ

(1)カナダ情勢

ハーパー首相は、安定した政権運営を行ってきたが、2013年の複数の上院議員による手当不正受給問題などの影響によって、与党である保守党への支持率が低下した。この状況は2014年も継続し、野党自由党への支持率と拮抗している。

2014年10月22日には、首都オタワにて発生した銃撃事件によってカナダ軍兵士1人が死亡する事件が発生し、カナダ国内外に大きな衝撃を与えた。

外交面では、カナダは、自由、人権、民主主義、法の支配などの基本的価値を重視する外交政策や、経済の活性化・雇用促進につながる外交政策を推進している。また、2013年5月以降2年間の予定で、北極評議会の議長国を務めている。

経済面では、9月にEUと包括的経済貿易協定(CETA)交渉が妥結し、アジア太平洋地域では初めてとなる韓国とのFTAにも署名した。10月にはホンジュラスとのFTAや、中国との外国投資促進保護協定が発効した。また、TPP協定、日加EPA、加印FTAの各交渉を通じてアジアや米州地域との貿易の拡大に継続的に取り組んでいる。

国内経済に関しては、幅広く回復の兆しを見せており、力強い輸出が民間設備投資や雇用の増加に好影響をもたらしている。

(2)日・カナダ関係

安倍総理大臣は、2014年3月、核セキュリティ・サミット(於:ハーグ(オランダ))の機会に、ハーパー首相との間で日・カナダ首脳会談を行い、第2回外務・防衛次官級「2+2」対話の実施、エア・カナダの羽田空港発着便の就航など、2013年9月の首脳会談の成果が着実に実現していることを確認した。さらに、安倍総理大臣からは、低廉・安定したLNG輸入の早期実現を期待すると発言し、TPP協定交渉や日加EPA交渉についても意見交換を行った。また、両首脳は、11月に北京で行われたAPEC首脳会合の際にも首脳会談を行い、二国間関係、地域情勢などについて意見交換を行った。

日加首脳会談におけるハーパー首相と安倍総理大臣(11月9日、中国・北京 写真提供:内閣広報室)
日加首脳会談におけるハーパー首相と安倍総理大臣(11月9日、中国・北京 写真提供:内閣広報室)

さらに、岸田外務大臣は、7月に訪日したベアード外相と外相会談を実施し、二国間関係、地域情勢、TPP協定、日加EPA交渉などについて意見交換を行った。

このほか、3月にはオタワにて第2回外務・防衛次官級「2+2」対話を実施した。6月には両政府が参加する形での有識者間の対話である第12回日加安全保障シンポジウムが東京にて実施されるとともに、第8回日加政務・防衛当局間(PM)協議が実施された。

経済分野では、1月に第26回日加次官級経済協議が開催され、日本・カナダ間の経済関係、両国の貿易政策、資源・エネルギー分野における協力や国際経済問題などに関する幅広い意見交換が行われた。また、3月に第5回、7月に第6回、11月に第7回のEPA交渉会合が開催され、サービス貿易、投資、知的財産、エネルギー・鉱物資源・食料などの分野について有意義な議論が行われた。カナダは天然ガス生産量世界第5位であり、日本への輸出実績はまだないものの、西部では複数の日本企業が参画するアジア向けLNG輸出計画が進行している。

両国間では、このほか、青少年交流事業「KAKEHASHI Project -The Bridge for Tomorrow-」が行われており、2014年は、50人の招へいと175人の派遣を実施し、2014年3月までに両国間で合計200人の招へいと200人の派遣を行った。

このように両国間では、政治・安全保障・経済・人的交流を含む様々な分野で更なる関係強化に向けた取組が進められている。

このページのトップへ戻る
青書・白書・提言へ戻る