第3節 中南米
中南米地域は、日本にとって、経済的にも、また、ルールに基づくより良い国際社会の構築においても、重要なパートナーである。2011年以降、商品価格の下落や、域外主要国経済の失速などを背景に経済成長は減速しているものの、6兆米ドルの経済規模(ASEANの約2.5倍)、6億人の人口、希少金属(レアメタル)を含めた鉱物資源・エネルギーや食料の生産地を有しており、日本企業の進出も顕著となっている。さらに、法の支配が確立され、ほぼ全ての国で民主主義が根付いており、国際社会における発言力を大きく高めている。約178万人に上る日系人が在住しているなど、日本との人的・歴史的な絆も深く、また、アジア最大の対中南米投資国として長年培われた経済的結びつきもあり、日本と中南米地域は伝統的な友好関係を維持している。
このような重要性を背景に、2014年7月下旬から8月上旬にかけて安倍総理大臣がメキシコ、トリニダード・トバゴ、コロンビア、チリ、ブラジルを訪問し、現職の総理大臣としては10年ぶりの中南米諸国歴訪となった。「Juntos(ジュントス)!! 日本・中南米協力に限りない深化を」(1)と題するスピーチで対中南米政策を打ち出し、①共に発展(経済関係強化)、②共に主導(国際場裏での連携)、③共に啓発(人的交流、文化・スポーツ交流などの促進)、という対中南米外交の3つの指導理念を掲げた。このほか、日系議員や日系団体、日系企業との懇談なども行い、日本と中南米の関係をあらゆる面で強化し、「日本が中南米に帰ってきた」ことを印象付けた。また、延べ250人を超える経済ミッションも同行し、各国の経済関係者と交流を行った。
経済関係の強化については経済連携協定(EPA)、投資協定などの法的枠組みの構築や、相手国政府との協議などを通じて、現地で事業を展開する日系企業にとって良好なビジネス環境を整備すべく取り組んでいる。また、中南米諸国では、経済成長に伴い、都市交通やエネルギーなどのインフラ需要の拡大が見込まれることから、日本の技術を活用した開発支援を推進している。このほか、資源や食料に富んだ国々との協力関係の深化を通じ、日本への資源や食料の安定供給の確保にも努めている。
国際場裏での連携促進については、持続的経済成長、環境・気候変動問題、核軍縮・不拡散、国連安保理改革などの課題に共に取り組みつつ、国際社会で影響力を有するカリコム(カリブ共同体)などの地域共同体との連携と対話を強化している。
人的交流については、要人の往来に加え、中南米からの若手行政官、日系人などの招へいなどあらゆるレベルでの交流を強化した(詳細については1.(2)「人的交流の強化」参照)。
1 Juntos(ジュントス)=ポルトガル語で「共に」の意