G7
G7プーリア・サミット(概要)
令和6年6月17日
6月13日から15日にかけてイタリア・プーリアにて開催されたG7プーリア・サミットに岸田総理が出席したところ、概要は以下のとおりです。
議題・日程
1 出席者
- G7
日:岸田総理、伊:メローニ首相(議長)、加:トルドー首相、仏:マクロン大統領、米:バイデン大統領、英:スナク首相、独:ショルツ首相、EU:ミシェル欧州理事会議長、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長 - 招待国(11カ国)
アルジェリア:テブン大統領、アルゼンチン:ミレイ大統領、ブラジル:ルーラ大統領、バチカン:フランシスコ教皇、インド:モディ首相、ヨルダン:アブドッラー国王、ケニア:ルト大統領、モーリタニア(アフリカ連合(AU)議長国):ガズワニ大統領、チュニジア:サイード大統領、トルコ:エルドアン大統領、アラブ首長国連邦:ムハンマド大統領 - 招待機関(5国際機関)
アフリカ開発銀行(AfDB):アデシナ総裁、国際通貨基金(IMF):ゲオルギエヴァ専務理事、経済協力開発機構(OECD):コーマン事務総長、国連(UN):グテーレス事務総長、世界銀行(WB):バンガ総裁 - ゲスト
ゼレンスキー・ウクライナ大統領
2 日程及び出席国
6月13日(木曜日)
- セッション1「アフリカ、気候変動、開発」
出席国:G7メンバー - セッション2「中東情勢」
出席国:G7メンバー - セッション3「ウクライナ情勢」
出席国:G7メンバー、ゼレンスキー大統領(会議前半のみ出席)
6月14日(金曜日)
- セッション4「移住」
出席国:G7メンバー - セッション5「インド太平洋、経済安全保障」
出席国:G7メンバー - セッション6「AI、エネルギー/アフリカ、地中海」
出席国:G7メンバー、招待国・機関 - 閉会セッション
各セッション概要
セッション1「アフリカ、気候変動、開発」
- 岸田総理から、世界が複合的な危機に直面している中、昨年のG7広島サミットで強調した、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の堅持、グローバルサウスを始めとするG7を超えた国際的なパートナーへの関与の強化という二つの視点は、我々がロシアによるウクライナ侵略の継続や中東情勢の緊迫化などの新たな挑戦に直面している中で一層重要である旨述べました。また、岸田総理は、こうした視点が本年のG7伊議長下でも引き継がれていることを歓迎し、国際社会が直面する諸課題への対応をG7が主導するとの姿勢を改めて世界に示したいと述べました。
- アフリカ
- 岸田総理から、アフリカ側の声に寄り添った協力の拡充の重要性を強調し、グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)を始めとした取組をアフリカのニーズに沿う形で一層推進しつつ、G7各国の取組を連動させて相乗効果を発揮すべきである旨述べました。また、日本はアフリカを共に成長するパートナーとして位置付け、かかる観点に立って30年以上にわたりアフリカ開発会議(TICAD)プロセスでアフリカを支援してきていることを紹介しました。更に、来年8月に開催予定の第9回アフリカ開発会議(TICAD9)においてアフリカ諸国との連携を一層強化したい旨述べ、今回のG7での成果をTICADにも繋げていきたいと強調しました。
- 岸田総理から、南アフリカが次期議長を務めるG20への対応も重要な課題である旨述べ、G20にはアフリカ連合(AU)も正式加盟し、従来以上にアフリカの声を聞く必要があることを強調しました。また、G20の主要課題ともなっているグローバル・ガバナンス改革はアフリカの要請でもあることを指摘し、9月の未来サミットや来年の国連80周年に向け、安全保障理事会の改革を含めた国連の機能強化にG7としてコミットし、具体的に貢献する姿勢を示すべきである旨述べるとともに、多国間開発金融機関(MDBs)改革へのアフリカの期待も大きく、共に取り組んでいきたい旨述べました。
- 気候変動
- 深刻かつ切迫した脅威となっており、こうした災害や自然環境の変化は国内避難民や国外への移民発生にもなっていることを指摘し、こうした状況への対応も含め、日本は様々な支援をアフリカに行ってきていることを説明しました。
- 岸田総理から、アフリカの持続可能な開発を確保する観点からも、世界全体で気候変動対策を推進する必要があり、G7が引き続き先頭に立ちつつ、主要排出国も排出削減を実行することが重要である旨述べました。また、岸田総理から、アフリカを含む脆弱国に対する適応及び強靱性強化のための支援に戦略的に取り組む必要があると述べた上で、気候資金の世界的取組に関して、日本の取組も紹介しつつ、先進国以外の主要経済国も然るべく貢献するような枠組の設定が必要である旨指摘しました。
- 開発
岸田総理から、上記の取組を進めるにあたり、人間の尊厳や人間の安全保障を重視しつつ、SDGs達成に向けて引き続き注力することが重要であると指摘しました。また、引き続きMDBs改革の進展を通じ、途上国に譲許性の高い開発資金を効果的に配分するなど、目に見える成果を示していきたい旨述べました。 - ジェンダー
岸田総理から、昨年のG7広島サミットではジェンダー主流化の推進を確認し、日本は幅広い分野でジェンダー平等についての議論に注力してきたことを説明し、こうしたG7のコミットメントを示し続けていきたいと述べました。また、世界中で武力紛争や自然災害等が頻発している今、女性・平和・安全保障(WPS)の推進は一層重要である旨指摘し、特にアフリカを含め危機的な状況下での女性及び女児の権利の擁護が必要であり、G7の取組を更に推進していきたいと述べました。 - G7首脳は、アフリカの声に寄り添いながら、気候変動や開発を始めとする諸課題への対応においてG7が一層緊密に連携していくことを確認しました。
セッション2「中東情勢」
- イスラエル・パレスチナ情勢
- 岸田総理から、何よりも重要なことは停戦及び事態の早期沈静化である旨強調し、かかる観点から、人質解放・停戦を巡るバイデン米大統領のイニシアティブを強く支持する旨述べました。同時に、ハマスを含む全ての当事者がこれを受け入れ、即時停戦、人質の解放、人道状況の改善、そして持続的な停戦を創り上げていく必要がある旨述べました。また、緊迫する情勢の中において国際社会全体の気運を高めることの重要性を強調するとともに、このための関係国の取組を支持する旨述べました。
- 岸田総理から、パレスチナ支援について、幅広い各国の関与が重要であることを指摘しました。また、日本として、パレスチナ自治政府(PA)改革、ガザの復興、二国家解決に向けたプロセスの促進などについて、積極的に関与していく用意がある旨述べるとともに、中東地域におけるこれ以上の不安定化を防ぎ、長期的な安定の礎を作っていくための外交努力も継続していく旨述べました。
- 紅海情勢
岸田総理から、地中海から紅海・アデン湾、インド洋、南・東シナ海に至る海域は死活的に重要なシーレーンであることを指摘するとともに、更なる事態の悪化を防ぐべく、日本は国連安全保障理事会の場を含め関係国と尽力していることを説明しました。 - G7首脳は、引き続き緊密に連携して中東情勢に対応していくことで一致しました。
セッション3「ウクライナ情勢」
- 冒頭、岸田総理から、戦況が厳しさを増す中で、ロシアの侵略に結束して対抗しているウクライナの国民の勇気と忍耐強さに改めて心からの敬意を表する旨述べました。また、G7として引き続き結束してウクライナを支えていくとともに、日本としても、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」との考えの下、引き続き対露制裁とウクライナ支援を強力に推進する旨述べました。
- ウクライナ支援について、岸田総理は、日本はウクライナの喫緊の資金需要を満たすべく年初から財政支援を実施してきていることや、対無人航空機検知システムも供与していることを紹介しました。また、日本は地雷対策支援も重視しており、日本製の大型地雷除去機の供与も進め、来年に「ウクライナにおける地雷対策に関する国際会合」を日本で主催することを説明しました。更に、復興面でも中長期的にウクライナを支えていく旨述べ、本年2月の日・ウクライナ経済復興推進会議で署名した56本の協力文書に加え、今週のベルリンでの復興会議の際に新たに23本の文書を日ウクライナ間で署名したことも紹介しました。
- 制裁について、岸田総理は、ロシアによる北朝鮮からの武器調達に関し、本年5月にG7を含む同志国で協調して制裁を発表したことは力強いメッセージとなったと述べ、日本としては、第三国(注)に所在する団体を含め新たな制裁パッケージを検討している旨説明しました。(注:制裁の迂回対策として、中国、インド、UAE、ウズベキスタン、カザフスタンに所在する団体に対する措置を検討中。)
- G7首脳は、引き続き連携してウクライナ情勢に対応していくことを確認しました。また、G7首脳は、「ウクライナのための特別収益前倒し融資」を立ち上げることで一致しました。
セッション4「移住」
- 岸田総理から、移住問題は様々な要素が複雑に絡む国際的な課題であり、一か国だけで解決することはできず、移民送出国、通過国、受入国における一体となった対策が必要である旨指摘しました。
- また、岸田総理から、日本はこれまで「人」に注目した取組を行ってきており、移民とホストコミュニティ双方について人間の尊厳や人間の安全保障が確保されることを重視している旨説明しました。また、日本は人間の安全保障基金を通じ、モルドバ、ソマリア、レバノン等において、難民、国内避難民・帰還民、ホストコミュニティの住民の保護とエンパワーメントを支援してきた旨説明しました。
- 岸田総理から、イタリアが提示する、(1)移民発生国における根本原因への対処、(2)移民の密入国に関わる国際組織犯罪への対応、(3)移住に関する正規のルートの整備という3つの柱に関して、それぞれ以下のとおり述べました。
- 移民発生国における根本原因への対処には、雇用・経済の改善、気候変動や環境問題への対処、治安の確保等、総合的な取組が必要であり、日本はこれら様々な分野についてアフリカを支援してきている旨述べました。また、日本はTICADにおいて、アフリカを「共に成長するパートナー」として位置付けており、今回のG7の成果を来年のTICAD9にも活かしていきたい旨述べました。
- 移民の密入国に関わる国際組織犯罪への対応は、移民送出国、通過国及び受入国全てにおいて講じることが必要である旨述べ、日本は国際組織犯罪防止条約に基づく協力を行うとともに、国連薬物・犯罪事務所(UNODC)への拠出を通じた途上国の国境管理能力強化支援を行ってきていることを紹介しました。また、日本は、国際移住機関(IOM)を通じ、エジプト、ケニア、コートジボワールといったアフリカ諸国において、密輸や人身売買の対策等に関する国境管理当局の能力強化支援も実施してきている旨述べました。
- 移住に関する正規のルートの整備については、各国の抱える事情や制度に配慮した取組が重要である旨述べました。また、難民への対応も重要であり、受入国の負担の軽減に向けた取組が必要である旨述べた上で、日本は国際機関等と連携し、教育や職業訓練を通じた難民・避難民の自立を支援している旨紹介しました。
- G7首脳は、移住問題に関するこうした複合的な要素について対応していくことが重要であるとの認識を共有しました。
セッション5「インド太平洋、経済安全保障」
- 冒頭、岸田総理から、インド太平洋及び経済安全保障は、G7が国際社会をリードし続ける上で戦略的に重要である旨述べました。
- インド太平洋について、岸田総理から、同地域の情勢に関する日本としての見方を説明した上で、同地域と欧州の安全保障は不可分一体であり、引き続きG7間で連携を深めたい旨述べました。G7首脳は、中国をめぐる諸課題への対応や、核・ミサイル問題、拉致問題を含む北朝鮮への対応において、引き続き緊密に連携していくことを確認しました。
- 経済安全保障について、岸田総理から、この課題における連携のあり方につき日本としての考えを説明しました。G7首脳は、過剰生産や非市場的政策及び慣行に関する課題、経済的威圧への対処、サプライチェーンの強靭化、重要・新興技術の保全等について、今後も連携して取り組んでいくことを確認しました。
セッション6「AI、エネルギー/アフリカ、地中海」
- 本セッションでは、リードスピーカーとして、ローマ教皇フランシスコから主にAIに関して、ガズワニ・モーリタニア(アフリカ連合(AU)議長国)大統領から主にアフリカの課題に関して、それぞれ冒頭発言がありました。
- AI
- 岸田総理から、昨年日本が主導して立ち上げた広島AIプロセスをG7議長国イタリアが引き継ぎ、AIを主要な議題としていることに謝意を表明した上で、AIは人類の発展にとって大きな可能性を秘める一方、偽情報の拡散やサイバー攻撃を含むリスクも生じさせることを指摘し、AIの労働や雇用への影響についても考慮が必要である旨述べました。岸田総理は、AIは国際社会全体で対処すべき人類共通の課題であることを指摘した上で、世界中の人々が安全、安心で信頼できるAIを利用できるためのガバナンスの形成が急務であり、イノベーションの促進と規律のバランスの確保が必要である旨述べました。
- AIの倫理に関し、岸田総理から、AI倫理の核は人間の基本的価値の尊重であり、日本は「人間の尊厳が尊重される社会」を基本理念としてAI戦略を進めてきたことを説明しました。また、日本が国連教育科学文化機関(UNESCO)や経済協力開発機構(OECD)での議論への貢献や、AI倫理に係る途上国支援も実施していることを紹介しました。
- AIのガバナンスに関し、岸田総理から、昨年広島AIプロセスで策定した国際指針や行動規範を実践するとともに、G7を超えてAIガバナンスに関する取組を進めていくことが重要である旨述べ、本年5月に広島AIプロセス・フレンズグループを立ち上げ、既に50か国・地域以上の参加を得たことを紹介し、今後も協力を進めていきたいと述べました。また、その前提となる、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)の重要性についても強調しました。
- 途上国支援に関し、岸田総理から、AIの便益を途上国にも行き渡らせるべくデジタル格差の解消が重要である旨指摘し、日本は途上国のデジタル分野の能力構築やインフラ整備等の支援を行っていることを紹介しました。
- エネルギー
- 岸田総理から、AIの活用に伴い電力需要が急増する見込みであり、全ての社会・経済活動の土台であるエネルギーの安定供給確保は重要な課題であることを指摘しました。その上で、エネルギー安全保障、気候危機、地政学リスクを一体的に捉え、経済成長を阻害せず、各国の事情に応じた多様な道筋の下で、ネット・ゼロという共通のゴールを目指すことが引き続き重要であり、日本は水素を含むあらゆる技術やエネルギー源を活用してイノベーションを推進し、世界の脱炭素化に貢献していく旨述べました。
- 岸田総理から、エネルギー移行に伴い需要が増す重要鉱物については産出国との協力が重要である旨指摘しました。その上で、日本は「鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)」や「強靭で包摂的なサプライチェーンの強化(RISE)に向けたパートナーシップ」等を通じ、産出国での付加価値の創出を推進するとともに、多くの国から鉱業の研究者や行政官を招へいして人材育成を進めてきたことを紹介し、今後も協力していきたい旨述べました。
- アフリカ・地中海
- 総論
岸田総理から、日本はアフリカ諸国のオーナーシップを重視し、30年以上TICADを通じた協力を実施していることを紹介しました。また、来年8月にはアフリカ各国の首脳を迎えてTICAD9を開催予定であり、アフリカの未来を担う若者、連結性、グローバル・ガバナンスにも着目し、本年のG7の成果も踏まえながら、日本とアフリカ双方の繁栄や変革に資する課題解決策を共に創り上げていきたい旨述べました。また、昨年AUがG20に加盟し、南アフリカがG20の次期議長国を務めることも踏まえ、G20でも更に協力していきたい旨述べました。 - 開発
岸田総理から、低所得国・脆弱国を支えるため、開発資金ギャップの問題への取組も重要である旨指摘し、国内資金・民間資金動員やMDBs改革等の包括的な取組が必要である旨述べました。その上で、日本は今後アフリカ開発基金等の増資の成功に向けても貢献していく旨述べました。また、岸田総理は、債務問題にも適切に対処する必要があることを指摘し、国際ルールを遵守した透明で公正な開発金融の重要性につき全ての債権国・債務国が認識を共有することも重要である旨述べるとともに、質の高いインフラへの公的及び民間投資を促進するPGIIの取組を推進していきたい旨述べました。更に、インフラ整備によりアフリカの連結性を向上させるため、日本は、西アフリカ成長の環、北部回廊、ナカラ回廊の開発に注力してきたことを紹介しました。 - 食料
岸田総理から、G7広島サミットでは招待国も含めて具体的な共同行動につき合意したが、引き続き支援を必要とする国は多いと指摘した上で、包摂的、強靱かつ持続可能な農業・食料システムの確立が急務である旨述べました。その上で、日本は土壌の健全性、気候変動にも強い作物に着目した支援として、「適応作物と土壌に関するビジョン(VACS)」とも連携し、引き続きアフリカの食料安全保障に貢献していく旨述べました。 - 保健
岸田総理から、アフリカでは特に感染症危機対応医薬品等(MCM)への公平なアクセスの確保が重要であり、MCMのラスト・マイル・デリバリーを含め、引き続き貢献していきたい旨述べました。 - 平和と安定
岸田総理から、こうした全ての取組のためには平和と安定が不可欠である旨指摘し、日本は民主主義の定着や法の支配の強化のため、これまで人材育成、国境管理支援、司法・行政制度構築支援等をアフリカで実践してきたことを紹介し、今後も協力していきたい旨述べました。
- 総論
- 本セッションを通じ、参加者の間で、各々が直面する課題とその解決に向けた取組について意見が交わされ、特に途上国における課題への対処に向けて協力を強化していく必要性が確認されました。
閉会セッション
閉会セッションでは、メローニ伊首相がサミットを総括した上でG7プーリア首脳コミュニケを採択しました。また、トルドー加首相から、来年のG7サミットをカナダのカナナスキスで開催する旨の発表がありました。