G7

令和6年6月14日
セッション会場の様子 AI・エネルギー・アフリカ・地中海を議題としたセッション (写真提供:内閣広報室)
ローマ教皇フランシスコが発言する様子 AI・エネルギー・アフリカ・地中海を議題としたセッション (写真提供:内閣広報室)
ローマ教皇フランシスコに拍手を送る参加者の様子 AI・エネルギー・アフリカ・地中海を議題としたセッション (写真提供:内閣広報室)

 現地時間6月14日14時55分(日本時間21時55分)から約240分間、岸田文雄内閣総理大臣は、G7プーリア・サミットのセッション6「AI、エネルギー/アフリカ、地中海」に出席し、11か国の招待国と5つの国際機関(注)を交えて議論を行ったところ、概要は以下のとおりです。

  1. 本セッションでは、リードスピーカーとして、ローマ教皇フランシスコから主にAIに関して、ガズワニ・モーリタニア(アフリカ連合(AU)議長国)大統領から主にアフリカの課題に関して、それぞれ冒頭発言がありました。
  2. AI
    1. 岸田総理から、昨年日本が主導して立ち上げた広島AIプロセスをG7議長国イタリアが引き継ぎ、AIを主要な議題としていることに謝意を表明した上で、AIは人類の発展にとって大きな可能性を秘める一方、偽情報の拡散やサイバー攻撃を含むリスクも生じさせることを指摘し、AIの労働や雇用への影響についても考慮が必要である旨述べました。岸田総理は、AIは国際社会全体で対処すべき人類共通の課題であることを指摘した上で、世界中の人々が安全、安心で信頼できるAIを利用できるためのガバナンスの形成が急務であり、イノベーションの促進と規律のバランスの確保が必要である旨述べました。
    2. AIの倫理に関し、岸田総理から、AI倫理の核は人間の基本的価値の尊重であり、日本は「人間の尊厳が尊重される社会」を基本理念としてAI戦略を進めてきたことを説明しました。また、日本が国連教育科学文化機関(UNESCO)や経済協力開発機構(OECD)での議論への貢献や、AI倫理に係る途上国支援も実施していることを紹介しました。
    3. AIのガバナンスに関し、岸田総理から、昨年広島AIプロセスで策定した国際指針や行動規範を実践するとともに、G7を超えてAIガバナンスに関する取組を進めていくことが重要である旨述べ、本年5月に広島AIプロセス・フレンズグループを立ち上げ、既に50か国・地域以上の参加を得たことを紹介し、今後も協力を進めていきたいと述べました。また、その前提となる、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)の重要性についても強調しました。
    4. 途上国支援に関し、岸田総理から、AIの便益を途上国にも行き渡らせるべくデジタル格差の解消が重要である旨指摘し、日本は途上国のデジタル分野の能力構築やインフラ整備等の支援を行っていることを紹介しました。
  3. エネルギー
    1. 岸田総理から、AIの活用に伴い電力需要が急増する見込みであり、全ての社会・経済活動の土台であるエネルギーの安定供給確保は重要な課題であることを指摘しました。その上で、エネルギー安全保障、気候危機、地政学リスクを一体的に捉え、経済成長を阻害せず、各国の事情に応じた多様な道筋の下で、ネット・ゼロという共通のゴールを目指すことが引き続き重要であり、日本は水素を含むあらゆる技術やエネルギー源を活用してイノベーションを推進し、世界の脱炭素化に貢献していく旨述べました。
    2. 岸田総理から、エネルギー移行に伴い需要が増す重要鉱物については産出国との協力が重要である旨指摘しました。その上で、日本は「鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)」や「強靭で包摂的なサプライチェーンの強化(RISE)に向けたパートナーシップ」等を通じ、産出国での付加価値の創出を推進するとともに、多くの国から鉱業の研究者や行政官を招へいして人材育成を進めてきたことを紹介し、今後も協力していきたい旨述べました。
  4. アフリカ・地中海
    1. 総論
      岸田総理から、日本はアフリカ諸国のオーナーシップを重視し、30年以上アフリカ開発会議(TICAD)を通じた協力を実施していることを紹介しました。また、来年8月にはアフリカ各国の首脳を迎えて第9回アフリカ開発会議(TICAD9)を開催予定であり、アフリカの未来を担う若者、連結性、グローバル・ガバナンスにも着目し、本年のG7の成果も踏まえながら、日本とアフリカ双方の繁栄や変革に資する課題解決策を共に創り上げていきたい旨述べました。また、昨年AUがG20に加盟し、南アフリカがG20の次期議長国を務めることも踏まえ、G20でも更に協力していきたい旨述べました。
    2. 開発
      岸田総理から、低所得国・脆弱国を支えるため、開発資金ギャップの問題への取組も重要である旨指摘し、国内資金・民間資金動員やMDBs改革等の包括的な取組が必要である旨述べました。その上で、日本は今後アフリカ開発基金等の増資の成功に向けても貢献していく旨述べました。また、岸田総理は、債務問題にも適切に対処する必要があることを指摘し、国際ルールを遵守した透明で公正な開発金融の重要性につき全ての債権国・債務国が認識を共有することも重要である旨述べるとともに、質の高いインフラへの公的及び民間投資を促進するグローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)の取組を推進していきたい旨述べました。更に、インフラ整備によりアフリカの連結性を向上させるため、日本は、西アフリカ成長の環、北部回廊、ナカラ回廊の開発に注力してきたことを紹介しました。
    3. 食料
      岸田総理から、G7広島サミットでは招待国も含めて具体的な共同行動につき合意したが、引き続き支援を必要とする国は多いと指摘した上で、包摂的、強靱かつ持続可能な農業・食料システムの確立が急務である旨述べました。その上で、日本は土壌の健全性、気候変動にも強い作物に着目した支援として、「適応作物と土壌に関するビジョン(VACS)」とも連携し、引き続きアフリカの食料安全保障に貢献していく旨述べました。
    4. 保健
      岸田総理から、アフリカでは特に感染症危機対応医薬品等(MCM)への公平なアクセスの確保が重要であり、MCMのラスト・マイル・デリバリーを含め、引き続き貢献していきたい旨述べました。
    5. 平和と安定
      岸田総理から、こうした全ての取組のためには平和と安定が不可欠である旨指摘し、日本は民主主義の定着や法の支配の強化のため、これまで人材育成、国境管理支援、司法・行政制度構築支援等をアフリカで実践してきたことを紹介し、今後も協力していきたい旨述べました。
  5. 本セッションを通じ、参加者の間で、各々が直面する課題とその解決に向けた取組について意見が交わされ、特に途上国における課題への対処に向けて協力を強化していく必要性が確認されました。

 (注)11か国の招待国は、アルジェリア、アルゼンチン、ブラジル(G20議長国)、バチカン、インド、ヨルダン、ケニア、モーリタニア(AU議長国)、チュニジア、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)。5つの招待機関は、アフリカ開発銀行(AfDB)、国際通貨基金(IMF)、OECD、国連、世界銀行。


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