(1) ZANU・PF(ジンバブエ・アフリカ国民同盟・愛国戦線)が議会で圧倒的多数を維持し、議会制民主主義の下、独立以来ムガベ大統領(87年に首相から大統領に就任)が政権の座に就いている。
植民地時代に肥沃な土地から追われ、小規模な土地しか有しない黒人農民に土地を再分配するため、政府は白人大規模農場主の所有する土地を政府の決定の価格で収用することを可能とする土地収用法を92年3月成立させたが、白人大農家を中心とする商業農民組合(CFU)が反発しており、また、農地を収用するための政府予算も十分でないことから、農地の再配分は遅々として進んでおらず、農地改革が現政権の重要課題となっている。
(2) 外交面では、非同盟主義の下、近隣諸国との緊密化を図っており、ムガベ大統領は、モザンビーク内戦終結の仲介の労をとる等地域の安定に指導力を発揮している。対南ア関係では、94年4月にマンデラ政権が樹立された後、直ちに外交関係が開設され、今後、両国間の経済関係は更に促進される見込みである。しかし、国境を接していないコンゴー民主共和国(旧ザイール)への軍事介入を行っており、国内の経済困難をも背景に政府批判が高まる危険を孕んでいる。
(3) 経済面では、豊富な鉱物資源に恵まれ、サハラ以南アフリカの中ではインフラが比較的整備され、また、農業、製造業及び鉱業が比較的バランス良く発達している。独立後は白人と黒人の格差是正に力を入れ、黒人大衆の教育、保健・医療の向上等に成果を上げたが、旱魃による影響や若年層の失業の深刻化といった問題も存在する。政府は、従来の統制的な経済を自由化する政策に転換し、91年、世銀・IMFの協力を得て経済構造調整計画(91年~95年)を実施に移し、輸入の自由化、為替制度改革、各種規制緩和、金融管理の分野では進展が見られた。更に、年平均実質GDP成長率6%の達成等を目標とし、財政赤字の削減、雇用創出等を政策課題とした第二次経済構造調整計画(ZIMPREST1996~2000年)の下で現在構造調整政策を実施している。財政赤字の削減、インフレ抑制、国営企業の民営化等の課題が存在している。
(4)我が国は、ジンバブエからニッケル、フェロアロイ等を輸入し(98年輸入額1億4,885万ドル)、同国に自動車、機械類等を輸出している(同輸出額9,114万ドル)。
(参考1)主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | 9,809 | 11,011 | 11,248 | 11,468 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | 6,313 | 5,933 | 6,815 | 8,208 |
一人当たり(ドル) | 640 | 540 | 610 | 720 | |
経常収支(百万ドル) | -139.8 | - | - | - | |
財政収支(百万ジンバブエ・ドル) | -1,138 | - | - | - | |
消費者物価指数(90年=100) | 100.0 | 297.4 | 358.5 | - | |
DSR(%) | 23.1 | 23.5 | 21.1 | 21.7 | |
対外債務残高(百万ドル) | 3,247 | 5,053 | 5,005 | 4,961 | |
為替レート(年平均、164ドル=ジンバブエ・ドル) | 0.4085 | 0.1155 | 0.1008 | 0.0841 | |
分類(DAC/国連) | 低所得国/- | ||||
面積(千㎞2) | 386.9 |
(参考2)主要社会開発指標
- | 90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命(年) | 60 | 49(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
61 | 69(97年) | |
所得が1ドル/日以下の人口割合(%) | - | 41.0(90-91年) | 5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
87 | 108(97年) | |
下位20%の所得又は消費割合(%) | 4.0(88-89年) | 4.0(90年) | 妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
- | 280(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | 33 | 15(95年) | 避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
43(80-90年平均) | 48(90-98年平均) | |
初等教育純就学率(%) | - | - | 安全な水を享受しうる人口割合(%) | 66(88-90年平均) | 77(96年) | |
女子生徒比率(%) | 初等教育 | 50 | 49(96年) | 森林面積 (1000平方キロメートル) |
89 | 87(95年) |
中等教育 | 47 | 44(96年) |
(1) 我が国は、ジンバブエが、1)80年の独立以来、議会制民主主義を維持していること、2)農業、製造業、鉱業がそれぞれバランス良く発達し、インフラも整備されている等経済発展の条件が比較的整っていること、3)90年代初頭に社会主義による統制経済から自由主義経済への転換を図る構造調整計画を実施に移し、貿易自由化、国内の各種規制緩和等の面でいくつかの進展が見られること、4)具体的な開発目標を掲げ、経済社会開発のための主体性(オーナーシップ)を発揮しているジンバブエの開発政策がDAC新開発戦略の趣旨に合致し、ジンバブエにおいて新開発戦略の実施を重点的に支援しうる状況にあること、5)一人当たりGNPが750ドルと低く、援助需要が大きいこと等から、我が国援助の重点国の一つとして位置付けている。
我が国は、ジンバブエにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び98年1月に派遣した経済協力総合調査団等におけるジンバブエ側との政策対話を踏まえ、以下の分野を重点分野としている。
(イ)所得向上に結びつく産業振興のための条件整備
経済を支える基礎条件の整備のために、労働市場が必要としている人材開発のための職業訓練の充実や、通信、運輸等の経済インフラの整備を図る。また、より広い基盤に支えられた経済成長を実現させていくために、中小企業の育成のための支援を行う。
(ロ)保健医療
HIV感染率が深刻なほど高い状況にあるため、感染防止のための教育・啓蒙活動や予防対策に取り組む。また、マラリア等の感染症の分野での対処能力の向上やプライマリー・ヘルス・ケアに関する支援により、保健水準の向上を図る。
(ハ)共同体地域及び再入植地域の農業
人口の3分の2が従事し、総輸出額の半分近くを占める農業の振興は重要であり、小農の多い地域において灌漑、食料増産等の支援により農業振興を図る。
(ニ)水を含む環境保全
水資源問題、森林保全等の環境問題に対し、地方及び都市部における水資源の確保の改善を図るとともに、ジンバブエ政府が策定中である環境行動計画の具体化に向けての支援を行う。
(2) 有償資金協力については、通信を中心とする経済インフラの整備に対し援助を実施している。
無償資金協力については、食糧増産援助のほか、農業、保健・医療分野といった基礎生活分野、環境分野等で援助を実施している。特に、道路分野において、国内の道路整備のみならず、広域協力として、ザンビアとの国境のザンベジ川にかかる橋梁の建設に対する協力を実施している。また、同国の構造調整努力を支援するため、98年度までにノン・プロジェクト無償援助を合計125億円供与した。
技術協力については、通信・放送、行政、保健・医療等の分野における研修員受入に加え、現在、感染症に関するプロジェクト方式技術協力を実施している。また、工業、環境保全、農業、経済インフラ等の分野における開発調査等を実施している。
(1)我が国のODA実績
暦年 | 贈与 | 政府貸付 | 合計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
16.63(65) 54.77(-) 33.31(71) 26.22(-) 15.99(-) |
8.66(34) 12.35(-) 11.71(25) 12.51(-) 11.15(-) |
25.29(99) 67.12(-) 45.02(96) 38.73(-) 27.14(-) |
3.32 1.71 4.46 2.43 1.92 |
0.37() -1.49() 1.69() -0.06() -0.38() |
25.66(100) 65.63(100) 46.70(100) 38.67(100) 26.75(100) |
累計 | 310.18(68) | 85.27(19) | 395.44(87) | 8.13 | 61.18(13) | 456.60(100) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2)DAC諸国・国際機関のODA実績
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | うち日本 | 合計 |
95 96 97 |
日本 65.6 日本 46.7 日本 38.7 |
英国 45.9 スウェーデン 35.9 ドイツ 38.4 |
ドイツ 42.1 オランダ 32.4 オランダ 24.1 |
オランダ 35.7 ドイツ 30.5 スウェーデン 22.9 |
米国 29.0 英国 25.2 英国 22.2 |
65.6 46.7 38.7 |
347.7 280.8 222.5 |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合計 |
95 96 97 |
CEC 60.3 CEC 60.3 IDA 82.7 |
IMF 50.7 IDA 11.0 CEC 17.3 |
IDA 14.6 UNICEF 6.1 AfDF 4.4 |
UNICEF 5.6 UNDP 4.6 UNHCR 0.9 |
UNTA 2.9 IFAD 2.1 UNDP 0.0 |
10.7 5.6 2.4 |
144.8 89.7 107.7 |
(3)年度別・形態別実績
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 |
90年度までの累計 | 118.82億円
(内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照) |
153.89億円
(内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照) |
21.11億円
研修員受入 85人 |
91 | なし | 41.30億円
中央病院医療施設リハビリ計画 (6.91) |
5.60億円
研修員受入 17人 |
92 | なし | 47.82億円
中央病院医療施設改修計画 (6.53) |
5.18億円
研修員受入 20人 |
93 | 95.23億円
マタベレランド州通信網拡充計画 (95.23) |
22.27億円
マシンゴ州中規模灌漑計画(5/5期-1) (1.37) |
7.04億円
研修員受入 25人 |
94 | なし | 39.22億円
マシンゴ州中規模灌漑計画(5/5期-2) (5.28) |
10.06億円
研修員受入 32人 |
95 | 52.09億円
通信網拡充計画 (52.09) |
45.26億円
道路維持管理機材整備計画 (4.83) |
9.91億円
研修員受入 38人 |
96 | 114.51億円
マショナランド・マニカランド州通信施設整備計画(II) (114.51) |
28.68億円
食糧増産援助 (5.50) |
14.01億円
研修員受入 49人 |
97 | なし | 32.00億円
ハラーレ中央病院小児科建設計画(国債2/2期) (3.42) |
14.32億円
研修員受入 69人 |
98 | なし | 20.17億円
チトゥンギザ市下水処理施設改善計画(国債1/2) (7.27) |
14.14億円
研修員受入 67人 |
98年度までの累計 | 380.65億円 | 430.61億円 | 101.37億円
研修員受入 402人 |
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
3.80年度から90年度までの有償資金協力及び無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/jisseki/kuni/j_90sbefore/905-20.htm)
(参考1)98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
案件名 | 協力期間 |
感染症対策 | 96.7~01.6 |
(参考2)98年度実施開発調査案件
案件名 |
ムニャティ川下流域農業開発計画調査(第1年次) 中小企業振興計画調査(第2年次) 太陽光発電地方電化促進計画調査(第3年次) グワーイ並びベンベジ地区森林保全計画事前調査(S/W協議)(リモートセンシング・地理情報) グワーイ並びベンベジ地区森林保全計画事前調査(S/W協議)(社会救済) |
(参考3)98年度実施草の根無償資金協力案件
案件名 |
アッシャー・セカンダリー・スクール女子寮建設計画 ヴング診療所太陽光発電電化計画 チャムテテダム建設計画 女性の自立のためのトレーニング・センター拡充・整備計画(フェーズII) ウズンバ・マランバ・フンゲ地区太陽光発電電化計画 ハラレ・チツンギザ市エイズ啓蒙活動計画(フェーズII) シャレダム建設計画 チレジ・エイズ在宅ケア計画 フンワダム補修計画 ンセウェレ・セカンダリー・スクール整備計画 |