(1) 89年6月に、バシール将軍がクーデターにより政権を奪取し、93年10月民政移管したが、政党活動は非合法化され、民族イスラム戦線(NIF)主導の一党独裁体制の下、イスラム原理主義に基づく政策を進めている。96年3月大統領及び国民議会選挙が実施され、バシール大統領が再選されたが、物不足やインフレに抗議する大規模デモの発生等国民の政府に対する不満が生じている。同国南部における内戦については、スーダン人民解放軍(SPLA)を中心とする反政府勢力が、96年10月反政府統一武力闘争の開始を宣言し、97年には一段と内戦が拡大した。現在、東アフリカ地域の政府間機構である政府間開発機構(IGAD)の仲介の下、両者の間で直接交渉が進行し、99年7月紛争処理メカニズムとしての「常設事務局」の創設について合意がなされたが、最終的解決には程遠い状況にある。
(2) 外交面では、現政権発足以降、国内における人権問題及びテロ支援疑惑等により、国際社会との関係を著しく悪化させている。特に、95年6月ムバラク・エジプト大統領暗殺未遂事件に関与した容疑者3名を匿っているとして、96年1月に容疑者の引き渡しと国際テロ支援の停止を求める国連安保理決議1044、同年4月に同決議の履行を促すため国連加盟国に対スーダン制裁を求める国連安保理決議1054が採択され、国際的な孤立を深めた。現在、エティオピア、エリトリア等の近隣諸国及び一部の欧州諸国との関係で一定の進展が見られ、特に99年5月には外相がエジプトを公式訪問する等、国際的孤立からの脱却を図っている状況にある。
(3) 経済面では、内戦の継続のための莫大な出費、諸外国からの支援の全面停止等により、財政が逼迫し、各種インフラ、教育、医療等の公共サービスの低下が生じ、また、経済は疲弊し、国民の大部分は困難な生活状態にあり、貧困層は拡大している。更に、多額の国際収支赤字を抱えているほか、約200億ドル(推定)の対外債務を抱え、負債返済が滞っている状況にある。一方、将来に向けての明るいきざしとしては、外国企業との合弁で石油開発プロジェクトが進行しており、国内油田から港までのパイプラインが建設され、99年8月から石油輸出が開始された。
(4) 我が国は、スーダンから綿花、アラビア・ゴム等を輸入し(98年輸入額2,197万ドル)、同国に機械その他の工業製品を輸出している(同輸出額4,695万ドル)。
(参考1) 主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | 25,191 | 26.707 | 27,272 | 27,737 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | - | - | - | 7,917 |
一人当たり(ドル) | - | - | - | 290 | |
経常収支(百万ドル) | -372.2 | -499.9 | -826.8 | - | |
財政収支(百万スーダン・ポンド) | - | - | - | - | |
消費者物価指数 | - | - | - | - | |
DSR(%) | 7.5 | 6.2 | 4.9 | 5.1 | |
対外債務残高(百万ドル) | 14,762 | 17,603 | 16,972 | 16,326 | |
為替レート(年平均、1米ドル) | 4.50 | 580.87 | 1,250.79 | 1,575,74 | |
分類(DAC/国連) | 後発開発途上国/LDC | ||||
面積(千平方キロメートル) | 2,376.0 |
(参考2) 主要社会開発指標
- | 90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命(年) | 51 | 55(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
104 | 71(97年) | |
所得が1ドル/日以下の人口割合(%) | - | - | 5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
172 | 115(97年) | |
下位20%の所得又は消費割合(%) | - | - | 妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
550(80-90年平均) | 370(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | 73 | 54(95年) | 避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
9(80-90年平均) | 10(90-98年平均) | |
初等教育純就学率(%) | - | - | 安全な水を享受しうる人口割合(%) | 46(88-90年平均) | 60(96年) | |
女子生徒比率(%) | 初等教育 | 43 | 45(96年) | 森林面積 (1000平方キロメートル) |
430 | 416(95年) |
中等教育 | 44 | 16(96年) |
(1) 我が国は、スーダンが80年代後半から90年初頭にかけて同国南部のジュバ等において著しい人権侵害状況が見られ、これに対し、我が国を含む各国が再三の改善要求を行ったが、スーダン側の対応に変化が見られなかったため、我が国は、ODA大綱を踏まえ、当面は緊急・人道的性格のものを除き原則として援助を停止することとし、92年10月その旨申し入れを行った。今後の援助再開については、ODA大綱を踏まえ、スーダン側の対応、国際社会の反応等を見極めつつ検討していく必要がある。
(2) 無償資金協力については、累次の食糧援助・食糧増産援助をはじめとする食糧・農業分野、保健・医療分野、水供給分野等の基礎生活分野を中心に、経済インフラ整備を含む幅広い分野について協力を行ってきていた(98年度までの我が国の対スーダン無償資金協力累計実績は、734.83億円で中近東域内第2位)。しかし92年10月以降は、緊急・人道的援助以外の援助は行っていない。同国における人権状況等に鑑み、緊急・人道的援助としては、世界食糧計画(WFP)及びUNICEFへの資金拠出のほか、WFP経由の食糧援助並びに草の根無償援助としてNGO活動に対する資金協力を実施している。
技術協力については、農業、保健・医療等の分野における研修員受入を中心に実施してきたが、現在は原則として協力を実施していない。
有償資金協力については、前述の理由及び同国の債務情況の悪化により、83年度以降債務繰延べを除き円借款の供与は行っていない。
(1) 我が国のODA実績
暦年 | 贈与 | 政府貸付 | 合計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
20.15(98) 20.62(97) 17.83(96) -(-) -(-) |
0.45(2) 0.57(3) 0.81(4) 0.47(100) 0.17(100) |
20.60(100) 21.19(100) 18.64(100) 0.47(100) 0.17(100) |
- - - - - |
-(-) -(-) -(-) -(-) -(-) |
20.60(100) 21.19(100) 18.64(100) 0.47(100) 0.17(100) |
累計 | 475.55(85) | 36.92(7) | 512.45(91) | 49.22 | 49.22(9) | 561.67(100) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | うち日本 | 合計 | ||||||||||
95 96 97 |
|
|
|
|
|
21.2 18.6 0.5 |
130.6 118.1 85.7 |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合計 | ||||||||||
95 96 97 |
|
|
|
|
|
13.0 20.8 -0.2 |
105.1 112.2 101.6 |
(3) 年度別・形態別実績
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 |
90年度までの累計 |
107.42億円 内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
654.06億円 内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
45.38億円
研修員受入 641人 |
91 | なし | 25.38億円
基礎的医療機材整備計画 (8.38) |
3.92億円
研修員受入 45人 |
92 | なし | 14.00億円
食糧増産援助 (11.00) |
1.44億円
研修員受入 29人 |
93 | なし | 10.00億円 災害緊急援助(国内被災民救済)(WFP経由) (10.00) |
0.03億円 |
94 | なし | 7.24億円
災害緊急援助(国内被災民救済)(WFP経由) (900万ドル=4.24) |
0.00億円 調査団派遣 2人 |
95 | なし | 3.15億円 災害緊急援助(国内被災民救済)(WFP、UNICEF経由) (3.15) |
0.13億円 |
96 | なし | 4.00億円 食糧援助(国内被災民救済)(WFP経由) (4.00) |
0.09億円
調査団派遣 2人 |
97 | なし | 7.00億円
食糧援助(国内被災民救済)(WFP経由) (3.00) |
0.03億円 機材供与 2.8百万円 |
98 | なし | 10.00億円
緊急無償地雷犠牲者支援(ICRC経由) (注4) |
0.17億円
調査団派遣 2人 |
98年度までの累計 | 107.42億円 | 734.83億円 | 51.20億円
研修員受入 715人 |
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
3.75年度から90年度までの有償資金協力及び無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/jisseki/kuni/j_90sbefore/904-15.htm)
4.ICRC経由でアフガニスタン、アンゴラ、アゼルバイジャン等11か国への供与にて合計約1.7億円。
5.WFP経由でソマリア、スーダン、エティオピア等7か国への供与にて合計29億円。
(参考)98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
案件名 | 協力期間 |
ハルツーム教育病院 | 85.4~92.3 |