(1) 90年5月の南北イエメンの統合後、市場経済に立脚した開発と民主主義の確立を基本政策とし、複数政党制を採用している。94年5月旧南北イエメンの間に大規模武力衝突が発生したが、旧北イエメン側が旧南イエメン側を武力制圧して戦闘は終結し、同年10月には改正憲法の公布、97年4月には総選挙の実施があり、民主化プロセスが進展している。
(2) 外交面では、非同盟主義、イスラム世界との連帯強化を基調としつつ親西側・穏健路線をとっている。湾岸危機に際しては親イラク的立場をとったと見られ、周辺諸国との関係が悪化したが、関係改善に努めている。特に、サウディ・アラビアとの関係では、95年6月サーレハ大統領の同国訪問により、従来よりの懸案事項である国境問題をはじめとする二国間問題に関する協議が開始された。
(3) GDPの約2割、労働人口の約60%が農業に従事する農業国であるが、食糧の輸入率が95年には80%にまで上昇しており、近年、ダム建設による灌漑等近代農法の導入及び普及に努力している。統一後旧南イエメンの石油鉱区が各国の石油会社に開放され、海外の石油会社がイエメン政府との間で石油開発のための生産分与協定を締結し、石油開発を行っている。更に、未開発ではあるが豊富な天然ガスの存在も確認されている。
95年、世銀・IMFの支援の下、緊縮的な財政・金融政策を内容とする経済改革に着手し、インフレ率の低下等の効果が現れている。今後は、市場経済原理の導入により増大しつつある社会的弱者層をいかに救済していくかが課題となっている。
(4) 我が国は、イエメンから石油、コーヒー、イカ等を輸入し(98年輸入額1億1,847万ドル)、同国に鉄鋼、自動車、電気製品等を輸出している(同輸出額7,795万ドル)。99年3月サーレハ大統領がイエメン大統領として初めて訪日した。
(参考1)主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | 11.612 | 15,272 | 15,778 | 16,072 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | - | 4,044 | 6,016 | 4,405 |
一人当たり(ドル) | - | 260 | 380 | 270 | |
経常収支(百万ドル) | 738.7 | 182.7 | - | - | |
財政収支(百万リアル) | -11,167 | -24,907 | - | - | |
消費者物価指数 | 100 | 311 | 431 | 463 | |
DSR(%) | 5.5 | 3.1 | 2.4 | 2.6 | |
対外債務残高(百万ドル) | 6,345 | 6,217 | 6,362 | 3,856 | |
為替レート(年平均、1米ドル=リアル) | - | 40.839 | 94,157 | 129,286 | |
分類(DAC/国連) | 後発開発途上国/LDC | ||||
面積(千平方キロメートル) | 528.0 |
(参考2)主要社会開発指標
- | 90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命(年) | 51 | 58(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
114 | 96(97年) | |
所得がドル/日以下の人口割合(%) | - | - | 5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
187 | 137(97年) | |
下位20%の所得又は消費割合(%) | 6.1(92年) | 6.1(92年) | 妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
- | 1,400(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | 68 | 61x(95年) | 避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
- | 21(90-98年平均) | |
初等教育純就学率(%) | - | 52(96年) | 安全な水を享受しうる人口割合(%) | 38(88-90年平均) | 39(96年) | |
女子生徒比率(%) | 初等教育 | - | 28(96年) | 森林面積 (1000平方キロメートル) |
41 | - |
中等教育 | - | 18(96年) |
(1) 我が国は、イエメンが一人当たりGNPが270ドル(97年)と中近東地域で最も低い国の一つであり、経済社会開発推進のための援助需要が高いこと等から、無償資金協力及び技術協力を中心に積極的に援助を実施している。(但し、94年5月の内戦勃発以後95年2月までは治安上の理由等により一時援助を停止していた。)99年7~8月には無償資金協力及び技術協力に関する経済協力政策協議を実施し、同国の政情・経済社会情勢、開発計画、治安の推移を見極めつつ、基礎生活分野(地方給水、保健・医療、初等教育分野)を中心に援助実施を検討していく方針である。
(2) 有償資金協力については、通信、運輸等経済インフラ整備に対し円借款を供与してきたが、イエメンがLLDCであり、また96年9月以降債務削減措置が適用されているため、新規の円借款供与は困難な状況にある。
無償資金協力については、累次の食糧増産援助、債務救済及び保健・医療、水供給等の基礎生活分野を中心に実施し、98年度までの累計(交換公文ベース)は458.37億円で、エジプト、スーダンに次ぎ中近東域内第3位である。
技術協力については、保健・医療分野におけるプロジェクト方式技術協力等各形態による協力を実施してきた。91年より開始された青年海外協力隊派遣は、94年5月の内戦勃発により中断されたが、現地の安全状況を踏まえ、再開を検討中である。
(1) 我が国のODA実績
暦年 | 贈与 | 政府貸付 | 合計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
20.34(-) 17.67(-) 29.80(-) 29.85(81) 50.44(81) |
3.68(-) 0.77(-) 1.38(-) 2.42(7) 2.03(3) |
24.02(-) 18.45(-) 31.18(-) 32.27(87) 52.47(84) |
2.78 0.47 0.97 4.66 31.18 |
-1.50(-) -8.81(-) -5.34(-) 4.66(13) 9.90(16) |
22.52(100) 9.64(100) 25.84(100) 36.94(100) 62.37(100) |
累計 | 291.22(52) | 42.36(8) | 334.50(60) | 288.79 | 224.14(40) | 558.64(100) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | うち日本 | 合計 |
95 96 97 |
ドイツ 42.5 ドイツ 43.1 オランダ 52.4 |
オランダ 32.8 オランダ 42.4 ドイツ 37.9 |
フランス 14.6 日本 25.8 日本 36.9 |
日本 9.6 フランス 11.8 イタリア 13.2 |
スイス 3.0 英国 3.4 フランス 12.8 |
9.6 25.8 36.9 |
108.6 133.3 174.5 |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合計 |
95 96 97 |
IDA 34.4 IDA 86.4 IDA 79.0 |
CEC 5.8 WFP 9.0 IMF 60.5 |
WFP 5.4 UNDP 7.1 CEC 16.7 |
UNTA 5.4 CEC 6.5 UNDP 10.7 |
UNDP 4.0 UNICEF 3.7 WFP 10.3 |
10.0 13.6 14.7 |
65.0 126.2 191.8 |
(3) 年度別・形態別実績
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 |
90年度までの累計 |
608.49億円
内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
193.72億円
内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
36.80億円
研修員受入 145人 |
91 | なし |
30.43億円
全国結核対策拡充計画(2 (5.08) |
7.13億円
研修員受入 25人 |
92 | なし |
27.87億円
地方水道整備計画(2/3期) (5.31) |
6.29億円
研修員受入 26人 |
93 | なし |
32.94億円
地方水道整備計画(3/3期-1) (2.33) |
4.77億円
研修員受入 24人 |
94 | なし |
13.81億円
地方水道整備計画(3/3期-2) (3.09) |
1.84億円
研修員受入 10人 |
95 | なし |
12.37億円
債務救済 (1.60) |
0.80億円
研修員受入 19人 |
96 | なし |
42.10億円
債務救済 (9.71) |
1.93億円
研修員受入 19人 |
97 |
10.62億円
債務繰延 (10.62) |
39.93億円
南部・東部州地方水道整備計画(1/2期) (9.98) |
2.18億円
研修員受入 21人 |
98 | 24.65億円 (24.65) |
65.2億円
ノンプロジェクト無償 (15.00) |
2.34億円
研修員受入 21人 |
98年度までの累計 | 643.76億円 | 458.37億円 |
64.08億円
研修員受入 310人 |
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
3.76年度から90年度までの有償資金協力及び無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/jisseki/kuni/j_90sbefore/904-04.htm)
(参考1)98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
案件名 | 協力期間 |
結核対策 結核対策(II) |
83.9~92.8 93.2~98.2 |
(参考2)98年度草の根無償資金協力案件
案件名 |
タイズ州地方巡回家族計画サービス拡張計画 イップ州バニー・アワード保健所建設計画 ローカルNGO運営能力向上計画 難民のための教育支援・職業訓練/所得創出プロジェクト サナア市ムウタシム小・中学校改修計画 サナア教護院改善計画 イエメン選挙管理国民会議開催プロジェクト 保健教育ビデオ計画(イップ州ジブラ・バプティスト病院) |