(1) アルジェリアの情勢は、イスラム原理主義政権の登場を恐れた政権側により、92年1月の国民議会選挙第2回投票が中止されて以降、テロ頻発・激化による治安情勢の悪化と不安定な政情が続く中で、政権側は右を克服すべく94年以降民主化プロセスに着手し、97年末までに上下両院選挙を実施し一応右プロセスを完了した。また、テロ掃討作戦、取締強化を図るとともに、本年6月にはブーテフリカ新大統領(99年4月就任)の下で、FIS(イスラム救国戦線)の軍事組織(AIS)と交渉の結果、FISは軍事行動の最終的停止決定を行った。更に、7月には大量恩赦(2,500人)の実施とテロリストの社会復帰を図ることを主眼とする「国民和解法」を公布した。最近では、全体として治安の改善が認められるが、依然地方を中心にテロ事件は断続的に続いており、テロの完全な根絶までには時間を要するものと見られる。
(2) 対外関係では、70年代までの同国の外交は、8年近くに及ぶ対仏独立闘争を実力で勝ち取った自信に裏付けられ、非同盟、反植民地・反帝国主義、アラブの連帯を標榜し、マグレブ連合、非同盟諸国会議、アラブ連盟アフリカ統一機構等において指導的な地位を占め、活発な外交を展開してきた。しかし、冷戦終結、イスラム原理主義の脅威及び国内経済の不振から、西側諸国との友好関係を深める方向に転換させているほか、エジプト、テュニジアなどアラブ穏健派諸国との関係も改善を見ている。また、本年の大統領選挙後、モロッコとの関係改善の動きが出てきており、本年10月にはAMU(アラブ・マグレブ連合)外相会議、12月にはAMU首脳会議の開催が計画されている。更に、成功裡に開催したOAU(アフリカ統一機構)サミット(99年7月)後、一年間のOAU議長国として、アフリカ諸国との間の外交活動を活発化させている。
(3) 同国経済は原油、天然ガス輸出に大きく依存。多額の累積債務、高インフレ、失業問題、住宅不足、生活物資不足等の問題を抱えていたが、94年5月及び95年5月のIMFとのスタンド・バイ取極及び拡大信用供与付与を経て、94年6月及び95年7月のパリ・クラブにおいて、債権国との間で債務救済措置につき合意が得られた。(我が国との間では、96年7月に2国間債務繰延に関するE/Nに署名)マクロ経済面では大きな成果を上げ、98年3月IMF構造調整プログラムを予定通り終了。国営企業の再編整理、市場経済化、外国投資の呼び込み等により、経済再建に努力中である。
(4) 我が国のアルジェリアからの輸入はほとんど鉱物性燃料で占められ(98年輸入額8,193万ドル)、同国には自動車、タイヤ、電気機械等を輸出している(同輸出額1億4,953万ドル)。
(参考1)主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | 25,056 | 27,959 | 28,734 | 29,318 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | 51,585 | 44,609 | 43,726 | 43,927 |
一人当たり(ドル) | 2,060 | 1,600 | 1,520 | 1,500 | |
経常収支(百万ドル) | 1,420 | - | - | - | |
財政収支(百万ディナール) | - | - | - | - | |
消費者物価指数 | - | - | - | - | |
DSR(%) | 63.4 | 34.0 | 27.3 | 27.2 | |
対外債務残高(百万ドル) | 27,877 | 32,810 | 33,428 | 30,921 | |
為替レート(年平均、1米ドル=ディナール) | 8.958 | 47.663 | 54.749 | 57.707 | |
分類(DAC/国連) | 低中所得国/- | ||||
面積(千平方キロメートル) | 2381.7 |
(参考2)主要社会開発指標
- | 90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命(年) | 65 | 69(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
68 | 32(97年) | |
所得が1ドル/日以下の人口割合(%) | - | <2(95年) | 5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
98 | 39(97年) | |
下位20%の所得又は消費割合(%) | 7.0(95年) | 7.0(95年) | 妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
140(80-90年平均) | 140(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | 43 | 38(95年) | 避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
7(80-90年平均) | 51(90-98年平均) | |
初等教育純就学率(%) | 88 | 94(96年) | 安全な水を享受しうる人口割合(%) | 71(88-90年平均) | - | |
女子生徒比率(%) | 初等教育 | 45 | 46(96年) | 森林面積 (1000平方キロメートル) |
41 | 19(95年) |
中等教育 | 44 | 48(96年) |
我が国は、アルジェリアの一人当たりGNPが比較的高い水準にあることから、教育等の分野におけるプロジェクト方式技術協力をはじめ、運輸・交通、教育分野における研修員受入、専門家派遣、開発調査等の技術協力を中心に援助を実施してきた。しかしながら、外国人を対象としたテロの多発等治安情勢が悪化したため、人の派遣を伴う協力については93年11月以降中断している。また、近年一人当たりGNPが低下し91年度より有償資金協力の対象国となったが、同国の治安情勢の悪化等により現在のところ円借款の供与は行っていない。今後の援助実施については、同国の政情・治安の推移を見極めつつ検討していく必要がある。
(1) 我が国のODA実績
- | 贈与 | 政府貸付 | 合計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
0.05(-) -(-) -(-) 0.08(4) -(-) |
1.95(-) 1.21(55) 0.90(100) 0.73(35) 0.48(-) |
2.00(-) 1.21(55) 0.90(100) 0.81(39) 0.48(-) |
- 1.00 - 1.26 - |
-2.86(-) 1.00(45) -(-) 1.26(61) -2.45(-) |
-0.86(100) 2.21(100) -0.90(100) 2.07(100) -1.97(100) |
累計 | 2.16(5) | 40.63(87) | 42.80(91) | 50.97 | 3.99(9) | 46.78(100) |
(注) ( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | うち日本 | 合計 |
95 96 97 |
フランス 183.9 フランス 241.1 フランス 136.7 |
スペイン 28.8 イタリア 23.2 スペイン 15.8 |
ドイツ 27.1 ベルギー 11.7 イタリア 15.0 |
イタリア 17.8 スペイン 6.2 ドイツ 13.5 |
オーストリア 17.4 スウェーデン 3.0 ベルギー 4.5 |
2.2 0.9 2.1 |
289.8 263.0 192.5 |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合計 |
95 96 97 |
CEC 18.3 CEC 22.0 CEC 34.0 |
WFP 5.2 WFP 6.4 UNHCR 2.4 |
UNHCR 2.9 UNHCR 3.9 UNICEF 2.1 |
UNTA 2.0 UNFPA 1.4 UNTA 1.7 |
UNFPA 1.2 UNICEF 1.1 UNDP 1.2 |
4.9 4.6 2.3 |
34.5 39.5 43.7 |
(3) 年度別・形態別実績
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 |
90年度までの累計 |
120.00億円
内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
4.86億円
内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
23.45億円
研修員受入 166人 |
91 | なし | なし |
7.25億円
研修員受入 25人 |
92 | なし | なし |
研修員受入 6.89億円 |
93 | なし | なし |
2.70億円
研修員受入 26人 |
94 | なし |
0.05億円
災害緊急援助(地震災害) (5万ドル=0.05) |
1.30億円
研修員受入 28人 |
95 | なし | なし |
0.83億円
研修員受入 20人 |
96 |
20.17億円
債務繰延 (20.17) |
なし |
0.63億円
研修員受入 22人 |
97 | なし |
0.10億円
緊急無償民主化支援(国連信託基金経由) (0.10) |
0.44億円
研修員受入 12人 |
98 | なし | なし |
0.53億円
研修員受入 15人 |
98年度までの累計 | 140.17億円 | 5.01億円 |
44.00億円
研修員受入 339人 |
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
3.68年度から90年度までの有償資金協力及び無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/jisseki/kuni/j_90sbefore/904-03.htm)
4.ICRC経由でアフガニスタン、アンゴラ、アゼルバイジャン等11か国への供与にて合計約1.7億円。
(参考)98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
案件名 | 協力期間 |
オラン科学技術大学医療センター オラン科学技術大学 ブーイスマイル高等海運学校 |
78.4~84.3 89.11~94.10 90.3~94.3 |